PRTRという聞きなれない横文字。でも、工場跡地から有害物質が発見された事例はあとを絶ちません。この闇に隠された有害物質を日向にだして国民監視のもとに管理しようという試みです。早く、確実に…。が求められています。
●アスベスト被害救済へのJNEP意見(06/02/21)
●ベンゼンなど秘密扱いするな、JNEPがパブコメ(01/09/13)
●JNEP、有害大気汚染物質の自主管理指針で意見(01/04/21)
●八王子(東京)の水銀汚染被害深刻(01/03/28)
●有害化学物質に関する最近の事例(00/05/24)更新
●PRTRって何?
●問題の背景
●問題を積み残してPRTR法が成立(99/7/16)更新
●PRTR制度に対するJNEPの意見(99/12/21)
●対象物質は当面341種類(99/11/4)
●PRTR法案(政府案)の問題点(99/2/12)
●中環審のPRTR制度中間答申とJNEPの意見の比較(98/12/16)
●中環審PRTR制度(中間答申)(98/12/16)
●JNEPが中環審へ意見書提出(98/11)
●パイロット事業についてのJNEP意見(98/6)
●通産省の動きは問題あり (JNEP 98/9)
●経団連のPRTR調査報告
●PRTRの詳細(Link)
環境省(環境保健部企画課保健業務室)御中
2006年2月20日
公害・地球懇(JNEP)
幹事長 小池信太郎
「パブリックコメントへの意見(石綿健康被害救済) 」について
JNEPはPRTR法関連の政省令について必要な事項をパブコメの形で提出した。このなかで特に企業秘密を理由にPRTRの運用をまったく形式的なものにしてしまう問題について、政令でその歯止めをかけるべきなどと主張している(2001/09/12)
環境省環境保健部環境安全課御中
環境省環境管理局大気環境課 御中
●八王子(東京)の水銀汚染被害深刻
八王子市並木町の日本バイエルアグロケム社農薬工場跡地が、高濃度の水銀や鉛などによって汚染され、その処理問題をめぐって地元住民に深刻な健康被害をもたらしています。とくに昨年末、被害者から公害・地球懇への訴えがきっかけとなって、取り組みが広がっています。
今回、民間の調査機関、環境総合研究所(品川区内・青山貞一所長)の調査によって、その汚染の実態が科学的データーによって裏付けられることとなりました。
調査結果が明らかにされた2月25日、被害を受けている地元住民のよびかけと公害・地球懇の後援によって、工場跡周辺現地調査と報告会が、直接調査にあたった研究員も加わり、約50名の参加によって行なわれました。報告集会終了後には、被害を受け、また不安を感じている地元住民と公害・地球懇から参加した弁護士、学者、運動家などとの「相談会」がもたれ、今後の対応などについて話しあわれました。
農薬工場跡地周辺から高濃度の水銀・鉛検出
水銀汚染の発生原因となったその場所は、日本特殊農薬株式会社の農薬工場跡地(約2万5000平方メートル)です。同社は1942年(昭和17年)8月より、有機水銀剤、有機ヒ素剤、有機リン剤、カーバイト剤などの農薬の製造を行なう工場として稼動。1991年に閉鎖され、その後山口県に移転し、同社は日本バイエルアグロケム株式会社(NBA)と社名変更されました。
NBAは、その工場跡地を再利用するにあたり、跡地の汚染状況を測定したところ、水銀などの有害重金属物質が高濃度に汚染されていることが判明したために、汚染土壌の処理(有害物質の処理)を実施する必要にせまられたわけです。
この作業を実施するために、NBAは荏原製作所株式会社が設計・製造した「水蒸気加熱法」による「汚染土壌プラント」を同地に建設し、1998年4月より運転を開始し、昨年(2000年)9月に処理作業が終了するまで、場所によっては5200ppmという驚くべき高濃度の水銀汚染状況が測定されました。この数値は、水銀濃度ということで比較すれば水俣湾の汚染のひどかった当時のヘドロ(2010ppmといわれる)よりも遥かに高濃度の水銀で汚染された土壌が存在していたのでした。
水銀処理プラントの稼動直後から中毒症状が
水蒸気加熱法による処理プラントが稼動した直後の1998年5月頃より、周辺住民に口内炎を中心とした水銀中毒の特徴的な症状を訴えて病院で診察を受ける市民がふえてきたのでした。
同年6月に周辺住民の健康調査を行なったところ、金属味、口内炎、舌の痛み、眼の腫れ、頭痛、吐き気、倦怠感、耳鳴り、動悸、咳、四肢のしびれ・痛み、爪の変形・変色等を主症状とする約60名の体調不良者がいることが判りました。
また、周辺の家庭では電子レンジやテレビ、携帯電話など、電気製品の故障、誤作動が相次いでいることが判明しました。
処理プラントの土壌処理が進むにつれて、周辺住民の被害はますます深刻なものとなり、現在までに判っているだけでも、周辺に住む児童の5名もが、数千人に1人という川崎病に罹患しています。川崎病の原因は確定しているわけではありませんが、いくつかの説のなかには水銀中毒説もあります。
こういった神経系疾患の被害を蒙った住民は、仕事や生活の場を奪われていったり、原因不明の症状が重症化して入院する者が現れたり、子どものぜん息被害が悪化するといった深刻な事態が続いているのです。
住民の健康被害の症状はいずれも、水銀、ヒ素、鉛などの有害物質の中毒によって引き起こされる特徴的な症状と一致し、例えば、爪の変形・変色などは水銀やヒ素の摂取で起きることが特徴的な症状であると言われます。
因果関係を否定する学者に不信感
水銀汚染による被害が広がるなかで昨年(2000年)3月30日、八王子市環境部主催による「講演会」が地元並木町会館で開かれました。講師は、国立水俣病総合研究センター所長の医学博士滝沢行雄氏でした。講演のなかで同氏は、「(水俣では)有機水銀で、それが魚の中に入り、その魚を大量に食べた人が起こった…。大気から入っては水俣病は絶対に起こらない」と、周辺を水銀汚染と健康被害との因果関係が無関係であるかのように説明し、参加した住民の不信を招いたのでした。
滝沢氏といえぱ、水俣病裁判では被告企業の立場に立ち、病像論を認めず、裁判の長期化をまねく原因をつくったその当事者であったことはあまりにも有名な話で、学者としての責任が問われた人でした。
ちなみに今年10月、水俣市で国際水銀会議が開かれ、滝沢氏が所長となっている国立水俣病総合研究センターが、「水俣病の悲劇を繰り返さないために−水俣病の経験から学ぶ−」との報告書をまとめ、これが会議の中心テーマとなろうとしているのです。
水俣の悲劇を繰り返さないどころか、現に水銀被害が、しかも環境省のお膝元東京で起こっているという事態は、秋の国際会議にむけても大きな問題となろうとしているのです。この国際会議にむけても、「水俣病の経験から学び」被害者救済ならびに環境対策を行なわせることが必要です。
提訴に立ち上がる被害者
こうした異常事態が進行しているもとで、会社側および市当局は、問題解決にむけての努力どころか、事件そのものを根底から押しつぶすような驚くべきことをすすめていることが判明しました。それは、直接被害をうけている人たちに知らすことなく3月30日、会社(NBA)、八王子市、保健所、東京都、住民代表の5者による「覚書」を交わし、被害問題についてうやむやにしてしまうようなことが行なわれているのです。
地元被害者たちは、ただちにこれへの抗議と、3月8日東京地裁に対し訴状を提出し、裁判を通じてのたたかい、国会、国、自治体、会社側との対応、マスコミ・世論対策など多面的な運動をすすめることとしています。(小池信太郎)
・ずさんなPCB管理
厚生省が実施した全国調査(98年実施、2000年2月中間集計)で、毒性がきわめて強いPCBが6年間で2.1倍に増加し、しかもその一部が紛失や確認できないというきわめて危険な状況となっていることが判明した。さきに米軍基地内のPCB問題で本国に陸揚げできず、太平洋の島に一時保存するというさわぎあったばかりだが、この事件と比較にならないほど深刻な事態である。PCBはもちろんPRTR法にもとずく対象物質356種のなかで指定されている規制物質で政府がその所在を把握しなければならない物質。
厚生省が把握していた92年の95,364台にのぼるPCBが使用されているトランス・コンデンサは、99年の調査で202,612台だったが、耐用年数切れで使用できなくなり2.1倍に急増した。さらにこの間の経済不況による企業倒産などで、3,167台のPCBが紛失・行方不明となっている実体も浮かびあがった。県別では広島(720台)、福岡(252台)、奈良(223)が行方不明となるなど西日本に多いが、1都3県の首都圏でもあわせて444台が不明となり、環境への影響が懸念されている。
PCBの処理技術は最近確立されたばかりで、分解できるまでにはまだ時間がかかる状況だが、青森県で処理工場建設をめぐって住民の反対により建設断念に追い込まれたケースのように、将来にむけて処理が順調にすすむ展望もなく、現状での管理も実態からほど遠い有様で国民の不安はますますつのるばかりとなっている。(00/05/24)
・ダイオキシン類が含まれている除草剤「クロルニトロフェン(CNP)」(商品名MO)を、製造元の三井化学(本社・東京)が自主回収したものの、約7800トンが同社の工場の敷地内で野積み状態となっていることが判明。CNPは水田の初期除草剤として、広く使用されたが、九三年、農民の間で多発する胆道がんとの関連が指摘され、農水省は94年に原則的に使用しないよう都道府県に通知し、三井化学は自主的に製造を中止、回収したもの。(99/8/4)
・大阪府堺市で7月12日、ミノルタ堺事業所の地下水から有害物質のトリクロロエチレンやテトラクロロエチレンが、環境基準値を超えて検出。
ミノルタの敷地内ボーリング調査では、トリクロロエチレンが基準値(1リットル当たり0.03mg)の50倍の1.5mg、テトラクロロエチレンが基準値(同0.01mg)の33倍の0.33mgをそれぞれ検出。堺市は周辺地下水への影響を調査する。(99/7/12)
・岡山県が倉敷市の水島コンビナート近くで、環境基準値を超えた有害大気汚染物質のベンゼンを検出。97年10月から98年3月までの平均値で、環境基準の約2倍以上に当たる8.3マイクログラムを検出。発ガン性があるベンゼンは、工場のコークス炉や貯蔵タンク、ガソリンなどが発生源。(98/07/24)
・環境庁はアルミ製品製造工場について、アルミ製品製造工程からの事業排水がある全工場(12工場)のダイオキシン類を調査。3工場を除く9工場からダイオキシン類を検出。最高濃度は24pg-TEQ/L(通常の河川水の平均濃度の約65倍の高濃度)で、12工場全体の平均値は6.2pg-TEQ/L、中央値は0.35pg-TEQ/L。とくに10pg-TEQ/Lを超える濃度の検出が3工場あった。 (98/07/16)
・名古屋市は、東芝愛知工場名古屋分工場の敷地内の地下水から環境基準を最大で800倍上回る発がん性の化学物質、トリクロロエチレンなどを検出。(97/10/03)
●PRTRって何?
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:環境汚染物質排出・移動登録)は、「環境汚染のおそれのある化学物質の環境中への排出量又は廃棄物としての移動量を登録し公表する仕組み」で、一般に、事業者の報告などに基づき、行政が化学物質の排出量又は廃棄物としての移動量のデータを収集し、収集したデータを目録などの形に整理し、これを広く公表する制度。PRTRは、行政・事業者・市民が情報を共有しつつ化学物質のリスク管理に役立てようとする環境保全のための新手法。
●問題の背景
有害化学物質の排出実態を把握し削減につなげるため、行政機関が企業から有害化学物質の排出量の報告を受けて公表する環境汚染物質排出・移動登録(PRTR)制度。
ダイオキシンや内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)など化学物質に対する国民の不安が高まっている。
そこで排出の実態を把握して規制対策に生かすこと、同時に公表して企業の自主的削減を促進させる。
環境庁が昨年、愛知、神奈川両県で実験事業を行った。178の化学物質について報告を求め、地域ごとの化学物質の排出総量を公表したが、企業ごとの排出量などは公表されなかった。アメリカでは公表されている。
●問題を積み残してPRTR法が成立
通産省、環境庁の共同で提出していた「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案」(PRTR法)は、99年7月7日の参議院本会議で可決成立(賛成167・反対65)した。施行は2001年から。
この法案は市民側の強い要求で、企業情報についても開示の道が開かれたものの、多くの問題を積み残したままである。
公害・地球懇は、この間、中央環境審議会や化学品審議会に対し、工場毎のデータの開示をはじめとする情報公開の徹底など、実効性ある制度化(以下に列挙)を求めてきたが、これらの要望は実現しなかった。真に有効な制度の確立のために引き続き、国民的な運動が求められる。
○知る権利はどこへ
OECD勧告などでは知る権利が明記され、それは先に日本で行われたOECDのPRTR国際会議でも確認されている。PRTR法では企業秘密は配慮しつつも、市民の知る権利については全く保障されていない。PRTR法に開示請求権という項目があるが、官庁が開示を決めている範囲内での単なる開示手続きを示したにすぎない。
○企業データの扱い
企業データはそのまま開示されない。事業所の名前や所在地などを調べ、その事業所の所管官庁を調べ、所管官庁に対して請求をしなければならない(企業からの報告は、都道府県経由で所管官庁に報告するよう修正された)。環境庁や通産省で全ての事業所の情報を開示するわけではない。このため、所管ではない、事業所名が特定できないなどとたらいまわしされるおそれもある。
企業情報も最初から全部公開すればこんな面倒なことにはならない。政府の企業データをそのまま公開するのは乱暴すぎるとの姿勢は、マスコミも企業に配慮しすぎと批判している。
請求する市民がインターネットなどで情報請求できるかどうかは法律の条文ではわからず、あるいは霞が関にわざわざ行かなければならないかもしれない。地元の自治体での開示があると大変便利だが、制度上では一切ない。逆に、企業は届出などの際にインターネットを使えることが明記されている。
市民が開示請求する際には実費の範囲で手数料をとられる。
○企業秘密は非公開
企業データは、「企業秘密」を理由に物質名を公開しないことができる。この認定は普段から企業と密接に関係のある「主務大臣」のみが行う。
企業秘密となった物質は環境庁にも通知されないが、環境庁は理由をといただす規定があるので歯止めになると楽観的な姿勢。
○対象物質が狭すぎる
対象物質は事前に人体や環境に影響があると認められた、あるいはそのおそれがある物質を政府が定めたものに限定(200〜300の化学物質)。実際にはグレーゾーンの物質、複合すると有害性を持つ物質などが混在しているが、そうした物質すら適用除外されかねない。
○対象事業所が限られる
小規模事業所は適用除外との了解があるらしく、全部の事業所が対象になるわけでない。ゴルフ場や廃棄物処理業者など、規模は小さくても有害物質を大量に排出する事業者もあるが、機械的に裾きりを従業員数などですると、その業種の大半が適用除外になってしまうこともある。環境庁のパイロット事業では業種によって裾切りを100人と30人にしたので、ゴルフ場などは適用除外になった模様。
○運用開始が遅い
企業は2001年度からデータの集計を始め、公開は2002年度から実施。
JNEPは99年12月18日付けで中央環境審議会環境保健部会にたいし、PRTR制度について対象物質の範囲などに関して問題点を指摘し、次の意見を述べた。
中央環境審議会環境保健部会事務局
(環境庁環境保険部環境安全課) 御 中
1.対象物質について
化学物質は全般に甘すぎるのではないでしょうか。
国の規制物質のうち、窒素酸化物など大気汚染物質も対象になっていませんし、化審法の規制物質だけでも200種類以上もありますが対象になったのは少ないと考えられます。フロン類もオゾン層保護法の対象物質のほんの一部だけしか対象になっていませんし、代替フロンは全く対象になっていません。
356種は、規制で対処すべき危険な物質ばかりで、PRTR制度は、安全性はまだ確認されていないが生産や流通を規制するまで強い毒性等をもたない、グレーゾーンの物質をも対象にすべきです。基本的に、長期的な(例えば50年くらい)人体や生態系に対する安全性が学術的に確認されたもの以外は全て対象にするべきです。
また、対象物質は国内での取扱量が少なくても指定すべきです。
2.対象事業所について
様々な制約がついた結果、対象事業所・事業者はほんの一握りになってしまうのではないかと危惧されます。除外されるのは家族経営の農家や個人商店(特定の有害物質を扱うところは対象にする)だけでいいのではないでしょうか。規模要件はもっと厳しくし、他の除外要件は設けないことを求めます。
・規模要件
常勤雇用者が21人以上で、いずれかの対象物質取扱量が1トン以上でないと排出量や移動量の届出の必要がないというのは、少し甘すぎるのではないでしょうか。一部の事業者では、この要件では大半が除外になります。例えば、クリーニングや自動車整備業などでは大半が除外になってしまうと考えられます。
・対象除外とした業種が多い。
製造業以外は、そもそも適用になる業種が大変制限されています。病院やゴルフ場のように排出が多いと推定される業種が適用除外になるようでは、この制度の意義が失われます。なぜわざわざ適用除外の事業種を定めないといけないのでしょうか。全業種を適用にするよう求めます。
建設業が適用除外になると、塩化ビニルやアスベストを大量に扱う建築解体業者も除外になりますし、フロンを扱う冷凍空調設備の業界も除外されます。
塩素を大量に使う水道業が除外になったのも理解に苦しみます。
運輸・倉庫は鉄道と一部倉庫(食料及び液体・気体タンクのみ)以外は適用除外業種になりました。トラックからは窒素酸化物だけでなく多量のダイオキシンが出ますし、塗料なども問題になるはずです。倉庫では度々事故がありますし、そうでなくても化学物質の排出量は少なくないはずです。
卸、小売では、石油類卸・小売業者と、自動車の一部(カーエアコンを扱う自動車卸と鉄スクラップ卸のみ)を除いて適用除外になっています。百貨店やスーパーなどの大企業も除外ですし、農薬や洗剤、医薬品、火薬などを販売する業種も軒並み除外です。
サービス業では、病院が除外になりましたが、はたして病院は化学物質の取扱量や排出量が少ないのでしょうか。レジャー施設も除外になりましたので、農薬を大量に使うゴルフ場も除外です。廃棄物処理でも、清掃事務所や運搬業などは除外になっています。他にも、ビルメンテナンスや消毒業など、化学物質を大量に使う業界が軒並み除外です。
このように、製造業と石油産業以外は大半が適用除外になりました。こんなことでは制度の意味は大幅に後退してしまいます。この規定を撤廃し、全業種を対象にするよう改めることを強く求めます。
・製品の限定について
この規定も理解に苦しむものです。私たちは指定物質を含む商品が全て対象商品だと考えていましたが、今回の提案では、指定化学物質を1%以上含まなければ対象になりませんし、しかも「固体状の混合物」では、・粉末等の固有の形状を有しないもの・固有の形状を有する混合物のうち取扱いの過程で指定化学物質を溶融、蒸発又は溶解する可能性のあるものでないと対象にならず、しかも、さらに適用除外があって
・一般消費者の生活の用に供される製品のうち指定化学物質が排出されないよう容器等に密閉包装された状態で流通し、販売・提供されるもの(注、フロンを含む冷蔵庫やエアコン、有害重金属を含む電池などを除外するための規定)
・気体又は液体状の製品のうち、密閉されたままの状態で使用される形態の製品(注、洗剤などを除外するための規定)
・売却され再生される製品(「リサイクル用途」とされる廃棄物を除外するための規定)は除外だとされています。商品として流通するものは大半が除外になるようにつくられているようにも考えられます。
この規定により、薬品や農薬、洗浄剤などが「容器等に密閉包装された状態で流通」するとして軒並み対象外になってしまいますし、有害重金属を含む電池、フロンを含む冷蔵庫、エアコン、カーエアコンなども「密閉されたままの状態で使用される」として除外になってしまいます。
私たちは、抜け道をつくるこのような規定をつくらず、指定物質を含む商品が全て対象商品とするように求めます。
●対象物質は当面341種類
環境庁と通産省は11月4日、発がん性のあるベンゼン、塩化ビニルモノマー、ホルムアルデヒド、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニール(PCB)など341種類を対象物質とする案をまとめている。
一定以上の毒性があり年間の製造・輸入量が100トン以上あるものや、発がん性があったり農薬として使われたりしていて年間の製造・輸入量が10トン以上あるものを基準として選んでいるため、製造・輸入量がこれらを下回る場合は当然、報告対象からはずれる問題がでてくる。ダイオキシン類については発がん性の高いPCBを事業者が大量に保管し、今後処理が始まることから対象物質に含めているものの、環境ホルモンについては指定が先送りされるなど、問題を残している。
このほか、将来的に対象物質に格上げされる可能性のある物質としてペンタクロロフェノールなど80物質が選ばれている。
環境庁・通産省は今後、報告を義務付ける工場や施設の種類や規模について検討を進め、2000年4月までに政令化する。
通産省と環境庁とのあいだで綱引き状態だったPRTR法の扱いについて両省共同案がまとまった。当然妥協の産物なので、JNEPなどが要求してきた内容と比べ、いくつかの点で問題もある。その問題点についてバルディーズ研究会の「PRTRラウンドテーブルグループが整理したのもを入手したので掲載する。
平成11年1月付けで環境庁、通商産業省連名での「特定化学物質の環境への排出量等の把握及び管理の促進に関する法律案」がまとまったが、この政府案は肝心なところがあいまいな表現になっており、以下のような問題点がある。
1.対象物質が「有害性が判明している化学物質」に限られている。また、「人体等への悪影響」という表現で、生態系への悪影響は対象としていないとも読みとれる。2.国際社会の潮流から著しく逸脱している
PRTR制度が「市民の知る権利」の確保を1つの柱とすることは国際社会では常識化してきているが、触れられていない。
1998年9月に多額の国費を使って開催されたOECDのPRTR国際会議でも「知る権利」の確立が強調されてきたが、政府案では法律の目的を管理活動改善に限定・矮小化している。PRTR後進国にも拘わらず最も遅れた制度の提案である。
3.地方自治体の役割を矮小化しており、地方分権の流れに全く配慮していない。
化学物質による環境汚染の未然防止に関しては、地域特性に配慮したきめ細かな配慮こそが重要であり、地域に立地する事業場等や居住する住民と日常的に接する自治体の果たす役割がきわめて高いにも関わらず、政府案では地方自治体は第一の当事者としての役割となっていない。ここでも多額の国費を使ったパイロット事業の知見等を生かしていない。
4.「営業秘密」の判断を業所管官庁に委ねるようであり、官僚の裁量権を拡大し官の肥大化につながる。
これは行政改革の流れにも反する。
営業秘密による非開示は最小限にとどめるべく営業秘密の定義を厳格にし、環境庁長官のもとに非開示審査の諮問委員会を作ればすむことである。
業所管官庁ごとの裁量で判断が異なる可能性もぬぐいきれない。エイズ事件のような産官癒着の種を生み出さないためにも所管官庁の介入は排除すべきである。
5.情報の開示は「請求ベース」であり、利用者にとってきわめて利便性を欠いている。
利便性を欠くためPRTR本来の目的が果たされないことになりかねない。
また、ここでも行政の肥大化につながりかねない。
さまざまな利用者が使い勝手がよいように加工できるよう、米国のように原情報をオンライン提供すべきである。国が国費を使って利用しやすい形にする必要はない。
請求開示の場合、請求が増えると行政の事務処理が膨大になる。従って行政改革の流れにも反し、行政コストの面からも非現実的である。請求費用等どうするかも不明確で利用者のことを考えているとは思えない。
利便性を欠くために実際に情報の利用が抑制されれば、本来の目的さえ果たされない恐れが強い。欧米での先進事例では多くの市民がそれぞれ情報をチェックすることが事業者の化学物質排出抑制の動機付けになっている。情報を公開して社会的モニタリングに任せることがポイントで、それをしない制度は、単に報告義務というコストだけを企業に負わせ、化学物質排出抑制という実益を生まないものになりかねない。
6.「化学物質の有害性等に関する科学的知見の充実」等は、本来製造業者の責任である。
国等が「支援措置等」でデータべースの整備や知見の充実を支援することには必ずしも反対ではないが、事業者が本来自らから行うべきものであることが示されていない。
米国の場合、1998年10月にゴア副大統領は"Program to close gap in
Public's Right-To-Know about potentially harmful chemicals"を発表している。米国環境保護庁と米国化学製品製造協会及び、先述のNGOのEDF、の3者の合意に基づくプログラムである。
市民の知る権利と潜在的に危険な化学物質とのギャツプを埋めるために、製造する化学物質の人間の健康と環境へ与える影響について、企業が自主的にテストを行い、テスト後直ちに一般の利用を可能にしようとするもので2004年までに完了するものとしている。
■答申に沿った要求項目との比較
| 項 目 | JNEPの意見 | 中間答申 |
| 排出移動量報告の義務化の是非(義務か自主的取組か) | 対象事業所からの化学物質の排出・移動量の報告を義務化することは重要。事業者の自主的努力ではだめなことは、近年の化学物質の使用や排出の増大、あいつぐ汚染物質の漏洩と不十分な後処理、皆無に等しい未然防止策などで明らか。 | PRTR制度では、事業者から排出量等の情報が確実に得られることが基本である。公平性の確保、数値の信頼性の確保の観点からも、報告対象事業場からの化学物質の排出移動量の報告を義務化することが適当である。 (注 元々記述あり) |
| 排出移動量報告の所管(環境庁か通産省か) | PRTRの所管については、産業行政における従来の不十分な対策を見るにつけ、環境保全に責任をもった部署が所管することが重要。 | PRTRで報告、集計、公表されるデータは、環境への排出量等のデ−タであり、それを把握し管理することは環境政策にとって基本であることから、環境行政機関がPRTRの実施に主体的役割を果たすべきである。(注 元々記述あり) |
| 対象物質の範囲(原則として全物質報告義務か、対象物質を個別指定か) | パイロット事業は、公開すべき対象化学物質を人体への直接の影響に絞ったが、これは対象物質が狭すぎ、リスクの削減というPRTRの目的から考えて失敗だった。これらは生産や販売、使用、廃棄が規制されてしかるべきものばかりで、これでは新しい制度を導入する意義は半減する。「人の健康への影響だけでなく、生態影響も考慮する」のは当然だが、影響が学問的に厳密に確認されているものに限定するのではなく、対象物質はできるだけ広くし、人体や環境への影響がゼロであるとは完全に確証されていない化学物質や重金属は全て対象にすべき。 | PRTRの対象物質は、人の健康への影響のみならず、生態系への影響も考慮して幅広く選定することとし、その際、化学物質の有害性及び暴露可能性の観点から環境負荷が大きいと見込まれる物質を優先的に選定することが適当である。 また、既存の環境規制の対象物質もPRTRの対象に含め、より望ましい環境の実現と、環境行政の効果・進捗状況の把握に活用することが適当である。 (注 広く定めるとしながらも原則対象という考え方はとらなかった) |
| 対象事業場の範囲(小規模事業所の免除の是非) | 基本的に規模によらず全事業所を対象とし、中小企業については登録・報告の免除や軽減ではなく、報告について国が必要な支援をすることで配慮すべき。一定規模以下の事業所等について報告を免除するのは対象事業所を狭くし、問題だ。パイロット事業は、対象事業所を従業員規模で業種により100人または30人で裾切りしたが、リスクの削減というPRTRの目的から考えて失敗だった。これでは大手製造業についてはカバーできても、廃棄物処理業者やゴルフ場など、有害物質を取り扱う事業者の多くが抜けてしまう。 | 化学物質の取扱いの可能性や、事業者による排出情報の把握及び処理の技術的能力及び経済的能力を考慮して、事業の選定及び対象事業場の規模の裾切り要件の設定を行うことが適当である。 なお、裾切り要件の設定は、裾切りの規模が過大になることによって排出量の適正な把握に支障が生じないように行う必要がある。 (注 裾切りの設定を依然として容認しているが、裾切りの規模が過大になることへの警告が付記された) |
| 報告内容(工場の排出量の他、使用量(取り扱い量)の報告の是非) | 報告内容として、化学物質ごとの大気・水・土壌への排出量及び廃棄物としての移動量等だけでなく、取り扱い量も併せて報告させるべき。 | 対象とする化学物質ごとに、報告対象事業場において大気、水及び土壌に排出される排出量、事業場の外に搬出される廃棄物に含まれている移動量並びに事業場の名称及び所在地などの関連情報を報告させることとするのが適当である。 (注 取り扱い量については対象外と読める) |
| 報告対象事業場以外からの排出量の把握(移動発生源の義務化の是非) | 報告の対象事業所以外とされる移動発生源のうち業務用トラックや業務用乗用車、中小事業所などは報告を義務化すべき。 | 報告の対象とならない事業場からの排出量並びに自動車走行等の移動発生源、家庭及び土地利用からの排出量については、行政が可能な限りの精度を確保して推計し、報告対象事業場の排出量と併せて集計することが必要である。 排出量の推計は、排出源及び化学物質の種類に応じて、全国的な統計資料を用いて行う、報告対象事業場の排出量データから類推して行うなど、最も適切な方法を選択して行うことが適当である。 (注 移動発生源は対象外とするとの内容) |
| 情報の公表等についての考え方(企業毎、事業所毎の情報の開示の是非) | 企業毎、事業所毎に排出状況の国への報告を義務づけるとともに、その結果を全て公開する制度とすべき。 | 個別事業場データについても開示の請求があれば可能な限りそれに応ずることとし、それらの情報が正しく理解されるようリスクコミュニケーションの推進に努めるべきである。 一方、諸外国のPRTRでは、厳格な判断の下に企業秘密とされた情報については、排出量データの公開等に当たって保護される仕組みとなっている。これら諸外国の仕組みでは、担当行政機関が企業秘密も含めて化学物質の排出量全体を把握できるようになっていること、実態として企業秘密と判断された件数が少ないことから、企業秘密を保護することはPRTRによって排出量を把握する上での障害とはなっていない。 我が国においても、たとえ企業秘密とされる排出量情報が少なかったとしても、それを保護する必要があり、また同時に化学物質の排出量全体を把握できるようにする必要がある。企業秘密については、関係する他の法制度との整合を図りつつ、その拡大解釈ができないような一定のルールを定めて公正にかつ透明性を確保しつつ判断できるようにすべきである。 (注 非公開原則から大きく前進した。但し過剰なほど企業秘密に触れており、その範囲の定め方により非公開も有り得る) |
| 国際的取組への参加(国際協調の名の下で日本独自の対策を遅らせることの是非) | 「国際的なPRTRの普及と協調のための取組への参加」、「国際的なリスク評価・リスク管理への協力と協調」はいずれも重要だが、国際的取り組みがより実効的なものになるよう日本政府がリーダーシップをとっていくことが重要。国際協調はしばしば諸外国の中に取り組みが遅れているところを捜し出し、あたかも日本国内で対策を取ると企業が経済的打撃を受けるかのように主張し、制度強化をいたずらに遅らせる口実につかわれてきた。国内対策を最大限に進めつつ、諸外国や多国籍企業のの抜け穴をふさいでより実効性のある国際的なリスク評価・リスク管理体制を目指すことが基本。 | (略 注:取組に参加するのみで、リーダーシップなど積極的記述、国際制度との整合性などの後ろ向きの記述、共に特になし) |
■その他、項目別の評価
| 項目 | 中間答申 |
・元からある項目で評価できるもの
| 排出移動量報告の義務化の是非(義務か自主的取組か) | 公平性の確保、数値の信頼性の確保の観点からも、報告対象事業場からの化学物質の排出移動量の報告を義務化することが適当である。 |
| 排出移動量報告の所管(環境庁か通産省か) | 環境行政機関がPRTRの実施に主体的役割を果たすべきである。 |
・新たに取り入れられた点
| 情報の公表等についての考え方(企業毎、事業所毎の情報の開示の是非) | 要求があればできるだけ公開と、非公開原則から大きく前進した。但し過剰なほど企業秘密に触れており、その範囲の定め方により非公開も有り得る |
・やや前進した点
| 対象事業場の範囲(小規模事業所の免除の是非) | 小規模事業所の裾切りの設定を依然として容認しているが、裾切りの規模が過大になることへの警告が付記された |
・不十分な点
| 対象物質の範囲(原則として全物質報告義務か、対象物質を個別指定か) | 広く定めるとしながらも原則対象という考え方はとらない不十分な内容 |
| 報告内容(工場の排出量の他、使用量(取り扱い量)の報告の是非) | 注 取り扱い量については対象外と読める不十分な内容 |
| 報告対象事業場以外からの排出量の把握(移動発生源の義務化の是非) | 移動発生源(トラック事業者など)は対象外とするとの不十分な内容 |
・その他
| 国際的取組への参加(国際協調の名の下で日本独自の対策を遅らせることの是非) | 取組に参加するのみで、リーダーシップなど積極的記述、国際制度との整合性などの後ろ向きの記述、共に特になし |
| 中環審は11月30日にPRTR法制化へ向けた中間答申を発表した。審議の経過のなかで国民を意見をもとめるなど広く国民的な議論のなかでより制度を作ろうとする姿勢は評価できる。JNEPも別項の意見を提出したが、中間答申にそれがどの程度反映されているか、検証が必要だが、とりあえず答申概要を掲載する。 答申全文はここ |
中環審PRTR制度(中間答申)
(98/11/30)今後の化学物質による環境リスク対策の在り方について −我が国におけるPRTR(環境汚染物質排出移動登録)制度の導入
経過と取り扱い
1998年7月15日に環境庁長官から中央環境審議会(会長:近藤次郎・(財)国際科学技術財団理事長)に「今後の化学物質による環境リスク対策の在り方について」諮問がなされた。
中環審環境保健部会が、5回にわたる審議、学識経験者・産業界・NGO・地方公共団体の参考人からの意見聴取、国民意見の募集などを経て、我が国において早急に導入すべきPRTRについて、その制度の導入に当たっての基本的な考え方を中心として取りまとめたもの。
答申は、化学物質による環境への負荷の低減対策の一環としてPRTRを導入することが急務としており、環境庁は、この中間答申に示された考え方に基づき、早急に我が国にふさわしいPRTRの法制化を図るとしている。
中間答申(概要)
1.化学物質に関する環境保全対策の現状と課題
● 主に人の健康の保護の観点から、規制等の化学物質対策が実施されてきたが、環境媒体を全体としてとらえ、化学物質による環境負荷の総体を低減し、有害性を有する膨大な化学物質に対応するため、化学物質や発生源に応じた多様な対策手法が必要な状況。化学物質への過度の不安を招かぬよう留意しつつ生態系の保全にも一層配慮すべき。
● 化学物質の環境上適正な管理は「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)でも最重要課題の一つと認識。環境リスクの評価及び管理や、その関連情報の整備・活用等を推進することが世界の潮流で、PRTRの導入等が進められ、事業者による自主的な環境保全対策も促進。
● これらを踏まえた今後の化学物質対策の基本的考え方・方針は以下のとおり。
@人の健康及び生態系への影響を未然に防止するため、有害性を有する化学物質による環境への負荷を可能な限り低減すべき。
A化学物質による環境への負荷の低減は、多様な方法を用いてできる限り効果的かつ効率的に推進することが必要。
B事業者、国民、行政が各々の役割を果たすことにより化学物質による環境への負荷の低減を進めうるような仕組みを検討することが必要。
2.PRTRを機軸とする化学物質対策の展開
● PRTRは、化学物質による環境への負荷の程度を把握し、情報を各主体が利用できるようにするもので、環境政策上の手法として有効。既導入国では環境行政機関により実施。
● PRTRは次のような多面的な意義を有すべきもの。
@環境保全上の基礎データとしての重要な位置づけを有すること。
A行政による化学物質対策の優先度の決定にあたり重要な判断材料となること。
B事業者の化学物質の排出量の削減のための自主的取組の促進に寄与すること。
C国民への情報提供を通じて、化学物質による環境リスクへの理解を深め、化学物質対策への協力及び環境への負荷低減努力を促進するものとなること。
D化学物質に係る環境保全対策の効果・進捗状況を把握する手段となること。
● 排出量情報とその理解に役立つ情報を併せて公表し、疑問や相談への対応を的確に行うリスクコミュニケーションが必要であり、そのための情報提供体制の整備、意思疎通手法の開発、意思疎通の場の設定、人材育成等を支える行政的な努力も重要。
※リスクコミュニケーションとは、化学物質による環境リスクに関する正確な情報を行政、事業者、国民、NGO等のすべての者が共有しつつ、相互に意思疎通を図ること。
3 PRTRの導入の在り方
3−1 導入に当たっての基本的な考え方
● 環境庁のパイロット事業・「PRTR技術検討会」・OECD「PRTR東京国際会議」の成果、(財)経済団体連合会等によるPRTR関係事業をはじめとする産業界の取組及び諸外国の制度を参考とし、我が国にふさわしい制度を導入すべき。
● 次のような社会的意義が大きい枠組みを基本とすべき。
@有害性を有する数多くの化学物質について様々な環境媒体への排出量等が、環境保全施策の基礎的な情報として把握できるようにする。
A個別の事業場からの排出量等の報告・それ以外の排出源についての排出量等の推計により、対象化学物質の全排出源からの排出量等を把握できるようにする。
B排出量データの集計及び公表並びにリスクコミュニケーションにより、化学物質による環境リスクに関する情報の提供及び理解の促進、事業者及び国民による環境負荷低減努力の促進を図ることができるようにする。
C化学物質の環境における存在状況の調査(環境モニタリング)の効果的かつ効率的な実施とあいまって、事業者及び国民による環境への負荷を低減するための努力を適正に支援し、補完することができるようにする。
3−2 PRTRの実施に関する考え方
● 報告対象事業場からの排出・移動量の報告を義務化することが適当。
環境への排出量等のデ−タは環境政策の基本であり、環境行政機関が主体的役割を果たすべき。
● 対象物質は、人の健康への影響のみならず生態系への影響も考慮して幅広く選定。 対象事業場は、化学物質を製造・使用する事業場等をできるだけ幅広くとらえ、化学物質の取扱いの可能性と排出情報の把握等の能力を考慮し選定。
報告内容は、対象化学物質ごとに事業場から大気、水及び土壌に排出される排出量、事業場外に搬出される廃棄物に含まれる移動量並びに関連情報とすべき。
● 報告対象事業者の支援のため、化学製品中の成分情報の提供体制、排出量算定マニュアルを整備・充実し、事業者はマニュアルによる推計等による排出量等を報告すればよいこととし、排出量の実測を必須としない。
電子媒体による報告を可能とする。また、報告の信頼性の確保を図るべき。
● 報告対象外の事業場の排出量並びに自動車走行等の移動発生源、家庭及び土地利用からの排出量は、行政が精度を確保して推計し、報告排出量と合算して集計。
● 全国や地域での化学物質対策にPRTRデ−タを広く活用できるように、国が報告に関する統一的なルールを示すとともに国と地方公共団体が連携して制度の普及定着を図り、デ−タの精度や報告者間の公平性・統一性を確保。また地方公共団体がPRTRを有効に活用しやすくすること。
● 排出量等の情報が社会の様々な構成員に正しく理解され活用されるようにするため、化学物質ごとに、環境媒体別、発生源の種類別、地域別等に集計しわかりやすく公表。集計及び集計情報の公表に電子情報システムを活用し、より迅速性と利便性を向上。個別事業場データの開示請求があれば可能な限りそれに応じ、その正しい理解のためリスクコミュニケーションの推進に努めるべき。関係する他法との整合を図りつつルールを定めて企業秘密情報を保護する一方、環境行政は化学物質の排出量全体を把握。
● PRTRデータの公表に当たり、国や地方公共団体が、有害性に関する情報提供や、環境リスクに関する説明等を併せて行うよう努めるべき。事業者が自主的にPRTRデータの公表と説明を行うことは望ましい。行政やそれと同様に中立性が確保された者がリスクコミュニケーションに関与してそれを支援。国・地方公共団体は事業者・国民の相談や問い合わせに対応できるよう配慮。
● PRTRは化学物質による環境への負荷の低減に努める契機となり得るもので、それにふさわしい公表や活用方法を考えるべき。化学物質による環境への負荷が増大しないようにするためには、事業者の自主的努力、国民の理解と協力、公的な視点からの環境モニタリングの充実・排出量抑制技術の開発・より安全な物質への代替を促進する調査研究・公共事業の効果的な促進・知識や技術の普及啓発等が総合的に効果。また、PRTRの結果の公表が国民にむやみに不安を生じさせることがないよう積極的に意識啓発等に努めるべき。
4 今後取り組むべき事項
● 環境モニタリングデータ、化学物質の排出量データ、化学物質の有害性等に関するデータ等は重要な基本情報であり、整備・充実が必要。また環境リスク評価をより迅速に行える手法・システムの開発に努め、環境リスク管理への活用を図るべき。
● 環境庁のパイロット事業の実施による知識や経験、OECDの「PRTR東京国際会議」によって培われた国際的な関係を活かし、国際的な協力の実施可能性について検討を行うべき。国際的なPRTRの普及と協調のための取組等の国際機関による取組にも貢献すべき。
● 国際的な分担下で簡易な手法によるリスク評価を行うプロジェクトにより積極的に参加。化学物質に関する国際条約関係の動向、有害性による化学物質の分類とラベル表示の調和、OECDにおけるリスク管理に関する検討等にも留意しながら、国際的な協調の下で、化学物質に関するリスク管理の推進に貢献すべき。
現在、中央環境審議会で具体化を検討中のPRTR制度について、JNEPは次の意見書を提出し、この制度が今日の有害物質による環境汚染にたいして、効果的な制度として機能できる内容を備えたものとなるよう求めた。
中央環境審議会 御中
1998年11月13日
公害・地球環境問題懇談会(公害・地球懇)
PRTR制度についての公害・地球懇の意見
PRTR(化学物質移動・排出登録制度)は、化学物質などの排出を広く公表することで、未規制物質を含めて監視下に置くことで企業の排出削減への努力を促す制度です。OECD(経済協力開発機構)が導入を勧告しており、各国で制度化あるいは導入検討がなされています。
日本では全国各地で産業廃棄物のずさんな処理により、全国いたるところで環境が破壊されています。また、製造業において全国各地で有害化学物質の排出が次々に発覚し、中には数年にわたって漏洩の事実を隠匿していた例もあります。多くの化学物質を誰がどこでどれだけ何の目的で使用しているのか自体が秘密にされていることが、こうしたずさんな管理とそれによる広範な環境破壊をもたらしています。
公害・地球懇は、健康被害の未然防止と環境保全のため、現在の大量生産、大量廃棄、それに有害物質の野放しの生産体制を抜本的に改革すべきと考えています。PRTR制度はこの抜本的改革の第一歩として、将来規制に移行するにしても、現段階で即時できるだけ広く化学物質等の使用状況を公開し、リスクの把握や、使用の削減、より危険性の小さい物質への転換を促す制度をたちあげるべきです。
1.PRTRの実施に関する考え方・排出・移動量報告手続きの考え方
【審議会報告】
○PRTR制度では、事業者から排出量等の情報が確実に得られることが基本である。公平性の確保、数値の信頼性の確保の観点からも、対象事業所からの化学物質の排出・移動量の報告を義務化することが適当ではないか。
○PRTRで報告、集計、公表されるデータは、環境への排出量等のデ−タであり、それを把握し、管理することは環境政策にとって基本であることから、環境行政機関がPRTRの各段階で主体的役割を果たすべきではないか。
【JNEP意見】いずれも重要だと考えます。まず、事業者の自主的努力ではだめなことは、近年の化学物質の使用や排出の増大、あいつぐ汚染物質の漏洩と不十分な後処理、皆無に等しい未然防止策などで明らかだと考えます。また、所管については、産業行政における従来の不十分な対策を見るにつけ、環境保全に責任をもった部署が所管することが重要と考えます。
【審議会報告】
○環境リスクの社会的な管理は社会全体の合意に基づいて行われるべきであり、そのためには環境リスクに関する情報があらゆる主体に共有され、理解されることが必要ではないか。
○PRTRの結果の公表に当たり、「デ−タの一人歩き」や意志疎通の困難性を危惧する意見が多いことを踏まえ、有害性に関する情報提供や、環境リスクに関する説明などを併せて行うよう努めるべきではないか。
【JNEP意見】共有・理解やそのための説明は必要ですが、それが化学物質や重金属の大量使用や排出についての言い訳になってはならないと考えます。危惧すべきは「デ−タの一人歩き」ではなく「デ−タの隠匿」や、危険性を矮小化・曲解した解説の流布だと考えます。
【審議会報告】
○リスクコミュニケーションの推進の観点から、事業者による自主的なPRTRデータの公表と説明の実施は望ましく、それを支援するためにも、行政やそれに準ずる者が関与することによる関係者間の円滑なリスクコミュニケーションの推進が考えられるのではないか。また、地域レベルで事業者・国民の相談や問い合わせに対応できるようなシステムも考えられるのではないか。
【JNEP意見】事業者が自主的にデータ公表することは望ましいのは言うまでもありませんが、それが公的制度の導入を遅らせる理由にはならないと考えます。
2.PRTRデータの活用のあり方について
【審議会報告】
○化学物質は社会経済活動や国民生活に幅広く利用され、排出されているので、製造や加工の事業においてのみならず、他の事業や国民生活においても、環境への負荷を低減させるという考え方が必要ではないか。
【JNEP意見】賛成です。但し、国民生活での環境負荷低減のためには家庭向けの製品に有害性のある化学物質が含まれなくなる、あるいは含まない商品があってその情報が開示されて国民が容易にアクセスできる、などの制度の裏付けが必要です。PRTRやその他の制度を通じてどの企業が環境保全に努力しているのか、また機能やイメージでなく環境保全の見地から消費者は商品購入においてどの企業の商品を購入すべきで、どの商品は購入してはならないのか、その判断の基礎になる情報が示されることが化学物質による環境負荷の低減に大きく寄与すると考えます。
【審議会報告】
○PRTRデータは、事業者にとっても国民にとっても化学物質の環境負荷低減に努める契機となり得るものであり、それにふさわしい公表や活用方法を考えるべきではないか。
【JNEP意見】パイロット事業では化学物質の使用については各企業のデータは公開されませんでした。公害・地球懇はこうした公開制度の確立を通じて、各企業が有害化学物質を徐々に使用せずにより安全な物質への転換を図るものと期待しています。企業毎、事業所毎に排出状況の国への報告を義務づけるとともに、その結果を全て公開する制度とすべきです。
【審議会報告】
○また、そのような取組みを促進し、支援する上で、行政が一定の役割を果たすべきではないか。特に化学物質による環境への負荷が増大しているような場合には、事業者の自主的努力、国民の理解と協力のみに期待するのではなく、公的な視点からの支援的取組みが必要ではないか。
【JNEP意見】国(の中の環境部局)が責任をもって制度化すべきと考えます。事業者の自主的努力ではだめなことは、近年の化学物質の使用や排出の増大、あいつぐ汚染物質の漏洩と不十分な後処理、皆無に等しい未然防止策などで明らかだと考えます。
【審議会報告】
○このような施策としては、環境モニタリングの充実、排出量抑制のための技術開発、代替物質の研究、公共事業の促進、知識や技術の普及啓発などが考えられるが、それらの多種多様な対策が、可能な限り効果的に進められるようにするため、整合をとった取り組みができるようにすべきではないか。
【JNEP意見】「整合をとった取り組み」が必要なのは言うまでもありませんが、それが排出量の公表や規制の強化の妨げになってはならないと考えます。
【審議会報告】
○一方、人の健康への被害や生活環境の保全上の支障の発生を防止するための必要最小限の規制はすでに行われていることに鑑み、PRTRの結果の公表が国民に不安を生じさせることがないよう意識啓発することも必要ではないか。
【JNEP意見】「人の健康への被害や生活環境の保全上の支障の発生を防止するための必要最小限の規制はすでに行われている」とは考えません。意識啓発は必要ですが、それが化学物質や重金属の大量使用や排出についての言い訳になってはならないと考えます。
3.PRTRの対象物質等についての考え方
【審議会報告】これまでのパイロット事業での経験、PRTR技術検討会での検討等を踏まえたPRTRの対象物質等についての考え方は以下のとおり。
○対象物質
・有害性及び暴露可能性の観点から選定。人の健康への影響だけでなく、生態影響も考慮する。
・既存の環境規制対象物質もPRTRの対象に含む。
【JNEP意見】対象物質が狭すぎるように考えます。パイロット事業は、公開すべき対象化学物質を人体への直接の影響に絞りました。これはリスクの削減というPRTRの目的から考えて失敗だったと考えます。これらは生産や販売、使用、廃棄が規制されてしかるべきものばかりで、これでは新しい制度を導入する意義は半減してしまいます。「人の健康への影響だけでなく、生態影響も考慮する」のは当然ですが、影響が学問的に厳密に確認されているものに限定するのではなく、対象物質はできるだけ広くし、人体や環境への影響がゼロであるとは完全に確証されていない化学物質や重金属は全て対象にすべきだと考えます。
【審議会報告】
○報告の対象事業所
・化学物質を製造している工場だけでなく、化学物質を使用している事業所も対象。化学物質の取扱いの可能性等を検討して業種によって選定する。
・事業所による排出情報の把握・処理の技術的・経済的能力を考慮し、一定規模以下の事業所等については報告を免除する。
【JNEP意見】対象事業所が狭すぎるように考えます。パイロット事業は、対象事業所を従業員規模で業種により100人または30人で裾切りしました。これはリスクの削減というPRTRの目的から考えて失敗だったと考えます。これでは大手製造業についてはカバーできても、廃棄物処理業者やゴルフ場など、有害物質を取り扱う事業者の多くが抜けてしまいます。基本的に規模によらず全事業所を対象とし、中小企業については登録・報告の免除や軽減ではなく、報告について国が必要な支援をすることで配慮すべきです。
また、前述の通り、企業毎、事業所毎に排出状況の国への報告を義務づけるとともに、その結果を全て公開する制度とすべきです。
【審議会報告】
○報告内容
・化学物質ごとの大気・水・土壌への排出量及び廃棄物としての移動量等を報告。
【JNEP意見】取り扱い量も併せて報告させるべきです。
【審議会報告】
○報告の対象となる事業所以外の発生源(非点源)の取扱い
・移動発生源、中小事業所、家庭などについては、行政が可能な限りの精度を確保して排出・移動量を推計し、事業所からの報告値と併せて集計。
○報告の対象事業所における排出・移動量の算定方法に関する支援等
・環境庁がパイロット事業のために作成した「排出量算定マニュアル」が使用できる。原則として推計により報告できることとし、実測デ−タも活用できることとする。
【JNEP意見】これらについては国が支援すべきです。ただし移動発生源のうち業務用トラックや業務用乗用車、中小事業所などは報告を義務化すべきです。その際に「対象事業所における排出・移動量の算定方法に関する支援等」をきめ細かに行う必要があると考えます。
4.その他留意すべき事項
【審議会報告】
○環境リスク評価に関する科学的知見の充実と調査研究の推進
○環境リスクの評価・管理及びリスクコミュニケーションに関する人材の育成
○国際的なPRTRの普及と協調のための取組への参加
○国際的なリスク評価・リスク管理への協力と協調
(いずれも項目のみ)
【JNEP意見】「国際的なPRTRの普及と協調のための取組への参加」、「国際的なリスク評価・リスク管理への協力と協調」はいずれも重要ですが、国際的取り組みがより実効的なものになるよう日本政府がリーダーシップをとっていくことが重要です。国際協調はしばしば諸外国の中に取り組みが遅れているところを捜し出し、あたかも日本国内で対策を取ると企業が経済的打撃を受けるかのように主張し、制度強化をいたずらに遅らせる口実につかわれてきました。国内対策を最大限に進めつつ、諸外国や多国籍企業のの抜け穴をふさいでより実効性のある国際的なリスク評価・リスク管理体制を目指すことが基本と考えます。
98/06/30 JNEP (公害・地球懇)
PRTR(化学物質移動・排出登録制度)は、化学物質などの排出を広く公表することで、未規制物質を含めて監視下に置くことで企業の排出削減への努力を促す制度です。OECD(経済協力開発機構)が導入を勧告しており、各国で制度化あるいは導入検討がなされています。
日本でも、環境庁がPRTRパイロット事業を神奈川県、愛知県で実施し、国民意見を求めていました。環境庁はこれをもとに秋に向けた制度化を目指したいとしています。ところが、通産省も秋に向けて、通産省所管の化審法による制度化を目指していると報道されています。また、経団連は独自に調査を実施し、意見として排出物質などを狭くとるよう求めています。実効性ある制度を求めて今後運動を強める必要があります。
情報開示の必要性
日本では松下電産系の工場などで、全国各地で産業廃棄物のずさんな処理により、全国いたるところで環境が破壊されています。また、製造業において全国各地で有害化学物質の排出が次々に発覚し、中には数年にわたって漏洩の事実を隠匿していた例もあります。多くの化学物質を誰がどこでどれだけ何の目的で使用しているのか自体が秘密にされていることが、こうしたずさんな管理とそれによる広範な環境破壊をもたらしています。
公害・地球懇は、健康被害の未然防止と環境保全のため、現在の大量生産、大量廃棄、それに有害物質の野放しの生産体制を抜本的に改革すべきと考えています。PRTR制度はこの抜本的改革の第一歩として、将来規制に移行するにしても、現段階で即時できるだけ広く化学物質等の使用状況を公開し、リスクの把握や、使用の削減、より危険性の小さい物質への転換を促す制度をたちあげるべきです。
パイロット事業の問題と制度提案
公害・地球懇はこうした観点から、パイロット事業の基本的な問題点を3点指摘し、制度提案を行う意見書を提出しました。
(1)対象化学物質の範囲について
パイロット事業は、公開すべき対象化学物質を人体への直接の影響に絞っています。
これらは生産や販売、使用、廃棄が規制されてしかるべきものばかりで、これでは新しい制度を導入する意義は半減してしまいます。対象物質はできるだけ広くし、人体や環境への影響がゼロであると完全に確証されていない化学物質や重金属は全て対象にすべきだと考えます。
(2)対象事業所の規模について
対象事業所を従業員規模で業種により100人または30人で裾切りしています。しかし、これでは大手製造業についてはカバーできても、廃棄物処理業者やゴルフ場など、有害物質を取り扱う事業者の多くが抜けてしまいます。
基本的に規模によらず全事業所を対象とし、中小企業については登録・報告の免除や軽減ではなく、報告について国が必要な支援をすることで配慮すべきです。
(3)企業データの公表
化学物質の使用については各企業のデータは公開されませんでした。公害・地球懇はこうした公開制度の確立を通じて、各企業が有害化学物質を徐々に使用せずにより安全な物質への転換を図るものと期待しています。
業界の一部には、排出状況を公開すると混乱を招くなどの口実で公開に反対しているところもあります。しかし、企業毎の情報を拒む理由はないし、たとえあっても人の健康被害や環境破壊の未然防止に優先するような情報秘匿の理由は考えられません。
企業毎、事業所毎に排出状況の国への報告を義務づけるとともに、その結果を全て公開する制度とすべきです。
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化学品審議会総合管理分科会
部会長 近藤 雅臣殿
1998年9月2日
公害・地球環境問題懇談会
PRTR制度についての意見
昨今、全国各地で産業廃棄物のずさんな処理により、全国いたるところで環境が破壊されています。また、製造業において全国各地で有害化学物質の排出が次々に発覚し、中には数年にわたって漏洩の事実を隠匿していた例もあります。多くの化学物質を誰がどこでどれだけ何の目的で使用しているのか自体が秘密にされていることが、こうしたずさんな管理と、それによる広範な環境破壊をもたらし、それによる健康被害も懸念されています。水俣病やイタイイタイ病などの悲惨な経験はどこに活かされているのでしょうか。
私たちは、健康被害の未然防止と環境保全のため、現在の大量生産、大量廃棄、それに有害物質の野放しの生産体制を抜本的に改革すべきと考えています。PRTR制度はこの抜本的改革の第一歩として、現段階で即時できるだけ広く化学物質等の使用状況を公開し、リスクの把握や、使用の削減、より危険性の小さい物質への転換を促す制度をたちあげるべきです。
PRTR(化学物質移動・排出登録制度)について国民意見を今後の制度づくりに十分活かし、国民参加の意思決定がなされることを求めます。また、当制度は環境保全を目的とする制度とすべきで、制度の根幹は環境保全を所管する部局が所管すべきです。この点で化審法の枠内で検討されている通産省の枠組み自体に強い違和感を覚えます。
この観点から以下に、基本的な問題点を指摘し、今後の制度提案とします。
(1)義務化対象者の範囲・規模について
中小企業への配慮が中間報告には盛り込まれています。しかし、これでは大手製造業についてはカバーできても、中小の製造業者、さらに業界全体に中小企業の多い廃棄物処理業者やゴルフ場など、有害物質を取り扱う事業者の多くが抜けてしまいます。
基本的に規模によらず全事業所を対象とし、中小企業については登録・報告の免除や軽減をするのではなく、報告について国が必要な支援をすることで配慮すべきです。
(2)対象化学物質の範囲について
公開すべき対象化学物質をどれだけ広げるかは制度の大きなポイントです。仮に対象物質が人体へ直接健康影響などを及ぼすものに絞られれば、それらは生産や販売、使用、廃棄が規制されてしかるべきものばかりですから、新しい制度を導入する意義は半減してしまいます。
対象物質はできるだけ広くし、人体や環境への影響がゼロであると完全に確証されていない化学物質や重金属は全て対象にすべきだと考えます。
(3)データの公表、とりわけ個別データについて
個別データについて公開されるかどうかも重要なポイントです。制度の趣旨の一つとして国が様々な集計上の工夫をして問題の状況を見やすく配慮するのは当然のことですが、市民の希望に応じて、地域毎、事業者・事業所毎、物質毎などの個別あるいは個別に近いデータについてアクセスできる制度とすべきです。
(4)企業データの公表、いわゆる企業秘密との関係について
各企業(事業者・事業所毎)のデータの公開がなされるかどうかはこの制度のポイントです。私たちはこうした公開制度の確立を通じて、各企業が有害化学物質を徐々に使用せずにより安全な物質への転換を図るものと期待しています。業界の一部には、排出状況を公開すると混乱を招くなどの口実で公開に反対しているところもあり、業界団体代表が委員の多くを占める当合同部会の報告にも影響しています。しかし、企業秘密を口実に人の健康被害や環境破壊の未然防止に優先するような制度はあってはならないと考えます。
事業者・事業所毎に排出状況の国への報告を義務づけるとともに、その結果を全て公開する制度とすべきです。
(5)企業データ、事業所毎の収集について
事業者の中には全国的展開をしているとの理由で、事業者単位とすべきとする意見があります。しかし、地域住民は全国レベルの情報の他に、近隣の事業所でどのような物質が扱われているかに重大な関心を有しています。事業者だけでなく、事業所毎に情報を収集し、公開する制度とすべきです。
(6)準備期間について
制度のたち上げのために準備期間が必要なのは当然ですが、この期間をいたずらに伸ばすのは考えものです。有害物質の駆け込み使用を促進するなどの弊害も考えられますので、迅速な制度のたち上げが必要です。
−−以上−−
経団連PRTR(環境汚染物質排出・移動登録)調査結果報告
1998年6月16日/(社)経済団体連合会
1.はじめに
1.地球サミットからOECD勧告まで
PRTRは、古くはオランダの排出目録制度(1974年〜)にその起源をさかのぼることができる。これは企業の自主報告を主体とした制度であるが、その後、1986年、アメリカにおいても、住民の知る権利に対応した情報収集・公表制度が導入され、世界的に取り上げられたのは、92年にブラジルのリオで開催された地球サミットである。地球サミットにおいて採択されたアジェンダ21の第19章「化学物質の適切な管理」において、「化学物質のリスク管理のためには有害化学物質に関する排出目録等の情報システムの改善が不可欠である」旨述べられており、「PRTR」即ち「環境汚染物質排出・移動登録」制度の導入が提言されている。その後、OECDは、地球サミットのフォローアップとして、PRTRの導入のためのガイダンスを作成するよう国連から要請を受け、93年より取組みを開始した。そして、96年2月には、加盟国に対して、PRTRを導入するよう求めた理事会勧告を発表した。なお、この勧告は、加盟各国に対し、99年2月に、PRTR導入への取組み状況を報告することを義務づけている。
2.経団連の取組み
経団連では、OECD勧告を受け、96年の11月より環境安全委員会の下部組織の一つである大気・水質等タスクフォースにおいて、わが国におけるPRTR制度導入のあり方について検討を行なってきた。97年4月には、『「PRTR(環境汚染物質排出・移動登録)制度」導入についての見解』を発表し、通産大臣、環境庁長官はじめ関係各方面に建議した。この見解の中で、産業界は91年の経団連地球環境憲章にはじまる自主的取組みの流れを受けて、PRTR制度についても自主的に構築していく考えであることを明らかにしている。続いて6月には、経団連の呼び掛けに応じた45の業界団体の参加を得て、PRTR作業部会を新規に設立し、対象物質の選定、マニュアルの作成等、制度構築の準備を進めた。97年12月には第一回調査を開始し、各業界団体から提出されたデータを経団連において取りまとめ、今回公表の運びとなった。
なお、97年10月には、ヨーロッパ、北米の計7カ国へ、専門家や企業の担当者等から成る調査団を派遣し、既にPRTRを導入、実施している諸外国の状況を調査してきた。各国は、ニーズや社会環境等に応じて、独自のPRTR制度を構築・運用し、一定の成果を挙げるなど、当初予想した以上に取組みが進んでいた。また、各国とも、OECD勧告に基づいて、制度改善の必要性を検討しているものの、画一的なPRTRの導入は考えていない。さらには、PRTR実施に際しては、環境政策に優先順位を付けるため、あるいは排出削減の促進のため等、それぞれ明確な目的を持ちつつ、一定の制度の下で、企業の自主的取組みを高く評価・尊重している。一方、産業界の状況としては、欧米各企業とも、環境レポートの発行等をはじめとして、自社の環境関連活動に関する情報提供に積極的に取組み、企業に対する信頼獲得に努めている。こうしたリスクコミュニケーションの促進は、わが国企業が今後、一層の努力を要する点ではないかと考える。
現在、通産省及び環境庁において、それぞれPRTR法制化が論じられているところであるが、経団連では、環境汚染物質のリスク管理の重要性に鑑み、98年度以降も引き続き、産業界による自主的な取組みを実施する所存である。
2.目 的
1.産業界による化学物質の自主管理の取り組みの推進
化学物質は、社会生活を豊かにしていく上で必要不可欠なものであるが、取り扱いなど適切な管理を怠ると、環境・健康・安全に対して悪影響を与え、生物や環境を脅かす物質として作用することもある。
一方、現在製造、使用されている5万から10万種とも言われる化学物質を従来の法規制で管理することは不可能となっており、化学物質の自主管理において事業者の自主的取り組みが強く求められている。
そこで、産業界においては、事業者が自ら取り扱っている化学物質の環境への排出量、移動量を把握し、潜在的に有害な環境汚染物質の適正なリスク評価・リスク管理を行うためのツールとして活用することを目的とする。
2.社会とのリスクコミュニケーションの一助として活用する。
調査結果を公表して、自主活動の透明性を高め、社会からの信頼を確保するためのリスクコミュニケーションの一助として活用する。
3.基本方針
1.経団連が現在実施しているPRTRは最終形態ではなく、社会とのリスクコミュニケーションを行いつつ、継続的に改善していく。
2.経団連加盟団体以外にも更に広く参加を呼びかけ、PRTRを全産業の自主的な取り組みとして推進していく。
3.排出量削減に向けた産業界の自主的取組みの基礎データとして活用する。
4.化学物質の生産から廃棄までの一貫したリスク管理を考える基礎データとして活用する。
5.データの公表については、当面は産業界全体としての排出量とするが、社会とのリスクコミュニケーションを進めつつ、順次ブレークダウンしたデータを公表することを目指す。
4.調査結果の概要
1.調査参加業界団体及び企業数
今回の経団連のPRTR調査の呼びかけに応じて、経団連会員29団体及び非会員16団体の合計45団体が参加を表明した
。この内、7団体は調査体制の準備が間に合わなかったため、報告があったのは38団体であった。また、調査対象物質の日本全体の総取扱量に占める38団体のカバー率#1を算出したところ、物質あたり平均約80%となった。
参加38団体が会員企業に調査を依頼したところ、合計2,510社の内、63.1%にあたる1,585社から回答があった。
今回、回答が得られなかった企業にその理由を尋ねたところ、
1.調査対象物質を取り扱っていない。
2.事業所規模が調査対象外である。
3.回答期限までに調査が間に合わなかった。
等の理由であった。
#1 カバー率=報告された取扱量/{日本全体の生産量(通産統計値)
+使用量(生産量で代替)+輸入量−輸出量}
2.取り扱い及び排出実績
今回の調査対象となった174物質の内、取り扱い実績の報告があったのは145物質であった。この内、環境への排出実績のなかった物質は40物質あり、さらにその中の17物質については廃棄物としての移動の実績もなかった。
また、4団体については、対象物質の取り扱い実績がなかった。
3.環境媒体毎の排出量
環境への排出量は、大気への排出量が一番多く、総排出量で約93%を占めており、ついで公共用水域への排出量が総排出量の約6%である。総排出量に占める土壌への排出量の割合は極めて低く、0.5%にすぎなかった。
物質毎にみると、大気への排出割合の多い物質が72物質、公共用水域への排出割合が多い物質が30物質、土壌への排出割合が多い物質は3物質であった。
大気への排出量の一番多かったのはトルエンで約41,600トン、次いでキシレンの約31,600トン、ジクロロメタンの約23,500トンであった。
公共水域への排出量が一番多かったのは、塩化水素の約4,500トン、ジメチルホルムアミドの約680トン、ホウ素及びその化合物の約390トンであった。
土壌への排出量が多かった物質は、キシレン類の220トン、バリウム及びその化合物の197トン、シュウ酸の120トンであった。(表1〜3参照)
4.有害性ランク別の排出状況
有害性ランクA(ヒト発ガン性があり)の物質については7物質の環境への排出が報告された。排出量の多かった物質は、ベンゼンの約4,400トン、塩ビモノマーの約1,800トン、エチレンオキサイドの約220トンである。
有害性ランクB(ヒト発ガン性の疑いが強い等)の物質については42物質の環境への排出実績が報告され、排出量の多いものには、ジクロロメタンの約23,500トン、塩化水素の約5,900トン、スチレンの約3,400トンがある。
有害性ランクCは42物質の排出実績が報告され、有害性ランクDについては4物質の排出実績があった。(表4〜5参照)
環境への総排出量に占める有害性ランク別の排出量比では、ランクBとランクDがそれぞれ約44%(約74,000トン)を占める。ランクCは約8%、ランクAは約4%となっている。
5.有害大気汚染物質の自主管理計画対象12物質の排出状況
改正大気汚染防止法は、有害大気汚染物質について事業者の自主管理を促進することにより、排出抑制対策を進めていくことを一つの柱としている。自主管理対象12物質については、95年の排出量をベースとして2000年の排出量を約30%削減すべく産業界の自主的取組みが進んでいる。
今回調査の結果、これら12物質の環境への総排出量は約44,000トンであり、この内、ジクロロメタンが約23,500トン、ベンゼン約4,400トン、トリクロロエチレンが約3,700トンの排出量となっており、この3物質で71%を占めている。(表6参照)
6.データの精度について
今回報告されたデータを集計、整理すると以上のようになるが、今回の調査は初めての取り組みでもあり、排出・移動量の算出方法等について必ずしも認識が統一されているとはいい難い。したがって、今回の結果を基に各業界毎に討議を行ない、考え方等を整理して今後の精度向上を図っていきたい。(例えば、公共用水域への排出量が際立って多い塩化水素については、排水の中和用に使用されているものが、相当量含まれていると推定される。)
5.成 果
1.日本全体の排出・移動量のオーダーの把握
今回の調査の結果、各物質毎に全国レベルでの排出・移動量のオーダーが把握できたことが最大の成果である。
2.世界で初めての広範且つ自主的な産業界の取組み
経団連の呼びかけに対して、45という多数の業界団体が参加を表明し、最終的に38団体から報告があった。これは、産業界の自主的な取組みとしては世界で初めて且つ広範なものである。
3.高いカバー率
カバー率を推算したところ、物質あたり平均約80%という高い値であった。
6.今後の課題
1.回答率及び参加業界団体の拡大
当初、45団体が参加を表明したが、報告を提出したのはその内38団体(ゼロ回答4団体含む)だった。今回、体制整備が間に合わなかった7団体を含め、今後、より多くの業界団体に参加を呼びかけていく。
なお、今回の調査では約30業種を対象としているが、化学物質を大量に取扱っているにもかかわらず対象となっていない業種にも参加を呼びかけて、データの拡充を図る。
2.データの整合性の確認と精度の向上
今回は、初めての取組みということで、排出・移動量の算出方法等について、認識が統一されているとはいい難いので、各業界における認識の統一を図るとともに、データの整合性の確認を行なう。
また、データ作成の際に、購入品等において成分情報の伝達が不十分なケースがあり、算出にとまどったとの意見も見られたので、伝達方法の改善に努力する。
3.カバー率の一層の向上
対象物質の取扱量調査の方法を改善し、カバー率の一層の向上に努める。
4.データ解説の実施
業界団体から報告されたデータを、リスクコミュニケーションに役立てていくために、産業毎の解析等、データの解説の方法を検討する。また、トータルリスク評価の出来る専門家を養成する必要がある。