圏央道牛沼地区も事業取消を提訴
 圏央道高尾山トンネルの天狗裁判に引き続き、圏央道関係で新たに道路建設を問う裁判が提起された。
 2000年12月15日、圏央道牛沼地区(東京都あきる野市)に関係する地主4人、それに関係する借地人90人らは建設大臣を相手に、同大臣が2000年1月19日に行った圏央道牛沼地区(事業規模1.93km)の事業認定の取消を求める行政訴訟を東京地裁に提訴した。
 牛沼地区の圏央道建設で道路公害の被害を被るおそれのある居住者を含む原告団総数101人はこの訴訟で、建設省の一方的な推進に協力しない地権者にたいし16年間にわたり一貫して、話し合いを拒否し続け土地収用法の適用はしないと「説明会」での約束も反故にするなど、信義に反する行為を繰り返し、裁判に訴えるほかないとしている。
 訴状では、建設大臣の事業認可は、圏央道のアクセス道路となる国道411号線の渋滞をいっそう激しくし、通過交通量の激増からして大気汚染の悪化が予想されるが、尼崎・名古屋南部のように一定濃度以上のSPM差し止め判断が司法でだされた状況下で、この事業認定は違法な道路を拡大し、公害を激化させると主張。
 また、圏央道計画と連動する「秋留台地域総合整備計画」の事実上の白紙撤回など、関連開発が破綻し道路計画だけが強行されていることや、圏央道に接続する新滝山街道(高規格道路)のアセスが実施されていない問題、さらに地権者の敷地内にある古墳時代後期の円墳「牛沼西龍ケ崎古墳」が本事業により破壊されることを訴えている。
 そのうえで圏央道のアセス(実態は閣議アセスによるアワセメント)以来15年が経過し、事業の再評価を行うべきであるとしている。
 提訴後の記者会見で、原告の1人、中村文太さんは「16年におよぶ建設省のウソと問答無用の強引さには、我慢も限界」と訴訟に踏み切った理由を述べた。


びわこ空港凍結へ(00/11/23)
 滋賀県の国松善次知事は11月20日の県議会特別委員会で、「びわこ空港」の凍結を正式表明した。
 知事は「空港は県の将来の発展に極めて重要」としながらも「環境影響評価調査の実施は見合わさざるを得ない」と述べた。これは地元集落の蒲生町綺田(かばた)地区が「アセス不同意」を撤回せず、環境アセスの同意取り付けを目指した知事側が「現時点でのアセス実施は極めて難しい」と追い込まれたもの。
<これまでの経過>
 県の空港計画はすでに12年が経過しているが、運輸省はびわこ空港計画について「空港の必要性は極めて疑問」(黒野事務次官の3月11日の発言)、「首都機能移転が前提」(大臣発言。3月12日)など、地元推進派の期待とはかなり異なる慎重な対応をしている。さらに、さきの統一地方選挙で行われた県会議員選挙では、地元の蒲生郡区から空港推進を掲げて出た元町議会議長だった自民党候補が最下位で落選し、本人は「空港は負けた」と発言するなどの事態も起こっている。
 いっぽう滋賀県下の住民が進めていた空港建設の是非を問う県民投票条例の制定要求(請求代表者:辻義則県職員組合委員長)は、99年3月の県議会で否決され、13万県民の意志が葬りさられている。
 事業費総額は1580億円だが、 99度までに予備調査費などに約38億円を投入している。


中海干拓は中止、吉野川可動堰は白紙
 連立政府与党は、2000年8月28日、国民的批判の強い公共事業の見直しについて、合計233件の公共事業を見直し対象とすることを決めた。これは、さきの総選挙でバラマキ、無駄使いの典型として野党側から批判され、選挙結果にも自民党の都市部での後退という結果となってあらわれたことから、自民党を中心に、次期参院選はたたかえないと、見直しをはじめたもの。
 政府与党の公共事業見直しの基準は、@事業採択後5年以上にわたり未着工のもの A完成予定から20年以上経過しても未完成のもの B現在、休止中のもの C実施計画調査後10年以上経過しても事業未採択のもの…としたが、我が国の公共事業はサミット諸国と比較しても、ダントツの事業費をつぎ込み、600兆円といわれる財政危機の主要因となっている問題や、公共事業がふくらみ続ける根元となっている全国総合計画の見直しなどにはふれず、ごく部分的で、大半の事業はすでに休止中のものが占めるばかりと批判も相次いだ。
 具体的には、第2東京湾横断道路計画など五全総がらみのものだけでなく、ダム目的の利水事業が破綻している徳山ダムや川辺川ダムも見直し対象とされていない。そればかりか、NGOが問題にしてきた「無駄な公共事業100」のなかで、今回の政府の見直し対象としてあげられているものはすでに休止中の松倉ダム(北海道)、細川内ダム(徳島)と中海干拓程度しかみあたらない。
 もっともこの間、住民運動が大きく前進した愛知万博の海上の森開発や吉野川可動堰についての住民投票の実施などの影響について、政府与党側がこれらの動きを無視することが出来なくなり、今回の見直し対象に含めざるを得なかったことは、今後の国民的見直し運動につなげたいところである。


海上の森保全で大きな前進
 2000年7月24日、博覧会協会が「愛知万博検討会議」(委員長・谷岡郁子中京女子大学長)に、同万博見直し案を示したのに対し、同検討会議は基本的にこれを受け入れ、海上の森の保全問題は大きな前進をしめした。
 国際博覧会協会(BIE)側から20世紀型開発で環境破壊などと批判され、大幅な計画見直しを求められてきた博覧会協会側は「愛知万博検討会議」に対し、7月17日にも見直し案を提示したが、谷岡委員長から「南地区に恒久施設は認めがたい」などと批判され、BIEへの申請ギリギリの判断を迫られていた。
 受け入れられた見直し案は、当初BIE側に示していた海上の森全域を開発する計画面積57ヘクタールから大幅に縮小され、西地区と南地区をあわせて合計10.35ヘクタールと当初の5分の1程度となった。特に問題とされた南地区については0.65ヘクタールを開発して5000平方メートルの施設を作るまでに押さえこまれることとなった。
 今回の合意は、海上の森保全を巡って、愛知県と博覧会協会が世論におされる形で検討会議を設置し、NGOなどの民間側の意見を聞くテーブルを設置したこと、谷岡委員長が試案を発表するなど、検討会議が議論を煮詰めたことがあげられる。
 合意後に博覧会協会側が「時代が変わったことを読めなかった」と発言したと伝えられているが、従来型の発想で開発に突き進むという事業者の姿勢が、今回の海上の森問題でも明確な結論がでたことは大きな意義がある。
 この結果を受けて、自民党野中幹事長は党推進議連会長代行を辞任する模様だが、海上の森開発にうまみが無くなったことを象徴しているように思われる。
 こうして国が財政支援から手を引くことから起きる財政負担問題や、合意案にもとずくアセス実施問題など、海上の森を舞台に「愛知万博」を開催するうえでクリアしなければならない問題も残されている。
  <これまでの経過>
 愛知県と通産省は、1988年に万博構想を打ち上げ、90年に海上の森を開発する「新住事業」を前提とした愛知万博開催を決めていたが、環境破壊型の開発計画にたいしての内外の強い批判を考慮し、この新住事業を断念して万博計画を進める重要決定を2000年4月に行った。あわせて名古屋瀬戸道路、県道若宮八草線も断念。
 この決定により海上の森は大きく保全の方向に向かうことになるが、愛知県は万博会場として海上の森南地区の活用についてこだわりを見せていた。これについてはWWFジャパン、日本野鳥の会など3NGOとの合意の結果であることを明らかにしたが、NGO側は結論を押しつけられたとしている。また3NGO側は県側の南地区の代案として西地区の利用を提案したが、瀬戸市の住民らの反対によって撤回した経緯もある。
 いっぽう、革新県政の会は、オオタカ保護のためには海上の森全体の保存が不可欠で南地区にも絶滅危惧種サンショウクイの営巣も確認されており「環境博」とは相容れないとし、@地元住民の合意形成、A主会場となる青少年公園のアセス実施の2点を中心に、愛知県の住民無視の姿勢を批判し、あくまで「抜本的見直し」を求めていた。
 また「県民投票を実現する会」(代表・影山健愛知教育大学名誉教授)が求めていた条例制定請求(法定必要数の3倍近くの31万373署名)について愛知県議会は2000年7月17日、賛成少数でこれを否決した。自民党など反対した会派は、昨年の知事選などで、開催を支持する県民の意思は間接的に示されている。国際的に開催が承認されたと反論した。

 


圏央道東京ルート収容で強制立ち入り(00/07/08更新)
 建設省は首都圏中央連絡道(圏央道)の東京ルートの青梅〜中央道間で、既買収地などで工事を進行させ、さらに八王子城跡トンネル工事(1999年8月から)着工など、2003年の青梅・中央道接続にむけて強引に事業推進を図っている。
 こうしたなか、建設省は用地買収に応じないあきる野市・牛沼地区の地権者と賃借権者の土地について2000年7月12日から、強制立入調査を行うと通告。これにたいし、地権者側は道路建設で交通量9万6000台/日が予測され交通公害となる。いまでさえ大気汚染認定患者が激増している。なのにこうした問題を含むアセスを実施していないことを指摘し、強制収用と立入調査は認められないと、建設省側と全面対決の様相となっている。
 今回の建設省による、土地収容法適用は、こうした反対派の拠点つぶしを強権的に狙うものであり、さまざまな問題点を市民側から指摘されながらも形式的なアセスで工事を強行してきた建設省の基本姿勢が改めて問われ、同省の最近の環境重視、住民対話路線とは180度異なる従来型の反対派市民敵視路線が現場では続いている。
 こうした建設省の強行姿勢は、現在工事が行われている圏央道八王子ジャンクション「中工事」で、八王子城跡トンネル南側出口と中央道との間に、ジャンクションと巨大な排気塔を設置する予定地に、買収に応じない地権者の山林が孤島のように伐採されずに残されていることや、さらに高尾山トンネルの南側に存在する圏央道計画に反対する市民でつくる「むささび党」の2カ所の共同所有地(土地トラスト)など、同計画に対し用地を提供しない個所が東京ルート上に数多く存在することへの影響も懸念される。
<これまでの経過>
 1999年12月21日、当時の中山建設大臣は、「残った人々から直接聞く機会を設け、一人ひとりの現状をよく聞かせてもらう」と現地視察を行ったものの、視察終了後に推進派の波田野前八王子市長らの早期土地収用陳情も受けるなど終始強硬姿勢を貫き、あきる野市牛沼地区など4地区1万平方メートルの土地買収が進まない部分についての土地強制収用申請を2000年1月19日に事業認定。
 これに対し、牛沼地区圏央道反対同盟の中村文太さん、鈴木進さんらは、「圏央道は15年前のアセスですまされ、その後、接続道路として計画されている新滝山街道の大幅な交通量予測も見込まれないなど現実ばなれした公害道路」と指摘しアセスのやり直しを要求。土地収用に反対する意見書を石原都知事に提出しつつ、建設省の事業認定にたいしても地権者・借地権者113人が異議申立て(2月18日)を行っていた。
<問い合わせ・激励先> 坂本久美(042−558−0360)


第二東名計画路線近くのオオタカ巣立つ(00/07/08)
 丹沢山系の麓を貫く「第二東名」計画。すでに着工にむけて施工命令が出されているなか「伊勢原北〜秦野」区間の計画路線の至近距離の営巣木から今年もオオタカのヒナが元気に巣立った。
 秦野の自然と環境を守る会の新保睦晴さんらは、丹沢山麓の生態系に頂点にたつオオタカをふくむ環境を守ろうと、数年前からオオタカのウオッチングを続けている。オオカタが営巣してからヒナの巣立ちまでを無事見届けようと、営巣木近くに観察テントを構え、営巣の一部始終をビデオテープに記録する活動を行っていたが、今年は3羽のヒナが6月末に無事に巣立った。
 新保さんらは第二東名と厚木秦野道路(有料246バイパス)の本線およびインタチェンジとジャンクションの建設という大規模な環境破壊で、オオタカを頂点とする豊かな秦野の自然は取り返しのつかないダメージを受けると、一人でも多くの理解者・協力者を広げたいと願っている。
 また、ここ数年のオオタカウオッチングの成果の一部は神奈川オオタカ保護連絡会のホームページでも見ることができる。
 なお、オオタカの営巣にたいする建設工事の影響と対策などについては、公団側の一年間にわたる調査も実施されたが、公団側「オオタカ検討委員会」でも今後の方針を決める段階にいたっていない。
 また第二東名と厚木秦野道路の問題について秦野や伊勢原の住民グループは、99年6月末に建設大臣にたいし、@第二東名の必要性と投資効果、A94年アセスの撤回とやり直し、B道路工事と供用後もオオタカ営巣存続を可能とする根拠の明示、Cオオタカ追い出しに等しいアセス会社による「調査」への監督強化などを求めている。
 オオタカの子育てはこのほか厚木秦野道路の本線が通る予定の渋沢丘陵や、圏央道の始点となる横浜市の円海山、そして圏央道八王子城跡トンネル坑口近くでも行われており、それぞれ別のグループがウオッチングするなどして、道路建設にともなう生態系破壊を訴えている。


諫早湾「ギロチン」3年で環境激変
 長崎県の諫早湾干拓事業で湾奥部が「ギロチン」により締め切られてから丸3年が経過した。かつて300種以上の生物が住み、渡り鳥中継地だった国内最大級の干潟は乾燥が進み生態系は一変している。長崎大東幹夫教授の調査(97年6月と99年6月時点で比較/2000年2月発表)では、潮受堤防外側の湾口部38箇所で1平方メートル当たりの海底生物全種類数(ゴカイやヨコエビなど25種類)は2年間で14906から6227へと約6割も減少していたことが判明。巻き貝類、ホヤ、アサリなど海水性の底生生物の死滅、ムツゴロウの激減、赤潮の発生、高潮位でノリ養殖業にも甚大な被害がでている。
 ゴカイなどを目当てに集まっていた渡り鳥も当然激減した。日本野鳥の会長崎県支部の調査では、締め切り前にいたダイゼンやハマシギなど18種数千羽の渡り鳥はエサの減少でシロチドリ、ダイシャクシギなど3種程度ほどしか確認できないという。
 湾最奥部が閉鎖水域とされてしまった調整池の水質は環境基準を大きく上回り悪化していることも「環境総合研究所」(東京都品川区、青山貞一所長)の調査で判明した。
 締め切り直前から締め切り2年半までの追跡調査を行った結果、環境アセス予測値との比較ではCOD(化学的酸素要求量)が2〜3倍、T−N(全チッソ)は約2倍、T−P(全リン)は3〜4倍と大幅に超えていたという。(調査結果の詳細は環境総合研究所へ)
 また、これらの汚濁水は水深調整のために月に数回、諫早湾に排水されるため有明海など周辺海域では、これが原因と思われるタイラギの漁業被害も出ている。
 大浦漁協の漁民は、4月14日、海上決起集会で @泉水海と有明海を死の海に化そうとしている農水省にだんこ抗議する! A農水省は干拓水門を直ちに解放せよ! B農水省は有明海再生のため、諫早干拓事業を中止せよ! の宣言を掲げた。


「クマタカ発言」で申入れ (JNEP)

 3月25日に宮崎市で行われた東九州自動車道一部区間の開通祝賀式の席上、自民党の江藤隆美衆院議員(宮崎2区)が、あいさつの中で環境庁のレッドデータブックで絶滅危ぐ種に指定されているクマタカに関わって「クマタカは石を投げて追い払えばいい。駄目なら鉄砲で」などと発言したと伝えられた問題について、JNEPは次の申入書を28日付けで、同議員に対し行った。

衆議院議員 江 藤 隆 美 殿

2000年3月28日
公害・地球環境問題懇談会

江藤議員の「クマタカ発言」問題に対する申入書

 私達は「なくせ公害、守ろう地球環境」をスローガンに運動を進めている環境NGOです。さる25日に東九州自動車道部分開通の式典で、貴殿が「クマタカは石を投げて追い払えばいい。駄目なら鉄砲で」などと発言したと伝えられており、大変驚いています。まさかとは思いますが、事実とすれば、目先のインフラ整備や建設工事受注に目を奪われ、自然環境や住民のいのちや健康を軽視した問題発言です。
 地球環境が有限であって、公害や地球環境保全、自然保護や資源の保全をはかって、その枠内で経済・社会活動をしなければならず、法制度もそうした活動を促すように変えていかなければならないことが様々な分野で徐々に理解され、世界は少しずつ、環境を意識した経済・社会を実現する方向に向かっていると思います。逆にそれが理解できない企業が市場などで制裁を受けたり、欧州では環境政策の失敗で政権が交代した例も見られます。
 私達は公共事業や道路建設全てを否定するものではありません。しかし、これまでの公共事業は住民のいのちと健康、自然をあまりにも軽視し、自然破壊や健康被害を招いてきました。こうした政策は早期に転換される必要があります。言うまでもありませんが、クマタカは自然保護の象徴であって、こうした希少生物が守られれば十分なわけではありません。クマタカのような生物を頂点とする生態系全体を守っていくことが地球を守り、住民のくらしと健康を守り、また豊かな自然や資源を活かした地域の産業をも守っていくことになるのだと考えます。
 なお、報道では貴殿は「『自然を守る側と事業を進める側との調和を図らねばならない』と発言を修正した」と伝えられています。しかし、「調和」という言葉は以前にも公害対策基本法で公害防止と経済発展との「調和」と称し、事実上、企業の利益(それも住民の健康被害の犠牲の上に成り立つ利益)を圧迫しない範囲での対策として公害対策にブレーキをかける口実にされた教訓があります。一度決めたら止まらないと言われる公共事業を見直し、環境アセスメントを強化し、これまでの豊かな環境を悪化させずその範囲内で開発を行う環境政策上位の「調和」でなければなりません。
 私達はそうした政策転換を実現するため、環境政策の上位位置付けと環境アセスメントの強化を求めてきました。
 自然軽視の政治家というレッテルは大変不名誉なものと思います。僭越ではございますが、公共事業見直しや環境アセスメント制度の強化などの政策を議員自ら積極的に打ち出されてこの不名誉報道を行動で否定されることを求めるものです。
以上

 


愛知万博計画の本格見直しへ(00/2/20更新)
 海上の森(愛知県瀬戸市)を舞台に2005年に開催を計画している愛知万博をめぐる情勢は通産省と愛知県が万博開催申請のタイムリミットである5月登録を断念するなど急展開しつつある。
 ことの発端は、マスコミ各社が昨年11月(1999年11月18日)の国際博覧会協会(BIE)側と通産省担当者(藤岡誠審議官、山田尚義博覧会推進室長ら)との会談内容をスッパ抜いた「情報公開」によって、愛知県+通産省vs地元愛知県住民というこれまでの構図から一気に国際舞台を巻き込む進展を見せた。
 この会談でフィリプソン議長、ロセルタレス事務局長らBIE側は終始一貫して、計画されている愛知万博および万博とセットになった住宅開発が環境破壊を引き起こすことを主張し、そのような重大問題を包含する計画をBIEに対し申請すべきでないと述べている。また、BIEがそのように判断したのは愛知万博計画の問題を「極めて知的な論拠に基づく反対の主張」しているNGOや開催地の住民の意見に道理があり、日本政府はこうした指摘を軽くみているのではないかというもので、「あなた方は地雷の上に乗っていることを良く自覚すべきだ」など、NGOの指摘を甘くみていると近い将来とんでもないことになると警告したという。
 BIEはさらに、事業主体がアセスを行う日本方式に驚きをしめしたり、通産省側が、オオタカは全国どこでも生息しており環境庁方式で対処すれば開発はできなくなるという主張に驚きを隠さなかった。
 愛知県は2月10日にBIEに5月登録の理解を求めたものの、ここでも計画見直しの内容が不十分と、逆にBIE側からさらに指摘され、5月登録断念となった。神田知事は今後、新住事業計画の見直しでNGOなどと協議をせまられることとなり、愛知万博は真の「環境博」をめざして本格見直しに入ろうとしている。
 また、愛知県下では、愛知万博問題を県民投票で決めようとの動きも出始めた。

<これまでの経過>
 愛知万博(日本国際博覧会・2005年開催予定、2500万人入場予測)の予定地、瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」で絶滅危惧種のオオタカの営巣が確認されたことから、愛知県と博覧会協会は、大幅な規模の見直しを余儀なくされ、海上の森について30ヘクタールの範囲で使用し、青少年公園の100ヘクタールを主会場として使用することを決めていた。しかし、問題は万博終了後に予定されている県の「新住宅市街地整備事業」にあり、この新住事業とオオタカの営巣をめぐって計画見直しの声があがっていた。
 この問題で愛知県はアセス案を建設省に提出(99年8月末)していたが、環境庁はこれにたいし99年10月15日、長官名で、オオタカの繁殖に支障が出ないよう一部地域で着工を見合わせるよう建設大臣宛に意見を提出。このなかで環境庁は、愛知県のアセスで、オオタカの営巣地と計画地に距離があることから、影響は少ないとしたことについて、「現状では十分な判断データが得られていない」と、県のオオタカ調査検討委員会の調査と保護策が示されるまで着工を控えるよう述べている。
 愛知県のアセス準備書発表後にオオタカの営巣が確認されたことはアセスの進め方にも問題を投げかけたし、オオタカの調査を本格的に行うには、すくなくとも1年間以上の期間が必要で、またオオタカの営巣地をさけて計画を見直すには予定地(540ヘクタール)の相当部分(300ヘクタール)の保護が必要となる。
 しかし、愛知県は99年12月24日の愛知県都市計画審議会に環境庁の意見を反映させた修正アセス案を提出し、承認されたことから都市計画事業として決定した。注目のオオタカとの関係では「保護対策が具体的に示されるまで工事を控える」と環境庁の意見を採り入れたのみである。
 こうした動きのなかで瀬戸市のNGOは愛知県や愛知万博協会にたいし万博事業その他関連事業の撤回と、海上の森の保存(野鳥130種、昆虫6000種、ギフチョウ、シデコブシなど多様な生態系)を求める運動を強めている。
 地元市民グループ「海上の森を守る署名活動実行委員会」は99年7月末に、海上の森開発反対署名を13万3768人集め、愛知県に提出している。
 いっぽう、国際的NGOであるWWF(世界自然保護基金)は、99年11月16日までに、各国で開催される万博を監督する立場にあるフランスの博覧会国際事務局にたいし、海上の森の自然を完全に保護する適切な手段をとるようWWF本部事務局長名の書簡を送った。また、愛知革新県政の会と瀬戸環境を考える連絡会の代表は99年12月8日、国際博覧会協会のフィリップソン議長とロセルタレス事務局長に、海上の森での万博開催の問題点を訴えた。 


吉野川可動堰に有権者の半数にせまる反対投票
 徳島市で実施された吉野川可動堰計画の賛否を問う住民投票は2000年1月23日、投開票された。投票率約55%(54.995%)。投票結果は建設に反対するものが総投票数の90.14%(10万2759票、計画賛成は9367票)を占め、全有権者数(当日有権者数20万7284人)の過半数にせまった。
 今回の住民投票は徳島市議会の力関係で住民投票が有権者の過半数を超えない場合、開票しないというきわめて特殊で、しかも民主主義の根幹にふれる制度のもとに実施された。
 建設推進派はこの特殊な制度を利用して、有権者が投票に行かないことで住民投票を失敗させることをねらい、激しい「棄権運動」を展開し地縁をたどって有権者に棄権をせまるなど実際的にもなりふりかまわない「棄権運動」を展開した。
 このような状況下で投票率55%が勝ち取られたことは、先の徳島市議会への吉野川可動堰建設反対派の進出や、住民投票制度の成立と実施などを次々と実現させてきた徳島市民の世論の高まりにあった。
 この世論を背景に、もともと建設推進派であった小池正勝徳島市長も住民投票結果に従うと態度表明をしていたが、投票結果をうけて改めて「建設反対」を表明した。
 投票結果が投票者の9割が建設反対で、しかも全有権者の半数にせまるという市民の態度が示された。河川改修という下流地域で生活する住民にとって洪水から生活を守るということを第一議的に考える住民の立場にもかかわらず、建設省が推進する可動堰計画が環境を破壊し、しかもゼネコンのための事業でしかないこと、老朽した現堰の維持・改修は別途検討すべきだという、理性的でかつ妥当な方向が示されることとなった。
 建設省は、もともと1地域の住民投票は事業の性格からしてなじまないといい、また住民投票の結果に関わらず可動堰事業を推進するとしていたが、有権者の半数にせまる徳島市民の世論に押され、1月24に日に中山建設相は微妙なニュアンスながら可動堰事業に替わる他の方法も含めて吉野川の治水事業を模索するための合意をさぐりたい旨の発言を行った。
 この限りにおいて10万人の可動堰反対の住民の声が霞ヶ関を変えようとしていることは間違いない。また、吉野川治水問題で他の方法も含めて検討すべきだというのは、すでに徳島市民側からなされている代替案の提案と同じだ。建設相がそこまでいうのなら、可動堰案をいさぎよく撤回すべきだろう。
 しかし、建設省は先の徳島市議会における可動堰反対派が多数を占めた時点で、地元の意見に従うと言ったり、住民投票は広域事業になじまないと発言したりなどして徳島市に圧力をかけたり、定見がないことを徳島市民に見透かされている。したがって建設省に可動堰計画断念を言わせるまでにはさらに大きな運動の広がりが期待されている。
 今回の徳島市の住民投票の結果は、地域住民の頭ごなしに進められてきた公共事業の根本的なありかたに今後大きな影響を与えることは確実だろう。
吉野川可動堰問題のこれまでの経過


吉野川可動堰で住民投票へ(2000/1/23更新)
 99年春の徳島市議会選挙で、吉野川可動堰建設を住民投票で決めるべきだとする議員が議会の過半数を占めたことから、実施時期を明定しないという変則的ながら住民投票条例が成立したが、99年12月には実施時期について2000年1月23日とする住民投票の「期日条例」が成立。ようやく国の公共事業のありかたをめぐって徳島市という1地域での住民投票が実現する運びとなった。
 今回の住民投票の実施には、おおむね公選法に準拠して実施されるが、投票率が50%を割る場合には開票しない取り決めもなされており、せっかく投票を行いながら場合によっては投票自体が破棄されることもあり、徳島市議会での妥協の結果とはいえ、全国の住民投票の運動に少なくない影響を今後与えることも考えられる。
 徳島県では、ここにいたる経過のなかで、建設大臣が徳島市長に頭ごなしの書簡を送り、住民投票はなじまないなどと画策したり、建設省と地元推進側による自治体当局や地元経済団体が中心になった可動堰推進の署名運動(第十堰・署名の会)が県商工会議所連合会、県商工会連合会、県中小企業団体中央会、JA徳島中央会、県消防協会、徳島・鳴門・石井・松茂・北島・藍住・板野・上板の流域2市6町のタテ線組織を使って強引に進められ、すでに30万人を集約したとするなど、可動堰反対の住民運動に対抗しており、これらの影響が徳島市での住民投票の投票率の動向に影響を与えることも考えられる。徳島市での住民投票運動の経過は次の通り。
 「第十堰住民投票の会」が99年1月に署名10万1535人分(確定署名数・有権者の49%相当)をそえて求めていた、吉野川可動堰建設の可否を住民の投票できめる条例制定請求について、2月5日、徳島市議会の特別委員会は4対7で条例請求を否決。また2月8日の同市議会本会議でも条例案反対22、賛成16、退席1で否決。その後、6月議会で実施時期を明定しないまま成立。
 また隣町の藍住町で進められていた住民投票条例制定要求署名は有権者の44%、9663人を集め、2月1日に直接請求されたが、同町議会は2月19日、条例制定反対10対賛成7で否決。
 このほか、住民による自主アセスと住民による代替案の提案という動きも、可動堰問題に影響を与えようとしている。
 公害・地球懇 (JNEP)は住民投票の成功を願って次のメッセージを送りました。

吉野川住民投票の会へのメッセージ

住民投票で可動堰「反対に○」の会 御中      2000年1月21日/公害・地球懇 (JNEP)

 「さあ本番です ワン・ツー・スリー」。
 この合い言葉をもとに、幅広くまた精力的に運動をすすめておられる皆さん方に対し、心からの敬意を表しますとともに、激励と連帯のメッセージを送ります。
 二一世紀こそは、国内外問わず、環境問題が最大の課題であることは論をまちません。二一世紀への橋渡しをしようという今、次世代に生存の基盤ともいうべき環境破壊のツケを回すことのないよう今を生きる私たちの責務が問われています。
 「豊かな自然は、豊かなまま子供たちに・・・」。
 皆さん方の運動こそは、こうした国民的な願いに沿った大事なたたかいです。 いよいよ、全国的に注目されている住民投票も最終盤を迎えましたが、皆さん方がいっそう団結を固め、中山建設大臣発言をはじめとするあらゆる妨害をはねのけ、住民投票を成功させること、さらに完全勝利にむけ運動を発展させることを願い、連帯と激励のメッセージと致します。


横浜南の円海山を守る運動ひろがる
 高速横浜環状南線(圏央道)事業にかかわって、栄区の円海山周辺で絶滅希少種のオオタカの営巣が確認されたことから地元関係者が、貴重な生態系をまもろうと運動を広げている。99年11月13日にも地元栄区の「円海山周辺の自然環境を守る市民の会」がオオタカ調査を行うとともに、生態系を守るアピールへの賛同を呼びかけた。
 2000年2月6日には、250人をこえる集会と現地調査も成功し、アピール賛同者も増えている。  JNEPもこのアピールに加わるとともに、全国の関係者に賛同を呼びかけます。

「円海山周辺の自然環境を守る市民の会」
(email -> qd6s-mngw@asahi-net.or.jp)

 

 ●円海山周辺の生態系を守る共同アピール  

1999年11月13日

 円海山周辺は、横浜市内で最も広い緑地帯です。
また、ここは三浦半島の緑の北端に位置し、多摩丘陵へと繋がる結節点でもあります。
 更に、円海山から北鎌倉の地域は首都圏近郊特別緑地保全地域にも指定されており、横浜市、神奈川県だけでなく首都圏の重要な緑の拠点でもあります。
 
 都市部では極めて貴重なこの緑地には、優れた生態系が残されています。
 『種の保存法』で「絶滅危急種」に指定されているオオタカをはじめ、ホトケドジョウ、シマドジョウ、ヒメウキガヤ、カントウカンアオイ等の希少・減少動植物、四千種もの昆虫類の宝庫であり、これら動植物を潤す湿原や池が点在、全体として優れた自然環境を保っているのです。
 
 ところが今この中心部にあたる釜利谷地区で、緑地を東西に分断する高速横浜環状南線の事業が進められており、事業者(建設省)は1999年度内にも工事着手する意向と伝えられています。
 アセス審査に於いて「釜利谷地区には多様な生物相を有する市内に残された貴重な地域であることから、工事着手前に動・植物相の詳細な調査を実施するとともに、専門家を加えて現存の生物相の特徴を踏まえた総合的な保全計画を作成すること」と指摘を受けたにも拘わらず、調査すら十分に行われない状況で工事着工などとんでもないことです。
 
 南線計画は、環境影響評価審査終了(1994年11月)、都市計画決定(1995年4月)から間もなく丸5年経過します。しかし、これまでの強引な進め方に地域住民の同意が得られず、朝日平和台・湘南桂台・庄戸等の地域では未だに『測量調査説明』すら行われていません。
 この様な状況で一部区間の事業を先行させるやり方は、公共事業の見直しが求められている時代の流れに明らかに逆行するものです。
 
 そこで、私たちはこの地域に生息する全ての生き物(人も含みます)を代弁し、以下アピール致します。
 自然との共生を願う全ての個人・団体の皆さん、是非このアピールへの参加をお願い致します。


1.円海山周辺の自然環境保全のため、先ず生態系全体の詳細な調査を実施し、専門家・住民を交え総合的な保全対策、保全計画を検討すること。

2.「絶滅危急種」のオオタカについては、「猛禽類保護の進め方」(環境庁)に基づき少なくとも二営巣期以上調査を行い、専門家と住民による検討を行い、保護対策を検討すること。

3.地域住民の合意が得られない状況で一部区間の事業を先行させるやり方を改め、地域住民とよく話し合い、地域合意形成に努力すること。

4.以上三点が満たされるまでは事業を凍結すること。

 <共同アピール賛同団体>
☆神奈川グリーンネット ☆神奈川オオタカ保護連絡会
☆かながわ水・環境問題を考える会 ☆かながわ大気汚染・道路公害連絡会
☆丹沢ブナ党 ☆相模川キャンプインシンポジウム 
☆尾瀬の自然を守るやまゆりの会 ☆秦野の自然と環境を守る会 
☆伊勢原の自然と環境を会守る会 ☆さんげつ会
☆公害地球環境問題懇談会 ☆よこはま環境フォーラム 
☆横浜の緑と文化を守る会 ☆グリーンタフ 
☆都市計画道路岸谷線と大気汚染を考える会 ☆新社会党神奈川県本部

 <共同アピール賛同者>
【衆議院議員】 
☆大森猛 ☆五島正規 ☆佐藤謙一郎 ☆辻第一 ☆土井たか子 
☆中川智子 ☆藤木洋子 ☆保坂展人 ☆松沢成文 ☆横路孝弘
【参議院議員】 
☆石井一二 ☆今井澄 ☆岩佐惠美 ☆大淵絹子 ☆大脇雅子 ☆緒方靖夫
☆岡崎トミ子 ☆田英夫 ☆中村敦夫 ☆畑野君枝 ☆福島瑞穂 ☆山下八洲夫
【神奈川県会議員】
☆木内宏 ☆又木京子
【横浜市会議員】
☆荒木由美子 ☆井上さくら ☆岩崎ひろし ☆大貫憲夫 ☆河治民夫 
☆柴田豊勝 ☆手塚勇夫 ☆中家治子 ☆中島文雄 ☆与那原寛子
【弁護士】
☆岩橋宣隆 ☆大島正寿 ☆小倉孝之 ☆加藤満生 
☆亀井文也 ☆佐藤正幸 ☆西村隆雄
【医師】
☆高野良裕 ☆野本哲夫
【学者ほか】
☆法政大学教授 五十嵐敬喜 ☆横浜市大教授 加藤彰彦 
☆青山学院大教授 平松紘 ☆天野礼子 ☆森綾子(あす協)
☆恩田幸一(横浜生涯学習まちづくりボラ協会) ☆竹内紀夫(金沢野鳥クラブ)
☆増山博康(環境クラブ) ☆横井美樹子
(2000年2月2日現在)


第二湾岸道と三番瀬考えるシンポ開く
 公害地球懇(JNEP)は10月2日、千葉市内で「千葉の公害・環境を考える」シンポを開催。これに先だって、首都圏の3環状道路計画として市川市の市街地を縦貫する外郭環状道路の計画現場と、三番瀬に建設が計画されている第二湾岸道路の関連性などを調査するため三番瀬を視察。
 シンポでは、野鳥の会の俵正章さんらから、三番瀬の現状と干潟の役割、東京湾の自然破壊の経過などのレクチャーをうけたのち、外郭環状道路反対運動に30年にわたってとりくんでいる高柳俊暢さんが、第二湾岸道路は外郭環状道路に集中する交通量をさばく新しい受け皿として計画されている。これら2つの計画は一体のものであり、3000戸の立ち退きなど、街こわしとなる外郭環状道路反対運動と、自然破壊となる第二湾岸道路反対の運動をともにすすめる必要があると報告した。
 また三番瀬を守る署名ネットワークの竹内壮一さんは、三番瀬を守る署名がすでに20万筆を越えていることを報告し、千葉県が見直し案として示している埋め立て案でも、干潟が破壊されるのはまちがいなく、第二湾岸道路のための埋め立てをやめ、東京圏の交通体系のありかたを問い直す運動を強調した。
 さらに、3環状道路計画のひとつである圏央道問題に関して、東京・あきる野市で計画用地の強制買収が強行されようとしている現状が、橋本良二さん(高尾山の自然を守る市民の会)から報告され、環境をまもるための海と山をむすんだたたかいを呼びかけた。


神戸空港賛否投票に31万人
 99年7月から8月はじめまで取り組まれた「神戸空港賛否・市民投票」(投票実行委員会須田勇代表)は、8月18日、この市民投票に31万1498人の市民が参加し、うち29万3367人が空港建設に反対(94.2%)したとの取り組み結果を発表した。
 これは、98年11月の神戸臨時市議会で空港推進派の与党勢力によって否決された「神戸空港を問う住民投票条例案」に関して「神戸空港・住民投票の会」が運動の継続をはかってきたもの。
 神戸空港の是非を問う住民投票をもとめる条例制定要求署名運動は98年9月末までに30万の目標を越え、35万署名を市選管に提出。31万の有効署名が確定したが、否決された経過がある。
 しかし、その後の99年4月の地方選挙で住民投票賛成派議員が4人増の23人に、推進派が多く落選するなど、状況の変化も起きている。

 神戸の市民団体「ミナト神戸を守る会」(井上香子代表)は、@神戸空港の建設計画は環境対策が不十分で違法、A財政的にも空港建設で市民の負担増が予測されると、笹山幸俊神戸市長を相手に99年度の市空港関連予算378億円の支出差し止めを求める訴えを、神戸地裁に起こした(99/9/1)。

 こうした反対運動を無視するかたちで、神戸市はポートアイランド沖の埋め立て予定海域を工事の汚染から防止する作業を開始し、空港の着工に踏み切った(99/9/13)。


苫小牧東部に産廃処分場建設?(99/12/29更新)
 野中官房長官は99年9月28日、北海道の開発や青森のむつ小川原開発の名をあげて、「国が関与して産業廃棄物処理施設を建設する必要がある」と発言した。
 大型開発の破綻の象徴ともなっている苫小牧東部開発(1969年計画)に関しては、宮沢蔵相が99年4月20日の衆院大蔵委員会で、野党議員の質問に答える形で、「30年前からここまで、一体お前たちは政治をやっていて何をしていたのかね、私自身むち打たれる思いなんです」と答弁。さらに「国の発想そのものに誤りがあったといわれれば、私は『そうだ』と申しあげざるをえない」などと発言していたが、こうした開発の失敗を廃棄物最終処分場建設につなげて延命・蘇生させるあたり、政府のしたたかさを示した発言である。


クマタカ営巣で各地の開発工事中断あいつぐ(99/7/31)
 岐阜県が同県大和町に建設中の内ケ谷治水ダムの関連工事現場近くで、クマタカ一つがいの営巣が見つかり、県が一部の工事を中断した。県は、同ダムに関する専門家でつくる環境保全検討委員会を今年1月に発足させ、クマタカの繁殖期間中は周辺の工事を中断することを決めた。工事方法やルートの変更を検討中。(99/7/11)
 伊勢市矢持町で民間業者が計画する産業廃棄物処分場予定地近くでクマタカの生息を日本野鳥の会三重県支部が確認。県にクマタカの保護と調査を要請。処分場予定地から2200mの地点での目撃もあり、4羽が生息していると推定している。産廃処分場は、県に設置許可の申請中。地元自治会は水源地汚染を恐れ反対している。(99/7/15)
 岩手県川井村と遠野市などにまたがる大規模林道川井―住田線の一部工事区間に生息している3つがいのクマタカのうち1つがいで繁殖が確認され、「早池峰の自然を考える会」(奥畑充幸代表)は、岩手県に専門家による調査検討委員会を要望した。事業主体の森林開発公団も繁殖を確認し、今後の取り扱い決めたいとしている。(99/7/22)
 


PFI推進法の成立で塩漬け土地も活用(99/7/31)
 道路や港などの社会資本整備に民間の資金を活用するPFI推進法(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)が7月23日、可決成立(反対は共産党のみ)した。PFIは、事業の資金調達から建設、管理までを企業がまとめて請け負うもので、第3セクター方式による公共事業推進破綻後の新手法として大手建設業界から期待されていたもの。
 議員立法によるこの法案は、昨年、自民・社民・さきがけの3党が提出したが、今国会で政府の出資や債務保証など事業を請け負う企業への支援措置の一部を削る修正がなされたが、企業がかかえる塩漬け土地を事業用地として買い上げるシステムなどは盛り込まれており不良資産処理に格好の内容となっている。PFI推進法は10月下旬にも施行される。


公共事業で諌早湾奥部や長良川河口の環境悪化(99/7/7)
 国の干拓事業による堤防閉めきりを行った諫早湾奥部の水質悪化が悪化している。
潮受け堤防の排水門からの調整池の有明海への放流水は、処理されない生活排水を含み諫早湾に流れ込み、同湾を汚染している。
 いっぽう長良川河口堰でも運用開始(1995年)から4年間が経過したが、ヘドロが最大で2メートルもたい積し、シジミの生息環境が破壊され、アユも姿を見せず、ヘドロから高濃度の環境ホルモンも検出(シンポ/長良川河口堰運用5年・被害の実態を科学が問う)などと報告されている。


アメリカ、初のダム取り壊し
 アメリカのメーン州で連邦政府の命令によるダム撤去の第1号となったエドワーズダムの取り壊し作業が7月1日から始まった。162年前にできた水力発電用のダムだが、サケやマスなどが川をのぼるのを妨げており、環境への害が大きいと判断された。老朽ダムが取り払われた例はあるが、環境回復のため政府が撤去を命令した初のケース。米国では環境を守るためにダムを撤去する動きが進んでおり、その歴史的な一歩である。
 ダムは高さ約6メートル、幅約280メートル、大西洋に注ぐケネベック川の河口から約60キロ上流にある。発電所の出力は3500キロワットで同州の電力の0.1%を供給している。
 連邦エネルギー規制委員会(FERC)は1997年、ダムの免許更新に当たって環境への影響を考慮することを求めた86年の法改正にもとづいて、このダムの免許更新を初めて拒否、所有者負担によるダムの撤去を命令したもの。
 所有者は異議を申し立てていたが、昨年5月、1000万ドルにのぼると見られる撤去関連の費用を環境団体などが負担することが決まった。撤去作業は今年11月末には完了する予定。これでサケやチョウザメが上流の産卵場所にさかのぼれるようになる。


徳山ダム工事でクマタカ繁殖失敗(99/8/3)
 岐阜県藤橋村に水資公団が建設中の徳山ダム工事現場で、絶滅危惧種TB指定のクマタカが営巣し、ヒナを育成中であることが確認されたことから、徳山ダム建設中止を求める会(上田武夫代表)の工事中止とクマタカの保全要求にたいし、公団側は工事を一時中断し調査したところ、クマタカが繁殖に失敗していることが確認されたとして工事を再開した。
 水資公団側は1996年から「徳山ダムワシタカ類研究会」を設置し調査研究してきた経過があり、今回の問題についても、くわしい調査を行う必要があったのだが、ごく短期間の工事中断で工事を再開してしまった。
 本来なら、こうした場合に、この研究会が慎重な調査を行うべきなのだが、今回、研究会は動かなかった。これにたいして中止を求める会は、研究会は事実上の公団側の隠れみのにすぎないと批判している。
 公団側は、イヌワシ1つがい、クマタカ8つがい(2つがいが繁殖中のところ1つがいが繁殖失敗)が事業区域をテリトリーとして生活していると発表しているが、これらのワシタカへの工事の影響について、なにも説明していないばかりか、今回の繁殖失敗の理由を密猟やマニアの観察にあるとまでにおわせている。こうした公団側の態度に地元は、これまでの調査と保全のありかたに大きな問題があると、強い不信感をつのらせている。
 なお、公団側は、来年以降も同じ場所で繁殖する可能性があることから、営巣に接近しすぎている工事用道路のルート変更などを検討していると発表した(99/7/21)。

 「徳山ダムワシタカ類研究会」の3人の委員(日本野鳥の会岐阜県支部メンバー)が公団側の工事再開に抗議して辞任した(99/8/3)。


「三番瀬」計画縮小でも水鳥に打撃(99/12/29)
 99年12月16日までに千葉県がまとめた埋め立て縮小案にたいするアセスが発表されたが、101ヘクタールに縮小したとしても、シギ・チドリ類のエサ場や休息場が60%も現状より縮小するほか、水鳥のエサとなるエドガワミズゴマツボ、コノハエビなどの底生生物が40%から50%も死滅するなどの予測が示された。
 これは、約20万人の埋め立て反対署名を県に提出するなど、埋立て反対運動を展開してきた「千葉の干潟を守る会」(大浜清代表)の縮小案でも依然として大規模と白紙撤回を求めていた主張を千葉県も結果的に認めたことになる。
 日本野鳥の会、日本自然保護協会、WWFジャパンなどの自然保護団体も、99年6月17日、縮小案でもなお過大で高速道路が鳥や景観に影響するなどと、あくまで全面撤回を求めている。
 いっぽう環境庁は99年9月7日、第2湾岸道路の建設に関して、渡り鳥に影響を及ぼす高架方式ではなく、トンネル方式でも可能とする報告をまとめた。報告では、@高架方式ではジャンクション工事で干潟などを削るなど環境への悪影響が懸念される、Aルートを陸側に変更してトンネル、高架、橋脚を組合わせた場合も鳥の渡りに影響する、Bルートを陸側に変更するトンネル案が最も環境への影響が小さいとしている。
 これにたいし千葉県は、99年12月20日、地下方式は外環との接続部分の安全性に問題があり、工費も高架の4倍かかるなど地下化は困難との態度を公表した。

<三番瀬問題の経緯>
 「三番瀬」は、千葉県市川、船橋両市沖の東京湾奥に広がる。シギやチドリなどの渡り鳥が飛来し、カレイやハゼなど約100種の魚類をはじめさまざまな海洋生物が生息する。
 千葉県は1993年、三番瀬の約3分の2にあたる約740ヘクタールを埋め立てる「市川2期・京葉港2期地区計画」を策定し、市川沖470平方メートルを下水道終末処理場や廃棄物最終処分場用地などに、船橋沖270平方メートルは大型外国船が利用できる公共ふ頭整備などのために埋め立て、整備する計画で湾岸道路などの渋滞緩和のため第2湾岸道路(広域幹線道路)建設も盛り込んでいた。
 しかし千葉県は、同干潟の壊滅による渡り鳥への影響を指摘した千葉県のアセスや、干潟保護運動を展開する住民らに譲歩するかたちで、計画当初案を大幅に削り込んだ見直し案を、99年6月9日に公表。
 これによると、当初の740ヘクタールを埋め立て計画は、101ヘクタールに縮小。そして埋め立て地を利用する事業も、下水処理場、都市開発用地(市川市側)と港湾施設(船橋市側)に最小限度にとどめ、第2湾岸道も大きく北側の現在の埋め立て地側に寄せる。千葉県は、これで干潟への影響は最小限度に食い止められると説明。
 もともと95年11月に千葉知事の諮問機関「千葉県環境会議」が「計画の具体化には、三番瀬の生態系などに関する補足調査が必要」と提言して、計画は2年間、事実上凍結されていた。その後、沼田知事は98年5月に初めて「三番瀬埋め立て計画縮小」を明らかにし「計画策定懇談会」を発足させた。


自治相が住民投票規制を検討
 ゴミ処分場や大型開発事業推進の是非をめぐり、各地で繰り広げられている住民投票制度は、徳島市の吉野川可動堰の是非を巡る問題で、建設省の政策に影響をあたえるところまで広がってきている。
 この問題に危機感を抱いた政府は、住民投票制度の規制に乗り出す考えを明らかにした。野田自治大臣は5月26日の衆院行革特別委員会で、自民党議員の質問に答えるかたちで「国自身が決定しなければならない事務・事業もある」「住民投票になんでもかんでも付していいのか」「住民投票になじむ事項、なじまない事項について交通整理を重点的にしたい」との見解を述べ、現在の住民投票制度の見直しを示唆した。
 これは、現在審議中の地方自治統制との批判が強い「地方自治法一括改正法案」の審議のなかで起きた。まさに国の自治体統制を強化する政策のなかでの関連した動きとして注目を要する。
 質問した自民党議員は、吉野川可動堰問題での住民投票の動きを地方自治に反する動きと批判し、先の建設大臣の住民投票の結果に従うとの発言以降の運動のたかまりに対する巻き返しにでた。
 また、建設省内には住民投票制度にたいする危機感も強く、へたにこの動きに触れると公共事業にたいする住民投票の役割を認めることになるということから、もっかのところ官僚が直接、この問題にふれることはない。


ラムサール会議とNGOの活動(99/5/23)
 中米コスタリカの首都サンホセで5月10日から開催された第7回ラムサール条約締約国会議(1980年加盟)では3日目の12日、アジア地域からの報告を受けて、環境庁が藤前干潟の保全が決まったことを報告した。また、藤前干潟を守る会代表の辻淳夫さんが、日本政府報告に付け加えるかたちで別項の発言をおこなった。
 辻発言は、藤前保全の意義とともに諫早の開放、朝鮮半島の浅海域の危機問題などを訴えた。
 また同日、大阪ガスのLNG基地建設による中池見湿地(福井県)の破壊を憂慮する国際湿地保全連合などが、LNG基地建設に反対する緊急アピールを福井県知事、大阪ガスなど関係先に対し行った。
 またこの会議で、沖縄の漫湖(那覇市と豊見城村の河口部)が日本で11番目のラムサール条約の登録湿地(干潟としては2番目)として、あらたに認定された。
 最終日の18日には「干潟保全決議」が採択され、日本湿地ネットワークの伊藤よしのさんがNGOを代表して、湿地の保全へのNGOの役割について、@前回の会議以降、世界36のNGOが湿地の賢明な利用で活動し、この会議で報告した。 ANGOがそのために900万米ドルを使った。 B湿地の賢明な利用でNGOをパートナーとすべき。と発言した。

<辻淳夫さんの発言>
 私は日本湿地ネットワークと藤前干潟を守る会を代表する辻淳夫です。
 15年に及ぶ市民活動の結果、名古屋市の新しい市長は、国際的に重要な湿地の基準を満たす藤前干潟のごみ埋め立て計画を断念されました。
 日本政府環境庁のご協力に深く感謝し、併せて、建設省、名古屋市の決断に感謝します。ここに来るまでには長年に及ぶ市民活動があり、またNGO、科学者、学生、報道、世界の市民の方々の緊密な連帯がありました。そしてまた、温かい激励と支援を下さったラムサール事務局と参加政府の方々にも感謝いたします。
 名古屋市の"使い捨て社会"への新しいアプローチは、同時に、日本の環境アセスメントと公共事業に対する大きな転機を約束するものです。
 しかしながら、この決定は決して独立して行われたものではありません。2年前に起こった3,500haの諫早湾干拓事業のための悲劇的な環境破壊は、内外に大きな抗議をかもしました。このことが、干潟保全に関する議論を先端に引き出し、藤前保全のための舞台を用意したのです。
 藤前は、新しい世紀への干潟再評価と復元への最初のステップといって良いでしょう。しかし、巨大な公共事業は今も、日本に残された各地の干潟を脅かしています。例えば東京湾三番瀬、博多湾和白干潟、曽根干潟、吉野川河口などです。そしてまた、朝鮮半島では多くの浅海域が危機にあります。これらの中で最大のプロジェクトは、40,000haのセマングム干拓事業です。こうした全体的な開発の傾向は依然として続いているのです。
 人類へのメッセージは「諫早」と「藤前」の選択にあります。私たちは、「藤前」を21世紀への希望をもたらす例として、子供たちと分かち合い、共に残された干潟の保全に向けていかなければなりません。私たちNGOは、諫早を閉切っている水門を開放し偉大なる価値を持つ諌早干潟を復元することで、アジアの未来を導き、世界の湿地問題について前向きな答えを示すことを、ここに繰り返し要請いたします。
 最後に、会議参加者の皆様に、フィリピン政府が提案されている潮間帯湿地の保全と賢明な利用に関する決議案15.22にぜひご注目いただきますようお願いいたします。


建設大臣、吉野川可動堰に住民反対なら中止発言撤回
 関谷建設大臣は4月27日、吉野川可動堰建設問題に関して、先の統一地方選挙で徳島市議会への建設見直し勢力が過半数を超えたことから、住民投票条例が可決されるだろうとの見通しを示し、それを受けての住民投票結果が建設反対となった場合、建設省として可動堰建設を中止すると述べ、さらに「今日の時代で住民投票をして、過半数の人が駄目だというならば、それを超えてやるべきではない」とも発言し、2月時点での徳島市議会の与党側の硬直した姿勢と対照的な判断をしめしていた。
 また、29日に徳島市内の地元説明会の席上、四国地建徳島工事事務所の大平一典所長も「可動堰化計画をすすめるかどうか、決めるのは住民のみなさんです」と発言、さらに「ごり押しとの誤解を招いたことは反省する。わかりやすい説明、情報提供に努めたい」と述べた。
 ところが、これらの発言から1ヵ月もたたない5月18日、建設大臣は住民投票について「1市6町の問題が徳島市の住民投票になじむのか。建設省の責任放棄という声もあり軌道修正する」「事業は清々粛々と進める」と発言。前言を撤回した。
 これは、さきの大臣発言に関して徳島県内の可動堰推進5団体が地元の徳島工事事務所に大臣の発言撤回を求め(4/30)、圓藤徳島県知事も「徳島市の結果だけで決めるのはいかがなものか」など大臣に申し入れ(5/7)、徳島市を除く流域7市町の首長や議長らが同趣旨の意見書を大臣に提出(5/14)するなど、早くも強力な巻き返しが行われたことによる。
 その後、建設大臣は地元推進団体に事業推進の確約を行い(5/19)、「十分な選挙運動を(徳島市で)しなかった(から負けた)」(5/23松山での発言)などとのべ、逆にはっぱをかけている。
 いっぽう、吉野川流域の国府町でも「第十堰住民投票で決めよう国府の会」も結成(5/22)され、あらたな運動も始まっている。
 統一地方選挙での住民投票条例運動を推進した住民の力が、霞ヶ関の判断に影響をあたえるという新しい時代に入ったかに見えたが、大臣発言の撤回という新たな動きが徳島の条例化運動をめぐる攻防を一層はげしくしている。

 


藤前干潟保全と名古屋市のゴミ問題
 名古屋港の藤前干潟に代わるごみ処分場の確保を検討している運輸省、愛知県、名古屋市の3者が、運輸省が管理する名古屋港内のポートアイランドなどを含む名古屋港沖で新たなごみ処分場を確保することで合意した(3月26日報道)との動きのなかで、藤前干潟を守る会の辻淳夫代表から次のMailが寄せられました。
 名古屋市会議員あての文書になっていますが、ここには藤前干潟保全の今後の具体方向と、名古屋市のゴミ問題の解決に向けての基本姿勢と方策が示されています。

 

藤前干潟保全についてのお礼とお願い、名古屋市会議員各位へ(99年3月17日)

藤前干潟を守る会 代表 辻淳夫

 藤前干潟保全とゴミ減量先進都市への名古屋市の決断と、それを支えた市議会の判断を歓迎し、21世紀に生きるものたちに希望を伝えられることを心から感謝しています。
 市民に盛り上がっているゴミ減量への機運と、全国各地の公共事業の見直しに良い影響を与えていることを私たち名古屋市民は誇りにして良いと思います。
 ただし、それは "藤前は残ったが、ゴミは環境を壊し続けている"と言われないよう、これからの実践にかかっているでしょう。名古屋市は処分場代替地の確保に苦労されているところですが、どうするにしろそれを最後のものとして、それを使い切るまでに埋立処分場の要らない社会、ゼロエミッションのしくみを作り上げてほしいと思います。
 その点に強い関心を持って、この3月議会と来年度予算審議を見守ってきましたが、もうひとつ、具体的な道筋が見えてきませんでした。名古屋市には、「非常事態宣言」を出した都市ならではの思いきった政策がさらに展開されることを期待したいと思います。
 近く行なわれる市議会選挙では、市民の多くが、「藤前」の経験から、市民の声を反映する市政のあり方と、「藤前」を転機にして「環境都市」への脱皮をめざす政策をいかに具体的に示すかということで、21世紀への選択をされることと思います。
 私たちの期待する政策をつけておきますが、議員のみなさまには、これまでのいきさつを超えて、これからどうするか、という点でしっかり政策論争をしていただきたいと思います。ご健闘をお祈りしています。

「藤前干潟でのゴミ埋立計画断念」を受けての政策

1. 代替策について、

a. 代替策の最終目標は「ゴミで環境を壊さない社会」(いわゆるゼロエミッション)の創造におくこと。

b. そこへ向けて、「非常事態宣言」を出した名古屋市ならではの独自の政策(たとえば、名古屋市デポジット条例など)を思いきって実行する。

c. 最終処分場はa. の実現で不要になるまでの限定的なものととらえ、かつそれが新たな環境破壊となることがなく、既存の不要な公共事業の見直しを優先させること。

2. 藤前干潟の保全について、

a. 既に環境庁が設定計画を持っている国設鳥獣保護区、ラムサール条約の登録地に指定して、法的な保護をはかる。

b. 藤前干潟の生態系をまるごと保全し、かつ、市民の憩いの場として、体感学習のできる場、環境教育の場として活かす「渡り鳥と干潟のサンクチュアリー」としての整備をはかる。そうした保全策の検討は市民参加のもとに行なう。

c. 藤前干潟を「市民の宝」として、渡り鳥がつなぐ国際交流(たとえば渡来地ネットワークへの参加、姉妹湿地の指定など)を積極的にすすめ、1-a.の展開と合わせて、先進的な環境都市としての政策をすすめる。

藤前干潟の保全と渡り鳥公園構想

●渡り鳥と干潟のサンクチュアリーとしての整備理念
(ハードウェア)ビジターセンター/展望大温泉/満潮時の休息地など
(ソフトウェア)ガイドレンジャー/体感学習プログラム/ゴミ問題学習コースなど
(ハートウェア)ハードウェアとソフトウェアをつなぐ市民参加とボランティア活動/藤前干潟を守る会が積み上げてきたものを活かすしくみ/干潟探検隊/干潟の学校/生きものまつり/渡り鳥の調査、ハマシギ日米共同調査、アラスカユーコンで足に色旗つける/干潟生態系の調査、アナジャコ、ヤマトオサガニ、ゴカイたちのライフサイクル、魚類生態と伊勢湾生態系との関係、アユの遡上、干潟利用の生態/干潟の保全、環境修復と改善、活用計画、研修プログラム開発

● 渡り鳥がつなぐ国際交流
シギ・チドリ渡来地ネットワークへの参加/繁殖地、越冬地との交流プログラム

 


徳山ダム事業認定取り消し求め提訴
 水資源開発公団が岐阜県藤橋村に計画している徳山ダムの事業認定は土地収用法に違反していると、ダムで水没する土地の共有地の地権者(岐阜、愛知県など11都府県57人)で組織する「徳山ダム建設中止を求める会」(上田武夫代表)が3月16日、建設相を相手に、事業認定の取り消しを求める裁判を岐阜地裁に対し行った。
 原告側は、徳山ダムで発生する新規利水の必要性は認められない。新規利水の開発は地方財政に大きな負担をもたらす。洪水対策も徳山ダムに頼る根拠がない。ダム建設は国の天然記念物であるイヌワシの生息を困難にするなど自然環境を破壊する。ダム建設は公益性や合理性が欠け事業認定は違法を主張する。
 この裁判とは別に、徳山ダム建設中止を求める会は3月1日にも岐阜県知事を相手に県のダムの建設費の支出の返還を求める裁判を起こしている。
 2007年の完成を目指す徳山ダムは、揖斐川上流に建設中の日本最大級の多目的ダムで、一部の用地買収が難航していることから、水資公団からの申請で建設省が98年12月、土地収用法に基づく事業認定を強行したもの。


ナキウサギ生息地保護運動実る(99/3/20)
   士幌高原道路建設ついに中止
 ナキウサギ生息地の保護などをめぐって建設の是非が論議されていた大雪山国立公園内の士幌高原道路計画に関して、堀達也北海道知事は3月17日の記者会見で、計画の中止を発表した。1972年工事中断以来27年ぶりの中止決定である。
 この道路計画は1966年に着工したが、自然破壊が指摘されたため1972年に全長21.6キロのうち、2.7キロを残して中断していたが、未着工区間を全線トンネルにする工事再開案に対し、ナキウサギなど貴重な動植物が生息すると北海道自然保護協会、十勝自然保護協会、北海道自然保護連合などのNGOが、札幌地裁への提訴を含む全国的な反対運動を展開していた。
 国立公園第1種地域にトンネルを通す計画について掘知事は、会見で「道民の環境保全の意識の高まりを踏まえ…」費用対効果など「総合的に判断しとりやめる」と述べた。
 道当局が計画を見直すシステムとして、独自の開発計画評価制度としての「時のアセス」制度(1997年導入)が、今回もその機能を発揮した。苫小牧東部地区第1工業用水事業、トマムダムなどを含め、対象9事業のうち8事業がこの制度で中止となった。
 この計画の中止に関して、上記NGO3団体は次の共同声明(要旨)を発表している。
 o計画中止は自然を愛する人々が流れを変えたものとして歓迎する o知事の英断に拍手を送る o「時のアセス」運用に関して情報公開と住民参加が必要で、事業主体が見直すという限界もある o見直し基準を費用対効果で図るのは問題。


千歳川放水路も17年目の中止へ
 北海道の「千歳川放水路」建設計画について、堀達也知事の私的諮問機関「千歳川流域治水対策検討委員会」(委員長=山田家正・小樽商科大学長)は3月13日、放水路計画は自然や漁業への影響が大きく「住民合意が得られない」と中止の答申案をまとめた。
 また代替治水措置として、千歳川流域に遊水地を設け堤防を補強する「総合治水対策」案を答申する。
 道知事はこの答申を受け、事業主体の北海道開発庁に中止要請の意見書を提出する。北海道開発庁長官(運輸相)も知事の意見を聞き判断すると16日の記者会見で述べた。
 同計画は調査費など既に200億円が投じられた道内の巨大開発のひとつで、支笏湖を水源として石狩川と合流して日本海へ注ぐ千歳川は、集中豪雨時に石狩川の水位が高くなり逆流し水害を繰り返してきた。このため、長さ約40キロ、幅400メートルの放水路で流れを太平洋へ導く放水路計画(総事業費4800億円)が打ち出された。。
 しかし、ラムサール条約登録湿地のウトナイ湖の水位低下や、濁流が太平洋側に流出して漁業被害が生じるなど、自然保護団体や漁業関係者が反対していた。

 


多良岳公園線計画も中止…長崎県(99/3/20)
 長崎県は3月15日、同県高来町の多良岳の県道・多良岳公園線の建設工事中止を決めた。一帯は九州でも残り少なくなった自然林で、1996年に国の天然記念物のニホンヤマネの生息が確認され、計画撤回の請願も町議会で採択されていた。また県の独自の環境調査でも、ヤマネのほかブチサンショウウオやハイタカなど、植物4種、動物17種の希少生物の生息も確認された。
 県道は諌早湾沿いの国道207号から長崎、佐賀両県にまたがる多良岳の長崎側の林道に通じる16.3キロで、このうち13.8キロが完成している。


三番瀬埋め立てでエサ場壊滅(99/2/21)
 東京湾最奥、千葉県の市川市から船橋市に広がる三番瀬(干潟と浅瀬)を、千葉県の埋め立て計画(市川2期・京葉港2期地区計画)通り埋め立てると、シギ・チドリ類など多くの水鳥のエサ場や休息場がほぼすべて消失するとのアセスを、千葉県の調査機関「千葉県補足調査専門委員会」(委員長、望月賢二・同県立中央博物館自然誌歴史研究部長)がまとめ、調査結果を1月25日に公表した。
 この調査は、千葉県の当初計画通り740ヘクタールを埋め立てた場合の環境影響について、鳥類と海生生物、水質、青潮の4点について、96年1月から2年間、現地調査を進め予測した。三番瀬をめぐり科学的な手法で大きな影響が明らかになったのは、今回が初めてという。
 報告は、埋め立てによって三番瀬海域のほぼ半分が失われ、140ヘクタールの干潟は、わずか10ヘクタールとなり、水鳥の飛来地が壊滅することで89種の鳥類のエサ場が消滅するとしている。特にキョウジョシギ、ミヤコドリ、スズガモ、ホオジロガモへの影響が大きく、冬場に9万羽を数えるスズガモは3分の1以下に減る。
 100種が確認されている魚類も、三番瀬で産卵するマハゼ、イシガレイなど5種が大幅に減少する。また、約13万人規模の下水処理場に匹敵するとされる三番瀬の水質浄化能力は、動物プランクトンの減少で30%ほど低下し、青潮が発生する時間や範囲も拡大すると予測している。
 鳥や魚のエサとなるとともに、水質浄化の役割も果たす大型の底生生物が死滅する割合はアサリが45%、ホトトギスガイが67%、ニホンドロソコエビが90%、アシナガゴカイが63%と指摘。東京湾の「生命の揺りかご」が失われるという。
 さらに、三番瀬が消失した場合、水鳥の一部は、三番瀬とは水路でつながる谷津干潟(千葉県習志野市)に移り、このため谷津干潟の水鳥にも大きな影響を与えるとみた。
 報告書は「事業計画にある740ヘクタールの埋め立ては、三番瀬の自然に対する影響が大きいと考えられる」と結論づけている。
 千葉県では、調査結果などを踏まえて3月末までに計画の見直し案を作成する方針だが、いっぽうで県は人工干潟の研究を続ける意向を表明するなど、今回のアセス結果がどの程度反映されるかは不明。
 三番瀬の埋め立て計画は、総事業費1兆6000億円をかけて、第二湾岸道路のほか、下水道終末処理場、産廃処分場、商業用地などを新設する計画。
 この問題では、真鍋環境庁長官が三番瀬を視察し、「干潟を含む貴重な景観をなんとしても保全したい」と発言しているほか、日本湿地ネットワーク(山下弘文代表)が三番瀬の保護をもとめ千葉県に要望書を提出するなどの動きも強まっている。


東京都の事業評価委員会で形式的に全事業の継続を決定(98/11)

 公共事業の妥当性を第三者の視点でチェックする東京都の「事業評価委員会」(委員長・渡辺貴介東工大教授)は11月25日、着工から10年以上たっても完成していない公園、道路、河川など11事業について審議、都や市区町村の事前要望通りすべての事業を「継続すべきである」と答申した。
 審議時間は1事業当たり10分程度で、その大半が「地権者の説得に手間取って完成が遅れている」などとする行政側の説明に使われたという。行政側が作成した資料には費用対効果の分析がなく、事業の進ちょく状況などが列挙されているなど形式的な審査で継続を決めた。同委員会は11月11日の初会合で評価対象に21事業を選択。残る10事業については12月24日に4事業を、99年2月に6事業を審議するとしている。


首都圏道路問題交流集会開く(10月10日)

 10月10日、東京・中野で50人が参加して、首都圏道路問題交流集会が開かれ、千葉、東京、神奈川、埼玉の各道路開発の現場で公害道路反対などの運動に加わっている人たちが当面している問題点について交流した。
 これに先立ち、同連絡会の標博重さんが、最近の建設省の道路政策の特徴と、改悪された騒音にかんする環境基準の問題点を報告し、7月の川崎公害訴訟の横浜地裁川崎支部での勝利判決の内容とその意義について、同弁護団の西村隆雄弁護士が講演した。
 討論では各地の道路反対運動で川崎公害の判決が活用され公害対策などで建設省など事業推進側も受け入れるところが出始めていること。大気汚染の激しい地域での環境防止条例の活用。新アセス法で改善された手法について各地の事業アセスへの反映を要求することが重要であること。道路公害での公害調停申請は1人でもできることなどの経験もだされた。
 また、運動を広げるために、道路推進論に対抗する交通政策の必要性、公害のない街づくりの提案が強調された。道路政策批判では、道路建設の経済波及効果面での批判、道路公団の無駄使いなどコスト論批判、天下り問題にも目を向ける必要が議論され、最近建設省が取り組みはじめた公共事業説明責任(アカウンタビリティー)向上委員会も視野にいれて活動することなどが出された。
 集会は、騒音基準の改悪問題で抗議文を環境庁にだすこと、連絡会として政府交渉することなどが確認された。


長良川河口堰の負担金の支出差止求め住民提訴

 水資源開発公団が三重県長島町に建設した長良川河口堰の建設費について、愛知県の工業用水分の負担金を一般会計から支出するのは違法として、愛知県の住民のグループが9月14日、愛知県知事らに支出差し止めを求める住民訴訟を名古屋地裁に起こした。
 同河口堰の総事業費約1500億円のうち、愛知県の工業用水分の負担額は約350億円で、1995年度から23年で償還する総額は利子を含め約500億円。95〜97年度は起債で償還、98年度は約33億5000万円を償還する予定になっている。
 しかし、これまでに工業用水需要がなく料金収入もないため、独立採算の工業用水道会計からは負担金を支払えず、県では一般会計から水道会計に貸し付けた上で償還する計画で、原告側は「堰の工業用水には需要がなく、無用の施設であることは明らか」とし、違法と指摘している。
 原告代表の金城学院短大助教授の伊藤達也さんは「公共事業の在り方が問われる中、その手続きの在り方について議論していきたい」としている。


建設・運輸省、10事業中止、47事業休止(99/3/19)
 建設省と運輸両省は3月19日、1999年度の公共事業を再評価した結果、合わせて10事業を中止、47事業を休止した。対象は事業採択後5年間を経過して未着工か、事業採択後10年経過した事業が対象。

建設省
 <中止事業>9事業
 河川=石狩川耐水型地域整備(北海道)
 ダム=白老、トマム生活貯水池(北海道)、丸森(宮城)、河内、所司原(石川)、梅津生活貯水池(長崎)▽七ツ割生活貯水池(熊本)
 住宅・都市整備公団=長津田駅南口(神奈川)

 <休止事業>25事業
 道路・街路=都島阿倍野線(大阪)
 河川=馬橋川局部改良(山形)、穂高川広域基幹河川改修(長野)、九頭竜川(中島上流)局部改良、狐川広域基幹河川改修、赤根川局部改良、鳥羽川局部改良(福井)、黒谷川広域基幹河川改修、大谷川広域一般河川改修、岩屋谷川局部改良(徳島)、新川川高潮、竹島川広域一般河川改修(高知)、蚊沼川(上流)局部改良、荒久沢川一般河川改修(群馬)、晴気川広域基幹河川改修、玉島川広域一般河川改修(佐賀)
 ダム=江戸川総合開発(東京・直轄)、矢作川河口堰(愛知・直轄)、北本内(岩手)、片貝川(富山)、竹尾生活貯水池(山口)
 海岸=羽田海岸(大分)
 下水道=吉備町公共下水道(和歌山)
 公園=大原公園、境川緑地(大分)

運輸省
 <中止事業>海岸1事業
 高潮対策事業=下田港海岸(静岡)

 <休止事業>港湾整備事業22事業
 旅客船ターミナル=津居山港(兵庫)
 緑地整備=北九州港(福岡)
 マリーナ=臼杵港(大分)
 地域生活基盤=泉港(愛知)、的矢港、二木島港、五ケ所港、重栖港(三重)、宮之浦、指江港、七ツ山港、請島港、大笠利港(鹿児島)、竹富東港、小浜港、船浦港(沖縄)
 国内物流ターミナル=温泉津港(島根)、国東港(大分)
 耐震強化岸壁=洲本港(兵庫)
 地域交流拠点=瀬戸田港(広島)、女木港(香川)、弓削港(愛媛)

ダムの中止・休止は19事業(99/8/29)
 建設省は、98年8月29日、99年度の新規7事業のダム建設予算要求をとりやめ、98年度からの継続事業の予算要求とりやめと合わせて19事業の中止・休止を行うことをきめた。これらのうち休止する北海道の松倉ダムと、一時休止する四国の細河内ダムは、「無駄な100の公共事業」でも指摘されていた。中止・休止する19事業は次の通り。

北海道  トマム生活貯水池…中止   白老ダム…中止  松倉ダム…休止
岩手     本内ダム…休止
宮城     新月ダム…休止   丸森ダム…中止
埼玉     小森川ダム…休止
関東地建  江戸川総合開発…休止
富山     片貝川ダム…休止
石川      河内ダム…中止  所司原ダム…中止
中部地建  矢作川河口堰…休止
山口     竹尾生活貯水池…休止
四国地建  前の川ダム…休止  細河内ダム…一時休止
九州地建  矢田ダム…休止
長崎     梅津生活貯水池…中止
熊本     七ツ割生活貯水池…中止
沖縄     白水ダム…休止


国有林の管理経営基本計画案でJNEPが意見書提出(98年12月)

 JNEPは12月18日、大規模公共事業見直しと森林環境保全の立場から、林野庁の「国有林管理経営基本計画案」(林野庁サイトを参照)にたいし、次の意見を提出した。 

 

 

 

農林水産大臣
中川 昭一 殿

1998年12月18日
公害・地球環境問題懇談会

管理経営基本計画案への意見

 国有林野事業は環境保全、国土保全の柱の一つであると同時に、材料や燃料の一部を供給する国の政策の基幹の一つです。ところが、近年、独立採算、赤字解消ばかりを狙い、やまを守る本来のあり方から目をそらした本末転倒の後付け対策ばかりが目についてきました。無理な伐採はやまをまもるどころかやまを痛めてきました。その極めつけは最近発表された、最盛期の10分の1に職員を減らす大リストラです。やまの管理には最低限の人手は確保しなければなりません。こんなに減らしてやまを守ることができるのでしょうか。
 一方で、ゼネコン型の無駄な大規模林道工事を強行し、国有林野イコール大規模林道、国有林野イコール無駄遣いといういきすぎた先入観をマスコミや一部国民に植え付けてしまったのは反省すべきです。林業に役立つ林道は整備すべきですが、工事が目的、観光など林業と関係のない大規模林道などでこそリストラを進めるべきです。
 以下に環境保全の立場から管理経営基本計画案への意見を述べますので今後の政策に反映していただきますよう宜しくお願い申し上げます。

「1 国有林野の管理経営に関する基本方針」について
(1)公益的機能の維持増進を旨とした管理経営への転換
 国有林野を類型化し、「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」の3区分に再編して位置付けを明確化するのはよいことだと思います。
 但し、「木材生産の機能の発揮を第一とする森林」を「資源の循環利用林」として5割から2割に縮小する、「水土保全林」、「森林と人との共生林」をいわゆる公益林として8割に拡大するという政策は、単なる営林の人員削減を正当化するものとしてはなりません。手を入れてはいけない自然林を残すのは重要ですが、手を入れなければ荒れてしまう人工林を「公益林」になったから放置する、というのは治山などの公益機能を放棄する無責任な政策です。
 なお、「公益林を中心に,林木だけでなく下層植生や動物相,表土の保全等森林生態系全般に着目して公益的機能の向上に配慮する」ことは、希少な自然だけでなく、生物の多様性自体を保全して行くために不可欠なことです。
 財政措置としては、既に独立採算は限界であり、「公益林の保全管理等に必要な経費の一般会計からの繰入」、「一般会計繰入を前提とした特別会計制度に移行する」に留まらず、林産物収入で賄う企業会計をやめて一般会計を基本にした制度に改めることが重要だと考えます。木材生産機能を含めて全体が公益的価値を有しており、いまさら独立採算部分を持つ必要はなく、むしろそうした部分を無理に残して国土・環境に負荷をかけることの方が大きな問題です。こうした方針について国民の理解を得るためにも、ゼネコン型の無駄な大規模林道工事は即時中止すべきで、評価委員会に環境NGOやその推薦する学者などを多数参加させて公正な評価を印象づけることが重要です。

(2)森林の流域管理システムの下での管理経営
 「流域(森林計画区)を単位として民有林,国有林が連携して森林の整備等を行う流域管理システム」は重要です。林業関係者だけでなく地域住民、流域の農民、さらに下流住民や市民・NGO、河口や近海の漁民なども含め、環境保全と持続可能な森林の管理経営を進めると同時に周囲の乱開発を防止し、監視する場と位置付けるべきです。

(3)国民の森林としての管理経営
「国民に開かれた管理経営を目指す」ためには「計画の策定に際して広く国民の意見を聴くほか、管理経営状況の公表など国有林野事業の実施に係る情報の開示」をさらに進め、意思決定への住民参加、市民・NGOの参加を明記し、今後の政策で実践すべきです。

「2 国有林野の維持及び保存に関する基本的な事項」について
(1)森林の巡視,病虫害の防除等適切な森林の保全管理
 「森林病虫害や鳥獣被害の防除」は議論になっています。一方的に従来施策を進めるのでなく、上に述べた「広く国民の意見を聴く」ほか、「国有林野事業の実施に係る情報の開示」をさらに進め、意思決定への住民参加、市民・NGOの参加を進めるべきです。

(2)保護林など優れた自然環境を有する森林の維持・保存
 「自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存等を図る上で重要な役割を果たしている森林については、「森林と人との共生林」に区分し、自然環境の保全を第一とした管理経営を行うとともに、特に原生的な天然林や貴重な動植物の生息・生育地等特別な保全・管理が必要な森林については、保護林として積極的に指定するなどその拡充を図る」との指摘が、国立公園内ですら指定を阻んできた従来政策の転換を意味するものなら歓迎すべきことです。一方、前にも触れた通り、手を入れなければ荒れてしまう人工林を「公益林」になったから放置する、というのは治山などの公益機能を放棄する無責任な政策です。
 「他の保護林とのネットワークの形成を図るため、いわゆる「緑の回廊(コリドー)」を設定し、野生生物の自由な移動の場として保護するなど、より広範で効果的な森林生態系の保護に努める」ことも重要です。「緑の回廊(コリドー)」は広くとり、特に公共事業でこれらが切られたり狭められないよう、厳格な管理が必要です。
 「国民の意見を反映した保護林のあり方やその保全・管理についてNGO等の協力を得る」こと、「環境行政との緊密な連携を確保する」ことは意思決定への参加も含めたものとして推進すべきです。

「3 国有林野の林産物の供給に関する基本的な事項」について
 まず、木材の輸入自由化政策が、無秩序な輸入増加、世界中での無秩序な伐採、買付けを通じて世界の森を荒し、また日本の森をも荒してきた元凶です。
 計画案にある「国有林野事業においては,これまで木材生産を森林の主要な機能の一つとして位置づけ,計画的・安定的な木材の供給を図ってきた」というまとめでは、こうした自由化政策の反省、短期採算のための無理な伐採への反省が感じられません。
 木材蓄積量は増加しているのに、「当分の間は林産物の供給量が大幅に減少することとなる」と決めつけているのは合理化先にありきの数合わせの政策ではないでしょうか。また、「より効率的な事業運営を図る観点から原則として立木販売により実施する」、「素材(丸太)販売については、高付加価値を期待できる高品質材等に限定する」というのは合理化先にありきの数合わせの政策に見えます。
 日本の風土にあった長持ちする木材を確保するためにも、世界一の木材輸入国という汚名を返上するためにも、短期採算のための無理な伐採ではなく、林産物の供給は着実に続けて行く必要があります。

「4 国有林野の活用に関する基本的な事項」について
(1)国有林野の活用の適切な推進
 「土地については資産の徹底した見直しを行い,事業遂行上不可欠なものを除き,可能な限り売り払うこと」、「林野については(中略)地元産業の振興等に必要な林野等の売払いを推進」などは新たな乱開発の芽になりかねないので再検討すべきです。「国有林野の活用を通じて収入の確保にも資するも」としても短期的な収入だけで、失う代償が大きすぎると考えます。

(2)公衆の保健のための活用の推進
 「レクリエーションの森」は重要ですが、「民間活力を活かした施設整備を推進」したり「民間の能力を活かして休養施設、スポーツ又はレクリエーション施設、教養文化施設等の整備を行う」との方針は新たな乱開発の芽になりかねないので再検討すべきです。

「5 国有林野の管理経営の事業の実施体制,長期的な収支の見通しその他事業の運営に関する事項」について
(1)管理経営の事業実施体制
 「国有林野事業の実施体制については(中略)行政改革の方向を踏まえて,平成15年度までの集中改革期間に効率化を推進し,適切な管理経営の体制を確立する」とありますが、こんなことでやまを守り、森を守ることができるのでしょうか。
 「民間事業者の能力を活用」を全面否定はしませんが、「国の業務は保全管理,森林計画,治山等に限定し,伐採,造林等の実施行為は,民間事業者に委託して行うことを緊急に推進し,集中改革期間終了後できるだけ早い時期に当該実施行為のすべてを民間事業者に委託して行う」という極端な考え方に基づく行きすぎた合理化には反対です。
 営林署の合理化も、「平成11年3月に,14営林(支)局をブロック(北海道,東北,関
東,中部,近畿中国,四国,九州)毎の7つの森林管理局に」、「229の営林署を98の森
林管理署等に再編整備するなど,徹底した簡素・合理化を平成15年度までに集中的に行」うなどという方針で、やまを守り、森を守ることができるのでしょうか。目先の予算削減で将来大きなつけがくるのは目に見えており、行きすぎた合理化には反対です。
 今後やまを守り、森を守るためにはもっと体制を充実し、国としての責任を果たすことこそ必要と考えます。

(3)その他事業運営に関する事項
 「伐採,造林等の事業の実施行為は(中略)民間事業体等に全面的に委託する」というのは行き過ぎではないでしょうか。やまを守り、森を守ることが忘れられた、合理化先にありきのような極端な考え方に基づく行きすぎた合理化には反対です。

「6 その他国有林野の管理経営に関し必要な事項」について
(1)森林整備への国民参加
 「国民参加」が国が決めたことへの国民の協力に留まる限り、効果的な対策にはなりえないと考えます。意思決定への国民参加があってこそ、知恵も従来より飛躍的に高まり、また実行面でも多くの協力が得られるのです。

(2)地球温暖化防止対策の推進
 「森林の二酸化炭素の吸収・固定機能の高度発揮」のためには現在の森を確実に守り、育てて行くことです。表面的な普及啓発よりも、国有林野の本来の機能を強化することが重要です。逆に、「森林が吸収するからもっと化石燃料を使ってもいいのだ」という極端な考え方に対しては、林野庁も先頭に立って、国内森林の吸収量は日本の膨大な化石燃料排出量に比較すれば僅かなものであることをPRしていくべきです。

(5)人材の育成
 「人材の育成は極めて重要」です。無理な合理化を進めながら「人事交流」だけで後進の育成ができるのか疑問です。

・重金属・化学物質汚染の防止
 計画案にはありませんが、輸入材木には重金属や有機溶剤で処理したものが多数あり、使用中の健康影響、廃材になった際の環境汚染が深刻化することが今から懸念されます。木材の使用基準に、こうした重金属添加・処理を禁止するなど、安全性確保の規制を加えるべきです。
 こうした環境破壊、健康被害を招かないためにも、木材輸入自由化政策を見直し、日本の気候にあった木材の供給を地道に進め、世界と日本の森を守って行く林業政策に転換すべきです。また、アメリカなどの木材業者にきをつかって安全規制をとらなかったり、また緩めたりするのは本末転倒だと考えます。

 


林野庁が9月から大規模林道見直しへ

 林野庁は98年9月に、大規模林道事業再評価委員会をスタートさせ、着工後長期にわたり、休止となっている事業の見直しをすすめ12月までに結論をだす予定。
 この取り組みは、公共事業の効率化の見地から実施するもので、原則として5年毎に事業の再評価を行うシステムとして取り組むもの。
 再評価の対象となるのは、◎様似−えりも区間(北海道)、◎穴沢−上外山区間(岩手)、◎朝日−小国区間(山形)、◎山都区間(福島)、◎一の木区間(福島)、◎上平−福光区間(富山)、◎朝日−魚津(富山)、◎布野−作木区間(広島)の8事業。
 このうち、朝日−小国区間(山形)は無駄な公共事業100選で指摘されている事業であり、山都区間(福島)と一の木区間(福島)も同じく無駄な100事業に指摘されている事業……飯豊−檜枝岐線の一部である。


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