公共事業      
  八ツ場ダム―整備計画はゼロから 
20120204
   
八ツ場ダム―整備計画はゼロから
朝日新聞社説 2月4日付
 大型公共事業の見直しの象徴で、民主党マニフェストの柱の一つでもあった八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の問題が、新たな段階に入った。
 政府・民主党内で賛否が対立したダム本体の工事について、政府は新年度予算案に関連費用を盛り込み、事業継続を打ち出した。
 その際、官房長官の裁定として、ダムの予定地がある吾妻(あがつま)川を含む利根川水系の整備計画を早急に作ることになった。
 本来、ダムの必要性は整備計画をまとめる過程で判断する。国土交通省の関東地方整備局は06年末に整備計画を作り始めたが、09年夏の政権交代で作業が中断。その後、全国のダム見直しの一つとして八ツ場ダムの是非が検証され、関東地整が昨年秋、「八ツ場ダムを含む対策が最も安上がり」との結論を出した経緯がある。
 だからと言って、ダム本体の工事を後押しするような拙速な整備計画作りは許されない。
 作業の中断まで、関東地整は「50年に1度の洪水に備える」との前提に立っていた。ところが、八ツ場ダムの検証作業では「70〜80年に1度の洪水」に変更した。より大規模な洪水に備えることになり、ダムの必要性が押し上げられた。
 前提を変えたのだから、整備計画作りはゼロから始めるべきだ。変更の理由について、関東地整は「利根川が流れる首都圏の重要性を考えた」と説明するが、そのぶん対策に時間とコストがかかる。整備計画が想定する20〜30年での完了が可能なのか、疑問が生じる。
 まずは「70〜80年に1度の洪水」という前提が妥当か、検証する必要がある。官房長官裁定でも求められたポイントだ。
 計画作りでは、ダム批判派をまじえた議論が欠かせない。関東地整に置かれた有識者会議はメンバーを一新すべきだ。時間的に難しいなら、八ツ場ダムに反対する学者や市民団体が参加する討論会が不可欠だ。
 公聴会の開催やパブリックコメントの募集では、「聞いただけ」に終わりかねない。賛否の意見が直接ぶつかりあってこそ議論が深まる。
 関東地整が「最も安上がり」と結論づけた「八ツ場ダムを含む対策」も、八ツ場ダム以外に調節池や堤防の整備、河道の掘削が必要で、総事業費は8千億円を超える。
 財政難が深刻さを増すなか、優先すべき対策は何か。八ツ場ダムは本当に必要か。利根川の整備計画作りを通じて、突き詰めなければならない。 
  辺野古アセスを発送 政府、抗議で手渡し断念 
20101220
   
防衛省がアセス評価書を発送 沖縄県受理へ
2011/12/27 02:00 【共同通信】
 防衛省は26日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書を沖縄県庁に発送した。27日にも県庁に到着し、受理される見通しだ。
 ただ県庁と周辺では26日に続いて住民団体が提出を阻止しようと抗議活動を予定しており、手続きをめぐって混乱も予想される。
 評価書はアセス手続きの最終段階。提出後、県の意見書返送を経て来年6月ごろまでにはアセスが完了する。しかし代替施設着工には知事の埋め立て許可が必要で、沖縄の世論が反発する中の今回の「強行」が知事の判断に影響する可能性もある。

辺野古アセス評価書、沖縄県側に郵送 27日受理見通し
朝日新聞2011年12月27日3時1分
 防衛省は26日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の沖縄県名護市辺野古への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書を沖縄県に郵送した。27日に県側に受理される見通しで、提出が完了する。郵送は極めて異例で、沖縄側の反発も予想される。
 評価書は約7千ページ。提出後、知事は埋め立て部分は90日以内、それ以外は45日以内に意見書を出し、公告・縦覧などを経て手続きが終わる。これまでの手続きのうち、方法書や準備書の提出時には沖縄防衛局職員が県庁まで持参していた。だが、26日朝から提出を阻止しようと市民団体が県庁前に集まっているため、首相官邸と防衛省の指示を受けて郵送に切り替えた。
 藤村修官房長官は26日の記者会見で「事務レベルで防衛局と県が調整している」と、事務手続きという認識を強調。そのうえで、仲井真弘多(ひろかず)県知事が24日に「県も行政機関であり、関連する法令にのっとってやる以外ない」と黙認姿勢を示したことを「知事の発言は重要だ」と評価した。

普天間問題:辺野古アセスを発送 政府、抗議で手渡し断念
毎日新聞 2011年12月27日 2時30分(最終更新 12月27日 2時55分)
 防衛省は26日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、同県名護市辺野古への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書を沖縄県庁に発送した。当初は沖縄防衛局の職員が持参する予定だったが、移設に反対する市民団体が県庁周辺を取り囲み、混乱を避けるため、送付に切り替えた。27日にも県庁に届き、受理される見通しだ。
 那覇市の沖縄県庁には26日早朝から通常業務が終了する午後5時15分まで、評価書提出断念を求める労組や市民団体のメンバーら約100人が詰めかけた。27日も「提出断念を求める最大の山場」(参加者)と位置づけ、抗議活動を予定している。防衛省が手渡しを避け送付の形式をとったことで、反発がさらに広がる可能性もある。
 評価書は約7000ページ。移設工事や代替施設の使用による周辺海域への影響、集落への騒音などを予測し、対策も明記する。来年夏にも普天間に配備される垂直離着陸輸送機「MV22オスプレイ」の騒音問題や、辺野古周辺の海に生息するジュゴンも含めて「環境への影響は限定的だ」と結論付けたとみられる。評価書は県が受理した後、公表される。
 米国政府は辺野古移設を確認した昨年5月の日米合意に基づき、普天間移設の具体的な進展を日本政府に強く要求。野田佳彦首相も11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での日米首脳会談でオバマ米大統領に年内提出の準備を進めると約束しており、日本政府は「対米公約」を優先し、評価書の年内提出に踏み切った。
 仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事は評価書を受け取った飛行場部分について45日以内、埋め立て部分については90日以内に知事意見を提出する。知事は09年10月、ジュゴンの複数年調査を含む追加・補足調査の必要性など延べ60項目計502件について指摘。評価書にどう反映されたかを審査した上で、辺野古移設を事実上不可能とする見解を盛り込む見通しだ。【坂口裕彦、井本義親】

辺野古アセス:苦しまぎれに「提出」 反発承知
毎日新聞 2011年12月27日 2時30分
 防衛省が26日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、沖縄県民の反発を承知のうえで環境影響評価(アセスメント)の評価書提出へ動いたのは、米側から追い込まれた末の「当座しのぎ」といえる。米議会が普天間移設とセットの在沖縄米海兵隊のグアム移転予算に切り込んだのを受け、米政府が普天間問題でさらなる進展を求めてくるのは確実。しかし、次の段階となる公有水面埋め立て申請が可能となる見通しの6月には沖縄県議選が控えるなど、政府は難しい判断を迫られそうだ。
 評価書の年内提出は9月、就任間もない野田佳彦首相がオバマ米大統領から普天間問題の「進展」を求められたのを受け、11月の日米首脳会談で表明した「対米公約」だった。日本政府が普天間移設工事の前提となるアセスの評価書を公約通り、年内に沖縄県に提出することになり、米政府担当者は胸をなで下ろしている。
 野田政権は9月の日米首脳会談後、矢継ぎ早の対応を見せた。10月以降、閣僚が相次いで沖縄県を訪問し、仲井真弘多(ひろかず)知事との信頼関係構築に着手。米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)での戦闘機訓練のグアムへの一部移転や、在日米軍基地で働く米国民間人(軍属)が公務中に起こした事件・事故を巡る日米地位協定の運用改善など、基地負担軽減策も打ち出し、評価書提出に向けて環境作りを急いだ。
 ところが前沖縄防衛局長の不適切発言や95年の沖縄少女暴行事件を「詳細には知らない」とした一川保夫防衛相の発言に沖縄の反発は一挙に増幅。「あれで評価書提出は政権全体の問題になってしまった」(防衛省幹部)ほど状況は悪化し、一川氏が当初「必要があれば現地に出向いて説明する」と意欲を示していた評価書提出に際しての訪沖もままならない状況に追い込まれた。
 政府は12年度予算案で沖縄振興予算を概算要求よりも約500億円も積み増す異例の「アメ」を示し、辛うじて年内提出にこぎ着ける形だ。ただ、評価書提出が「目に見える進展」と本気で考える米政府関係者はいない。移設工事着工のメドがたたなければ意味はなく、米13会計年度(12年10月〜13年9月)の予算案が議会側で固まる来年6月ごろまでに、普天間移設で具体的な進展がない場合、これまでも現行計画の実現可能性を疑ってきた米議会の姿勢がさらに硬化するのは必至。日米合意の抜本的な見直しを強要するような局面も想定される。
 日本政府が12年度予算編成で見せた沖縄への大盤振る舞いの効果は埋め立て申請まで及ぶ保証はなく、野田政権が辺野古移設に必要な「埋め立て申請」に向けた展望を描けているわけではない。地元の理解を得るために、政権は沖縄の負担軽減をさらに進めることなどを検討しているが、具体策は見えていない。野田首相や藤村修官房長官が沖縄訪問をして理解を求める案もあるが、負担軽減策などで新たな提案ができない状況では、「訪問しても意味がない」(首相周辺)のが実情だ。【朝日弘行、ワシントン古本陽荘】

 ◇沖縄募る不信
 「政府は本当に埋め立て申請まで踏み切るのか。知事が申請を承認する状況ではなく、行き詰まるのは明らか。政府の真意が読めない」。展望がないまま移設の手続きを粛々と進める政府の構えに、沖縄県幹部は困惑する。
 アセス評価書への知事意見が、環境影響への技術的な意見なのに対し、公有水面埋立法に基づく海の埋め立ての許認可権は「知事の政治判断」(県幹部)で結論が下される。
 法の手続き上、仲井真知事は地元名護市の意見も参考に判断するが、稲嶺進市長は明確に移設を拒否している。名護の意向を無視した政治判断は事実上ありえないのが現実だ。来年6月には県議選が予定され、選挙戦を通じて県外移設要求が全県的に盛り上がるのも確実だ。
 しかし、政府はアメとムチをふるうかのように、12年度予算案でほぼ知事の要望通りに沖縄振興予算を決定。政府は、かつて条件付きで名護市辺野古への移設を容認した仲井真知事への働きかけを強めるが、知事周辺によると、知事には前々から「私を説得しても困る。政府が説得すべきは名護」との不満が募っている。
 政府の動きは、沖縄側にとって「辺野古移設は事実上不可能。知事に埋め立てを拒否させ、沖縄のせいにして幕引きをはかるつもりか」(玉城義和県議会副議長)とも映る。
 不信感が高まる中、政府の今後の出方に関心が集まる。
 埋め立て申請で県の審査期間は通常半年から1年間だが、特に法で定められているわけではなく、必要に応じて期間はある程度、延ばせる。政府の埋め立て申請が12年末か13年当初ならば、県の審査期間の終了は、14年1月に予定される次期名護市長選と重なり合う。
 知事周辺では次のような声も出だした。「政府のスケジュールによっては、もう一度名護の民意をふまえた上で判断できる」【井本義親】

政府、沖縄県へ環境評価書を発送…持参を断念
(2011年12月27日00時13分 読売新聞)
 政府は26日、米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設に向けた環境影響評価書を県宛てに発送した。
 政府関係者が明らかにした。27日に県庁に届く予定で、政府は県側が受理した時点で評価書の提出手続きが完了したと解釈する方針だ。
 防衛省は当初、同省の沖縄防衛局職員が27日に県庁へ評価書を持参することを想定していたが、移設に反対する市民団体などが26日以降、県庁を取り囲む構えを見せたため、断念した。防衛省は「業者が妨害に遭う恐れがある」として、発送方法は明らかにしていない。
 仲井真弘多知事は26日、「アセス(環境影響評価)は法律とか条例に基づいてやるので、『持ってこないでくれ』と言うわけにはいかない」と述べ、改めて提出を容認する考えを示した。

沖縄県 内容により再調査要請も
12月27日 6時9分NHK
政府は、26日、沖縄のアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設計画に伴う環境影響評価書を沖縄県宛てに発送し、27日に沖縄県庁に届く見通しです。これに対し、沖縄県では、環境の調査が十分ではないと判断できた部分については、再調査を求めることも含め、厳しい指摘をすることにしています。
政府は、沖縄の普天間基地の移設計画で、名護市辺野古の沿岸部を埋め立て、滑走路を建設するのに伴い、環境影響評価を行い、26日、その最終段階となる「評価書」を沖縄県宛てに発送しました。評価書は、27日に沖縄県庁に届く見通しです。沖縄県では、手続き上、評価書の受け取りを拒否することはできないとしていて、環境影響評価に対する意見書を、軍用機の騒音など県の条例が対象としている項目については45日以内に、それ以外の埋め立ての影響などについては法律に基づいて90日以内に提出することにしています。沖縄県の仲井真知事は、26日夜、NHKの取材に対し、「名護市辺野古への移設は事実上、不可能で、県外移設の方が早い」と話していて、沖縄県では、意見書の提出にあたって、こうした方針を改めて示したうえで、環境の調査が十分ではないと判断できた部分については、再調査を求めることも含め、厳しい指摘をすることにしています。

評価書提出警戒し、県庁で座り込み
2011年12月26日 琉球新報
 政府が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書を26日にも県側に提出する方針を固めたことを受けて、基地の県内移設に反対する県民会議のメンバーら約300人(主催者発表)が26日、早朝から県庁に駆け付け、沖縄防衛局の評価書提出の動きを警戒した。参加者らは午前10時から県庁前広場で集会を開き、年内の評価書提案にこだわる政府姿勢に怒りのこぶしを挙げた。26日午前中の提出はなかった。
 防衛局が早朝にも県庁を訪れるとの見方もあり、午前6時ごろから県庁付近でメンバーの一部が待機。提出先の環境生活部環境政策課周辺にも職員が登庁し始めた午前7時40分前から、メンバーが訪れ、約40人が2カ所のエレベーター前を中心に座り込んだ。
 県庁前には赤嶺政賢衆院議員(共産)、山内徳信参院議員(社民)、糸数慶子参院議員(無所属)の3国会議員、県議会議員、市町村議会議員ら約20人が集まった。
 環境政策課周辺で座り込みを行ったメンバーは「怒」と書かれた赤い紙や「環境評価書は持ってくるな」などメッセージを書いた紙で、年内提案にこだわる政府の姿勢を批判した。
 名護市から駆け付けたヘリ基地反対協議会の安次富浩代表委員は「県民が反対しているのに評価書を出すこと自体おかしい」と批判。郵送の可能性に触れ「国は堂々と市民と対じすべきだ。郵送というこそくな手段を使ってまで年内に提案すれば県民の怒りが爆発する」と語気を強めた。

辺野古アセス・評価書提出 地元同意の前提崩壊
2011年12月24日琉球新報
 沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の評価書を週明けにも提出する。民主党は2009年衆院選で普天間移設について「最低でも県外」と訴えて政権交代を果たして以降、アセス手続きは止まっていたが、今年6月に日米間で滑走路の形状などを決定したことを受け、再開する。一方、県内移設反対や評価書提出断念を求める沖縄側の反発は強く、アセス手続きで事業に対し地元の同意を得るという前提そのものが崩れているとの指摘もある。アセス準備書に対する知事意見について、評価書でどう対応しているのかにも注目が集まる。
 「年内ぎりぎりだと、休みが6日ほどあり、ちょっとフェアじゃない。(知事意見を)検討する時間が短すぎる」。評価書が提出されれば受け取るとの姿勢を示しながらも、仲井真弘多知事は22日、報道陣に不満をあらわにした。
 藤村修官房長官が年明け提出の検討を始めたとの情報も流れたが、同日深夜11時ごろ、沖縄防衛局から報道各社へ提出の際の対応に関する回答が伝えられた。異例の深夜の連絡に週明け提出が濃厚との空気も漂っている。

■米へのすり寄り
 政府が年内提出にこだわるのは、野田佳彦首相ほか閣僚たちが米政府に再三、年内提出を約束してきたからだ。
 米上下両院は今月15日までに普天間移設と一括とされる在沖米海兵隊グアム移転関連費約1億5千万ドル(約117億円)を全額削除した2012会計年度(11年10月〜12年9月)国防権限法案をそれぞれ可決。上下両院の軍事委員会は今後、グアム移転の具体的なスケジュールなどを示さない限り、支出を認めないことでも合意している。
 こうした中、評価書提出によって、移設作業が前進していることを印象づけたい狙いがある。米側は国防総省のフロノイ次官が14日に談話を発表。評価書について「日本政府が年末までに提出することを歓迎する」と露骨に年内提出を促している状況だ。
 政府の性急な姿勢に、環境保護団体から「来年にずれ込むと新たなアセス法の規定が適用され、問題が複雑になるのを恐れているのではないか」と、環境相の助言を求めるケースが出てくることを避けようとしているとの指摘も出ている。

■科学性に疑問符
 09年4月に出された環境アセス準備書に対する、主たる知事意見は(1)住宅地上空の航空機飛行禁止や飛行高度制限に対する協定の検討(2)V字形滑走路による地元上空飛行回避で騒音や低周波が「相当低減される」という調査結果の根拠(3)辺野古集落に近いヘリパッド建設に再考を促す「地元意見への尊重」(4)ジュゴンの複数年調査や個体数「3頭」の根拠(5)サンゴや海藻草類の消失を最低限にとどめるような建設位置の再考―などを求めている。
 ほぼ全ての分野で調査の結果“影響なし”とする準備書の科学性に対し、県内の専門家や自然保護団体は「環境アセスの体をなしていない」と一貫して疑問を投げ掛けてきた。最終段階でのオスプレイの後出しも、環境アセス手続きを完全に逸脱したやり方だと批判する。
 知事意見を踏まえ、評価書で何らかの改善が図られるなどといった期待からは程遠い状況がある。「見なくても(知事意見など反映されていないことは)分かる」「『評価の結果、全ての面で影響が認められたため、基地建設はできない』というゼロオプションの評価書だったら、せめて提出される価値もあろうものを」と揶揄(やゆ)する声も上がっている。(内間健友、石井恭子)

「アメとムチ」同時 首長ら「世論を無視」
沖縄タイムズ2011年12月25日 11時47分
 【北部・中部】沖縄振興予算案のほぼ満額回答を県に示したと同時に、首相官邸は24日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う環境影響評価書の年内提出にゴーサインを出した。露骨な「アメとムチ」の手法に、名護市や宜野湾市は「県民世論を無視している」と反発。平和団体は「阻止する」と力を込めた。年内提出を事実上、黙認する姿勢を示した仲井真弘多知事の今後の対応にも注目が集まった。
 名護市の稲嶺進市長は「評価書の提出断念を求める県民世論を無視している。米国の意向を重視する姿勢はさらなる政治不信につながり、県民感情を逆なでするだけだ」と批判。仲井真知事に対しては「予算と普天間問題は別だと言っている。県外移設の公約を貫いてほしい」と求めた。
 ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は、沖縄振興予算に触れ「知事が普天間とは別と言っても、このタイミングでは妥協したような印象を持たれてしまう。沖縄のイメージを悪くする国のシナリオに乗ってしまったのは残念。この間、知事が政府関係者と非公式会談を重ねていたことに一抹の不安を覚える」と述べた。
 条件付きで移設を容認する辺野古区代替施設安全協議会の許田正武代表理事は「提出は年明けにずれ込むと思っていた。条件付き容認、反対も含め、民意をしっかり受け止めた上で、地元の振興策や安全性を担保してほしい」と話した。
 普天間飛行場を抱える宜野湾市の米須清栄副市長は「評価書を出すのではなく、日米合意を見直すべきだ。15年かかっても普天間が動かなかったのは県内移設に固執したためだ」と強調。「なぜ、沖縄に基地が必要なのかも検証するべきだ」と訴えた。
 普天間爆音訴訟原告団の高橋年男事務局長は「宜野湾市全体の騒音が環境基準を超えていると知りながらオスプレイを配備し、県民の大多数が反対しているのに評価書を出す。この国は一体、民主国家なのか」と政府の姿勢を非難した。
 基地の県内移設に反対する県民会議は、評価書提出の阻止行動を予定している。山城博治事務局長は「沖縄の運命が懸かった政策であり、許さない。私たちは県民の総意として、断念するよう説得する」と語った。

「年末狙い撃ち」専門家

 環境アセスメント学会元会長で、国内外の事例に詳しい名古屋大学の島津康男名誉教授は「連休前や年末、年度末に提出時期を合わせるのは、よく使われる手だ」と指摘。「官公庁や企業、特にマスコミが動かない時に、少しでも騒がれずに済ませたいという狙いがある」と分析する。
 県は、評価書送付から45日以内に飛行場建設について知事意見を提出する。専門家の意見を聞く環境影響評価審査会を開く予定の担当部局からは「与えられた時間を目いっぱい使ってしっかり審査したいが、年末年始の慌ただしい時期に(審査会の)委員を集めるわけにもいかない。作業が進まない」と焦りの声がもれた。 
  八ッ場ダム 
20101220
  
八ツ場ダム、前原氏に一任=民主、首相判断を要求へ
時事通信
 民主党は20日の政調役員会で、国土交通省が建設を再開する方向で調整している八ツ場ダム(群馬県長野原町)について、現状ではダム本体工事の着工は容認できないとの方針を改めて確認し、今後の対応は前原誠司政調会長に一任することを決めた。前原氏は21日、藤村修官房長官と会談し、党の考えを伝えるとともに、再開の是非は最終的に野田佳彦首相が判断するよう求める。
 前原氏は政調役員会後に記者会見し、同ダムに関し「国交省から(事業再開の必要性の)明確な説明がない限り、着工は認められない」と重ねて強調。再開すれば、建設中止を掲げた2009年衆院選マニフェスト(政権公約)違反となることにも触れ、「単に国交相が決めるテーマではなく、(首相の)政治的判断を要するテーマだ」と指摘した。(2011/12/20-21:46)

八ッ場ダム:民主、着工認めぬ方針…政府は予算計上で調整
毎日新聞 2011年12月20日 23時03分
 民主党は20日の政調役員会で、政府が建設再開に向け最終調整に入った八ッ場(やんば)ダム(群馬県)に関し、党が示した疑問点に対する国土交通省の回答が不十分だとして、同省にさらなる回答を求める方針を確認した。明確な回答がない限り、本体工事の着工は認めない考えだ。前原誠司政調会長が21日、藤村修官房長官にこうした考えを伝える。
 八ッ場ダムを巡っては、国交省が13日、党国交部門会議が指摘した疑問への回答を示したが、同会議は20日に前原氏に提出した報告で「客観的・科学的でないと捉える議員が多かった」と指摘。政調役員会は賛否の結論を付けず「政治の責任で決定すべきだ」とした部門会議の報告を了承した。
 政府は24日に閣議決定する12年度予算案に、ダムの工事費を計上する方向で調整中。前原氏は20日の記者会見で「政治判断するよう藤村氏に申し入れたい」と強調。工事費が計上された予算案を党として承認しない可能性について「その時に判断したい」と述べた。
 ただ、藤村氏は20日の会見でも国交省の方針を追認する姿勢を示している。【野口武則】

民主党、政府に「八ッ場ダム着工認められない」
(2011年12月20日20時06分 読売新聞)
 民主党は20日の政策調査会役員会で、政府が建設の方向で最終調整している八ッ場ダム(群馬県長野原町)について、国土交通省からの説明が不十分で着工は容認できないとして、前原政調会長が21日に藤村官房長官に申し入れることを決めた。
 前原氏は20日の記者会見で「マニフェスト(衆院選政権公約)にかかわることで、単に国土交通相が決めたから了解するというテーマではない」と述べた。

八ツ場ダム「政治判断必要」 民主、前原氏に対応一任
2011/12/20 20:15日本経済新聞
 民主党の前原誠司政調会長は20日の記者会見で八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設の是非について「マニフェスト(政権公約)にかかわることなので、国土交通相が決めることではない。政治的な判断を要するということを官房長官に申し入れる」と表明した。民主党の政策調査会は同日、前原氏に八ツ場ダム建設を巡る対応を一任。前原氏が21日に藤村修官房長官と会談する。
 民主党政調は20日、政府側からの回答について「十分な回答とはいえない」との意見が多数だったとする部門会議の報告を了承。前原氏は報告を踏まえた上で、「国交省から明確な回答がない場合は党として着工を容認できない」とする従来の方針を改めて官房長官に伝える意向も示した。今後の意思決定の手続きについては官房長官に委ねる考えだ。
 一方、前田武志国交相は20日の閣議後の記者会見で、「前原氏が検証の仕組みをつくった。それにのっとって結論を出す」と述べ、建設の是非は国交相が判断するとの認識を示した。

八ッ場ダム建設:前原政調会長が見解、再開「決まっていない」 民主県連が中止要請 /群馬
毎日新聞 2011年12月20日 地方版
 建設の是非を検証中の八ッ場ダムを巡り、民主党県連と同党八ッ場ダム生活再建議員連盟(会長・川内博史衆院議員)のメンバー計8人が19日、前原誠司政調会長にダム建設中止を要請した。政府は建設再開の方向で最終調整する見通しだが、川内会長によると、前原政調会長は「誠に遺憾だ。まだ(再開は)決まっていない」との見解を示したという。
 要請書は(1)国土交通省の検証のあり方に疑念が深まっている(2)八ッ場ダムの建設中止はマニフェストに掲げた重大な公約で、継続が決断されれば国民の信頼を喪失する−−と改めて指摘。前原政調会長は「気持ちは全く同じだ」と述べたという。
 川内会長は「マニフェストと真逆の判断をするならば、国民に対する説明と謝罪が必要だ」と述べ、民主党県連の中島政希会長代行は「ダム着工は重大なマニフェスト違反であり、政権の命運にもかかわる。前原政調会長も同じように危機感を抱いており、中止に向けた今後の対応に期待したい」と話した。
 県連などは同日、藤村修官房長官にも建設中止を申し入れる予定だったが、官邸は北朝鮮の金正日総書記の死去を巡る対応に追われ中止になった。【角田直哉、喜屋武真之介】

八ッ場ダム 前原氏に再び中止要請 きょう官房長官にも
東京新聞2011年12月20日
 八ッ場(やんば)ダム問題で、民主党県連と「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」(会長・川内博史衆院議員)は十九日、同党の前原誠司政調会長にあらためて同ダムの建設中止を要請した。藤村修官房長官にも二十日、同様に要請する。
 一行が提出した要請書では、同党が指摘した八ッ場ダム検証の問題点に対する国土交通省の回答を「本質的な疑問に答えていない」として検証の問題点を列挙。「中止はマニフェストに掲げた重大な公約。建設継続となれば民主党を支持した広範な国民の信頼を喪失する。政党の自殺行為だ」としている。
 川内氏によると、前原氏は「気持ちはまったく同じ。党国土交通部門会議の意見を受けて政府と話し合いたい」と述べ、政府が建設再開する方向で調整に入っているとの一部報道について「誠に遺憾だ。まだ決まっていない」と語ったという。
 同部門会議は、国交省の検証を「受け入れる」との声もあったとする一方で、建設を認めれば「マニフェスト違反となる」という意見が多かったとする報告書をまとめ、二十日の政調会幹部会に報告する。
 前田武志国交相は「どういう結果であれ、来年度予算に反映させなければならない」と述べており、週内にも自身で結論を出したい意向だが、前原氏は「マニフェスト案件なので国交相が決めて終わりというものではない」と話している。 (伊藤弘喜)

野田政権、八ツ場ダム建設再開の方針 工事費予算計上へ
朝日新聞2011年12月19日21時57分
 野田政権は19日、八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設を再開する方針を固めた。来年度予算案にダムの本体工事費を計上する。民主党は2年前の衆院選マニフェストで八ツ場ダムの中止を掲げたが、建設続行を求める地元の声を踏まえて方針を転換する。度重なるマニフェスト違反に批判が高まりそうだ。
 八ツ場ダムは、政権交代直後の2009年9月、当時、国土交通相だった前原誠司氏(現民主党政策調査会長)が本体工事の中止を宣言。公共工事見直しの象徴だった。

八ッ場ダム建設:国交相が判断、再開へ最終段階 民主党内、反対根強く /群馬
毎日新聞 2011年12月18日 地方版
 八ッ場ダム問題は、政府が建設再開の方向で調整に入り、最終段階を迎えた。事業主体の国土交通省関東地方整備局が「継続が妥当」とした検証結果を踏まえた判断で、政府高官は「22日までに(再開容認姿勢の)前田武志国交相が最終判断する」としている。ただし、民主党内には反対意見も根強く、地元・長野原町の高山欣也町長は17日、「最終的に方針が決まるまで安心できない」と述べた。【奥山はるな、小山由宇、樋岡徹也】
 政府の最終決定を前に、藤村修官房長官と前田氏の間では、足並みをそろえる発言が目立っていた。藤村氏は9日、前田氏と国会内で会談。藤村氏は「この問題は担当閣僚に判断してもらうのが内閣の方針だ」と語り、前田氏の判断を尊重する意向を伝えた。
 前田氏は「八ッ場は長年議論し、流域自治体とも協議の上、合意を得ている。流域の方々にとって重要な安心、安全施設だ」と建設に前向きな姿勢を示している。16日の記者会見では、12年度予算編成までに決定する考えを強調した。
 ただし民主党内には再開に慎重論があり、県連と八ッ場ダム生活再建議連は19日、藤村氏、前原誠司・党政調会長と会談し、建設再開に反対の考えを伝える予定だ。このため、政府は週明けに党側と詰めの協議を行った上で正式に決定する方針。
 一連の動きについて高山町長は毎日新聞の取材に「建設再開は願っていたことだが、結論が先延ばしになる可能性もゼロではない」と慎重な見方を示している。

八ッ場ダム建設中止を撤回、予算計上へ
(2011年12月18日03時03分 読売新聞)
 建設中止か継続かで検証対象となっていた八ッ場ダム(群馬県長野原町)について、政府は建設継続の方向で最終調整に入った。政府関係者が17日明らかにした。
 来年度予算案に工事費を計上するため、22日までに決定する方針。民主党側には建設慎重論がなお根強いが、政府側の意思を尊重せざるを得ないとの声が広がっている。
 前田国土交通相は16日、「有効な代替策が見当たらない中で、造らないのは無責任だ」と語り、建設継続に強い意欲を示している。政府関係者は「前田国交相の判断で決まる話だ」と述べ、前田氏の判断が政府方針になると指摘した。
 藤村官房長官は、八ッ場ダム問題は政府・民主三役会議で協議する必要はない案件だとしており、15日の記者会見では国交省と与党で調整したうえで前田氏が最終判断すればいいとの見解を示した。鳩山内閣で国交相として建設中止を表明した民主党の前原政調会長は17日、都内で記者団に「国交相が決めて終わりではない」と難色を示した。しかし、同党幹部は17日、「前田氏の建設の意思は強く、尊重せざるを得ないのではないか」と指摘した。

八ッ場ダム建設:6知事が継続要望 官房長官、年内結論を強調 /群馬
毎日新聞 2011年12月17日 地方版
 大詰めを迎えている八ッ場ダム問題で、大沢正明知事、東京都の石原慎太郎知事、埼玉県の上田清司知事は16日、首相官邸で藤村修官房長官にダム事業継続の決断を求める申し入れを行った。大沢知事によると、藤村官房長官は会談で「これ以上時間をかけることは絶対にしない」と述べ、政府として年内に結論を出す方針に変わりはないことを強調した。
 申し入れは関係1都5県知事の連名で行い(1)検証は前原誠司民主党政調会長が人選した有識者会議で科学的・合理的に行われた(2)検証手続きに瑕疵(かし)はないと評価され建設継続は妥当と結論付けている(3)これ以上時間をかけることは許されない(4)前田武志国土交通相の判断を政府の方針とする(5)最終段階で検証スキームの変更を迫る行為は許されない−−を求めた。
 大沢知事は会談終了後、報道陣に「藤村官房長官に思いはしっかり伝えた」と話した。前原政調会長が国交省の方針に疑問を示していることについては「自ら作ったスキームで結論が出た。それを覆すのは言語道断だ」と述べた。
 石原知事は「政府が中止しても、関係自治体の議会の承認が必要だ。もし中止の結論を出したら大恥をかく」と話した。【鳥井真平】

八ッ場ダム建設:推進、反対両派が激論−−県議会対策特別委 /群馬
毎日新聞 2011年12月14日 地方版
 ◇決議案と意見書案、建設継続求め提出
 県議会八ッ場ダム対策特別委員会が13日開かれ、政府の最終判断を前に、ダム推進、反対両派の応酬が繰り広げられた。推進派の県議は「政治的判断」で中止を目指す前原誠司民主党政調会長らの対応を批判し、建設継続を求める決議案と意見書案を提出。いずれも賛成8、反対2で可決された。一方、ダム中止を求める県議は、国土交通省関東地方整備局による検証が不十分だったとして、ダムは不要と改めて主張した。【奥山はるな】
 この日の特別委では冒頭、県が検証作業の進捗(しんちょく)状況について報告。同整備局が「事業継続は妥当」との対応方針をまとめた段階にあり、現在は「国交相の判断を待っている」と説明した。前原政調会長らの一連の発言については触れなかった。
 これに対し、建設中止を求める伊藤祐司県議(共産)は、同整備局の検証作業が浅間山の噴火時などを十分に想定していないとして「八ッ場は治水上も利水上も無駄で、地滑りなどの災害を誘発する危険なダム。造れば将来に禍根を残す」と主張。角倉邦良県議(リベラル群馬)も、本体工事の凍結を前提に「生活再建が滞らないように、負担金支出を継続してほしい」と要望した。
 一方、建設推進を求める大手治之県議(自民)は、前原政調会長の発言について「納得がいかない」と批判。田所三千男県議(同)も「(国は)政治的判断でなく、生命、生活を守るダムということを頭に据えてほしい」と述べ、県が国に働き掛けるよう求めた。萩原渉県議(同)は「国交相の発言をかたずをのんで見守ってきた。来年度予算に(推進の)結論が反映されることを信じている」と述べた。
 ダム推進の決議案と意見書案は16日の本会議で可決される見通し。

八ッ場ダム建設:民主分科会「国説明、納得できぬ」 推進議連は事業継続を要望 /群馬
毎日新聞 2011年12月16日 地方版
 八ッ場ダム建設を「妥当」と評価した国土交通省関東地方整備局の対応方針を巡り、民主党国土交通部門会議の八ッ場ダム問題分科会(松崎哲久座長)が15日も開かれ、国交省側の説明に「納得できない」との声が相次いだ。一方、八ッ場ダム推進国会議員連盟(佐田玄一郎会長)などは同日、前田武志国交相に事業継続を求める要望書を提出。ダム反対、推進両派の動きが活発に展開された。
 松崎座長によると、同分科会では治水上の根拠となる利根川の目標流量の信頼性や、利水を巡る各都県の水需給計画に疑問が集中。国交省側は「国の有識者会議が定めた中間とりまとめにのっとって検証した」と説明したが、議員の納得を得られなかったという。
 意見は今後、松崎座長が集約し、20日に前原誠司政調会長に報告する。松崎座長は「国交省の(検証の)枠組みを超えて判断する」と述べ、政治的判断の必要性に言及した。
 また前原政調会長は15日の記者会見で、党としての意見を政府に申し入れた後のプロセスについては藤村修官房長官に委ねる方針を明らかにした。
 一方、15日には八ッ場ダム推進国会議連の佐田会長や小渕優子衆院議員、中曽根弘文参院議員らが自民党本部で会合を開き、ダム建設推進を訴えた。【奥山はるな】 
  八ッ場ダム 
20101217
 
国交省関東整備局の報告書は以下にあります。
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000192.html
問題点指摘はいろいろありますが、水質の問題について以下に簡単な解説があります。草津側は強酸性でかつヒ素、もう一方は万座硫黄鉱山跡などがあり「公害のデパート」のようなところです。
http://yamba-net.org/modules/problem/index.php?content_id=18



前原政調会長:「八ッ場再開」に政治的判断必要
毎日新聞 2011年12月17日 23時37分
 民主党の前原誠司政調会長は17日、東京都羽村市で記者団に対し、政府が建設再開へ向け最終調整に入った八ッ場ダム(群馬県)について「(建設中止を明記した)マニフェスト(政権公約)に関する案件なので政治的判断が必要だ。前田武志国土交通相が決めて終わりではない」と述べた。
 野田佳彦首相の出席する政府・民主三役会議での判断が必要との認識を改めて示したもので、藤村修官房長官に判断を一任したことについては「官房長官がどう判断するかだが、官房長官にフリーハンドで委ねたわけではない」と強調した。【野口武則】

八ッ場ダム:国交省の方針尊重 官房長官、建設再開を容認
毎日新聞 2011年12月9日 12時11分(最終更新 12月9日 12時48分)
 藤村修官房長官は9日午前の記者会見で、八ッ場ダム(群馬県)の建設再開について、「国土交通省で(検証の)手続きをしており、それを重視する。政治的判断はしない」と述べ、建設再開の方向で検証を終えた同省の方針を尊重し、本体工事を容認する考えを示した。ただ、民主党の前原誠司政調会長は建設再開に慎重姿勢を示しており、今後調整が難航する可能性もある。
 藤村氏は「党が政治判断されるならそれは重く受け止めるが、政府が政権交代後に順にやってきた手続きは最終段階に至っている」と強調した。また、最終結論は来年度予算編成に関する政府・与党会議で出されるとの見通しも示唆した。
 一方、前田武志国交相は閣議後の記者会見で「八ッ場は長年議論している。既に流域自治体とも協議のうえ、合意を得ている」などと前原氏をけん制した。
 八ッ場ダムをめぐって、民主党は09年衆院選マニフェスト(政権公約)で建設中止を明記。公共事業を大幅に削減する民主党政権の「象徴」の一つとなっていた。群馬県には建設継続の要請が強く、国交省で全国84のダムを再検証する有識者会議を設け、八ッ場ダムについても再検証していた。【小山由宇、樋岡徹也】

八ッ場ダム:建設を再開へ 22日までに国交相が最終判断
毎日新聞 2011年12月17日 12時01分(最終更新 12月17日 13時24分)
 政府は17日、建設が止まっている八ッ場(やんば)ダム(群馬県)について、建設を再開する方向で調整に入った。事業主体の国土交通省関東地方整備局が「継続が妥当」とした検証結果を踏まえた判断で、政府高官は「22日までに(再開容認姿勢の)前田武志国交相が最終判断する」としている。ただ、民主党内には再開に慎重論があることから、週明けに党側と詰めの協議を行った上で正式に決定する方針。【小山由宇、樋岡徹也】
 同ダム中止は民主党が09年衆院選マニフェストに掲げ、同年9月の政権交代後に前原誠司国交相(当時、現民主党政調会長)が中止を表明した。このため、建設妥当の検証結果に前原氏らが反発するなど、同党内には建設再開に慎重意見がある。
 こうした党内の動きも踏まえ、藤村修官房長官は9日、前田氏と国会内で会談。藤村氏は「この問題は担当閣僚に判断してもらうのが内閣の方針だ」と語り、前田氏の判断を尊重する意向を伝えた。藤村氏は同日の記者会見でも「国交省で(検証の)手続きをしており、それを重視する。政治的判断はしない」と検証結果を尊重し、本体工事を容認する考えを示した。
 前田氏は「八ッ場は長年議論し、流域自治体とも協議の上合意を得ている。流域の方々にとって重要な安心、安全施設だ」と建設に前向きな姿勢を示している。16日の記者会見では「前原さんも責任を持っているから間に合うと思う」と述べ、12年度予算編成までに決定する考えを強調した。
 一方、民主党の国土交通部門会議は16日、治水や利水などに関して党側が出していた疑問点に対する国交省からの回答について議論した。松崎哲久座長によると、国交省の説明に納得できないとの意見があったが、評価する声もあったという。部門会議は20日に前原氏に報告書を提出する。前原氏は15日に藤村氏に判断を一任すると表明し軟化する動きも示している。

八ッ場ダム:意見公募なのに96%が同一文書に署名だけ
毎日新聞 2011年11月26日 15時00分(最終更新 11月26日 17時41分)
 ◇推進派が世論誘導か
 建設の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)を巡り、国土交通省関東地方整備局が集めたパブリックコメント(意見公募)で、寄せられた意見の約96%が同一文書に署名だけ手書きしたものだったことが分かった。「八ッ場ダムは必要不可欠」などと印刷され、ダム推進派が組織的に署名を呼びかけた可能性が高い。ダム反対派は「世論誘導の狙いがあるのではないか」と反発。専門家は「パブリックコメントの趣旨から逸脱した行為」と批判している。
 同整備局が25日にまとめた「パブリックコメントの結果」によると、寄せられた5963件のうち5739件は全く同じ内容だった。「八ッ場ダムは利根川水系における治水、利水の安全度を高める対策として、もっとも現実的、かつ確実に効果を見込める事業」「速やかにダム本体工事に着手し、計画通りに事業を完成すべきだ」などと推進を求める意見がパソコン文字で印刷されており、署名だけが異なっていた。
 パブコメは10月6日〜11月4日に全国から募集。集まった5963件のうち埼玉県在住者の意見が5738件に上っており、同一文書の大半は同県在住者が寄せたとみられる。
 同整備局は「パブコメは多数決ではないので、特に問題はない」と説明しているが、八ッ場ダム建設に反対する市民団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表は「世論誘導のため組織的に署名を集めたと思われる。非常に問題だ」と話している。【奥山はるな】 
  八ツ場ダム―予算急がず検証深めよ 
20101215
 八ツ場ダム―予算急がず検証深めよ
朝日新聞社説2011年12月15日(木)付
 民主党政権がマニフェストに沿って、八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の事業中止を宣言して2年余り。政府の検証作業が終わった。来年度予算案でダム本体の工事費を認めるか、政権の判断が問われている。
 国土交通省に置かれた有識者会議が決めた検証手順に従い、事業主体の国交省関東地方整備局は9月、「八ツ場ダムを含む対策が最も安上がり」との試算結果を示した。整備局によるパブリックコメントの募集、学識者や住民、関係自治体からの意見聴取など段階を踏み、有識者会議の了承を取り付けた。
 あとは前田国交相の決断を残すだけだ。自治体など推進派は早期着工を求めている。
 私たちは、ダム反対派をまじえて集中討議するよう主張してきた。検証の対象とされた全国83のダムの中でも、八ツ場ダムは公共事業見直しの象徴として国民の関心が高いからだ。
 新たに学者グループが反対の声をあげたことに注目したい。元京都大学防災研究所長の今本博健氏らが呼びかけ、賛同者は120人を超えた。河川工学や土木分野に加え、地質、環境、生物、経済など様々な分野から集まっている。
 八ツ場ダムの洪水調節効果をめぐる計算が変わった根拠は何か。水の需要は減っているのに自治体の古い推計に基づいたままでいいのか。建設予定地は浅間山が近く、火山灰などが堆積した地盤は巨大地震に耐えられるのか――。三つの問題点と事業主体の整備局が自ら行った検証の限界を指摘し、「公開の場で科学的な検証を」と訴える。
 国交省の有識者会議に討論会を申し込んだが、実現しなかった。同省の担当部署から断りの連絡が入った後、申し込んでいた討論会とほぼ同じ時刻に有識者会議が開かれ、整備局の検証が了承された。
 2年前に国交相として事業中止を打ち出した民主党の前原政調会長は、党の分科会が事業の問題点を並べた意見書をまとめたことを受け、「政府の回答が明確にならない限り、本体工事は認められない」と語った。
 この2年、民主党の方針がぶれては地元住民を振り回してきた。これ以上の混乱を避けるため、各方面からの疑問点を徹底的に検証したうえで、政府・与党として決断する必要がある。
 地元では付け替え道路などの関連事業で、総事業費4600億円のうち8割近くが投じられた。しかし、本体工事の予算計上を急いではならない。期間を区切り、反対派をまじえて検証作業を続けねばならない。
  馬淵国交相「再検証は予断持たず迅速に」/八ッ場ダム
読売新聞 - 2010年12月3日 
20101203
 馬淵国土交通相は3日、閣議後の記者会見で、八ッ場ダムの負担金支払い留保問題の解決を受けて、「再検証は予断を持たず、(建設、中止)いずれの結果でも、迅速に物事を進めないといけない」と語り、建設の可能性を示唆した。

八ッ場・意見交換会 国交相要請断る 長野原町長正式に文書「当面応えられず」
2010年12月9日 東京新聞
 八ッ場(やんば)ダム問題で、地元の長野原町や八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会などが、馬淵澄夫国土交通相が町に打診した住民との意見交換会の開催を当面は見送る方針を決めたことを受け、高山欣也町長は八日、正式に要請を断る馬淵氏宛ての文書を国交省に提出した。 (山岸隆)
 住民との対話をめぐっては、十一月六日に馬淵氏が「今後は中止の方向性という言葉は使わない」と中止前提方針を事実上撤回。高山町長も馬淵氏が望む住民対話に前向きな姿勢を見せていたが、その後に民主党の岡田克也幹事長が大きな方針転換ではないとの見解を示したことから、高山町長が国交省に抗議するなど一転して反発を強めていた。
 国交省は今月三日、国の来年度予算の概算要求状況を県に説明する際、水没対象地区住民の生活再建事業費の概算要求額も明らかにせず、地元の不信感は一気に加速。一時の蜜月から冷め切った状態の六日になって、馬淵氏から年内の土曜日か日曜日に意見交換会を開きたいとの文書が高山町長に届いた。
 地元側は七日夜に緊急会合を開き、高山町長や同対策委の代表、各地区の町議ら計十人が出席し、高山町長が経緯を説明した。しかし、出席者からは「今年一月に当時の前原誠司国交相と行った意見交換で地元の考えはすでに伝えてある」「ダム建設中止を撤回しないなら話し合いに応じられない」「年末で忙しい」などと直接対話の受け入れに否定的な意見が相次いだ。
 会合終了後に記者会見した高山町長は「残念ながら、あえてこの時期に会う必要はないとの結論になった。岡田幹事長の発言が住民の大きな不信感を招いたようだ。生活再建事業の内容も不透明。当面の間は要請には応えられない」と語った。

八ッ場ダム、国交相が住民と対話継続の意向
(2010年12月10日15時01分  読売新聞)
 建設の中止か継続かを巡って揺れる八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)を巡り、馬淵国土交通相は10日の閣議後記者会見で、水没予定地の住民らに打診していた意見交換会を拒否されたことについて、「会えないのは残念だが、仕方がない。今後も適切な機会を求めていきたい」と述べ、意見交換会の実現に向けて、引き続き地元側に働きかけていく意向を示した。
 国交相は先月6日に現地を視察した際、高山欣也・長野原町長に対し、地元住民との対話の場を設けるよう要請。これに対し地元側は今月7日夜、「建設中止の方針が撤回されたわけではない」などの理由で意見交換会の開催には応じない方針を決めていた。

八ッ場ダム・流転の行方:事業負担金支払い再開 知事「本体建設が前提」 /群馬
毎日新聞 2010年12月3日 地方版
 ◇推進方針を強調
 八ッ場ダムを巡り、1都5県は2日、留保していた今年度の事業負担金について支払いの再開を発表した。留保によって生活再建の遅れを懸念していた地元は歓迎する一方、大澤正明知事は会見で「再開は、あくまでダム本体建設が前提だ」と推進の方針に変わりがないことを強調した。
 6知事と馬淵澄夫国土交通相との会談は11月末の予定だったが、馬淵国交相に対する問責決議案が参院で可決されるなど日程調整で延期され、1日夜の会談が急きょ決まった。
 大澤知事によると、中止方針の「棚上げ」や「大転換ではない」など与党内の食い違いについて、馬淵国交相は会談で改めて「予断なく再検証する」と明言。来秋としていた建設可否の結論についても「可能な限り早い時期に前倒しする」と譲歩したことを受けて支払いの再開で足並みをそろえたという。
 会見で大澤知事は、結論の「前倒し」を評価する一方、再開は「ダム建設が前提」と強調した。中止の場合、6都県は負担金の返還を求める訴訟も視野に国の責任を追及する方針で、検証結果によってはダム問題が飛び火する可能性もある。
 今年度分の事業費88億円について6都県は、検証スケジュールを早期に明らかにすることを求め、今年7月に支払いの留保を決定。国交省は来月上旬にも(ダム事業の)資金が枯渇する可能性を示し、地元住民の生活再建の遅れが懸念されていた。11月末に支払いの再開を大澤知事に求めた長野原町の高山欣也町長は「再開が決まってほっとした。(代替地の)用地買収費用を心配したが、年度内に解決して心配がなくなった」と安堵(あんど)していた。【鳥井真平、奥山はるな】
==============
 ■視点
 ◇国は誠実な対応を
 1都5県知事が事業負担金の支払い再開を決めた。知事側は事業費の枯渇で生活再建の遅れも懸念していた地元に寄り添う形でダム問題の進展を図ったといえる。民主党政権は中止方針の「棚上げ」など一定の譲歩を見せるが先行きは依然として不透明だ。国はより誠実な対応が求められる。
 馬淵澄夫国交相は1日夜の会談で「予断なき再検証」を改めて明言。与党内で食い違う発言の一本化と理解して支払い再開で合意した。建設可否の結論も「可能な限り早く」と譲歩を引き出した。国へ圧力をかけるため、6都県が今年7月末に決めた負担金の留保が功を奏したのだろう。
 政治的な意味でダム問題が迷走する一方、負担金の留保は地元に影を落としていた。長野原町の高山欣也町長は、資金の枯渇で道路や鉄道の付け替えなど代替地の整備や取得への影響を危惧し、知事や国との会談で不安を口にしていた。
 支払いの留保から再開まで約4カ月。水没予定地の川原湯温泉で老舗旅館がまた1軒休業した。疲弊は確実に進んでいる。国は地元の置かれている状況を真摯(しんし)に考えなければならない。【鳥井真平】

八ッ場ダム・流転の行方:県留保の負担金一部、4億2620万円を国に支払い /群馬
毎日新聞 2010年12月11日 地方版
 県は10日、支払いを留保していた今年度の八ッ場ダム事業負担金の一部計約4億2620万円を国に支払ったと発表した。内訳は直轄負担金3億2087万円と、利水者負担金1億532万円。国が工事の進捗(しんちょく)状況に合わせて算定し8日に請求していた。【鳥井真平】

群馬・八ツ場ダムマネー還流
自民議員支部などに2507万円
07〜09年 工事受注30社が献金

2010年12月12日(日)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-12-12/2010121215_01_1.html
 八ツ場(やんば)ダム工事の関連事業を受注した企業30社から2007〜09年の3年間に地元群馬県の自民党の支部に2507万円、民主党の支部にも36万円の献金があったことが11日、本紙の調べでわかりました。ダム本体工事の中止をめぐって迷走していますが、「八ツ場ダムマネー」が政治家に還流する仕組みが浮かび上がります。
民主議員支部にも36万円
 政治資金収支報告書によると、受注企業からの献金は自民党では、中曽根弘文(元外相)、山本一太の両参院議員、小渕優子(元少子化担当相)、佐田玄一郎(元行革担当相)の両衆院議員、尾身幸次元衆院議員らが支部長を務める支部など8支部です。
 中曽根氏は受注企業11社から612万円、山本氏は15社から430万円、小渕氏は1社から108万円、佐田氏は3社から158万円、尾身氏は5社から192万円を3年間で受け取っています。
 また、自民党群馬県ふるさと振興支部は15社から563万円を集めています。同支部からは、3年間で計3800万円が小渕優子後援会に流れています。同支部に86万円を献金した上原建設(本社・甘楽郡下仁田町)は、数億円分の関連工事を受注しています。
 中曽根氏や小渕氏らの自民党6支部に計495万円を献金していたヤマト(本社・前橋市)は、配水施設工事7750万円分を受注していました。
 民主党の石関貴史衆院議員(群馬2区)が支部長を務める支部も、1社から3年間で36万円の献金を受注企業から受けています。 
  ダム行政覆すか 八ツ場根拠「基本高水」再検証に注目
2010年12月6日 朝日新聞 
20101206
 八ツ場ダム(長野原町)の必要性の根拠となってきた利根川水系の「基本高水(きほんたかみず)」の検証が注目を集めている。大洪水が起きた時に想定される最大流量で、馬淵澄夫国土交通相が再計算を命じた。基本高水の数値が大きいほど洪水を抑える対策が求められるため、再計算の結果は、八ツ場ダム建設の是非にとどまらず、ダム行政を根本から覆す可能性がある。
 「国交省が使っている現行の計算式では数字の操作とごまかしが入る」東京・水道橋で4日、「あばかれた利根川洪水の神話」と題した集会があり、講演で拓殖大の関良基准教授(森林政策学)は、国交省が森林の保水機能を過小に評価する一方、降雨の流出量を過大に評価し、基本高水の数値が大きくなったと指摘。「過去の実績で最大の流量を基準に治水対策を行うのが最も合理的だ」と述べた。
 集会は、八ツ場ダム建設反対の立場から、事業に加わる6都県に対し、建設負担金の支出差し止めを求める広域住民訴訟を起こした団体が主催した。今年7月までに一審判決が出た東京、前橋、水戸、千葉、さいたまの5地裁でいずれも敗れているが、集会の雰囲気は明るかった。住民訴訟で問題提起してきた基本高水の見直しに馬淵国交相が踏み込んだためだ。
 利根川水系の基本高水は200年に1度の洪水を想定し、1947年のカスリーン台風をモデルとする。中流の伊勢崎市八斗島(やったじま)地点で毎秒2万2千トンが流れるとされる。
 だが、カスリーン台風時の八斗島の流量の観測記録はない。今の基本高水は過去の雨量や支流から本流へ流れ込む水量などから推計した値で、台風を受けて49年に定めた際は1万7千トンだった。80年に旧建設省が「八斗島の上流の堤防整備が進んで下流に到達する水が増えた」として5千トンを上乗せした。 過去50年の実測値で八斗島の最大流量は、98年の台風10号の時の毎秒9222トンだ。
 ■国交省幹部「大臣にひっくり返されるとは」
 前原誠司・前国交相は「治水の哲学を変える」として基本高水をやり玉に挙げた。だが前原氏が設けた有識者会議は、検証の手順や基準づくりを優先し、基本高水の議論には踏み込まなかった。
 後任の馬淵国交相は、利根川水系の河川整備基本方針を定めるため2005年度に策定された検討報告書の中で、基本高水を具体的に検討した経緯すら見当たらないと気づいた。副大臣の時から「何らかの糸口で見直せないか調べていた」という。
 ダム建設を推し進めてきた国交省幹部の一人は言う。「基本高水は我々のアキレス腱(けん)。見直せばすべての川で仕事の見直しが必要になる。有識者会議からも守りきったのに大臣にひっくり返されるとは……」馬淵国交相は11月の衆院国土交通委員会で「建設を要望される方も、反対される方も、皆さん方に納得できる形で検証を進めるべきだと思っている。その意味で、基本高水の見直しというものは極めて重要だと思っている」と答弁した。
 八ツ場ダムの建設の是非を考える検証で前提となるのは、200年に1度の洪水を想定した基本高水よりも流量が少ない50年に1度起きるレベルの洪水だ。
 検証作業で国は、ダムに頼らない前提で治水対策の代案を練る。国の有識者会議が検討を促したダム以外の治水手法は25パターンあり、利根川に適した手法を組み合わせて複数の代案を用意する。
 堤防のかさ上げや川底の掘削といった河川改修、既存ダムのかさ上げ、発電専用ダムの運用見直しなどがある。こうした代案に求められるレベルが、基本高水見直しで引き下げられる可能性がある。
 その上で、ダムを造った場合とダム以外の治水案を、コストや実現性、環境への影響といった点から比較する。
 今回は国の財政難を受け、コストが重視される。八ツ場ダムは建設事業費4600億円のうち、すでに7割を使った。残る予算との比較では「ダム継続が有利」との見方が国交省内に根強い。一方で未完成の代替地や相次ぐ追加工事などを理由に「残る1千億円余ではダムは完成しない。予算枠で考えるべきではない」との指摘もある。(菅野雄介、歌野清一郎) 
   「日本版 戦略的環境アセス」は機能しない アセスメント法改正の失敗
 20101214
日経BPに以下が掲載されました。
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20101214/105518/
「日本版 戦略的環境アセス」は機能しない アセスメント法改正の失敗

ジャーナリスト まさのあつこ

 12月3日、臨時国会が閉幕した。この国会で、地球温暖化対策基本法案とともに審議未了のまま積み残された環境関連法案が、1999年の施行から初めての改正となるはずだった「環境影響評価(アセスメント)法」の改正案だ。
2010年の通常国会で参議院、臨時国会で衆議院を通過したが、「一度の国会で衆参両院を通さなければならない」(衆議院環境委員部)との扱いで、成立は2011年の通常国会に先延ばされた。政変による1年の浪費である。

中途半端なアセスメント法改正案

 とはいえ、嘆きの声は聞こえてこない。環境保護の点からも事業運営の点からも、今回の改正案は中途半端な内容だからだ。
 改正の目玉は、戦略的環境アセスメント(Strategic EnvironmentAssessment:SEA)の導入だ。しかし、改正案に盛り込まれたSEAは、「日本版SEA」と呼ばれる限定的なものに留まっている。事業を実施するという結論に合わせて行うために「アワセメント」と揶揄されてきた日本の環境アセスは、根本的には変わりそうもない。
 改正案について触れる前に、現行法による環境アセスとはどのような手続きであるかをおさらいしよう。

(i)環境アセスとは、道路、空港、発電所などの「規模が大きく環境影響の程度が著しい」事業を対象に、「事業者がその事業の実施に当たり」(法第1条)行う手続である。対象になる事業の種類と規模は、政令で定めている。大規模な事業は「第一種事業」として環境アセスが必須、準ずる規模の「第二種事業」は事業者の判断で手続を行うかどうかを決める。
(ii)対象事業の事業主体は「方法書」を作成する。どのような環境影響を調査するかを方法書によって公表し、住民や都道府県知事の意見を聞く。
(iii)それらの意見を受けて「準備書」を作成する。(ii)で決まった調査で、どのような環境影響をあるかを予測し、どのような保全措置を取るかの案を公表する。説明会を開き、住民や知事に意見を聞く。
(iv)意見を受けて「評価書」を決定する。環境大臣は、事業の許認可を行う主務大臣を通して意見を言うことができる

 今回の改正案は、現行の手続きを補強する内容になっている。以下の6つが主なポイントだ。
(1)「方法書」の前の段階で、「配慮書」の作成を義務付ける
(2)「準備書」だけで行われていた説明会が「方法書」でも義務となる
(3)政令市は都道府県経由でしか事業者に意見を出せなかったが、直接出せるようになる
(4)住民などが意見を出すために読む必要がある準備書などの電子縦覧が義務付けとなる(現状では平日の昼間に役所などに読みに行くか、有料で複写するかしかなかった)
(5)環境大臣の意見の回数が増える
(6)事業実施後の「報告書」の作成を義務付ける

 新たに加わった手続の一つが、(1)の「配慮書」なる手続きだ。「日本版SEA」と呼ばれている。1997年にこの法律が成立したときに、国会の附帯決議で「上位計画や政策における環境配慮」の制度化が宿題とされていた。2006年4月には環境基本法に基づく「第三次環境基本計画」が閣議決定され、 SEAの導入がうたわれた。2008年6月には生物多様性基本法が成立し、第25条で「一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であることから、生物の多様性に影響を及ぼす事業の実施に先立つ早い段階での配慮が重要であることにかんがみ、(略)その事業に関する計画の立案の段階から」影響評価を行うこととされた。

 すなわち、求められてきたSEAとは、「上位計画」「政策」「実施に先立つ早い段階」で行う環境アセスだった。環境影響を回避できる段階、つまり政策や事業の実施を必ずしも前提としていない立案段階で環境情報を提供し、住民や関心のある専門家の意見を聞いて最終決定に反映させていく手続である。

 これは、環境アセスの生みの親である米国が1969年に成立させた国家環境政策法には盛り込まれていた。対象には政策(policy)が盛り込まれ、代替案の提案は必須、実際にはゼロ・オプション(何もしないという選択肢)の提案と共に運用されてきた。ところが、今回の改正案に盛り込まれたSEA の対象は極 めて限定的だ。

「事業を実施しない」という選択肢がない日本版SEA

 第一に、法律成立時に附帯決議で求められたはずの「政策」の方は対象外になっている。

 第二に、対象は第一種事業のみが必須で、準じる規模の第二種事業は任意に過ぎない。

 第三に、SEAを実施する段階は「計画の立案の段階」と記述はされたが、曖昧だ。国会審議においても、現行法が「事業の位置、規模、配置が決定した段階」(2010年5月11日衆議院本会議での環境大臣答弁)で行われるのに対し、改正法は「事業の位置、規模又は施設の配置、構造等の検討段階」(2010年3月31日の環境大臣答弁)を対象とするのだと説明されたように、「段階」としての差違は微々たるものだ。

 法律の条文では、SEAすなわち「配慮書」には、事業目的、周囲の概況、配慮事項ごとの調査、予測、評価結果などを書き込むとある。「周辺の概況」を記載できるほどに位置が確定した段階で、かつ先述したように第一種か第二種が明らかな程度に規模も決まっている。つまり位置と規模が決まり、配置の検討段階で行うの日本版SEAである。位置、規模、配置が決定した段階で行う現行法と比べて、どれだけ環境保全効果が高まるだろうか。さらに、「周辺の概況」を書き込まねばならないのであれば、「ゼロ・オプション(事業を実施しない選択肢)」は否定されている。不可逆的な環境や生態系破壊を食い止めることが第一の目的ではなく、あくまで事業が前提の環境配慮が目的である。

 第四に、ゼロ・オプション以外の代替案ですら義務付けられたとは言い難い。「一又は二以上の当該事業の実施が想定される区域における当該事業に係る環境の保全のために配慮すべき事項についての検討」と、どのようにでも解釈できる日本語で条文が編まれた。

 その結果、経済産業大臣が「原子力発電所については、立地地点や規模の複数案を検討することは議員御指摘のとおり困難と認識をしております。他方、施設の配置や構造などは複数案を検討することが可能なものもあると考えております」(2010年3月31日参議院本会議)と答弁するなど主務大臣による奔放な解釈を許容している。

 第五に、この手続を行う場合は、環境大臣の意見提出は必須だが、関係行政機関や一般国民の意見聴取は努力義務に過ぎない。

結局、「アワスメント」のまま

 どの点から見ても、SEAと呼ぶには中途半端だ。「日本版SEA」といわれる所以である。企業にとって気になるコストや時間については、他法令の手続きと同時並行で行われ、コストの大幅な増加は見込まれず、期間も半年と、政務三役が国会で答弁している。

 総じて見ると、唯一、明確な改正点は、環境保全措置の結果を公表する事後手続きである。しかし、生態系破壊の報告だけが後に残るのでは環境法としてあまりにも虚しい。松本龍環境大臣は「(法律の見直しのめどである)10年度以内であっても適切に制度の見直しを図る」(2010年11月19日衆議院環境委員会)と答弁を行ったが、このままでは当分、日本のアセスメント法はアワスメントのままであると言わざるを得ない。 
   熊本・荒瀬ダム、6年で撤去完了
20101214   熊本・荒瀬ダム、6年で撤去完了 県が計画案発表
2010年12月14日 11:17 西日本新聞
 熊本県は14日、全国で初めて撤去を目指している県営荒瀬ダム(八代市)
について、2012年度から6年間で撤去を完了するとした計画案を公表し
た。撤去作業に伴う環境への影響にも配慮し、魚類や植物など生態系のモニタ
リング調査も8年程度実施する。

 蒲島郁夫知事は10日の県議会で、11年秋をめどに河川法に基づくダム撤
去の許可を国に申請する方針を表明した。ただ、国はダム本体の撤去費用への
財政支援に難色を示しており、県が計画通りに撤去を進められるかどうかは流
動的だ。

 計画案によると、12年11月からダムゲートの撤去を開始。球磨川の護岸
の補強やダム湖にたまった泥土の除去も行う。
   八ツ場ダム 洪水時の最大流量示す資料は存在せず
 20101022  末尾に関東知事会の発言があります。なお、今回は吾妻川上流にある万座鉱山その他の重金属や砒素、草津汚染の強酸性の水中和で埋まったダムなどのことなどは書かれていません。

 利根川水系で200年に1度の大洪水が起きた時の最大流量(基本高水)を算出した根拠を示す資料が国土交通省内に存在しないことを、馬淵澄夫国交相が22日、明らかにした。基本高水は、国が八ツ場(やんば)ダム(群馬県)の建設が必要だと主張する最も重要な根拠。馬淵国交相は調査を命じたが、これまでのダム政策の妥当性が大きく揺らぐ可能性がある。
 馬淵国交相は、「どのようにして(基本高水の)計算が行われたかという資料が、現時点では確認できない」と語った。水の浸透度や流れる速度といった最終結論の前提となる数値は断片的に残っていたが、最終的に毎秒2万2千トンという数値に至った計算過程を体系的に記録した資料が存在しなかったという。
 また、国の審議会は2005〜06年、利根川水系の基本高水が妥当か否か議論した上で、数値をそのまま踏襲しているが、審議会が踏襲を妥当と判断した根拠を示す資料も存在しなかった。馬淵国交相は「(妥当とした)肝心な記載はわずか3行。これはおかしいということで徹底調査を命じた」と語った。
 9月に就任した馬淵国交相は、基本高水がどのように決められたのか、同省河川局に説明を要求していた。
 洪水の被害を防ぐため、利根川水系では、国内最高レベルとなる200年に1度の洪水を想定。基本高水は1980年に中流にある八斗島(やったじま)地点(群馬県伊勢崎市)で2万2千トンと設定された。
 200年に1度の洪水は、47年のカスリーン台風をモデルにしたが、八斗島付近での川の流量の実測値はなく、国は仮定や想像上の数字をあてはめて洪水状況を再現し、2万2千トンと算出した。うち八ツ場ダムを含め上流のダムで5500トンを抑え、残る1万6500トンは堤防の強化などで対応することになっている。しかし、すでに完成した六つのダムの効果は計1千トンにすぎない。八ツ場ダムが完成しても効果は600トンにとどまり、さらに数基から十数基のダム建設が必要とされる。
 八ツ場ダムを巡っては今月1日、ダム建設が必要か否かの検証を、国と6都県などが始めている。馬淵国交相は今後、この検証作業の中で、利根川水系の基本高水の算出方法の見直しを指示している。
 民主党政権は、八ツ場ダム以外にも83カ所のダム事業の見直しを進めている。今後、利根川水系の基本高水の算出方法の見直しが引き金となって、各地の河川の基本高水も見直され、ダム建設の根拠が根本的に揺らぐ可能性もある。
千曲川・信濃川への愛を誓う市民の集い
20100918    
   
  むだな公共事業をめぐって、東京新聞の記事をご紹介します。 
 20100628

 高速建設便益 コンサルタントに評価丸投げ 国交省、検証資料示せず。

 高速道路建設の是非を判断する指標となる費用対効果(便益)の数値について、国土交通省が以前から計算を民間のコンサルタント会社に丸投げし、その数値をチェックしていないことが本紙の取材で分かった。    =関連(22)(23)面
 この指標の数値をめぐっては、例えば、北海道に建設する新道を評価する際、効果を受ける対象地域を道路のつながっていない本州や九州まで広げ、効果を水増ししている可能性の高いことがすでに問題視されている。
 費用対効果の指標は新道建設による移動時間の短縮や周辺道路の渋滞緩和などのメリツトを金銭価値に置き換え、建設費で割った数値。1を下回れぱ、建設は認められない。
 本紙が入手した複数の報告書を調べたところ、総合的な効果額や指標の数値が1を超えているといった「総論」こそ示されているものの、どの地域や区間で効果があるとみられるのか、といった具体的な情報が欠落。効果の内容について、外部からは検証できない内容になっていた。
 こうした計算は国交省が新道建設の事業ごとに数千万円をかけ、コンサルタント会社に委託している。
 計算された効果内容の検証方法について、同省は「業務を委託する過程で、(人口や交通量など)入力する条件値が適切か否かなどを確認している」としているが、「どの地点の効果をどう足したのか、証拠を示せと言われると、提示できる資料は持っていない」と回答。コンサルタント業者任せの実態が浮き彫りとなった。

◆納得できる指標に

 法政大学の五十嵐敬喜(たかよし)教授(公共事業論)の話:国が費用対効果の数字をチェックしていないことは、高速道路建設をめぐる裁判でも明らかになっている。この数字は公共工事全般で非常に重要視されているが、国のこうした扱いにより、信用性は著しく失われている。政権も代わった。誰もが納得できる指標にただすことが急務だ。
 
 こちら特捜部

「地点別」把握せず
国交省大あわて 算出へ税金数千万円

 建設費が数兆円に上ることも少なくない高速道路。税金の無駄遣いを防ぐため、建設の前と後ではどのように交通量が変わるのか、移動時間は短縮されるのか、事故は減るのか、といった建設効果は事前に十分、検討されなければならない。
 そのための指標が「B/C」。コンピューターでシミュレーションし、その効果(ベネフィツト=B)を金銭価値に直し、建設コスト(C)で割った数値で、この数字が1以上であることが建設には必須とされる。
 ところが、この数値を求める方法について▼全国の道路延長の三分の一に当たる四十万`のモデルを北海道の道路を評価するときも、九州のときも使い回し▼新道から遠い地域では時間短縮効果は実質的にはないにもかかわらず、誤差ともいえるわずかな効果をかき集めて、大きな効果に見せかけている可能性が大きい−などといった不透明な実態が浮上。「こちら特報部」が報じた。
 これらの疑念については、馬淵澄夫国土交通副大臣が四月下旬、「(評価を)全国まで広げれば最も精緻になる。範囲を広げることにより過大ではなく、むしろ安全側に評価させている」と国会で答弁。水増しはないという主張だが、いまひとつ納得できなかった。

◆「個別データ持ってない」

 本当のところはどうなのか。本州とは道路がつながっていない北海道の北海道縦貧道の具体例から、選外での効果を足していないかをチェックすることにした。
 まずは国交省道路局。「個別の詳しいデータは持っていない」という。現地ならば、と北海道開発局に情報公開を請求すると、「事業主体はNEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)なので同社で計算している」という回答を得た。そこで同社に問い合わせると、「国から評価結果をもらっている。ただ、全体の数字だけ。選外の効果を足しているかどうかについては当社では分からない」。
 あらためて、国交省道路局に確認したが、北海道縦貫道に限らず、高速道路の便益の評価全般について、地点ごとの効果は把握していない、だからデータも出せない、という答えだった。
 では、誰がこの評価の計算を支えているのか。国交省は新道建設の事業ごとに三千万円前後の税金を投じ、民間のコンサルタント会社にシミュレーションを委託している。個々の地点でどれくらい混雑が解消されるか、といったデータはこのコンサル会社が計算する段階の話であって、国など事業主体は把握していないというのだ。

■デスクメモ

 道路の便益に各種機密費、捜査機関のでっち上げに、米軍の抑止力−。どれもこれも官僚たちが民の目をごまかし、インチキを言い張ってきた(いる)領域だ。政権交代とはここに穴を開ける試みだった。だが、この九ヶ月で難しさが身に染みた。でも、いまさら後戻りはできない。辛抱のしどころだ。(牧)


 算定根拠あいまい
「列島改造的な発想ダメ」

 むろん、これでは納税者が抱く便益についての水増し°^念が膨らみかねない。  このため、馬淵副大臣は「(計算データの)情報は開示する」と国会で約束。この答弁を受け、国交省は東京外郭環状道路(関越道−東名高速)の評価について、計算し直す準備に入った。
 ちなみに国は二〇〇九年度、約二千八百万円をかけ、この評価を実施した。しかし、評価の基礎となる個別の数字を出すために、また数千万円の税金を便って計算をやり直すというのだ。
 確かに入手したコンサルタント会社から国交省への報告書を見ると、記載されているのは全体の効果額だけで、どのように積み上げられた数字なのかはブラックボックスに隠された状態だ。
 効果をはじく対象道路延長が四十万`という不可解な評価が横行する中で、外環道は約一万八千`と比較的正常≠ネ条件設定だが、それでもこのありさまだ。
 この計算のやり直しについてもコンサルタント会社頼み。その技術提案(企画公募)はようやく終わったが、データが出てくるのは来年三月以降になりそうだという。
 国交省には数字の水増しはしていない≠ニ潔白を証明する手がかりにしたい思惑もありそうだが、ほかの高速道路も適切だという証明にはならない。情報公開のためとはいえ、何とももったいない税金の使い方だ。
 関東学院大の安田八十五(やそい)教授(環境政策)は「建設の効果を科学的に検証しているというなら、第三者が検証できることが必須。そうさせない国のやり方は科学の名を借りて人を欺く行為」と国の姿勢を批判する。
 自治体のネットワーク、環境自治体会議環境政策研究所の上岡直見主任研究員も「国の評価方法は諸外国に比べ、交通量の配分方法にしても、かなり底上げされてしまう計算手法を取っている」と、抜本的な評価方法の見直しを訴える。

◆「自民追認」困惑の声も

 民主党内でも、公共工事のあり方をどう変えていくのかについては明確ではない。同党議員からは「地元でも高速建設への疑念の声が寄せられている。そこで政府が珍妙な答弁を繰り返せば、自民党政権下でやってきた誤りを追認していると受け取られる」と困惑する声が漏れ聞こえる。
 首都圏の自治体関係者らは「自治体も建設費を一部負担するから、自分らにも説明責任が出てくる。国の出している数字が疑いを持たれるものならば、影響は免れない」と不安を隠さない。
 一橋大の寺西俊一教授(環境経済)を中心とした研究者団体「21世紀道路政策研究会」は今月十九日、都内でシンポジウムを開いた。その席上、菅直人首相のブレーンの一人とされる法政大の五十嵐敬喜教授(公共事業論)はこう訴えた。
 「人口減少社会となる中で、いつまでも旧来の列島改造論的な発想でやっていてはだめ。既存の道路を維持していくだけでも大変なこと。民主党政権は前政権からでたらめの費用対効果まで、そのまま引き継いでしまっているが、これは正さねばいけない。現政権が動かないなら、市民側から正しい事業評価を打ち出そうではないか」
 
 
 
 
 
 

上 高尾山近くで建設が進む圏央道。建設を支える便宜の数値は信頼できるのか
=25日、東京都八王子市で 

下 シンポジウムで、公共事業評価の抜本的見直しを訴える五十嵐敬喜教授(左奥) 
=東京都千代田区で

 
 
   全国37路線で28日から 高速道無料化の実験  国交省
20100607
 
 国土交通省は7日、高速道路の37路線50区間を対象にした無料化実験を、28日から始める方向で調整に入った。
無料化は来年3月末までの「社会実験」の位置づけで、経済効果や渋滞の発生、環境への影響などを見極めたうえで来年度以降の無料化区間を改めて決める。
28日から無料化するのは道央道(北海道)、西湘バイパス(神奈川県)、伊勢道(三重県)、岡山道(岡山県)、沖縄道(沖縄県)など37路線の50区間計1626キロで、全国の高速道路の総延長の約18%にあたる。
東名高速や名神高速など主要幹線道路は除かれている。
自動料金収受システム(ETC)の搭載の有無にかかわらず、全車種が対象となる。
 有料区間については、当初6月の導入を目指していた、車種別に上限料金を設ける新料金制度が、先送りされているため、「休日上限1000円」などの割引を含んだ現行の料金体系が、当面継続される。
  民主党は全国の高速道路の原則無料化をマニフェスト(政権公約)に掲げているが、渋滞への懸念などから反対論が根強いことに加え、財務省も難色を示したため、初年度は予算1千億円での小規模な試行にとどまった。
 一方、同時に実施する予定だった「普通車上限2千円」などの高速料金改定は、政府・与党内の調整難航で見送られており、「休日千円」などの現行料金が当面続く。 
  4月20日付の東京新聞に掲載された記事2点をご紹介します。 
20100420
 
高速建設 評価水増し
国交省の便益計算 7割が基準以下
 (本紙試算)
東京新聞
   国交省はこの3年間に88件の高速道路事業を「十分な便益あり」と判定したが、本紙が遠方の道路を外して再計算すると、23件にまで減った。 無駄な道路を造らないため、新道建設による走行時間の短縮や交通事故減少などのメリットを金銭に換算。その便益額(B)を建設費用(C)で割った数(B/C)が1以上にならないと、建設は認められない決まりになっている。
 本紙はこのルールが適正に実施されているか、専門家の助言を得て検証した。その結果、便益額の大半を占める走行時間の短縮効果を計算する際、国交省は新道と直接関係のない「その他道路」を恣意的に設定。平均すると効果の影響が出やすい「主な周辺道路」に比べ距離にして百倍近くも計算に人れていた。
 また道路の合計(延長)で88件のうち27件までが40万3千160`でそろっているが、その根拠は非公開にしている。
 遠方の道路でも、理論上はごくわずかな時間短縮効果が出る。計算対象を全国の道路にまで広げることで、便益額をかき集めた形。
 こうした実態を伴わない効果は、本来は評価対象外とされ、「その他道路」を外して計算すると、時間短縮による便益額は大幅に減り、事故減少などの他の便益を同省の計算通りに加えても、B/Cが1に満たないケースが7割以上に上った。
 国道の一部も検証したが、「その他道路」は数干`までしか対象にしておらず、再計算でも1を下回る例はなかった。

 【国土交通省高速道路課の話】 評価する道路の合計が約40万`でそろうのは全国の道路を対象とするモデルで計算しているため。道路が完成した後も、遠方のため結果的に効果が出ない路線は計算上も数値に表れない。距離が長くても、便益の過大評価にならない。
 
  高速道路建設の是非を判断する最重要な指標をめぐり、国土交通省が、建設による影響をほとんど受けない遠方の道路まで「その他道路」として効果の評価対象に含め、建設によって住民らが受ける便益を大幅に水増ししていた可能性の高いことが19日、本紙の調査で分かった   
 
20100420
 
東京新聞 こちら特捜部

高速道「その他」集めて過大評価

北海道の新道 九州で効果?

  
 ちりも積もれぱ高速道路となるー。思わずそう皮肉りたくなる数字の操作が、無駄な道路を造らないための最重要な事業評価で行われていることが19日、本紙の調査で浮かび上がった。常識的に計算したのでは着工が認められないため、体感できないような便益を全国規模でかき集め、ゴーサインが出るよう数字を水増ししている疑いが濃厚なのだ。                      (山川剛史、篠ケ瀬祐司)

 まずは左面の表を見ていただきたい。建設費に見合った便益があるのか、国土交通省が過去3年間に88件の高速道路の事業評価ではじいた数字と、本紙が水増し分とみられる便益を除いて再計算した数字(太枠)を比較したものだ。
 便益額(B=ベネフィット)を建設費(C=コスト)で割った数字(B/C)が1以上なら、効率的な公共投資とされ、建設が進む可能性が高い。
 ところが、その便益額の出し方にカラクリが隠されていた。
 便益額は、新たに道路ができて渋滞が減ることなどにより、@走行時間が短縮A燃費が向上、車も傷まないB交通事故が減る−の三つを金銭的価値に直して算出される。最も大きな部分を占めるのは@の「走行時間短縮便益」と呼ばれる部分。
 高速道路ができれば、スピードも出せるし信号もないから目的地に早く着く。街中を走る車も減るはずだから、街中の道路もすいて早く着く。当たり前のことだが、たとえば新設道路は北海道にあるのに、効果は九州でも四国でもある−。こう説明されて納得する人がいるだろうか?
 だが国交省ではこれが常識≠フようだ。渋滞が解消されるなど新設道路の影響が大きい道路を「主な周辺道路」、それ以外を「その他道路」と区別。便益額を出す際に計算対象とした道路の実に98.9%までが「その他道路」だ。すべて無関係とは言い切れないが、時間短縮効果は一行程当たりせいぜい数秒。しかも、それはコンピューター上に存在するだけの数字で、実際には体感できない効果とされる。

計算 使い回しか

 そこで本紙は「その他道路」の便益は除外し、燃費向上や事故減少による便益額は国交省の数字を使ってB/Cを再計算。すると88件の7割以上の65件までが落選≠ニいう結果に。それもそのはず。便益額の多くは「その他道路」が稼いでいるからだ。
 国内の道路の総延長は市町村道まで合めて約126万`。実に、その三分の一に当たる40万`以上を新設道路に関係する道路として計算している例が88件のうち27件もあった。
 しかも、造ろうという道路は北海道から九州までバラバラなのに、計算する道路延長は全く同じというケースが目立つ。同じ計算モデルを使い回している証拠だ。
 数々の疑念に国交省はどう答えるのか。
 道路局高速道路課は、道路延長がそろう点について、「全国の道路を対象にする一つのモデルで計算しているから。道路はつながっているから、途中で区切ると作業が煩雑になる」と強調。道路事業分析評画室も「結果的に便益が増えない路線は数字に反映されない」と水増しを否定する。
 ただ、同じ高速道路でも対象距離が40万`もあれば651`も。理屈からすれば、国道も同じモデルで計算してよさそうだが、こちらは対象を広げなくても十分な数字を確保できるせいか、数千`どまりだ。

建設ありきの見せかけ数字

 専門家にも本紙のデータを見てもらった。
 「40万`というのはひどい。記載ミスかと思った。評価には直接的な影響のある道路しか人れてはだめ。過大評価で、道路を造ることがありきと言うしかない。あたかも科学的に効果があることを立証したかのように、見せかけているだけ。こうやって税金を無駄遣いしてきたわけだ」 関東学院大の安田八十五(やそい)教授(環境政策)はこう怒り、「問題点はほかにもあるが、『その他道路』を除いた再計算はかなり修正効果のある試算だ」と話した。

CO2など考慮も必要

 そして、評価対象道路を正常化するようルールを改正するとともに、道路の新設により、二酸化炭素(CO2)の発生量がどう変化するかなど道路単体ではなく社会全体への影響を評価すべきだと訴えた。
 「道路の経済学」の著者、松下文洋氏は「そもそも国は、道路の経済効果を自動車だけで計算しているが、この考え方が間違っている」。
 独自に圈央道(東京・八王子〜神奈川・愛川)の分析も手掛けたが、これまで鉄道を使っていた人が車を使うようになり、神奈川県では逆に渋滞が激しくなる、との結果に。国交省のB/Cが2.9に対し、松下氏が出した数字は0.38だった。
 松下氏は、国交省の数字は外部が検証不可能な点を問題視し、「造りたい人には都合がいいのだろうが、これでは誰も信用しない」と指摘した。
 国交省の馬淵澄夫副大臣は5日の会見で、道路など国直轄で行う公共事業について「事業評価の方法を見直す」と明言した。「コンクリートから人へ」というなら、せめて信用される評価を確立すべきだろう。