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「福島第一原子力発電所の事故を通して、世界のエネルギー・環境問題を考える」
日弁連シンポ
弁護士 後藤富和
6月11日、シンポジウム「福島第一原子力発電所の事故を通して、世界のエネルギー・環境問題を考える」主催:関東弁護士会連合会、日本弁護士連合会(日弁連会館クレオ)に参加しました。会場は椅子が足りず追加の椅子を出しても立ち見が多数出る大盛況でした。
冒頭、関弁連公害環境委員会委員長が、震災後の情報公開において東電や政府が正しい情報を流しているのかは疑問であり、誤った情報を流しているマスコミにも反省を促す。今回のシンポは、原発反対の立場だけでなく、原発推進の立場の方もパネリストになってもらっているので、激論を戦わせてもらいたいと主催者挨拶をした。
以下パネルディスカッションにおけるパネリストの発言要旨
●後藤政志(元東芝原子炉格納容器設計技師。工学博士)
詭弁を弄して安全と言って来たのが日本。津波が焦点になっているが、津波はきっかけにすぎず真の原因ではない。制御棒は、地震以外でもメカニカルな原因から脱落することはある。東電はこれまで隠していたが、1978年以降制御棒脱落事故は頻発している。
シビアアクシデント(過酷事故)の対応はシステムが破綻し制御不能となった後なのでいわば敗戦処理。アクシデントマネージメントは有効か?→電源車を持ってくるなど、確実でないものをいくら追加しても安全ではない!
炉心溶融の段階で、安全かどうかということを議論すること自体がおかしい。安全なわけがない。水を入れなかったらチャイナシンドローム(どこまでも侵食)、水を入れたら水素爆発。どっちを選択しても危険、汚染が広がる。そこで、ベントして放射能を外に出している。放射能を閉じ込めるから原発は安全としてきたのに、ベントで放射能を出している。
福島原発事故はなぜ起きたか
・地震、津波はきっかけ。そこに機器のトラブルと人為的ミス
・自然環境条件設定の間違い
・津波地震対策をしてもシビアアクシデントは起こる
安全の哲学なき原子力界
・原子力安全委員会の責任重大
・学会・産業界が「安全神話」を構築
・膨大な宣伝費を使いマスコミ操作
・確率論的安全評価の間違い
安全とは何か
・冷却できている?→何も把握できていないのでは?
・単に対応がまずい訳ではない
原子力はなぜ危険か。多重防護が成立しないと制御不能となる。今度大規模な原発事故が起きれば日本は壊滅する 。これまでの膨大な原子力予算を他の分野にシフトすれば原発でなくても十分にやれる。
●林勉(元日立製作所原子力事業部長、エネルギー問題に発言する会代表幹事)
原子炉の固有の安全性は自己制御性(原子炉において、外部からの制御に依らず、核分裂反応の進行を安定させる自然の特性)。日本では40年の運転実績があり、その間、大きな事故を起こしていない。
日本は石油がないために第二次大戦に突入した。原子力はわが国にとって、国防、外交上最重要課題。原子力は発電コストが安い。自然エネルギーでコストが上がるとわが国の経済はもっと低迷する。
原子力に不安があるのなら不安がないようにすれば良いだけ。これからも原発を着実に伸ばしていかなければならない。原発は日本にとって大変な財産であり、これをやめるなんて選択はできない。
●後藤氏
本質安全が成立しないのが原発である。
●林氏
きちんと管理しなければ原子力は危険であることは間違いないが、毎月一度きちんと確認しているし、一つがダメならもう一つが働くようにしている。今回の事故でも実際にはバックアップの電源が稼働している。
●飯田哲也(NPO法人環境エネルギー政策研究所所長)
林さんの話はあたかもこの事故がなかったかのようですね。我々国民は見ているんですよ。電源車を持って行ってもつなげなかった。「原子力むら」の中でまじめに安全を考えている人がいないなかでなぜ安全と言いきれるのか。
原発はどこまでいっても事故の確立をゼロにできない。なら、やめるべきじゃないか。廃棄物の処理も半永久に続く。事故の保険とか廃棄物の保管なども盛り込まないとコストをあげたことにならない。
●林氏
安全思想の見直しは日本だけの問題ではなく世界の問題である。確率の設定を見直せば済む話。
●後藤氏
例えば、自分の子どもが道路に飛び出そうとする時、確立的にはこうだからって言いますか?そんなもので人の命は救えないんですよ。
●飯田氏
福島の事故は、日本近代史の第三の転換期(明治維新、太平洋戦争) 。今の状況は太平洋戦争中と同じ状態。
浜岡を止めた菅首相の英断の後、すかさず閣僚が他の原発は止めないと発言し、電力業界とマスコミがその直後から電気が足りないキャンペーンを始めた。
本当は電力不足にならないのに嘘の宣伝がなされている。
新増設の凍結、核燃料サイクルの凍結、既設炉の総点検、リーマンショック以降の状況をみれば、原発が化石燃料削減時の経済対策になんの役に立っていないことは明らか。
自然エネルギーこそ、今後の世界経済を動かす。自然エネルギーは第4の革命。急成長する自然エネルギーの世界市場では、日本は完全に負け組になっている。自然エネルギーと原発とどっちが現実的か。原発事故の確立をゼロにできるのか。これから数千年間核廃棄物を安全に保管し続けることができるのか。
風力やバイオマスのコストは今や火力などと同レベル。太陽光はまだ高いが年10%の割合でコストが下がってきている。ましてや原発事故のリスクを保険で賄うことを電気料金にきちんと反映させると原発のコストの方が太陽光よりもずっと高い。再生可能エネルギー100%が現実の可能性となってきている。
●小野章昌(コンサルタント、元三井物産原子燃料部長)
再生可能エネルギーはダメ、原発によるべき。将来的には原発を100基にまで増設して日本の電力の70% を原発で賄わなければならない。
●飯田氏
小野氏の議論は現実に基づいていない。最大の勘違いは自然エネルギーは密度が低いという点にあり、その点をあまりにネガティブにみすぎている。自然エネルギーを増やすと様々な課題が出てくるが、それを克服して行く過程でコストも下がってくる。
●千葉恒久(弁護士)
環境先進国ドイツを紹介
チェルノブイリ事故を受け、エネルギー・ヴェンデ(転換)、大規模発電→地域分散型の小規模発電、供給側→消費側(省エネ、高効率化)、火力・原子力→再生可能エネルギー、再生可能エネルギー補助政策
アーヘン・モデル
1994年、ドイツのアーヘン市議会が可決、新エネルギー(太陽光と風力が対象)の買電価格を引き上げ、長期間保障する
再生可能エネルギー法
最低買取価格、優先的買取請求権など、爆発的に再生可能エネルギー拡大
その効果、温室効果ガス排出削減、直接的な経済効果(雇用拡大など)
エネルギー転換における3つのキーワード
@予測を超えるスピード(現実の再生可能エネルギー発電量は予測を超えてダイナミックに伸びていくだろう)
A自治体のエネルギー政策
B市民の主体的な参加
●松村敏弘(東京大学社会科学研究所教授)
省エネも再生可能エネルギー導入のどちらも重要。現在ある知恵だけでダメと決めつけるのではなく知恵を集めることが重要。スマートコミュニティ。
多様なエネルギーを適切に使い分けてコストを下げる。
省エネが主役
2030年までに太陽光を40倍にするというのが現実的なライン。太陽光発電の問題は土地がないことではなく(日本には山手線内の50倍の耕作放棄地がある)、コストにある。ただパネル自体の費用は問題ではなく系統対策費用が問題。
太陽光だけでなく、バイオマスや地熱など多様な電源を。環境保護の人たちは嫌うけど、既存のダム式水力発電も活用する余地あり。
電力業界が大気中海中に捨てている熱エネルギー(全体の4-50%を捨てている)を回収して発電にいかすこと。
後ろ向きの人の発想:地に足のつかない怪しげな議論
スマートメーター
イチかゼロではなく冷静な粘り強い議論を。
●後藤氏
原子力の最大の目的であった安定供給という点が失われた以上、原発の安全性の問題をおいても原発は問題。自然エネルギーの不安定さと違って同時期大規模な不安定さを抱えている。
また、防衛上もテロやミサイル一発で原発が狙われれば国がなくなる危険。国の安全上も原発はやめるべきだ。
●林氏
原子力は40年かけて30%の電力を賄うまでになった日本国の資産だ。これをなくしていいものか。資産は活用すべきである。
今回の広域放射線被爆は、非常に低線量であり、100ミリシーベルト程度では、健康に対する影響は認められない。100-250ミリシーベルトでもガンの発生確率は8%しか上昇せず、これは因子の影響40%に比べると取るに足らない数値。
●飯田氏
100ミリシーベルトで影響がないなど、こういう場で堂々と発言すべきではない。放射線は、量にかかわらず遺伝子に何らかの影響は与えるのは間違いない。せいぜい、影響はわかっていないというに留めるべきが文明国の科学者としての態度だ。
原発に頼らなければ日本の経済はダメになるというのはオールドパラダイム。日本の産業が衰退してきたのはエネルギーの問題ではなく、製品に付加価値をつけるという努力を怠ったため。高付加価値の産業にシフトすることが重要。現に今や日本のGDPを支えているのは高付加価値を産まない重工業ではなく高付加価値を産む産業である。
●小野氏
ドイツは17人の委員会で脱原発を決めたが、この中に原発業界の人は一人しか入っていなかったことが問題。あと4、5年したらドイツが失敗することは分かっているんだから、その失敗を見て日本の政策を決めてもいい。
●千葉氏
ドイツが脱原発を決めたのは正確には今回ではなく2000年である。脱原発を決めた時、当時の首相は「原発はドイツの社会が受け入れない」と言った。原発を受け入れるかどうかは、持続可能性と責任。
技術者が安全云々を主張するのも間違いではないが、国民が受け入れるかどうかという視点も重要ではないか。当時のドイツと比べて、コストの面や固定価格買い取り制度などのツールの充実の面で今の日本は原発から再生可能エネルギーにシフトする環境に恵まれている。
●松村氏
太陽光サーチャージについて不満を持つ市民もいる。しかし、コストの面からだけでダメだというのでは前に進まない。といっても、理念だけでコストを度外視するのもダメ。両方の視点が大事なんじゃないか。 (以上)
私のコメント
原発を推進したい立場の人は、原発の安全性やその他のリスクについては、対策をとれば事故は防げる、対策をとるから安全と力説しますが、再生可能エネルギーになると、コストが高いとか、安定しないなどとして、だから自然エネルギーではなく原発によるべきだと主張します。
原発の安全性については対策をとるから大丈夫というのに、再生可能エネルギーについては、コストをどうやったら下げられるかなどの対策を検討することもなくダメと決めつけます。しかも、原発推進派の学者は、原発事故を受けても、そのような事実がなかったかのように原発は安全、再生可能エネルギーはダメと発言し、原発を推進していました。市民の感覚からするとかなりのズレを感じました。
この期に及んでも「安全」を連呼し、今回の事故を電源が確保できないという想定外の事象だった。今後は想定するので安全だと繰り返す言葉には説得力はなく、中国の経済成長などを脅威と煽り、日本が国際社会で中国に勝っていくためには原発が必要と繰り返す、その言葉が、原発事故を真摯に反省している東芝の元技師の発言と比較してあまりに命を軽視しているように感じました。
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