〜世界の趨勢に抗う日本政府の政策転換を求める〜 COP26を終えて
2021年11月19日
公害・地球環境問題懇談会
 英国北部のグラスゴーで開催されていた「COP26」(国連気候変動枠組み条約第26回締結国会 議)が当初会期を一日延長して13日夜(現地時間)に閉幕となった。
 報道などによれば、
・世界の平均気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する
・2022年末までに、30年の各国の温室効果ガス排出削減目標を強化する
・排出削減対策が取られていない石炭火力の段階的削減へ努力を促進する
・先進国が途上国に約束した20年までの資金支援、年1000億ドル(約11兆円)について、 25年までに着実に実施し倍増させる などの合意がされたとしている。 また期間中には下記のような声明なども発表されている。
11/2「グローバル・メタンガス・プレッジ」【米中合意】
11/3脱石炭連盟(PPCA)【計165の国・自治体・企業が参加】  
11/4「石炭からクリーンパワーへの移行に関する声明」
11/10、ガソリン車の新車販売停止を目指す共同声明
 しかし、全体的に見ればパリ協定で合意された1.5度未満を目指す目標と実効性のある行動計 画にはほど遠く、COP26に失望の声が上がっていることは当然の世界の声である。
  とりわけインドや中国などの反対で石炭火力の段階的廃止提案が段階的削減に留まったことは、 合意文書に初めて石炭火力削減が盛り込まれたことだけでは評価できるものではない。
 また、議論された国際的クレジットの取引について、京都議定書時代の残ったクレジットが一部 使えるようになり、その分実質的排出削減が減るおそれがあり、失望の指摘を免れない。来年の COP27に向けて、【1.5度未満を目指す削減目標の見直し・強化が要請されて目標を引き上げるこ とが合意されたこと】、【「損失・被害」で一つの章を設けた合意がされたこと】、【パリ協定 のルールブックが完成したこと】などは前向きな動きとして歓迎したい。
  このような合意や経緯の中で、日本政府はこじつけて石炭火力維持を表明し世界の流れに真っ 向から背を向けることになった。恒例となった化石賞受賞は当然の帰結であるが、米中が共同宣 言(気候変動対策の強化)を発信したことからしても、このまま推移すれば日本は世界の流れか ら離反するだけでなく、世界の気候変動対策の桎梏となりかねない。  現状の日本の温暖化対策では、2050年の再エネ電力比率は50〜60%しかなく、脱炭素電源とし ては「原子力」「化石+CCUS」「水素・アンモニア発電」を活用するとしており、更に最悪なの は、原子力発電の寿命の60年への延長や小型モジュール炉(SMR)など次世代炉の新増設が計画さ れており、技術が未成熟のCCS・CCUS(二酸化炭素を回収し地下に埋めること)を利用することが 目論まれている。実際にはこれらの回収プラントの実績は世界の排出の0.02%未満でほとんどが 石油採掘に使用されており、脱炭素の切り札として水素を褐炭から作り輸入することも視野に入 れている。
  日本政府は、前記のような政策に執着せず、COP26の合意事項に則って、まずは石炭火力全廃 の方針を明確にし、未確立の技術開発などではなく、国内政策の大胆で抜本的な政策転換に踏み 切るべきである。
 また、福島原発事故の当事者国として、温暖化対策を名目とした原子力発電の固執から脱却す べきである。