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公害・地球懇ニュース 2012年2月号 No.197の内容
■ シンポジウム「清流にダムはいらない」 ―愛知ターゲットの具体化を求めて
■ 政府のCOP17対応転換と国内政策強化を求める声明
■ 水俣病特措法の申請打ち切りを許さない闘い
■ 薬害イレッサ西日本訴訟 控訴審 意見陳述
■ 最終段階の正念場を迎える高尾山天狗裁判
・JENP情報
・活動日誌
◆ シンポジウム「清流にダムはいらない」
―愛知ターゲットの具体化を求めて―
○ 公害・地球環境問題懇談会 幹事 奥田 さが子 ○

プラザエフ 2012.1.22. |
はじめに代表委員の本間慎先生から、挨拶をかねて、
「生態学というのは非常にさまざまな分野からのアプローチが可能である。また大切であるにも係らず、現在の大学は成果至上主義なので、短期日で成果を出し論文にすることのできない生態学をやろうという研究者が育っていない。環境と生物とに係る生態学は、哲学的な面から迫るものから、地理的なもの、公害との関わりなど多面的に、もっと学問的に深めていく必要があり、今回のシンポジウムはそういった面からも意義のあるものになると期待される」
という話があった。
その期待に応えうる充実したシンポジウムになった。
■生態系サービスを活かす統合政策への転換を
国連生物多様性の10年市民ネットワーク共同代表/三重大学教授 高山進さん
生物多様性条約の究極の意義
人間は地球上の他の生き物にとことん支えられて生きているという根源的関係の理解に立ち、現在の地球規模の生物多様性の状況の変化のもとで、両者の共生のためには、現代文明の変更をも見据える必要を提起している。このままいったら、かつて地球上のどの地域でも見られた多様な生態系と、絶妙の関係を持ってつくられてきた文化も失われていく。自然を征服することによって発達してきた17世紀ヨーロッパ発の近・現代文明を批判的にとらえる時期にさしかかっている。
①生物多様性の保全、②その構成要素の持続的な利用、③その利用から生じる利益の公正な分配の3目的を一体不可分にとらえる統合政策が重要である。地球が直径100cmの球だとしたら、大気の厚さは1mmしかなく海の平均深度は0.3mmしかない。地球全体の水660ccで人間の飲める淡水は5ccにすぎない。地球の資源は想像以上に有限性が高いが、それを「命」の働きによる循環で使い回しているのだ。
地球規模の生物多様性の概況―第3版(GBD3)の結果(2010.5.)
絶滅の危機にある種類は増加している。特に、サンゴ、両生類や植物種、そして野生の脊椎動物も減少している。生息地域も世界の大部分で減少し、淡水湿地、塩性湿地、珊瑚礁、藻場、貝礁、海氷域は深刻な状況にある。森林、河川の生態系も広範囲に分断化と劣化が見られる。農作物と家畜の遺伝的多様性も引き続き減少している。乱獲、乱開発、汚染、気候変動など生物多様性の損失の直接的要因も増加している。2010年目標のために設定された21の個別目標の中で、地球規模で達成されたものはなく、「生態系の連続性と分断化」の指標は地球規模で悪化と評価された。
愛知ターゲット戦略目標A
各政府と各社会において生物多様性を主流化することにより、生物多様性の損失の根本原因に対処する。
これまでのうわべの対症療法ではなく、根本的な原因を考えて対応しなければならない。政府がさまざまな政策を考える時に、省庁バラバラではなく統合化していかなくては、ということだ。縦割り行政はどこの国にもあるが、先進的に努力している事例に学んで欲しい。
アメリカの政策統合の方法の例では、横並び省庁の上に調整機関(大統領府・環境諮問委員会)をおいている。計画アセスメントで複数案をつくる中には、事業をやらないという選択肢も入れる。推進した事業の結果が悪ければ、担当者は責任を取らされる。
EUの政策統合の方法の例をあげると、ドイツ法では「広域計画は…市町村に対して自由な計画策定の余地を認めうる枠組み計画にとどまらねばならない。市町村は代替計画を広域計画主体に対して請求できる」という補完性の原則があり、EU各国が守るべき共通原則、目標に達する筋道も、分権的な補完性の原則が明記されて運用されている。
人間は本物の自然をつくることはできないので、生態系の保全、再生、創出の順で、できることをやっていかなくてはならない。
沿岸湿地、内湾干拓、ダムなどで環境保全や再生につなげたアメリカや日本の事例を豊富に出して、その比較から見える教訓、これから日本でとるべき方向を明確に語られた。
日本は実は生物多様性の宝庫である(地球上の陸地の2.3%に、植物の50%以上と脊椎動物の42%が集中しているなど)にもかかわらず、ダムや道路などの公共事業による乱開発でこの貴重な自然が急速に失われている現状に何とかストップをかけなければならない。これは愛知ターゲットをまとめた政府の責任でもあるはずで、自らまとめた「京都議定書」をかなぐり捨てて世界のひんしゅくを買った気候変動議定書の二の舞は許されないと思う。
■ダムの環境アセスと生物多様性
ラムサールネットワーク日本共同代表・花輪伸一さん
環境アセスメントとは何か
環境アセスメントは、事業による環境変化の可能性を住民に知らせるためのもので、経済的メリットと環境低下のデメリットを明確にして、意思決定の判断材料を提供するものでなければならない。大切な二本の柱は、科学性、民主性。科学的な調査に基づいて環境への影響予測を立て、その合理性と妥当性を検証し、結果を公表する。その上で、地域住民と利害関係者の意見を聞き、検討する。環境影響が著しい場合には事業を行わないという選択肢も必要。
アメリカでは
1969年12月に国家環境政策法(National Environ-ment Policy Act, NEPA)が制定され、1970年1月から施行された。これによると環境に影響を与える国の行為(法律、勧告、提案など)には、詳細な環境報告が義務づけられ、開発が環境に大きな影響を与える事を未然に防止することを目的としている。
日本では
1960年代に公害問題が続発したことから、1972年に「各種公共事業に係る環境保全対策について」が閣議了解され、1981年「環境影響評価法案」が国会提出されたが、産業界からの反対が強くて何回も流れ、1983年にとうとう廃案になってしまった。1997年になってやっと「環境影響評価法」が制定され1999年に施行されたが、日本では「事業を行わない」という選択肢はないので「"あわせ"メント」になってしまう。又、アセスの有効期限も決められていないため、状況が激変しているにも係らず30~40年も前のアセスのまま事業が強行されているところがいくつもある。
ダムの環境アセス*の問題点について
(*1978年に建設省の技術指針案が出され、1985年に八ツ場ダム、湯西川ダムの評価書が出された)
八ツ場ダムのアセス書はわずか75ページ。
1,事業の目的および概要、
2,地域の概要、
3,環境の現状、
4,環境の予測と評価、
5,環境保全対策
となっており、肝心の4、5章の部分は11ページ、分量として15%にすぎない。
例えば水質について、調査地点は2ヵ所だけ、方法、時期、結果の説明もなく、健康について環境基準内であるという数行のまとめ。
影響予測と評価について、データが少なすぎるし、下流のみの予測しかなく、予測の根拠も示されないまま水質への影響は少ないというわずか0.5ページの結論になっており、上流に住む約3万人の生活やダム湖の水質についても触れないままだ。
保全対策についても、「水質保全に配慮し貯水池の水質監視を行う。」と2行だけで、変化が生じた時の原因究明の手法や対策もない。地形・地質についても、ダムサイトの地質には3行程度しか触れておらず、失われる部分の影響にも触れないまま、「地形・地質への影響は少ない」とまとめ、保全は「適切な対策を実施、地形の保全につとめる」と具体的な内容を書かないで、4行で終わらせている。植物、動物についてのデータは調査年月日もない。
続けて湯西川ダム、南摩ダムのアセスについても問題点の指摘があり、現地調査も文献調査も不十分で、環境や生物への影響予測は科学的ではなく、評価、保全対策も合理的でないことが具体的に語られた。ダムによって、自然とともに地域の文化・生活も失われるが、これに対する視点もまったくない。はじめに「影響はほとんどない」という結論があって作文された環境アセスメントは、アセスの名に値しないものだ。
最後に報告された「荒瀬ダム撤去による河川、干潟の再生」(環境カウンセラー・つる詳子さん)は、ダムの撤去で川がどう変化し、地域の人々がどう生き返ったかを語る、大変展望の持てる元気の出る話であったが、これについては、JNEPニュースでの連載もあり、又パンフレット作成の計画もあるので、そちらに譲りたい。
温暖化防止、脱原発、生物多様性維持は私達の生活と子どもたちの未来に係って今一番喫緊の課題。これ以上国策による悲惨な公害被害者を出さないためにも引き続き学び、それを力にがんばっていきたい。
◆ 公害・地球懇が政府のCOP17対応転換と
国内政策強化を求める声明発表
○ 公害・地球環境問題懇談会 政策委員会 ○
COP17(気候変動枠組条約第17回締約国会議)では、世界と先進国の両方の対策強化が決まった。先進国については2013年以降の削減義務を強化することとなった。しかし、日本政府は義務強化を拒否している。
条約会議での政府の消極姿勢は、国内対策消極派の圧力と、原発依存の国内対策破綻の両面がある。日本政府は国内でエネルギー政策見直しを議論し夏に決定する予定で、温暖化政策の見直しについても議論を始めたが、脱原発について曖昧なまま原発再稼働をめざすような動きがある。省エネ・自然エネルギー・脱石炭の対策抜本強化とそれを促す政策議論は停滞したままである。
公害・地球懇は、「25%削減」を京都議定書の次期目標として受け入れること、脱原発の方針の下で、国内政策で「25%削減」を法定目標化し、大口排出源削減義務化、自然エネルギー電力を送電網に優先接続し、採算のとれる価格で全量買い取る制度など目標達成を保証する制度の速やかな導入を求める声明を発表した。
声 明
2012年2月8日
公害・地球環境問題懇談会
政府のCOP17対応転換と国内政策強化を求める声明
日本は2020年25%削減目標を掲げ、脱原発で実現するため国内政策の抜本的転換を
国際制度を拒否する日本政府の態度
COP17(気候変動枠組条約第17回締約国会議)は2011年11月28日から12月9日まで(実際は11日まで)南アフリカのダーバンで開かれた。今回は日本・カナダ・ロシアが先進国の2013年以降の削減義務に反対したが、EUや他の西欧諸国はこれら3ヵ国が加わらなくても目標達成をする意思で交渉をリード、被害を受ける島嶼国やアフリカ諸国と共に先進国・新興国に対策を迫り、合意に至った。京都議定書改正や各国の具体的目標を決めるには至らないものの、2つの重要な方針が決まった。
まず、先進国は京都議定書で2013年以降も削減義務を持つことを決め、各国の具体的削減目標は2012年末の条約会議で決定することに合意した。
また、現在削減義務を持たない途上国及び京都議定書に加入していない米国を含む排出削減等について議定書、法的文書あるいは法的決定について2015年までに合意し、2020年に発効させることが合意された。
いずれも危険な気候変動の悪影響を回避し、気温上昇を産業革命前から2℃未満に止める行動として遅すぎ不十分だが、国際社会がそのための前進をしていることについては評価できる。
日本政府は「すべての国の参加する一つの制度」に固執、先進国だけが削減義務をもつ今の京都議定書では2013年以降の削減義務を拒否すると主張した。先進国の責任を棚上げし、世界が気候変動の悪影響防止に向けて合意し行動することに背を向けたことは、極めて大きな問題である。
脱原発、大口排出源削減義務化、自然エネルギー電力買取など、国内政策抜本転換を
この消極姿勢は、国内対策消極派の圧力と、原発依存の国内対策の破綻の両面がある。
民主党はマニフェストで「25%削減」(2020年に温室効果ガスを1990年比で)を国民に約束し、鳩山首相(当時)は国連会議で国際公約した。しかし、政府は「原発が増えるから不要」「業界計画にまかせればよい」として省エネ・自然エネルギー普及・脱石炭を促す政策導入を先送りしてきた。いま、原発事故による被害が底なしに拡大するもとで、脱原発と安全で多様なエネルギー政策への転換は不可欠のものとなっており、原発をCO2排出減の前提とするような主張は、決して許されるものではない。
福島原発事故後、政府も「原発依存度をできる限り減らす」としたが、その方針がぐらついている。一方、自然エネルギー電力固定価格全量買取法が成立したのは前進といえる。日本ではこれまで、電力会社に一定割合の自然エネルギー電力購入を義務づける制度が低かったため自然エネルギー普及を逆に押さえつけてきた。自然エネルギーの発電量をおさえることなく買い取る制度になったことで、自然エネルギーが採算のとれる買取価格・期間を定めれば大 きな飛躍が期待できる。しかし政府は買取価格・期間を決める委員会の過半数を消極派が占める委員案を国会に提出、政府の「やる気」が疑問視されている。大口排出源削減義務化や省エネ・脱石炭の政策にはとくに前進がない。それどころか、政府内では原発増設が不可能になったので25%削減目標を下げる動きがあると伝えられ、中央環境審議会などで、目標を守るためにどう対策を強化し政策を強化するかではなく、目標自体をどうするかの議論が始まっている。
削減目標の放棄や引き下げは地球環境に有害であり、国際的信用も失う。化石燃料輸入を継続して富を引き続き海外に流出させ、かつ温暖化対策による国内グリーン産業の発展、地場産業・中小企業への対策発注、地域・若者にうまれるはずの雇用を失うなど、悪影響は、はかり知れない。
脱原発は温暖化対策と両立する。環境NGOは既に「再稼働なし」2012年脱原発実現で「25%削減」が十分可能としている。温暖化対策は省エネ・自然エネルギー普及・脱石炭を実現する政策導入が不可欠であり、脱原発で「大量エネルギー消費維持」路線と決別するのは、削減目標達成にとって好都合である。しかも、省エネと自然エネルギー普及拡大で、化石燃料・核燃料の輸入が減り、その資金を国内の投資や雇用拡大に使え、日本の経済構造を大きく転換することになる。対策強化は震災復興や雇用拡大とも両立する。
私たちは、日本政府に、先進国の責任、将来世代の生存基盤を守る責任を自覚し、「25%削減」を京都議定書の次期目標として受け入れることを求める。また、脱原発の方針の下で、国内政策で「25%削減」を法定目標化し、大口排出源削減義務化、自然エネルギー電力を送電網に優先接続させ、採算のとれる価格で全量買い取る制度など目標達成を保証する制度の速やかな導入を求める。
◆ 水俣病特措法の申請打ち切りを許さない闘い
○ 水俣病不知火患者会 事務局長 林田 直樹 ○
水俣病特措法は、3年を目途とする時限立法として2010年5月に施行され、折り返し地点を過ぎた現在、毎月、数百人の申請が続き、熊本、鹿児島、新潟の3県合わせての申請者総数は5万人にものぼっています。
これまで国は、幾度となく「年末の申請状況をみて判断する」と事前予告を繰り返し、一方で、残された被害者の存在、対象地域外から急増する申請者も意識しつつ、早期幕引きへむけた動きを強めてきました。
私たちは、12月13日から1週間かけて、熊本県、鹿児島県との交渉、水俣病に関係する九つの沿岸自治体の首長と面会し、現時点で窓口を打ち切るべきではないこと、広報周知徹底の二つを要求しました。なかでも、水俣市に隣接する西川町の津奈木町長や芦北町の竹崎町長からは明確に反対が出され、そのほかの市町村のおいても、少なくとも現時点で受付窓口を締め切ることには問題があるという点で一致を見ました。
緊迫する状況の中で、12月19日、被害者団体8団体が立場の違いを乗り越え、共同声明を出しました。被害者団体をはじめ地元自治体の民意がはっきりと示された瞬間でした。
3日後の22日、環境省は現地入りし、11の被害者団体を個別に意見聴取しました。私たちは、早朝から門前で寺田審議官を50人体制で出迎え、「あたう限りの救済は約束だ」とする看板を持ち込んで交渉に臨みました。それまでの被害者団体や沿岸自治体の考えが示された結果をぶっつけ、厳しくせまりましたが、寺田審議官は黙って聞き置く姿勢に徹し、何ひとつ返答はありませんでした。
一部報道で3月末の受付締め切りが頻繁にささやかれる中、年明け早々の1月15日に2012年度の活動方針を確認するとともに意思統一をはかるうえで、総決起集会を水俣市内でおこないました。当初300人で予定していましたが、会場に入りきれないほど満杯の420人が参加しました。この集会の中で、特措法部会から選出されたばかりの濱廣昭が部会長として決意表明をおこなっています。
国側の動きもあわただしくなり、総決起集会直後の18日には横光環境副大臣が現地入りして被害者団体一同と会しましたが、寺田審議官同様、耳を傾けても明言は避ける姿勢で、「聞き留める」という態度に終始しました。
1月22日、数ヵ月前から計画していた400人大検診を成功させ、この結果を持参して通常国会初日の24日から、環境省交渉をはじめ国会議員要請、議員会館前での宣伝行動など、東京行動に結びつけました。熊本から上京した15名は、そのほとんどが特措法に申請し、東京行動に始めて参加した人たちばかりで、これまでノーモアミナマタ原告として闘ってきた原告らが手本をみせるかたちで行動をともにしました。
実際に行動して、「これまでテレビでは見てきたが、実際上京してみて現実がどうなのかよく理解できた」との感想が出るなど、今後の闘いに確信がもつことができました。
わずか1ヵ月間の間に、政務三役があわただしく現地入りする一連の動きは、最終的に1月29日、細野環境大臣が現地水俣に来ざるをえない状況をつくり、「熟慮して自ら判断する」として持ち帰る格好となりましたが、1週間もたたない2月3日、国は申請受付期限を7月末と公表しました。しかし残された被害者がいる限り、この闘いを止めることはだれにもできません。
国は、水俣病特措法をあえて「第二の政治解決」と位置づけていることから、これ以上の被害者を出させない方向で紛争解決を試みており、その後に意図する公健法上の指定地域解除も視野に入れていることは想像に難くありません。こうした環境行政の巻き返しに対し、最前線で闘う私たち水俣病の運動の真価がまさに問われていると思います。
引き続き、全ての被害者の救済を勝ち取っていく水俣病闘争を御支援ください。
◆ 薬害イレッサ西日本訴訟 控訴審 意見陳述
○ 一審原告ら訴訟代理人 弁護士 中島 晃 ○
2012(平成24)年1月27日
大阪高等裁判所第6民事部 御中

報告会の中島晃弁護団長
(大阪弁護士会:2012.1.27.) |
1.
本件訴訟の控訴審における弁論を終えるにあたり、最後に若干の意見を申し述べます。
最初に結論からいいますと、それは、裁判官が虚心に一審原告らの訴えに耳を傾け、事実と論理にもとづいて、本件について判断を下すのであれば、一審原告らの請求を認容する以外の結論をとることはおよそありえないということです。
そのことについて、少し具体的に言いますと、まず第一に本件医薬品イレッサが2002年7月5日に承認され、7月16日に販売が開始されてから緊急安全性情報が出される10月15日までの3ヵ月間に、イレッサを服用して、間質性肺炎などにより死亡した副作用症例が合計162例に達し、また承認後半年で180例にも及んでいる事実を何よりも重視する必要があります。
3ヵ月間もの短期間に162例、半年で180例もの副作用死亡例が出るというのは、きわめて異常なことです。もし仮に、この期間の副作用死亡例が数例にとどまっていたというのであれば、あるいは、販売開始時の添付文書に重大な副作用として間質性肺炎を記載していただけで足りるという議論が成り立ち得るかもしれません。
しかし、本件はそうではありません。販売開始から短期間に副作用によってこれほど多数の患者が死亡しているのは、およそ信じられない程深刻であり、明らかに非常に異常な事態といわなければなりません。
このことは、イレッサの販売開始にあたって、添付文書に適切な指示・警告を欠いていたこと、すなわち製造物責任法にいう、通常有すべき安全性を欠いており、指示・警告上の欠陥があったことを何よりも雄弁に物語るものです。
2.
もっとも一審被告らは、イレッサの承認販売開始時点では、イレッサによって、間質性肺炎などの副作用死亡例が発生することまでは、予見し得なかったと主張して、予見可能性を否定しています。しかし、この点に関しては、すでに繰り返し主張しているとおり、イレッサ承認前に、イレッサによる間質性肺炎などの副作用死亡例が多数報告されており、こうした死亡例が存在することからいっても、予見可能性がなかったとする一審被告らの弁解は到底成り立ちえないものといわなければなりません。
薬害事件における予見可能性について、国や製薬企業に要求される注意義務がきわめて高度なものであることは、すでにこれまでの多くの裁判例において共通して指摘されてきたことであり、それは製造物責任法上の欠陥の判断にあたっても、当然ふまえるべき原則であり、むしろより一層きびしく要求されていることです。
3.
さらに一審被告国の責任について言いますと、以上述べたとおり、(1)イレッサの販売開始時におけるイレッサの添付文書の記載内容が適切な指示・警告を欠いており、このため短期間に異常なまでに多数の副作用死亡例を発生せしめたこと、また、(2)厚生労働大臣には、薬事法上、不適切な添付文書を排除する権限が付与されていたこと、こうしたことからいえば、(3)厚生労働大臣がこの権限を「適時にかつ適切に行使」しなかったことは、著しく合理性を欠いていることは明らかです。
このように厚生労働大臣が、添付文書の記載に 関して、上述した規制権限の適時・適切な行使を 怠った結果、先に述べた異常で深刻な被害を招いたのです。
したがって、一審被告国に、国家賠償法上の責任があることもまた明らかです。
4.
いまから、100年余り前、足尾鉱毒事件で、足尾銅山を発生源とする鉱毒対策として、明治政府は、谷中村を渡良瀬川の遊水池として水没させることを計画し、田中正造や村民の激しい抵抗にもかかわらず、谷中村は強制廃村に追い込まれました。この問題に対して、荒畑寒村は、「谷中村滅亡史」(1907年)をあらわし、そのなかで次のように述べています。
嗚呼(ああ)、谷中村は終(つひ)に滅亡せり
しかれども吾人は信ず
たとひ谷中村にして滅び終るとも、田中翁にして死するとも
将(はた)また村民悉(ことごと)く四方に離散し去るとも
宇宙に歴史あり、人類に言語あるの間
断じて亡びず、厳として存在する事実のあることを…

結審後の原告、弁護団、支援会議 |
5.
この荒畑寒村の悲痛な叫びをうけとめて、こうした過去の歴史の負の遺産を克服するために、私たちは戦後、薬害事件や公害事件で、何よりも人間の生命・健康が最大限に重視されるべきであり、生命の尊厳の確保と侵害された人権の回復に向けて、懸命の努力を積み重ねてきました。裁判所もまた、こうした被害者の懸命な努力によくこたえて、被害者の救済に向けて積極的な役割を果してきました。
私自身、薬害スモンに始まり、水俣病公害、薬害ヤコブなどの裁判にかかわるなかで、こうした司法の営みに参加してきました。しかし、昨年11月の薬害イレッサ訴訟の東京高裁判決は、これまで営々として積み重ねられてきた司法の営みを一挙につき崩すものでした。もとより、こうした歴史の歯車を逆転させるような司法の判断は断じて許されてはなりません。
それは、荒畑寒村が100年余り前に、「谷中村滅亡史」に書いた悲痛な叫びを再現させるものといっても過言ではありません。その意味で、薬害イレッサ訴訟は、この国の有り様を問うものです。
裁判所がこの事件で、生命の尊厳が何よりも重視されるべきことを明確に示して、被害者の期待にこたえる判決を下されることを強く望んで、私の意見の結びとします。
以 上
◆ 最終段階の正念場を迎える高尾山天狗裁判
○ 高尾山天狗裁判弁護団 団長/弁護士 鈴木 堯博 ○
事実審の裁判所として最後の判決が出る年

原告団総会で基調報告する鈴木弁護団長
(2012.2.5. ) |
今年は高尾山天狗裁判提訴以来12年目に当たります。いよいよ、高尾山天狗裁判にとっては最終段階の正念場を迎えます。
高尾山圏央道の事業認定取消訴訟は控訴審(東京高裁民事第4民事部)に係属していますが、この裁判は、高尾山天狗裁判としては事実審理をする最後の裁判です。昨年末までに証拠調べを終えたので、今年3月1日に最終弁論が行われて結審します。今夏から今秋にかけて東京高裁控訴審判決が言い渡されるはずです。また、もう一つの裁判である、一審が八王子支部に係属した高尾山トンネル工事差止民事訴訟の最高裁判決も、比較的近いうちに言い渡される可能性があります。
この二つの判決、とくに高裁判決では、何としてでも国交省の圏央道建設事業の誤りを認めさせなければなりません。
これまでの裁判闘争の到達点と成果
これまでの裁判闘争の到達点を簡単に振り返ってみましょう。
私たちは、これまでの高尾山天狗裁判のたたかいで、圏央道建設にまい進する国交省の行政姿勢の誤りを徹底的に追及してきました。
その結果、次の成果を上げました。
第1は、高尾山とその周辺地域の貴重な自然環境を破壊するムダな公共事業の実態を明らかにしたことです。
第2は、国交省の費用便益分析をめぐる欺瞞性を暴露したことです。すなわち、国交省が費用便益分析をコンサルタント会社に丸投げして、そのデータも受け取っていないなどと平然と言う国交省の無責任性を暴露しました。それは、とりもなおさず、国交省の費用便益分析は検証不可能な非科学的なものであることを白日のもとにさらしました。
第3は、高尾山を守るたたかいの運動面でみても、大きな発展を遂げました。
原告団とともに闘う仲間が力強く結集しました。そして、多くの専門家証人が法廷に出てもらったことで、科学者・研究者との連携協力関係が拡大しました。それとともに、環境を破壊するムダな公共事業に批判的な世論・マスコミの大きな支持を得ました。
たたかいを大きく前進させよう
しかし、これまでの判決は、残念ながらいずれも敗訴判決でした。
皆さんはそのことをどのように考えておられるでしょうか。裁判は無駄なことだったのでしょうか。絶対にノーです。
福島第一原発の事故により大変深刻な事態が続いています。原発訴訟についてもいくつもの判決が出ていますが、判決では原発の操業を止めることはできませんでした。だからといってこれまでの原発訴訟が無駄だったとは決して思いません。原発訴訟の審理を通じて原発の危険性を世の中の人々に明らかにし、司法が行政に対するチェック機能を果たしていないことを明らかにして、今や司法に猛省を促しています。これらの訴訟は社会をよくするために大きなインパクトを持っています。たとえ敗訴判決であっても、いずれは勝利へのステップとしなければなりません。
高尾山天狗裁判の最後の事実審理の判決では、今度こそ何とかして私たちの納得できるような良い判決をとるために全力を上げたいと思います。私たちが3月の結審に向けて、裁判官の良心を揺り動かすような最終準備書面を作成し、高尾山天狗裁判に対する世論の強力な支援を大きく盛り上げることは絶対に必要です。
皆さん! 高尾山天狗裁判でこれまでの困難なたたかいを切り開いてきたことに確信をもち、東日本大震災・原発事故の教訓を生かして、今年も全力を尽くして、そして楽しく、たたかいを大きく前進させましょう。
◆ JNEP情報2012年1-2月 ◆
◇ 水俣病被害者救済策、政府が7月末で打ち切り方針
水俣病被害者が水俣病被害者救済特別措置法での救済措置を申請する期限について、細野環境大臣は7月31日に申請受け付けを締め切る方針を表明した。
水俣、新潟とも、被害者団体から、患者の切り捨てにあたると厳しい反対意見が出されている。
不知火患者会の大石会長は「すべての被害者を救済するという水俣病被害者救済法の精神を踏みにじるもの。不知火海沿岸地域の住民健康調査が先決であり、期限を切って幕引きをするべきではない。被害者がいる限り受け付けるべき」と述べている。水俣病被害者の会全国連絡会の中山事務局長も、水俣病の症状である感覚障害は、本人にとっては「日常のこと」になっているので、他からの働きかけが必要、それにより症状を知って初めて申請につながる、住民健康調査が最大の周知方法だ、として行政による大規模な健康調査の実施を求めた。
新潟水俣病共闘会議議長の中村弁護士は「期限を切れば取り残される人が出る」、新潟水俣病阿賀野患者会山崎会長も「到底、納得できない」と反発している。
泉田新潟県知事は、「期限が設けられたことは非常に残念。(中略)現在も多くの申請が続いており、また、地域の偏見・差別の解消のための様々な取組により、ようやく声をあげられるような状況ができてきている中で、締め切るべきではないとの考えに変わりはありません。」とのコメントを発表した。
◇ ドイツ、温室効果ガス2010年25%削減を実現
脱減発の下に地球温暖化対策を進めるドイツは、2010年に温室効果ガス排出量を1990年比25%削減した(約2.95億トンの削減)。ドイツの削減義務(2008-12年)は1990年比21%であり、目標を超過達成する見込みである。対策の柱のひとつである自然エネルギーの普及では、温室効果ガスを約1.20億トン(CO2換算)を削減するとともに、同関連産業で雇用を創出し、雇用36.7万人を得た。
レトゲン環境大臣は、「私たちは、経済成長と温暖化防止対策が両立可能であることを示している。2020年までに40%の温室効果ガス削減を目指す。温暖化防止政策によって、経済成長、技術革新、雇用創出も促進することも断言できる」とコメントした(コメントの訳は環境情報普及センター)。
◆ 公害・地球懇 活動日誌 ◆
2012年1月
6日(金) |
◇東京地評旗びらき
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◇東電本店前定例アクション |
12日(木) |
◇温暖化対策推進委員会
◇全労連旗びらき |
13日(金) |
◇COP17報告集会
◇公害団体合同旗びらき |
20日(火) |
◇JNEP運営委員事務局会議
◇全農林旗びらき |
22日(日) |
◇シンポジウム「清流にダムはいらない」 |
24-25日
(火-水) |
◇水俣病特別措置法の申請打ち切りを許さない東京行動 |
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