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公害・地球懇ニュース 2009年11月号 No.170の内容

■ 泡瀬干潟 画期的判決
■ 道路全国交流集会
■ 第19回環境公害セミナー
■ ストップ温暖化! 九州フォーラム
■ 不知火海沿岸住民健康調査
■「隠れ水俣病」
■ 国が方針転換——水俣病
■ 重要な局面を迎えた高尾山天狗裁判
■ JNEP情報





◆ 画期的な勝利! ◆
◆ — 泡瀬干潟埋め立て訴訟 — ◆


○ 泡瀬干潟「自然の権利」訴訟を支援する会代表/琉球大学農学部助教 亀山 統一 ○


高裁でも画期的な勝訴
 泡瀬干潟「自然の権利」訴訟の控訴審判決が、10月15日、福岡高裁那覇支部で言い渡されました。一審に続き勝訴、会心の結果です。
 私たち原告側は、裁判を速やかに確定するために敢えて控訴せず、沖縄県・沖縄市が控訴した経済合理性の評価を焦点に審理されました。判決では、一審に続き、環境アセス、事業計画について広く行政の裁量を認め、アセスに「不十分な点が散見」されたりしても、2000年の埋立免許・承認時点では、経済的合理性を欠くとまではいえないとしています。
 しかし、東門沖縄市長が、一昨年、第一区域の土地利用計画見直し・第二区域の推進困難との見解を発表し、これを「埋立免許等を受けた後に、その基礎となった経済的事情等に大きな変化が生じたことにより、本件埋立事業等が抜本的な見直しを余儀なくされるに至ったことの現れ」と判断しました。
 公有水面埋立法では、免許等を受けた後事情の変更が生じたときは、埋立区域の範囲等の変更許可を受けて事業を続行することができます。判決では、まず、この変更許可には、変更後の事業に経済合理性などがある必要があるとします。 泡瀬干潟の埋立にはこの変更許可を受ける必要があり、したがって経済合理性が示せる見通しの有無が工事続行の可否を決めるとしました。
 工事中の第一区域は、再検討中の土地利用計画案が、従来案を前提としており、従来案にも「疑問点が多々存在」し、経済的事情等に大きな変化が生じ、事業面積も半減するので、「新たな土地利用計画に経済的合理性があるか否かについては、従前の土地利用計画に対して加えられた批判を踏まえて、相当程度に手堅い検証を必要とする」と評価しました。その上で、新計画が明らかでない今、経済合理性は認められないと結論しました。
 第二区域は、市が計画を白紙に戻しており経済合理性なしとしました。
 以上の緻密な判断を経て、一審同様に判決確定後の工事の契約や予算の支出を違法としたのです。一審と違ったのは、計画見直しのための調査やそのための人件費の支出を認めたことです。


沖縄県・沖縄市は『上告断念、でも推進』、国は『工事中断』!
 沖縄市・沖縄県は、高裁判決を受け入れながら、見直しにより事業を推進すると表明しました。
 判決は、沖縄市の現状の見直しを批判しており、今後、従来案と全く別の事業案を提示し、その経済合理性等を示さなければ、事業に公金を支出できません。事実上の新規計画を既存の第一工区の護岸の形に合わせて急造するとなると、泡瀬の海を埋め立てるに足る、高度の公共性・緊急性・経済合理性があるわけありません。つまり、判決の意味は、形式的には見直しの調査は合法だが、現実に見直しの余地はないということです。沖縄市・沖縄県は、計画を白紙撤回するべきです。
 一方、判決を受けて、前原国土交通大臣は、「工事を中断して沖縄市の計画見直しを見守る」と表明しました。ついに行政を動かしました。
 しかし、いまある第一区域の護岸は、内部や周辺海域の生態系に大きな影響を与えています。放置すれば、日に日に泡瀬海域の自然は劣化します。泡瀬の生態系の保全・復原や、自然を活かした地域振興という代案の実現が困難になっていきます。世界的に貴重な泡瀬海域の自然をみるなら、国は事業の全面中止を直ちに決断すべきです。少なくとも、国・県は、現存する護岸を放置せず、護岸の撤去などの措置をまず講じなくてはなりません。


世界の宝・泡瀬の海を守りいかしていこう
 埋め立てが着工後の、本格的な運動立ち上げでしたが、ついに事業の中断・抜本見直しまで勝ち取りました。市民みずからの手で泡瀬の海の生物や事業の影響などを調査し、泡瀬の海の価値を明らかにしたことは特筆されます。
 判決にある9年間の経済的事情「等」の大きな変化とは、泡瀬の海の貴重性が次々示されてきたことと、全国・世界的に「干潟」のもつ価値が画期的に重視されてきたことです。どんどん評価の高まる泡瀬干潟を埋めるには、ハードルが高くなったのです。全国・世界の運動によって生まれた判決であり、また、今回の判決が全国の現場で力となります。
 裁判勝訴を土台に、泡瀬の海を維持・回復し持続可能な利用に転じていく、 私たちの取り組みが始まります。

 




◆ 全国交流集会 in 横浜 ◆

○ 道路全国連事務局長 橋本 良仁 ○

 10月24-25の両日、第35回道路全国連交流集会が横浜市従会館で開催され、41団体200人を超える参加者があった。
 24日はバスで、庄戸、公田インターチェンジ、田谷インターチェンジ等の横浜環状南線予定地を見学、現地報告が行われた後、懇親会が盛り上がった。
 翌25日は、講演会と分科会が行われ、五十嵐法政大学教授による演題「道路はどうなる」の記念講演、その後、西村弁護士の「PM2.5環境基準問題」と鞆の浦景観訴訟担当弁護士による「鞆の浦世界遺産保存訴訟勝訴報告」など時宜を得た報告が行われた。

 五十嵐教授は公共事業問題の専門家であり、公共事業の政官業癒着構造を批判するなど、新聞紙上での辛口のコメントは評価が高い。旧態依然とした自民党政権から民主党政権に政権が変わったことを評価しつつも、道路事業に群がる癒着構造からも容易に政策変更が出来ない新政権の難しさを指摘した。さらに教授は、高速道路無料化政策や暫定税率廃止は、40兆円を超える旧道路公団の借金返済と環境負荷を増やすことから支持できないと述べた。いずれにしても、民主党政権は前政権の残した難問と道路の利権構図のため、性急な期待は避け、私たちの地道な努力が肝心であるとした。

 午後は3分科会に分かれ、
1)新政権下での道路政策、
2)審議会・委員会の改善、
3)道路関連裁判事例と問題点、
がそれぞれ真剣に討議された。
 最後の全体会では、政権交代に過大な期待を寄せることなく地道な努力を続けることの重要さを確認し、来年の交流集会の名古屋開催が告げられ、集会アピールを採択し散会した。
 





◆ 第19回環境公害セミナー ◆
◆ 「地球温暖化問題と自然エネルギー」 ◆
◆ 市民主導による持続可能な社会の構築 ◆



 10月3日、東京茗荷谷のプラザ・フォレストで公害・地球環境問題懇談会と病体生理研究所主催による上記セミナーが開催されました。講師は日本環境学会会長和田武氏(元立命館大学教授)で、「自然エネルギー市民の会」代表、NPO法人「自然エネルギー市民協同発電」代表理事などをつとめています。

地球温暖化の現状とその影響
 講演の冒頭、和田先生は、地球温暖化の現状と未来予測について、IPCCの報告書等の種々のデータを示し解説しましました。将来的には、グリーンランドや南極での氷床の大規模崩壊、永久凍土地帯融解によるCO2やメタン放出による温暖化の加速なども考えられるといっています。これら、とくに今後の気温上昇がもたらす危険性について、不可逆的で回復不可能な影響などがあり、破滅的な影響を回避するには、今後の気象上昇を2℃以下に制御することが重要であると指摘しました。
 気温上昇を2℃以下に制御するための温室効果ガス削減目標とそれを達成するための方策として、世界では2050年までに温室効果ガスを半減、先進国は80%程度以上の削減が必要であり、そのためには省エネ等とともに、CO2を排出しない自然エネルギーへの転換が不可欠であるとしています。

自然エネルギーの普及は市民主導が不可欠
 自然エネルギー普及の国内外の動向を特に日本とドイツの比較を中心に、さまざまな取り組み事例を紹介し、普及促進のためには市民主導の普及が不可欠です。自然エネルギーや省エネルギー設備は小型で分散型が多いため、市民や地域主導の取り組みに適しています。また、自然エネルギーの普及はより民主的で環境保全を可能とする持続可能な社会へと導きます。資金面でも、電力買取保障制度のような制度を導入すれば、市民資本が活用され、普及が進むことを強調しました。

原子力発電拡大政策の問題点
 日本では、「原子力立国計画」の名の下に、電力中の原子力発電の比率を大幅拡大する政策を取っています。再生エネルギーよりも原発重視を取っているのが日本の特徴です。原発はCO2削減に有効だから必要であるという考えです。しかし、原発で重大な事故が起きた場合、どのような状況になるでしょうか。旧ソ連のチェルノブイリ原発がありました。原発の過酷事故は、化学工場の爆発事故とまったく異なり、放射能汚染により十数年、数百年にわたって有害で広範な地域汚染をひきおこします。特に自身頻発国のわが国では、原発によるCO2削減をめざすことは問題があると指摘しました。
 2009年12月にはコペンハーゲンでCOP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)が開かれ、京都会議で約束した温室効果ガス削減以降の削減目標を決めることになっています。その点でも大変時期を得たセミナーでした。

 





◆ ストップ温暖化! 九州環境フォーラム ◆

○ 公害・地救懇 運営委員 大嶋 茂男 ○

 
 公害・地球懇と「ストップ温暖化!九州環境フォーラム」実行委員会の共催で開催された集会が、10月31日夜、熊本県民交流館パレア10階パレアホールで開催された。参加者は、水俣からバスで駆けつけた水俣病訴訟をたたかっているメンバーを含めて150人。
 開会の挨拶で、この集会の意義・目的を話したのは、実行委員長である公害・地球懇運営委員の大嶋茂男。「年末にコペンハーゲンで開催されるCOP15 で、鳩山首相の提案する温暖化効果ガス25%削減を、どうしても実現させなければならない。また、来年10月には、生物の多様性を守るCOP10が名古屋で開催されるが、その成功も重要である。成功させる力は、地域からの市民運動の盛り上がり」と強調した。

 記念講演は、本間慎さん(フェリス女学院大学前学長、東京農工大学名誉教授)が、『地球温暖化は農業生産を破壊する』と題して、地球温暖化が九州の農業にどれだけ深刻な打撃を与えつつあるかを具体的に指摘。会場からも、「関東は長雨だというのに、九州は8月以降干ばつが続いた。地球温暖化の怖さは、こうした気候変動だ。台風も鹿児島が通り道のように変わってきた」と危機を強調された。

 現地報告のトップは、ノーモアミナマタ訴訟原告団団長の大石さん。「今回の集団検診で、被害者が多数発掘され、被害者が住む地域も広がった。認定被害者は3万人になる。その中から訴訟に立ち上がっているのは、1,876人。11月に第18次の提訴が行われる。裁判で争うのは私たちで終わりにしたい」と断固とした決意を表明された。

 2番バッターは、川辺川の自然を守る調査を20年以上続けてきた「つる」(難しい字で活字がなくてすみません)さん。1年間に60回も川辺川を調査してきた迫力はすごいものだった。「国交省は、ダムを造るための調査しかしない。私たちは住民の要望を実現する基礎となる調査をしている」と両者の根本的違いを鋭く告発した。

 有明海からは、堀弁護士が報告。理路整然と問題点を告発した。この戦いは勝たねばならない、勝つのではないかと皆に感じさせる内容だった。
 上田新婦人県本部事務局長の多彩な活動紹介の報告は、参加者をひきつけた。
 熊本県の環境政策課からは、谷口智則さんが報告した。今回のフォーラムに県の担当者が報告してくれたことは大歓迎。
 公害・地球懇幹事である全労連中山局長から行動提起が行われ、締めは石原勝行県労連議長が行った。感動が連続した充実の2時間でした。

   *    *    *    *

公害・地救懇からの提起
 「ストップ温暖化! 九州環境フォーラム」にご参加いただいた皆さん、御苦労様です。公害・地球懇から提起を申し上げます。

 12月に開催されるCOP15に向けて、公害・地球懇は25人の代表団を派遣することになりました。COP15は、2013年以降の国際枠組みでの合意を目指す場です。その意味からいっても大変重要な国連の会議です。これまで、日本政府の姿勢を批判してきましたが、今回の鳩山首相発言を政治的にも実行させ、温室効果ガスの大幅削減のリーダーシップを取るよう積極的に後押しすることが、第1の任務です。第2の任務は、日本政府が、原子力発電に依存する削減政策を取っていることです。この政策に対して、私たちは反対です。世界的にも太陽光や風力など再生エネルギーでの削減政策を取るべきではないでしょうか。日本政府のこのような政策を告発したいと思います。そのためにも、日本の代表団だけでなく温室効果ガス削減の運動に取り組む世界のNGOと共同歩調を取り、12月12日のワールドアクションディーやNGOのイベントにも参加を予定しています。

 私たちは、究極の災害・地球温暖化の危機に直面しています。この危機は、文字通り地球上における人類の生存を根底から脅かすものです。この課題は、これからです。ようやく日本政府もスタート地点に立つことになります。しかし、国民が政府に対して圧力をかけ続けなければ、財界と電力会社などの抵抗で具体化が進まないでしょう。その意味からも、国民と財界とのせめぎ合いです。

 このせめぎ合いに勝たなければなりません。そのために、4点を訴えます。
1) 3項目の国民署名運動を広げ、連立政権に実効ある削減義務化を迫ることです。
2) そのためにも、学習運動の強化です。すでに紹介されているパンフやDVDを全構成員に購入していただき、温暖化の防止運動に参加するよう呼びかけていただきたい。
3) 地元の水俣原告団・弁護団からCOP15へ参加されます。本日配布したパンフを活用していただき、販売価格の半分が代表の渡航経費を補います。積極的に財政的にも支援していただくことをお願いします。
4) 世界的に取り組まれる12月12日のグローバルアクションには、日本でも熊本でも宣伝・署名活動に取り組まれることを訴え、公害・地球懇の提起といたします。

以 上




◆ 被害の一端が明らかになった ◆
◆ 不知火海沿岸住民健康調査 ◆


○ 水俣病不知火患者会 事務局長 瀧本 忠 ○ 


潜在患者が浮き彫りに
 9月21日、22日に行われた不知火海沿岸健康調査の検診結果が、10月29日に発表されました。
 発表によれば、検診受診者1,044名のうちデータ提供に同意した受診者974名中904名(93%)に水俣病の症状が確認されるという、驚くべき結果がでました。また、受診者のうち862名が初めての受診で、潜在化した被害の広がりが浮き彫りになりました。
 今回の検診は8市町の17会場で行われ、974人は33歳から92歳で、平均年齢は62歳でした。これまで受診しなかった理由としては、「地域や結婚での差別」が46%、患者認定や救済制度などの「情報がない」が41%というものでした。この事実は、水俣病の公式確認から53年を経過した今なお、多くの潜在被害者が、多数取り残されていたことを示しています。
 先般、成立した水俣病特別措置法は、不知火海沿岸住民の健康調査を義務付けています。水俣病問題の全面解決のためには、不知火海沿岸全住民健康調査の、不可欠であり、今国にその実施が求められています。

行政の線引きの不当性が明らかに
 今回の検診でさらに明らかになったのは、これまで行政が水俣病の被害が及んでないとした地域や、水俣病のあらたな発症がないとした1969年(昭和44年)以降の出世者や居住者にも、水俣病の症状が確認されたことです。
 現行救済制度の対象地域以外からの受信者213名のうち93%にあたる199名に水俣病の症状が確認され、さらに69年以降に生まれた人、69年以降に汚染地域に居住を開始した59人のうち86%に症状が確認されました。
 このことは、これまでの行政による線引きに根拠がないこと、さらには、不当であることを明らかにしました。

国は、実態を直視せよ
 今回の調査結果は、これまでの国の水俣病対策がいかに不十分だったか、国の補償、救済策の欠陥を改めて浮き上がらせました。
 環境省は、これまで新たに症状を訴える人々を詐病扱いし、水俣病研究を続ける地元医師の診察を「信用できない」と主張し、さらには、チッソの工場排水と症状の因果関係が証明できないとして、健康調査に消極的でした。
 水俣病の発生と拡大の責任を最高裁判決で指摘され5年が経過した今、日常生活の中で自らの症状に苦しんでいるこうした人々の声に、国は早急に耳を傾け、対策をたてることが求められています。

 





◆ 「隠れ水俣病」 ◆

○ 写真家 田中 史子 ○


 「田中さん、オレの息子が死にそうなんだ。写真撮ってくれないかな」新潟で写真展を開催した時のことだ。新潟水俣病原告団副団長の梅沢さんに声をかけられた。梅沢さんたら何言ってるんだろう。息子さんなら今朝会ったばかりだ。ピンピンしていた。昨夜、梅沢さんのお宅に泊めてもらって、まっすぐ写真展会場へやってきた。それから何かあったのだろうか。
「家にいるのは次男だ。死にそうなのは、長男の方だ」という。別れた妻にひきとられて長いこと離れ離れだった。息子は結婚し孫ができた。そして3年前のある日突然倒れた。梅沢さんの兄の時と同じように。
 病室に入ると、息子はガリガリにやせ衰えた身体をベッドに横たえ、そっぽをむいたままだ。そばへ行って父親が話しかけても反応はない。のどにあけた穴に管がつながっている。時々痰がからんで苦しそうな咳をすると、看護師さんが義務的にスポイトで吸い取る。

「水俣病で亡くなった兄にそっくりなんだ」
「撮ってもいいんですか」
と聞くと
「ああ、おれの記念にするから」
とボソリという。部屋の中は薄暗く、シャッターを切る音が静かな病室に響く。ファインダーが汗で曇る。部屋の隅で、息子の一家が静かに見守っていた。

「水俣病弁護団は知っているのですか」
「いや、誰にも話してないからなあ」
「お医者さんはなんと診断を」
「普通の診断だろう。阿賀野川の魚を食べたとは言ってないから」
「じゃ、誰も知らないんですか」
「家じゅうみんなで隠してきたんだからな、新潟水俣病原告団副団長の俺にしてこうだからなあ」

 梅沢さんは嘆息した。ずっと隠し通してきた。孫のため、嫁のため、嫁の両親のため、別れた妻のため。一か月後に息子は亡くなった。誰にも水俣病ということを知られずに。しかし、家族は水俣病だと信じている。だからこそ、隠してきた。しばらくして新潟から新潟水俣病の機関紙が届いた。私の撮った写真を示して、環境庁(当時)に迫っている梅沢さんの姿があった。これが、10数年前に私が水俣病の写真を撮っていたころの話である。


家族みんなが隠していたために水俣病の診断がされていない患者

 今、関西訴訟の判決後に名乗り出た多くの患者たちは、なんらかの理由で今まで名乗ることのできなかった患者たちである。

 今年の夏、現地調査で水俣へ行った。埋立地の美しい公園で写真を撮っている時、犬を連れた婦人にあった。このあたりに長いこと住んでいるのだという。埋め立てられた水俣湾のすぐそばに住んでいるということは、決して水俣病と無縁とは言えない。
「生まれた年からしても、住んでいるところからしても、私は水俣病の申請をすればすぐに通る条件を満たしている」
と言った。
「じゃ申請するんですね」
というと
「いや、それは…」
という。
自分には何も水俣病の症状が出ていないから、申請はしないという。近所にはそういう人が沢山いる。みんな申請しないと言っているという。この人たちは劇症でなければ水俣病とは名乗れないと思っているにちがいない。この程度の症状で申請したら「偽患者」だと言われる。まわりの何人かがそういわれていたのを知っている。

 東京で先日TYさんに会った。第三次訴訟の原告だったYNさんの妹さんだ。
「東京にきてから長いし、私はなんの症状もないのよ」
と言っていた人だ。
「受けてみたのよ、水俣病検診。そしたらね、『痛かったら言ってくださいよ』って先生が言うから、『痛い』って言ったときは、もう、肘のところまできていたのよ。先生は何で触っていたと思う。ピンセットよ。あんなもので触られても分からなかったなんて」
 彼女は水俣病検診の結果がどんな図で示されるかよく知っている。
「私の体の図をみたら、両手、両足とも斜線がひかれているのよ」
ショックだったにちがいない。斜線が引かれた部位は、四肢末しょう神経麻痺を表している。メチル水銀で汚染された魚を食べ続けたことと、手足にしびれがあること。これが水俣病診断の疫学的条件である。水俣病と診断されてもおかしくはない。
 彼女は隠れていたわけでも、隠していたわけでもない。多くの患者たちは、自分がころびやすかったり、疲れやすかったりすることを、できれば水俣病ではないと思いたいのだ。
 しかし、どうも体調がよくない。不知火海や阿賀野川の魚を食べたおぼえもある。時期も水銀汚染があったころだ。もしかして…、と心の底では危惧している。そして、気付いた時には、あちこちに水俣病の症状がでてきている。


水俣・月の浦漁港

「関東にも水俣出身者が沢山いるのよ。
 500人くらいかなあ。横浜や川崎に多いの。千葉にもチッソ水俣工場が越してきたからね。東京でも水俣病検診やってくれないかなあって話しあっているのよ」
 しかし、一般の人はみんなもう水俣病は終わったと思っている。水俣病を知らない世代が増えてきた。
 「ノーモア・ミナマタフォーラム in 横浜」は水俣病を知ってもらうための企画である。このイベントに参加してください。水俣病を知ってください。水俣病の支援に手をかしてください。

 





◆ 裁判上の和解に向け協議を ◆
◆ ——水俣病 国が方針転換 ◆


○ 水俣病不知火患者会 事務局長 瀧本 忠 ○


田島環境副大臣、被害者団体と意見交換
 10月31日、田島一成環境副大臣が水俣を訪れ、患者9団体との意見交換が行われました。田島副大臣は、冒頭の挨拶で国の加害責任を謝罪するとともに、「被害者の皆さんの意見を丁寧に聞き、最善の道を見出したい」と述べ、被害者の声に真摯に耳をかたむける姿勢を見せました。
 
国は裁判上の和解のテーブルにつけ
 各団体10分の持ち時間のなかで要望が行われ、不知火患者会からは大石利生会長と園田昭人弁護団長が出席し、要望を行いました。
 大石会長から、「全面解決するには、国が裁判上の協議のテーブルにつくことがカギだ」と協議のテーブルにつくよう強く求めました。

国が方針転換
 これに対し、田島環境副大臣は締めくくりの挨拶のなかで、「和解協議への要請を誠実に受け止める。裁判で和解協議が成立する条件などについて事前協議を開始することを、この場で申し上げる」と明言し、国として初めて裁判上の和解に対する前向きな姿勢を示しました。提訴以来、和解を拒否してきた国が方針転換をした瞬間でした。
 意見交換後の記者からの質問に、大石会長は「提訴当時の小池百合子環境大臣は『和解には応じない』と言っていた。政権交代を実感する」と感想を述べました。また、園田昭人弁護団長は「従来の環境省の方針を転換する前向きな発言と受け止める。しかし、特措法を前提とする和解内容なら乗れない」と述べています。
 小沢鋭仁環境大臣は、11月4日の閣議後の記者会見で副大臣の明言したことについて「政務三役で合意したことであり、そういう形でできるだけ早く進めたい」と述べ、田島副大臣の明言を追認しました。また、これまで、解決に向け積極的姿勢を示して来なかった熊本県の蒲島知事は、「事前協議の開始を歓迎したい」と述べ、県として国に追随して事前協議に参加する方針を示しています。
 不知火患者会の大石会長は、「スタートラインに立ったばかり、国の救済の枠外にいる潜在患者も含め、すべての被害者が救済される和解内容を目指す」と決意を新たにしています。不知火患者会では、来年度予算が決まる年末までがひとつの山場とした行動を展開する予定です。皆様方のよりいっそうのご支援をお願いいたします。

 





◆ 重要な局面を迎えた高尾山天狗裁判 ◆

○ 高尾山天狗裁判弁護団 事務局長 関島 保雄 ○


国交省役人の証人尋問
 圏央道の事業認定取消請求裁判で、東京地裁民事3部は原告が申請していた国交省役人の証人尋問を認めました。国交省は、圏央道の公益性の重要な根拠となる費用便益比を2.6としたため、分析に用いたデータの開示や計算根拠を求めてきました。しかし、国交省は一切明らかにしませんでした。
 原告側は、費用便益比2.6を出した国交省役人の証人採用を裁判所に強く求めてきましたが、ようやく裁判所も原告側の要求の意味とその重要性を認識して証人採用に踏み切ったもので、裁判の進行上、重要な転換点となります。証人尋問は10月28日午後1時30分から103号法廷で行われます。

費用便益分析に重大な誤り
 本件事業認定では、圏央道の八王子ジャンクション(中央道)から海老名北インターチェンジ(東名道)の便益が1兆4,761億円に対し、建設費用は5,741億円で費用便益比は2.6と公益性が高い事業の根拠にしています。国交省は費用便益比が1.0以下は事業を行わないと明言していますが、2.6の高い費用便益比は建設に有利な根拠となっています。
 適正な費用便益分析か、分析に用いたデータと手法及び結果が適正であるか否かは、事業の公共性と公益性、合法性判断の根幹となる問題です。ところが、国交省は計算結果のみを示すだけで根拠資料を一切明らかにしてきませんでした。

求釈明闘争の経過
 原告側は、計算の根拠となったデータの開示を求めましたが、国交省はコンピュータで解析したので、データは保存していないと回答してきました。本件訴訟と工事区間は異なりますが、八王子ジャンクションから相模原インターチェンジ間の費用便益分析結果の内訳がインターネットで開示されていたので、そのデータを分析し、便益の9割を占める走行時間短縮効果便益に着目して、この数字の根拠となるデータの提示を求めました。
 国交省はデータは保存していないと回答するのみでしたが、求釈明に回答しないのは、計算の根拠を示せないことを意味しました。データを示すと、計算の根拠にならないデータを使っているか、計算そのものがマニュアル通りでないかが明白になることを避けていると疑われ、国交省の主張する費用便益比2.6が根拠の無い数字であるという印象を裁判所に与える結果となりました。求釈明を通じて国交省がデータを隠している印象を裁判所に与えることができたのです。

安田教授を証人申請
 原告側は、東京湾アクアラインの無意味さを建設前から予測した関東学院大学の安田八十五教授を証人申請しました。教授は国交省の費用便益分析は便益を過大に算出し、しかもデータを開示しない秘密性があると指摘してきました。
 圏央道の費用便益分析では、圏央道から直接影響を受ける国道16号、16号バイパス、国道411号、国道129号だけを対象にすべきで、それ以外の周辺の道路などに範囲を広げるべきではないとし、原告側の問題点の指摘と一致しました。教授の計算では費用便益比は0.3以下でした。
 安田教授と役人の証人尋問をあわせて申請したことは、国交省のごまかしをあぶり出す役割を果たしました。裁判所が役人の証人採用に踏み切ったのは安田教授の証人申請が大きかったと考えられます。
 さらに原告側は、データを保存していないとする国交省の弁解が虚偽であることを明らかにし、費用便益分析の誤りを指摘するために(株)アブレイザルに依頼してイギリスで開発し実績を積んでいるコンピュータ解析モデルのミープランによる圏央道の費用便益分析を行いました。その結果、圏央道開通後の便益は一日1,200万円程度(年間44億円程度)の走行時間短縮便益程度しかないことが判明しました。ミープランの予測結果も裁判所に提出する予定です。

  





◆ JNEP情報2009年10月 ◆

◇ 経済産業省、太陽光発電電力買取制度スタート
 経済産業省は、11月1日より、太陽光発電に限定、しかも自家消費電力分を除いた「余剰電力」のみを買い取る前政権下で決定した制度をスタートさせた。
 新政権は、太陽光発電に限定せず、しかも自家消費電力を含む全量買取制度(デンマーク、ドイツ、スペイン等のような制度)を早ければ来年度にも導入するとしている。

◇ 環境省、炭素税要望
 環境省は2010年度税制改正要望で、地球温暖化対策税(炭素税)の導入を財務省・総務省に提出した。税率などは示していない。

◇ 環境省など「日本の気候変動とその影響」
 環境省・文部科学省・気象庁は、日本での温暖化の影響評価の科学的知見を取りまとめた「日本の気候変動とその影響」を作成した。洪水氾濫被害コストが、1980-99年比の気温上昇を約1℃(産業革命前から約1.5℃)に止めれば1.3兆円のところ、約1.8℃(産業革命前から約2.3℃)上昇すると4.9兆円に拡大するなど、日本における、気温上昇ごとの被害の程度などを分野ごとに今までの科学的知見をもとに示している。

◇ アメリカ上院で新しい温暖化対策法案
 ケリー議員、ボクサー議員(いずれも民主党)は、9月30日、上院に温暖化対策の法案(通称「ボクサー&ケリー法案」)を提出した。大口排出源への削減義務化(排出量取引制度)の他、再生可能エネルギー普及、省エネ普及などの多くの政策からなる。アメリカ全体の温室効果ガスは、2020年に1990年比7%削減、2050年に80%削減されることになっている。この法案は、すでに下院を通過している「ワックスマン&マーキー法案」と並行して、今後上院で議論される。

 




◆ 公害・地球懇 活動日誌

10月 1日(木)◇イレッサ定例宣伝(アストラゼネカ東京支社前)
    3日(土)◇環境公害セミナー「温暖化問題とエネルギー」
    5日(月)◇JNEP温暖化対策第12回推進委員会
    6日(火)◇イレッサ国会行動
         ◇大気全国連環境省交渉(PM2.5環境基準実施)
    7日(水)◇東京あおぞら連絡会代表委員
             〃     常任理事会議
    8日(木)◇有明海農水省前宣伝/国会行動
    9日(金)◇ノーモア・ミナマタフォーラム in 横浜 企画委員会
    11日(日)◇東京公害患者会幹事会
    12日(月)◇高尾山天狗ハイク
    13日(火) ◇JNEP運営委員・事務局会議
    15日(木)◇イレッサ裁判
         ◇泡瀬干潟控訴審勝利判決
    16日(金)◇有明海・泡瀬干潟合同院内集会
    17日(土)◇ノーモア・ミナマタ第2回全国連絡会議(新潟)
    18日(日)◇新潟水俣病現地調査
    19日(月)◇ストップ温暖化千葉県民のつどい実行委員会
    20日(火)◇千葉あおぞら連絡会準備会
    22日(木)◇東京あおぞら連絡会理事会
    23日(金)◇水俣病環境省交渉(「基本要求」提出)
    24-25日(土-日) ◇道路全国交流集会(横浜)
    28日(水)◇高尾山天狗裁判(地裁ー国交省職員の証人尋問)
    29日(木)◇有明海農水省前宣伝/国会行動
    30日(金)◇千葉あおぞら連絡会 PM2.5環境基準学習会
    



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