2020年全国公害被害者総行動アピール

 
 
 

2020年全国公害被害者総行動アピール

 1976年6月、公害被害者は第1回全国公害被害者総行動デーを展開しました。当時、公害のたたかいは厳しい逆風にさらされていました。財界・政府から「公害は終わった」と喧伝され、組織的・系統的な攻撃が加えられていました。全国各地の公害被害者が立ち上がり、連帯して財界・政府に対する反撃の狼煙を上げたのです。以来毎年、環境大臣との直接交渉や各省庁・加害企業・企業連合体との一斉交渉などをもち、情勢を切り拓いてきました。

 利潤追求を優先させて、国民の生命、健康、自然環境を蔑ろにする企業と行政の姿勢は当時も今も変わりません。公害被害者は連帯して財界と政府に立ち向かっています。

公害の原点・水俣病は1956年5月の公式確認から64年が経過しました。熊本、新潟、大阪、東京の各地裁で被害者を切り捨てる政府と対決し、ノーモア・ミナマタ国賠第2次訴訟をたたかっています。大気汚染公害患者は、国の医療費救済制度の創設等を求める運動を長年取り組んできました。2019年2月には公害等調整委員会に公害調停を申請し、公害患者の医療費救済制度を国が創設し、トヨタ、日産、三菱、マツダ等のメーカーが救済制度につき相応の財源負担をすることなどを求めて審理を進めています。基地爆音公害は、米軍機や自衛隊機による爆音被害が続き、さらに事故や落下物が頻発して周辺住民の生活と命が脅かされています。カネミ油症被害は事件発生から半世紀を超えた今も多くの被害者(米ぬか油を直接に摂取した被害者の次世代や次々世代にも被害が及ぶ)が、良心的な医師の努力でさらに被害実態の解明がすすんでいますが、未認定のままです。

最大最悪の公害である福島第一原発事故から9年が経ちました。集団訴訟は、全国各地の裁判所に約30件が提起され、訴訟をたたかう被害者の総数は1万2000人をこえるといわれます。地裁で14件、高裁で2件が判決にいたっています。政府と電力会社は、原発再稼働を推進し、避難者の帰還強要政策を推し進め、原発被害者の切り捨てをはかろうとしています。これに立ち向かい、政府や電力会社の策動を許さない広汎な世論と団結し、被害者の要求を堅持して、全面解決をめざす努力が積み重ねられています。

建設アスベスト問題は各地の訴訟で連戦連勝です。国の責任を認めた判決は地裁と高裁を合わせて連続12度に及びます。一人親方に対する国の責任も4高裁、1地裁で断罪されています。建材メーカーの企業責任も2地裁、4高裁で認められました。もはや、国の責任は不動のものとなり、被害者救済の流れは確実となっています。救済制度の創設を早期に実現するたたかいがいよいよ大詰めです。

諫早湾干拓事業問題は、「走り出したら止まらない公共事業」の典型です。この干拓事業は営農事業として欠陥公共事業というべきです。河川水害を防止できるものでもありません。自然環境を破壊し、漁民から生業を奪う、無駄で有害な公共事業です。潮受け堤防の開門判決が2010年に確定してから9年余りたった今も行政はこの確定判決に従おうとしません。全国的な課題として取り組まねばならないたたかいです。

さらにわたしたちは、イタイイタイ病や川辺川利水問題、水害被災、薬害などの解決に取組み、公害被害者の切り捨てや環境破壊を許さず、次世代にきれいな環境を引き継ぐため決意をあらたに、国民の皆さんと団結して前進することを訴えます。

2020年6月

全国公害被害者総行動実行委員会