(05/10/15更新)
東京国際空港再拡張事業に係わる環境影響評価準備書に対する意見書/アセス都民連絡会(05/10/15)
都道放射5号線アセスへの意見/藤田敏夫(03/04/21)
西東京市議会が都市計画道路の再アセスで意見書(03/02/13)
名古屋環状2号線東南部区間の再アセスを要求(03/02/13)
都アセスの大幅緩和で都市再生加速(02/06/29更新)
都環境アセス条例改正で市民団体が反対(02/06/13)
東京都アセス条例改正の背景と問題点/藤田敏夫(02/06/13)
東京都計画アセス中間のまとめでJNEPが意見(02/03/18)
裏高尾など逆転層アセスは出鱈目だったことが判明(02/02/28)
インターネット利用のアセス支援システムが誕生(01/10/26)
戦略アセスメントで環境大臣に要望…JNEP(01/06/22)
福山道路で環境庁長官意見(00/11/30)
NGOが川辺川ダムのアセスやり直し要求(00/10/14)
戦略的環境アセス研究報告を公表(00/09/08)
東京の事後アセスを検証(00/08/23)
東京都が計画アセスを試行(99/11/10)
座間市の火発、アセス批判で計画撤回(99/10/8更新)
「計画アセス」制度で中間まとめ(99/7/25)
圏央道・東金茂原道の旧来型アセスやりなおせ(99/7/24)
アセス法の運用強化で環境庁へ申し入れ(99/7/9)
吉野川問題で市民側が代替案を提案(99/7/7)
海上の森アセスでもオオタカ見逃し(99/6/20)
環境アセスメント法の施行にあたって(99/6/18)
福山道路(広島県)アセスに意見書提出(99/5/31)
環境庁が川鉄発電所で排ガス削減求める(99/5/31)
44都道府県・政令市がアセス条例を制定(99/4/18)
神戸製鋼が石炭火発の建設へ(99/03/28)
藤前の保全とゴミ問題の解決へむけて辻淳夫(99/02/08)
中部国際空港アセス準備書縦覧の開始(99/02/02)
藤前干潟、鳥獣保護区へ(99/3/18更新)
かろうじて守られた藤前干潟(99/2/9更新)
藤前問題の条例請求10万越す(98/12/23)
藤前の人工干潟化で環境庁がノー(98/12/21更新)
京都市が事後アセスなど条例化へ
徳島空港拡張計画アセス始まる
出光興産愛知製油所(愛知県知多市)のIPP(売電事業)アセス
ずさんアセスが再開(秋田・成瀬ダム)
●東京国際空港再拡張事業に係わる環境影響評価準備書に対する意見書
東京国際空港再拡張事業に係わる環境影響評価準備書に対する意見書
環境アセスメント問題都民連絡会
東京都北区赤羽西6−29−15
電話03−3909−6591
代表幹事 標 重博
代表幹事 藤田 敏夫
代表幹事 本谷 勲
事務局長 渡辺 章
1、 はじめに
第一章対象事業の目的は、「羽田空港に4本目の滑走路を新設し、年間の発着能力(6時台から22時台の定期便枠)を現在の28.5万回から40.7万回に増強して、発着容量の制約の解消、多様な路線網の形成、多頻度化による利用者利便の向上を図るとともに、国内線の発着回数を確保した後の発着枠を活用して国際定期便の就航を可能とするものである」と述べています。
10年以前であれば、この事業目的に異論を唱える声はほとんど起こらなかったでしょうが、京都議定書による温暖化ガス排出削減に厳しい目標をもつ日本の国際的責任を考えると、今回の事業計画には厳しい視点で望む必要があると考えます。
ちなみに再拡張が実現して供用開始された時点の羽田空港からの温暖化ガスの排出量を試算すると、1年間に、二酸化炭素が約7,024,893トン、メタン2,541トン(CO2換算)、一酸化二窒素が65,410トン(CO2換算)排出されます。これらの合計は、7,092,844トンで、日本全体で2003年度に排出された二酸化炭素の約0・64%に当たります。この数字には、空港に集中する自動車から排出される二酸化炭素などの排出量や空港施設からの温暖化物質を含んでいませんから、それを合算すれば1パーセントにも届く可能性さえもっています。それだけに、この事業への対応が、温暖化物質削減に対する国際的責任を踏まえてどれだけ検討されたかが、日本の国際的信用を問われる指標となる可能性を持っていると考えます。
2、環境の時代を踏まえて事業計画を検討する
本事業の目的を整理して言うと、「発着回数ベースでは現状の処理能力は限界」であるとして、「発着容量を1.4倍に増加(166便/日の増)」させて、国内線の発着回数を確保しつつ国際定期便の就航を可能にすることです。
しかし、再拡張を計画した視点は、国内輸送のあり方を、航空機、鉄道、自動車、船舶など輸送手段を多角的に捕らえて合理的に再編する輸送政策が欠落し、航空機輸送が伸びれば、それに受動的に対応して飛行場を拡張する場当たり的事業計画といわなければなりません。
■いまこそ検討すべき新幹線貨物の実現
100km〜800kmの距離帯(北は青森以南、西は岡山以東に相当)を中心とした都市間輸送は、航空機よりも鉄道の方が時間・費用面から有利です(運輸政策審議会答申19号より)。羽田発着便のうち、この距離帯(中距離帯)に相当する路線は全体の26%を占め、特に東京−大阪便が12%を占めています。東京−大阪間は本来、新幹線で輸送するのにちょうどよい距離で、空港アクセスや搭乗手続きの時間を考慮すれば、所要2時間半の新幹線の方が早いぐらいです。
新幹線貨物の構想は、新幹線計画が検討された時、当然の事業計画として構想の中に含まれていましたが、その後の鉄道貨物事業の衰退の中で影が薄くなっていきました。
もし、国内の中距離帯航空貨物の路線を全廃できれば、本事業が目標とする発着枠は十分確保でき、東京−大阪便を全廃するだけでも発着枠に12%の余裕ができ、羽田再拡張の必要性自体に疑問がでてきます。国内長距離交通ネットワークについては、単に交通モード間を自由競争させるのではなく、中距離は鉄道へのシフトを政策的に誘導すべきであり、国の政策を見直す必要があることを強く主張するものです
3、あまりにも環境負荷が大きい空港再拡張計画
(1)東京湾の海洋環境への影響
準備書は、「環境影響評価の実施のあたっての考え方」のなかで、現在、東京湾がおかれた環境上の姿をつぎのようにのべています。
「本事業を実施する区域は、東京湾の西側の海岸線に沿った海域にあり、多摩川の河口域であるとともに東京港に河口をもつ他の河川流が流入する場所である。海域環境についてみると、東京湾は富栄養化した状態にあり、事業実施区域周辺を含む東京湾奥部は、春季から秋季にかけて赤潮や青潮が発生する海域である。また、事業実施区域周辺には、天然記念物や学術上重要な地形及び地質に該当するものは見られないが、造成された浅場等が存在している。従って、事業の実施により、河川水の拡散や海水の流れの状況が変化し、周辺海域の水質や浅場等の地形に影響を与える可能性が考えられることから、これについて十分に考慮する必要がある。」
準備書図3−1−2,10(1)、図3−1−2、10(2)主な赤潮発生状況及び図3−1−2,12(1)、図3−1−2,12(2)東京湾の底層の溶存酸素の分布状況を参照。
羽田空港の再拡張事業の実施を前提にした準備書でも、東京湾の海洋環境については、かなり慎重な表現をして、環境影響について考慮する必要性を説いています。
また、この環境影響評価方法書の段階で発表された、日本海洋学会の意見では、「これ以上、赤潮の発生と底層の貧酸素化が長期化や規模拡大するようであれば、すでに過剰な負荷を受けている東京湾の生態系が、本格的に崩壊するともいわれている」と、その危険な事態に警告を発するとともに、時間をかけた慎重な検討を提案しています。
東京湾は、大阪湾と並ぶ日本を代表する海湾であり、その海洋環境が崩壊する危険性すら孕む空港再拡張事業の環境影響評価としては、その下している結論は、「環境への影響は少ない」と、きわめておざなりの結論に終始しています。そこで海洋環境について具体的の検討してみました。
@ 生物による海域浄化能力が170haの海域で失われることを無視
準備書は、9章水質について293頁に渉って記述していますが、その圧倒的部分は水質に関する調査資料と現況調査の資料です。しかし、それらの資料が、羽田空港の再拡張のために97haが埋め立てられ、65.7haが桟橋構造で遮光による水質への影響を予測評価することになんら役立っていません。埋め立てと遮光部分の建設によって失われるものは、97ha+65.7haの海域の植物性プランクトンの光合成による酸素の補給機能であり、この海域に生息する魚等の生物とアサリなどの底生生物による有機物の吸収機能です。
愛知水産試験場の鈴木輝明氏は、海を浄化する干潟の機能を解明するために一色干潟に実験施設をつくり、その海水浄化機能を定量的に明らかにすることに成功しました。今回の羽田空港の再拡張による酸素の供給と有機物の吸収に関して、この鈴木氏の発想を生かせば喪失する2つの機能について数字的に表現することが可能なはずです。東京湾に流入する有機物の量は基本的に変化しないのですから、97ha+65.7haの海域の有機物吸収力が失われたとき、東京湾の水質汚濁はどのくらい深まるか明らかにする必要があります。また97ha+62.7haの海域で行われている植物性プランクトンの酸素供給機能が失われると、特に東京湾奥部の溶存酸素量にどの程度の変化を及ばすか明らかにしてください。
A 汽水域の役割に関する解明が欠落
「因みに気仙沼地方の水田の面積は約900ヘクタールしかないが、実は海に3000ヘクタールの水田があるといい変えることもできる。湾内に浮かぶ養殖筏一台は、水田1ヘクタールに匹敵する経済的価値を有している。しかも、二枚貝や海藻の養殖には、餌も肥料も施す必要はない。それだけに私も含めて漁民は、貝や海藻が何故成育するのかを考えることが少なかった」
この一文は、気仙沼の漁民・畠山重篤氏の著作『森は海の恋人』の一節です。この中で著者が言いたいことは、山の森林が育んだ栄養素を運ぶ川と、その河口に広がる汽水域の生態系の豊かさに深い関係があるということです。畠山氏は、漁業者の生活体験をつうじて、その生態系について学びました。
私たちが考えなければならないことは、東京湾、とりわけ湾奥部には、多摩川、荒川、隅田川、江戸川が東京湾に注ぎ込んでおり、その汽水域で羽田空港の再拡張事業が行われようとしていることです。
本来、汽水域は、牡蠣、アサリ、シジミなどの貝類をはじめ、ゴカイやイソメなどの底生生物、さらにハゼ、ウナギ、アナゴ、カレイなどの魚類、カニ、シャコなどの甲殻類が棲息する種の宝庫とも言うべき海域です。羽田沖の場合、東京港の長年にわたる埋め立て事業で圧倒的に干潟が失われてしまった結果、東京港周辺の汽水域に関心を持つ人々がすくなくなっていますが、それだけに、今回の新滑走路建設が計画されている汽水域が、東京湾の環境保持にどれほどの役割をはたしているのか、科学的に評価する必要があると考えます。
とくに、最近、顕著になっている天然アユの多摩川への遡上には、この汽水域が大きく関わっていると伝えられていますが、復活しつつあるアユ遡上に新滑走路の建設がどのように影響をおよぼすか予測評価することを求めます。
B 流況について
一級河川多摩川の河口域に大規模な構造物を作ることは、例え河川管理施設等構造令に準拠しているとしても、過去に前例がありません。流速ベクトル図を見る限り、桟橋部及び連絡誘導路部で流速が柱等で阻害されている様子が見られず、周囲と同様の流速になっています。柱等の構造物が流体シミュレーションのメッシュデータとしてインプットされておらず、単なる空洞になっているのであれば、実際とは大きく異なることになります。桟橋部及び連絡誘導路部について、どのようなメッシュデータをインプットしたのかを示すべきです。
また準備書は、東京湾全体の流れを変えるものではないことから環境影響は小さいと述べていますが、東京湾沿岸部の流況が変化することが問題です。新設滑走路周辺で流況が大きく変化すれば、表層部では多摩川河口域、深層部ではお台場地区・有明地区周辺に海水が流れ込まなくなるため、海水環境の悪化をもたらすことは明らかです。
また表層流及び低層流が生物の成育に及ぼす影響について、準備書は完全に無視しています。「魚の稚仔や底性生物の浮遊幼生が、浮遊水深を変えてエスチュアリー循環を水平移動の手段として使っていることが知られている。上層では湾中央に向かい、下層では湾奥に向かう流れがあるため、下層にいれば自然に湾奥部にはこばれる。つまり十数mの鉛直移動により、数十kmスケールの水平移動が可能となる」(中辻啓二・水系における水循環再生への化学技術的対応)。こうしたエスチュアリー循環と生物の関わりを準備書は無視しており、科学的検討としては極めて不十分なものです。
C 水生動物、陸上動物、水生植物、陸上植物、生態系について
既存の資料の収録、現況調査の方法と結果については妥当であると考えます。しかし、これらの資料、調査結果に基づく環境影響予測、評価は「影響無し」とあまりにも一面的であって納得のいくものではありません。
環境影響評価とは科学的になされるべきものです。科学的になされるとすれば、資料と調査の結果に基づいて一般的には複数の(なるべく多数の)予測がたてられ、これらを論理的に吟味し、不合理な予測を破棄して吟味に耐えた予測を結論とするのが定法というものです。しかし、準備書の記述は、論理的な吟味をしたとは考えられない理由を述べて、すべて「影響無し」の結論に導かれています。これは明らかに結論が先に設定されていて、そこに到達する文章的な破綻の無い記述を選んで出来ているからだと思います。まさに〃環境影響評価準備書栄えて、環境滅ぶ〃の見本のようなものです。
とくに水中の生物については陸上と異なり、意見を持つ者が実際に眼で見られないという事情があり、結果の事物の存在についてもそれが当てはまるか、とくに結果に基づく予測について眼で見られない者を納得させる科学的に正しい手続きが重要です。この点で準備書は失格といわなければなりません。
生態系の記述は、生態系という項目が設けられた意味を全く理解していないと考えます。
生態系を構成要素に分解し、いくつかの注目種という要素に対してのみ影響を考察しています。要素間の相互関係、将来にわたる時間的経緯について考察してはじめて生態系の予測となります。生態系についは、予測評価とは言い難いものです。
たとえば、プランクトンの量の減少が、食物連鎖を通して、上位消費者に影響がどの程度拡大するかとか、「典型性」の注目種については、生息地(テリトリー)の分断・減少による生態(生活)への影響を評価する必要があります。また、テリトリーが決まっている魚類の場合、テリトリーが狭まれば他に移動することなく死滅するため、「周囲に同じような水面があるため影響は少ない」という評価は成立しません。
また、植物群落の場合は干潟の減少によって群落面積が減少し、近親交配が起きて種数が激減する可能性も否定できません。現在は普遍種であっても、様々な人為的行為がその種を絶滅危惧種に追いやる可能性があります。本事業によっていくつかの普遍種の絶滅の危険性がどの程度増大するか、集団の大きさや平均余命等の数理モデルを使ってシミュレーションし、絶滅危険性のリスクを評価する必要があると考えます。
(2)大気汚染について
イ、大田区東部地域の大気汚染の現状
大田区内の二酸化窒素(NO2)と浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準適合状況を見ると、2002年度で、大田区内の一般大気測定局では、NO2が矢口、六郷、京浜島で、SPMはこれらの3局に加えて西部地域の雪谷測定局でも基準を超えています。
また、雪谷と東糀谷を除く4測定局でNO2の年平均値は東京都が環境基準達成の目安(以下目安値、注参照)としている0.03ppmを超えています。東京都の目安値から見れば、事業者が既存資料の調査対象とした測定局60局中、目安値を超える測定局は27局に及びます。
また、NO2は1998年度〜2002年度の5年間で、大田区では延べ26局での測定値が目安値を超えています。
同じくSPMについては、2002年度は大田区東部の東糀谷、矢口、六郷、京浜島で目安値(0.035mg/m3)をこえ、調査対象の60局中25局で目安値を超える状況です。NO2と同様に1998年〜2002年度の5年間で見ると、大田区内では延べ30局中22局で目安値を超えていることが分かります。
次に光化学オキシダントの測定結果を見ると、大田区内のすべての測定局で環境基準が達成されていません。現に、東糀谷の大田一般測定局では2001年7月1日の11時〜13時にかけて、警報発令基準を超える0.27ppmという高濃度汚染が測定されています。現在でも気象条件によってはこのような恐るべき高濃度光化学オキシダント汚染が区民の健康を脅かしています。
ロ、市民による大気汚染測定結果
大田区内では、市民団体が1984年6月以来20年にわたって、毎年6月と12月初旬に区内約1000カ所で、NO2の簡易測定を行っています。これらの測定結果は、矢張り東部地域の平和島、羽田、糀谷地域の汚染が目立ちます。これらの汚染地域は、自動車排ガスの影響が大きいのですが、この地域の汚染には自動車排ガスに加えて、東京国際空港から飛び立つジャンボジェット機などから排出される大量の排ガスが重なっているように考えられます。また、東京都内全域でも2kmメッシュ点での測定が行われていますが、毎回の測定で、東京南東部、東京国際空港周辺のNO2汚染が目立って顕著です。
ハ、既存資料による大気汚染と交通量の調査地点について
既存資料による調査地点は極めて少なく、お体裁程度です。以下の諸地点を追加しなければ、大田区内の現状を正しく認識することは出来ません。品川区八潮、大田区松原橋、同大森西、同東蒲田、同六郷、同中央さらに大気汚染の現地調査地点は、以下の地点を増やす必要があります。
東京国際空港内、羽田3丁目、川崎市川崎区内、川崎市東芝研究所付近、大
警察付近、大田区萩中、大森東交差点。
交通量の調査地点も増やす必要があります。
環七×第一京浜(大森東交差点)、産業道路(大森警察署前)、川崎市では、産業道路×409号線、環8×第1京浜(南蒲田交差点)
ニ、区民の健康状態を調査する必要がある
以上に述べたとおり、大田区をはじめ、東京都内でのNO2やSPM汚染に
(註)東京都は、年平均濃度で健康に影響が出始める目安濃度として、NO2は0.03ppm,SPMは0.035μg/立方メートルを環境基準達成の目安値と定めています。
よって、ぜん息患者が多発しています。現に600人の大気汚染公害患者が裁判を起こしています。
大田区内では、2005年7月末で、大気汚染公害患者と認定されたぜん息患者は4,915人に達しています。その内18歳未満の子どもが2,714人で、最近10年間増加の一途を辿っています。大田区内の地区別に大気汚染による公害認定患者の発生率の地域分布図(1995年)を見ると、羽田、糀谷、大森東など空港に近い地域の発生率は羽田から遠い田園調布、雪谷地区に比べて5.5〜7.5倍と極めて高率です。したがって、公害認定患者の発生率がNO2濃度に比例していることが示唆されます。
本環境影響評価準備書では、区民の健康被害状況の調査が示されておりません。区民生活上最も重要な環境影響が調査されないのでは環境影響評価に値しません。
準備書では、この問題提起に対して、「本環境影響評価は環境基準をもって大気汚染の影響を評価していますから、あえて健康調査や予測は必要がない」と答えています。しかし、健康への影響は1978年に二酸化窒素の環境基準が改定された際、専門委員会から年平均値で0.02〜0.03ppm(東京都の基準達成の目安値)を超えると、健康への影響が出始めると提案されました。その際、環境庁の事務方は、二酸化窒素の環境基準が1973年に設定された際、日平均値で決められたので、78年の改定でも日平均値が望ましいとして、当時の資料から、年平均値を2倍すれば、日平均値の98%値に相当するとしたのです。しかし、現在では2倍ではなく1.7倍程度に変化しています。このように日平均値の98%値と年平均値の関係は経験則のため、年とともに変化してしまいます。このような状況からすれば、地域の公害患者の発生状況とその地域の二酸化窒素や浮遊粒子状物質の年平均値との関係を調査することは環境影響評価にとって不可欠な要素と言えます。
したがって、事業者は、大田区内の、特に羽田空港に隣接する地域での住民の気管支ぜんそく、慢性気管支炎、肺気腫などの発生率と大気汚染の関係を調査し、今後の発生状況を予測することがどうしても必要です。
ホ、大気汚染の予測手法と予測結果
工事中の大気汚染の予測手法は、何故プルーム・パフモデルによって計算したのか?
予測地域は海岸に面しており、海上と陸上では地面粗度(凸凹度)が大きく異なっています。また、1日の間に海風と陸風が交替し、夏季の海風時には表面粗度のちがいにより内部境界層が発達して、所謂いぶし現象が発生する結果、地上濃度が上昇することがあります。このような現象はプルーム・パフモデルでは再現できません。東京都環境影響評価技術指針の解説書(昭和58年版)でも、このような立地条件では、プルーム・パフモデルは適用できないことが明記されています。
既により精密な三次元流体モデル(差分法とも言う)が実用化されている現在、このような手法に改めることが望ましいと思います。
NO2とSPMの予測結果を見ると、日本航空乗員訓練センター前でNO2が、大田市場付近では、NO2とSPMともに環境基準を上回っています。この予測で、走行車両による寄与分は、いずれも小数点以下4〜5桁と言う微量と計算されていますが、これはあくまで計算値であって、このような微量値は測定限界以下です。したがって、これらの予測値が正しいか否か判定不可能です。以上のような欠陥を持つプルーム・パフモデルによる予測結果は、不適当な結果であると言わざるをえません。
へ、年間28.5万回の離着陸時に排出される窒素酸化物、浮遊粒子状物質
準備書に示された航空機エンジンから排出される汚染物質量と「ICAO航空機エンジン放出データバンク」に示されている「空港別・機種別年間着陸回数の推計結果」を参考にして、羽田空港に年間28万5千回離着陸するエアバス、ジャンボジェット機、中型ジェット機、プロペラ機が空港内アイドル、離陸、上昇(3000フィートまで)、進入時に空港周辺に放出する年間の窒素酸化物(NOX)と浮遊粒子状物質(SPM)の量を見積もると、下表の通り莫大な量になります。これらの汚染物質による空港内の多数の勤務員や周辺に居住する住民の健康に悪影響が出る事は容易に想像されます。
1年間に羽田空港周辺高さ1km以下の気層に排出される汚染物質の機種別及び合計量
単位:トン/年
|
エアバス |
ジャンボjet |
中型jet |
プロペラ機 |
合計 |
| NOX |
297 |
1161 |
54 |
7 |
1519 |
| SPM |
14 |
39 |
3 |
0.6 |
56.6 |
また、エアバスの離陸時の排出係数は、NOXが1,578g/1km、SPMは18.3g/m3で、それぞれガソリン乗用車の10,735台分のNOXとディーゼル普通貨物車68台分のSPMを排出します。着陸時には、NOXは86.8g/1km、
SPMは6.4g/m3です。これらの数値は、何れも自動車の車速は30km/secとして計算してあります。
ト、大気汚染予測の基本的な手法について
準備書によると、予測手法は「窒素酸化物の拡散の特性を踏まえて、局地気象モデル、移流拡散モデル、光化学反応モデル及び二次粒子生成モデルを組み合わせて年平均値を予測した。」と述べています。また、「予測は当該航空機及び飛行場の施設並びに当該事業以外のすべての発生源からの排出量を算定して行い、環境濃度を予測した。」としています。
このような予測法は、従来の環境アセスメントでは一度も使用されて居らず、私は大いに評価したいと思います。
ただ、予測地域を見ると、比較的広域の30km×40kmあるいは12km×12kmで、予測地点は1kmメッシュとしています。これらの方法は環境省監修「窒素酸化物総量規制マニュアル」に準拠していると思われます。これらのシミュレーションモデルでは、羽田のように、陸面と海面が接している地域では地上の凸凹(地表面粗度)が急に変化します。そのため力学的にも熱力学的にも遷移領域が出来ます。このような領域では海から陸に向かって風が吹くときには、粗度のちがいによって、渦拡散の性状が異なる前線が形成されて、いわゆる〃フィミュゲーション〃現象が発生します。このような現象や地形・地物や建物などの影響も加味した予測値が求められたのでしょうか。また、汚染物質の排出、特に莫大な汚染物質を排出する航空機からの排出高度はどのように設定したかは準備書には示されていません。また高度が350mの気層で、大気の逆転層が年間77回も出現していますが、拡散パラメータに対する熱的安定度の影響は考慮されているのでしょうか。このシュミレーションモデルの実測データによる精度評価も示されていない状況では、予測結果をにわかに認めるわけにはいきません。
最近、以上のような複雑な要因を組み込んだ三次元流体モデルが開発され、実用化されて走り出しています。是非もっと精度のよいモデルで再計算してください。
(3)航空機騒音について
航空機騒音に係る環境基準である、(うるささ指標)WECPNL70のコンターラインが、事業実施後は事業実施前に比べ大幅に増加しており、浦安市や木更津市にぎりぎりまで迫っています。準備書では「陸地にかからないため環境基準は達成される」とされてしていますが、両市のWECPNL値は大きく増加するはずです。WECPNL70のコンターラインだけでなく、複数のコンターライン(5刻み程度)を事業実施前と実施後のそれぞれについて記入し、陸地部の騒音がどれだけ増加するかを示すべきです。
環境影響評価方法書に寄せられた住民の意見を見ると、それは圧倒的に航空騒音に対する不満の声です。とくに、空路変更による突然の航空騒音に対する不満の声が目立っています。これに対して事業計画者の回答は、「ごく稀なこと」だという態度です。ヨーロッパでは、騒音が環境基準内に収まらないことが予測される場合は、「防音設備」または「補償」を行うことを環境影響評価の中に記述するようになっています。航空騒音は、住民の一人ひとりは防ぎようのないものですから、計画者が対策を明確に示すことを求めます。
(4)景観について
新設滑走路は平坦な施設であり、それを昼間、陸地から眺望しても目立たないのは当然です。眺望対象、時刻、視点すべてについて、以下のように見直し、影響が大きくなる条件で予測評価すべきです。
○眺望対象は新設滑走路だけでなく、離着陸する航空機を入れる必要です。
○時刻は昼間よりも、誘導灯や航空機が明るい光を発する夜間の影響が大きいので、夜間のモンタージュを作成する必要があります(これも離着陸する航空機を入れる)。
○視点は陸地だけでなく、航空機内上空も重要な眺望視点となります。「東京都都市景観マスタープラン」の臨海ゾーンの景観形成基本方針として、「空からの玄関口として風格ある景観の創出」が掲げられていることからも、空からの眺望景観は重要です。空中写真のモンタージュを作成する必要があると考えます。
(5)温室効果ガス等について
高々度は大気が安定しているため、航空機による高々度における温室効果ガス放出は、地上放出の2〜4倍の温室効果があるとされています。準備書の温暖化寄与率換算では、それが考慮されていません。
航空機(巡航中)の温室効果ガス排出量を、仮に2倍として地球温暖化寄与率に換算すると、全温暖化寄与率の90%を占める(2倍としない場合は82%)。従って、地上でその他の排出量削減に努力しても「焼け石に水」と言わざるを得ません。発着回数を大幅に増加させること自体が、温室効果ガスを大幅増加させることにつながります。
(6)人と自然との触れ合いの活動の場について
浮島公園・浮島つり園は、現状でも「離発着陸する航空機が多く、音がうるさく感じるときがある」との調査結果が記述されています。現状の滑走路は浮島公園・浮島つり園から2〜3km離れていますが、本事業の新設滑走路は1km離れたところにできるため、「音がうるさく感じる」頻度は一層高まります。にもかかわらず、「騒音」の評価結果を引用して「利用環境への影響の程度は小さい」と評価することには、大いに矛盾があると考えます。
4、結論として
今回の東京国際空港再拡張計画は、東京湾の海洋環境をはじめ、大気汚染のより一層の深刻化、航空機騒音被害の新たな広がりなどをまともに検討すれば、意見冒頭でのべたように日本の運輸政策全体を再検討し、環境の時代に相応しい環境負荷のより少ない方向に大胆な転換をしてゆく中で結論を出すべき問題であると考えます。そのためには、従来の環境アセスの流れの範囲では対応が不可能です。
特に、東京湾の海洋環境については、東京、千葉、神奈川をはじめ、東京湾の海洋環境に関心のある人々によびかけ、「東京湾の海洋環境を考えるシンポジューム」(仮称)などを開催して広く国民的意見を求め、国民的理解を背景にして結論を出すべきだと考えます。もし、そうした努力を行わないならば、三番瀬の新たな埋め立て計画を放棄した千葉県でも、再び埋め立て事業促進の声が高まっていくことに成りかねません。
こうした措置を具体化するためには、環境アセス手続きの一時保留という選択も必要になると思いますが、大胆な判断を期待いたします。
以上
●都道放射5号線アセスへの意見/藤田敏夫
東京都市計画道路放射5号線(杉並区久我山二丁目〜久我山三丁目間)
建設事業の環境影響評価書案に対する意見
藤田敏夫 <E-mail:mu7t-fjt@asahi-net.or.jp>
〒145-0066 大田区南雪谷4-7-15
1.選定した項目と予測事項について
★工事中の大気汚染
「工事中の工事用車両は1日24台で人見街道の日交通量10,247台の0.2%であるから、予測対象としなかった。」と述べているが、工事用車両は、いずれも大型ディーゼル車であり、NOXの排出量はガソリン乗用車の30倍、SPMは小型ディーゼルトラックの50倍といわれている。従って、実際は1日720台〜1,200台となり、影響は避けられないので、予測対象とすべきである。
★SPMの予測
SPMについては予測可能な自動車の排気管から排出される一次生成物質のみを予測の対象としているが、6年前の1997年(平成9年)に、当時の環境庁大気保全局大気規制課監修の下に、浮遊粒子状物質対策検討会から「浮遊粒子状物質汚染予測マニュアル」が刊行されている。このマニュアルには、二次生成物質を含めてSPMの予測法が詳細に記述されている。その他、社団法人環境情報科学センターから出版されている「環境アセスメントの技術」にも二次生成物質の生成を含むSPMの予測手法が示されている。
従って今日、SPMについて事業者のような不完全な予測を示すことは許されない。
2.事業の目的
評価書案では、「・・・国道20号など既設道路の交通が分散し、円滑化が図られ、交通渋滞に伴う沿道環境の改善に役立つ・・・」と言いながら、すぐ後で「通過交通を排除し、地域の安全性や快適性を高める。」と相矛盾したことを述べていることを見ても、この事業の目的が、国道20号の現状から見て、23区と多摩地域を結ぶ主要幹線道路の建設であることを隠すものであって、この地域に快適環境をもたらすものではない。道路建設の結果、現在の閑静で、自然豊かな快適な住環境を全面的に破壊することは明らかである。
放射5号線と東八道路の接続、高速4号線との接続などが、この路線選択の理由として挙げられているが、いずれも納得できる説明ではない。むしろ計画道路位置図を見れば、本計画よりはむしろ区境通りを経て、下本宿通りから東八道路へ至る路線を選択する方が自然であろう。
3.温室効果ガス
技術指針の解説を理由に対象外としているが、肝心の技術指針では、「事業実施に伴う環境への温室効果ガスの排出量又はエネルギーの使用量及びそれらの抑制の程度を対象とする。」と明確に述べている。事業者言うように自動車交通によるCO2の排出予測と評価を対象外としていない。とくに、東京都内では自動車排出CO2の割合が全体の37%(平成8年度)で最大排出量割合となっているのである。このために、最近特にヒートアイランド対策が東京都の重要施策になっている。この計画道路を走る1日39,200〜44,200台の自動車交通によって排出されるCO2は、年間64,142t−C/年〜72,323t−C/年に及ぶ。僅か1.3Kmの道路上からの排出量は、東京全体の排出量の0.41〜0.46%に相当する。これを低減する対策を講ずる必要がある。
4.NO2の環境基準と健康影響判定基準について
対象地域の一般局3局ではすべて環境基準を達成しており、自排局でも富士見丘小では達成している。(平成12年度)しかし、年間98%値で評価するNO2の環境基準については、最近疑問が出されている。何故ならば、現行の基準値の上限0.06ppmは、25年前に設定されたもので、当時は年平均値を2倍した値が98%値に相当するとして設定されたものである。しかし、この関係はあくまで経験則で決定されたものであり、その後この関係は変化していて、例えば、烏山や富士見丘小のように、年平均値が0.031ppmおよび0.034ppmであるにも拘わらず、98%値が0.052ppmとか0.053ppmの様に98%値が年平均値の2倍という関係は崩れている。
もともと、1978年の環境基準改定のときに、当時の中央環境審議会長から環境庁長官宛に昭和53年3月22日付け中公審第16号で提出された「二酸化窒素の人の健康影響に係わる判定条件等について」の中で、大気部会に設置された専門委員会からの報告は、結論として次のように述べている。
(健康影響の)指針の提案として、「短期暴露については1時間暴露として0.1〜0.2ppm、長期暴露については、種々の汚染物質を含む大気汚染の条件下において、二酸化窒素を大気汚染の指標として着目した場合、年平均値として、0.02〜0.03ppm」とした。
環境庁は、この指針値を当時の経験則から2倍して、日平均値の年間98%値として、環境基準としたのである。従って、健康影響を考慮する環境アセスメントにおいては、長期暴露値として、年平均値0.02〜0.03ppmを採用すべきである。しかも、健康影響調査では、0.02ppmから0.03ppmの間でも濃度の増加とともに、健康被害率が増加していることが分かっている。このような調査結果からすれば、長期暴露に対する健康影響判断基準として、NO2の年平均値,0.02ppmを採用すべきである。
5.大気汚染の予測について
(1)新たに4車線の幹線道路が出来る結果、計画道路区間外ではあるが、国道20号から放射5号線への出入り口および首都高速4号線と中央自動車道の併設区間などにおいて、現在でも多い交通量が激増する恐れが大きいので、大気汚染の調査・予測・評価を実施することが必要である。
(2)大気汚染の拡散予測式における水平及び鉛直方向の拡散幅について
拡散予測式の中で、これらの拡散幅は、予測結果に大きな影響を与える。特に大気成層の安定度によってこれらの拡散幅は大きく変化する。ところが、驚いたことに、予測式中の拡散幅を表す式の中には、大気成層の安定度を表す要素は全く含まれておらず、道路幅員と道路端からの距離のみで決められる仕組みになっている。これでは夏、冬など大気安定度が大きくかけ離れてしまうことは明らかである。
(3)バックグラウンド濃度の推定
@二酸化窒素(NO2)
@-1バックグラウンド濃度の推定
杉並一般局の平成12年度の窒素酸化物(NOX)の年平均値0.048ppmを計画道路周辺における値として使用しているが、バックグラウンド濃度としては計画地より最小でも東西南北に2Km以上離れた下記の8地点の一般局と自排局を採用すべきである。
練馬石神井台(0.048ppm)、小金井本町(0.039ppm)、国設東京(0.046ppm)、狛江(0.047ppm)、下井草(0.096ppm)、三鷹下連雀(0.087ppm)、初台(0.128ppm)、八幡山(0.120ppm)カッコ内の数字は窒素酸化物(NOX)の年平均値を示す。
@-2発生源別寄与率について
「東京都環境局資料」を出典とした数字が示されているが、具体的資料が明確ではない。平成9年3月に当時の環境保全局が報告した「東京都窒素酸化物削減検討基礎資料」によると、平成7年度の都内の一般局で測定されたNOXへの発生源寄与率は、杉並局では、自動車が72.3%、その他が27.7%とされている。これらの寄与率から見れば、事業者が示した自動車47.7%は、25%も低い値であり、この数値の根拠は、出典も参考資料目録(250頁)にも示されておらず、極めて恣意的な値である。
東京都環境白書2000によれば、SPMの排出量に対する発生源寄与率は、自動車が82%、その他18%(平成2年度)となっている。本評価書案が示す自動車が25.5%、その他が74.5%という数字は出典も示さず、出鱈目である。この点から、SPMについてもバックグラウンド濃度が極めて過小評価されている。
@-3自然界に存在するNOX濃度
バックグラウンド濃度算出に当たり、自然界に存在するNOX濃度として、0.003ppmという値を大喜多先生の「大気保全学」から引用している。
環境庁大気保全局大気規制課(当時)編(1993):窒素酸化物総量規制マニュアル(改訂版)によると、0.003ppmという値は、新潟県佐渡島や長崎県福江島などの離島で測定された値(全国公害研究協議会、昭和52年による)であり、生活空間では愛知県百助町の0.017ppmから茨城県笠間市での0.049ppmの範囲にある。したがって、その平均値をとれば、0.033ppm程度であって、本評価書案の値の10倍以上となる。訂正したバックグラウンド濃度を元に、予測値を求めると、0.03ppmとなり、前に述べた健康影響判定基準値に達してしまう。
@-4 NOX排出量削減目標
東京都環境局資料によって、平成22年度のNOX排出量を24,00
トン/年としているが、環境局によると、この資料は現在検討中の未発表資料である。しかも自動車走行量の最近の伸び率(最近は減少傾向)から単純にトレンド(傾向)外捜予測を行ったものである。従来から各種自動車の排ガス規制値を用いて、将来のNOX排出の削減量を推計してきたが、いずれもその後の実績と大幅に乖離している。
このような未確定な自動車走行量と将来の排ガス規制値を用いたNOX排出の削減量を科学的環境アセスメントに適用することは甚だ不適切である。したがって、平成12年度に比べて、NOX排出量が59%に減少するという根拠はない。しかも、根拠のない平成22年度の値を10年後の平成32年度まで外捜することは無意味であるといわねばならない。
6.調査計画書の修正の経過及びその内容
★土壌汚染
事業者の理解は間違っている。本計画道路が建設されれば、当然その上を毎日数万台の自動車が走行することは明らかである。従って、都民の意見にあるような土壌汚染が発生する恐れは大きいのであって、このような観点から調査・予測・評価を行うことが必要である。
★予測条件
拡散計算で求めたNOXをNO2に換算するのに自動車排ガス測定局の測定データから同一市区内にある一般局のデータを差し引いて、回帰式を求めているが、実際に適用する場合は、求めたNO2の値に一般環境での予測値を加えるのが当然であるが、実際にはそのような操作は行われていない。- 以上 -
●西東京市議会が都市計画道路の再アセスで意見書
都市計画道路調布保谷線問題に取り組む「保谷3.4.6道路ちょっと待っての会」は、調布保谷線旧保谷地区の環境評価のやり直しを求める陳情を2001年9月市議会に提出、これが採択され、市議会は同年9月に都知事に意見書を提出しました。
条例に基づくアセスでは、平成22年完成時の計画交通量は、この道路が接続予定の「外環」が開通していることが前提でした。しかし、「外環」は現在凍結中で事業化の見通しは不明です。
意見書では「アセスは改めて外環が未開通の場合の計画交通量を算定し、それに基づいて大気汚染、騒音、振動等の予測・評価を行うべきと考える。アセスをやり直すことをもとめる」と要請しました。再アセスの意見書が市議会で採択され、意見書がだされたのは東京都内でこれが初めてです。
この意見書が提出されたあと、「6市連絡会」が都の担当者との交渉において再アセスを要求したところ、都は再アセスは条例に規定がないし、必要だとは考えない。「外環」を前提としたことは当然である。また、予測値や評価については事後アセスで対応するとの回答でした。
再アセス問題はアセスに関する当面の重要課題です。全国各地でこの問題がふきでています。都条例には予測条件の著しい変更による再アセス条項はありませんが、国のアセス法には、これに関する条文32条があります。しかし、2002年12月に、名古屋市環状2号線の住民が再アセスを要求して環境省、国土交通省と交渉したさい、環境省は再アセスに該当しないといいましたが、国交省は法にこだわらず現場工事事務所が同意すれば追加の環境調査は可能である回答しました。
たとえ事業中であっても、予測条件や技術指針が改定された場合は必要な項目について再アセスを義務づけるよう法や条例を改正しなくては、公正なアセスを期待することはできません。(標博重/「アセス都民連ニュース」より転載)
●名古屋環状2号線東南部区間の再アセスを要求
名古屋環状2号線は、名古屋市を半径約10q、全長で約66qで周る高架道路です。下は、一般国道302号線で、高架部は高速自動車専用道路です。現在までに、全体の約85%が開通しています。東・東南部区間(15q)が未建設区間です。国は、1982年に全計画路線にわたって、旧名古屋市環境影響評価要綱による環境アセスメントを実施し、翌年に都市計画決定しました。
アセスメントの大気汚染について重要なのは、N02の環境保全目標として年平均0.03PPmとしていることです。予測年次は「道路整備目標年次の昭和75年とする」として、予測結果は2000年には、全ての調査地点で環境保全目標をクリヤーするとしました。その際、バツクグラウンド値は0.0135PPmで、将来の削減計画を前提としています。
すでに供用している北部区間では、2000年現在、環境保全目標を上回る汚染が測定されています。
この道路計画は、都市計画決定から20年過ぎても着工していない計画です。周囲の環境は20年前と大幅に変化し、当時は畑であったところには沢山の住宅が建って、人口も激増しています。
99年6月から施行された環境影響評価法では、32条でアセスが実施されてから長年未着工で、周囲の環境が大幅に変わっている場合には、事業者は、再アセスを実施することが出来るとしています。ところが、落とし穴があるのです。同法の附則3条では、この法律が施行される以前のアセスには32条は適用しないとしているのです。
環境省の担当官は、住民の再アセスの要求に、この附則を楯に、一切応じませんでした。アセス法で、なぜ32条を設けたのか、これまでにこの種の紛争が多発したからではないのでしょうか。したがって、附則3条は直ちに削除すべきものです。そして環状2号線は、現時点で、再アセスを実施すべきです。(藤田敏夫/「アセス都民連ニュース」より転載)
●都アセスの大幅緩和で都市再生加速
東京都議会は6月26日、都心部での巨大開発を促進させる目的で環境アセスの対象基準を大幅に緩和する環境影響評価条例の改正案を賛成多数で可決した(賛成:自民、公明、民主)。改正案に対する市民団体の要望を取り入れた修正案(共産、生活者ネット)はいずれも否決された。
アセス対象となる事業の規模を現行の1.5〜1.8倍に緩和し、手続きも「簡略化」の名のもとに市民参加が大幅に排除される。
改正条例は、都が指定した特定地域でのアセスの対象規模を、現行の「高さ100メートル、延べ床面積10万平方m以上」から、「高さ180m、延べ床面積15万平方m超」に緩和する(7月から実施)。
一方で事業計画が固まった段階での現行事業アセスとは別に、早い段階で複数の計画案を提示する「計画アセス」も全国で初めて盛り込まれた(2003年1月施行)が、この計画アセスは現行の事業アセス対象基準の約2倍以上の事業や30h以上の広域複合開発が対象で、しかも都の事業のみに限定している不十分なもの。
アセスが緩和される特定地域として、丸の内、新宿、渋谷のほか、高層住居誘導地区、都市再生特別措置法に基づく緊急整備地域(臨海開発部など)が指定され「都市再生」に向けた開発が加速される。このアセス緩和策で従来実績と比較すれば約60%の開発事業が該当し、環境破壊となることは明らかである。
私たちは、東京都の事業アセス緩和に強く抗議します
「東京都アセス改正条例案」無修正可決に関する声明
環境ウォッチTOKYO代表 牛島 聡美(弁護士)
メンバー一同(2002年6月26日)
東京都議会は26日、平成14年第2回定例会において、「東京都環境影響評価条例の一部を改正する条例案」を、無修正で、賛成多数で可決した。
その内容は、都市再生に配慮した事業段階アセスの大幅な緩和縮小が主となっていて都民の良好な環境と健康な生活を享受したいという願いや権利を無視したものである。
また、同改正案に盛り込まれた計画段階での環境アセス導入についても、民間事業には適用されないなどのさまざまな制限が付与された「お飾り」的な内容であり、計画アセス制度化の必要性を求めた都の環境影響評価審議会答申の理念とも大きくかけ離れたものである。
改正案には、次に挙げるものをはじめとする多くの問題点がある。
・都市再生を最優先するための事業アセス手続きの大幅緩和が中心で、2001年10月の東京都総合環境アセスメント試行審査会答申「東京都総合環境アセスメント制度の本格実施に向けて」で示された「計画段階における」「複数案の比較検討ができる」「情報公開による住民参加を保障」する、市民主体のアセスメント制度化を目指す高い理想や、その後内容的には後退したものの、東京都環境影響評価審議会が今年4月にまとめた最終答申「計画段階環境影響評価制度の導入等について」の内容からも、大きく乖離している。
・事業アセス大幅緩和の論拠として、都は最終答申末尾にある、都市再生特別措置法への配慮を求める「附論」をあげているが、これは計画アセス導入に当たり同法への一定の配慮を求めると解釈され得るものの、一部事業について事業アセスの一切を廃止する根拠とは成り得ない。
・都議会開催直前まで各会派ですら知らされていないほどの拙速さで作成、公表されたもので、都民の意向を完全に無視しているばかりか、都が行ってきた条例改正に関する検討や議論をも無視するものである。
環境ウオッチTOKYOなどNGO/NPO/市民団体は、今月に入り明らかになった同改正案に対して急遽意見書や声明を都に提出、公表し、拙速な改正に強く異を唱えてきた。
この改正案に基づき改正される新アセス条例が都の基本政策として運用されれば、本来開発事業行為に係わる環境への影響を調査して最低限に抑えることを目的とする環境アセスメント制度が、都市再生の動きと相俟って、都市部での無秩序な開発ラッシュを制度的に担保、助長する免罪符になることは火を見るより明らかである。
このように、都の環境保全上極めて重要であるにもかかわらず、あらゆる点で瑕疵ある条例案を提出し、可決に導いた都知事及び環境局長はじめ関係部門の責任は極めて重いものがある。また、都議会各派から修正案が提出されるなど疑義が呈されていたにもかかわらず、継続審議等の措置を執らず、無修正のまま可決した都議会の責任も同様に追及されるべきものである。
私たちは良好な環境と健康的な生活を望む都民及び一市民として、今回の都のアセス条例改正に抗議するとともに、今後、同条例を「悪用」した無秩序な乱開発を推進せず、環境に最大限に配慮した政策を執るよう都に強く求めるものである。<以上>
●都環境アセス条例改正で市民団体が反対
環境ウォッチTOKYO(代表:牛島聡美弁護士)は6月12日、都議会に上程される東京都の環境アセス条例改正案によって都心部の再開発事業にともなうアセスが規制緩和され、手続きの簡略化など問題が多いことから反対を表明、都議会に申し入れを行った。
<声明文>
東京都環境影響評価条例の一部を改正する条例案について
…計画アセスの制度化徹底と事業アセス一部廃止に反対する声明(2002年6月12日)
呼びかけ:環境ウォッチTOKYO一同(代表:牛島聡美弁護士)
私たちは、平成14年第2回都議会定例会に上程される「東京都環境影響評価条例の一部を改正する条例案」(以下「アセス条例改正案」)について、都及び都議会に対して、以下の内容を強く求めます。
○アセス条例改正にあたって、東京都総合環境アセスメント試行審査会が2001年10月22日に公表した「東京都総合環境アセスメント制度の本格実施に向けて」を踏襲すること。
○アセス条例改正にあたって、都市再生に配慮して事業アセスを一部事業について対象外とするなどの規制緩和策を盛り込まないこと。特に、「特定地域」などにおける環境アセス規模要件の緩和や、調査計画書の都民への縦覧期間短縮は撤回すること。
○アセス条例改正にあたって、4月の最終答申末尾に付された「附論 都市再生特別措置法への適切な対応について」という短文は、一部事業について事業アセスの一切を廃止する根拠となるものではまったくないので、拡大解釈しないこと。
○アセス条例改正にあたって、現東京都環境影響評価条例の目的である「公害の防止、自然環境及び歴史的環境の保全、景観の保持等について適正な配慮がなされること」を遵守すること。合わせて、東京都環境確保条例が「目的」でうたう「現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保する」を遵守すること。(以上)
計画アセス制度化への要望と事業アセス一部廃止に反対する意見
「東京都環境影響評価条例の一部を改正する条例案」について(2002年6月12日)
環境ウォッチTOKYO(代表:牛島聡美弁護士)
《意見》
東京都は、「東京都環境影響評価条例の一部を改正する条例案」を、6月11日から開かれる平成14年第2回都議会定例会に提出します。私たち環境ウォッチTOKYOは、市民の立場から、同改正にあたり計画アセスの徹底した制度化を求めるとともに、都市再生に配慮した規制緩和策として検討されている事業アセスの一部廃止をしないよう強く求めます。
都は、環境アセスメント制度については先進自治体として知られ、昨年10月には、東京都総合環境アセスメント試行審査会が「東京都総合環境アセスメント制度の本格実施に向けて」(2001年10月22日、以下「試行答申」)を公表しています。
試行答申は、現行のアセス制度が事業の実施段階で行われるため、評価結果を計画内容に適切に活かすことが難しく、実施時期の異なる複数の事業等による複合的.累積的な環境影響について評価できないことなどの課題に対応するために、計画のより早い段階でアセスメントを実施することで環境配慮をより一層進めることができるとし、「計画段階における」、「複数案の比較検討ができる」、「情報公開による住民参加を保障」するアセスメントの制度化を目指すという高い理想を掲げた画期的な内容であると高く評価されています。
その後、2002年2月28日の東京都環境影響評価審議会「計画段階環境影響評価制度の導入等について(中間のまとめ)」を経て同年4月4日にまとめられた同審議会最終答申「計画段階環境影響評価制度の導入等について」(以下「最終答申」)では、計画アセス導入に加えて事業アセス手続きの合理化を強調したほか、都市再生特別措置法への配慮を求める「附論」が付与されるなど課題を残したものの、多くの都民や専門家は、最低限最終答申の内容で条例改正が行われるものと信じていました。
ところが、都は条例改正の具体化にあたって、国が進める「都市再生」に関連する環境影響評価手続について、一部事業について対象外とし、その適用を廃止する方針を急遽打ち出しました。
具体的には、都心や新宿などの副都心や、高層住宅を誘致する地域などを「特定地域」として、現行の「高層建築物の新築」の環境アセス規模要件である「高さが100m以上」「延べ面積が10万平方m以上」のところを、「高さが180m以上」「延べ面積が15万平方m以上」に緩和策を取るだけでなく、調査計画書に関する都民への縦覧期間が30日間から10日間に大幅に短縮され、住民との合意形成手続きの上で大きく後退するのは明白です。
このまま条例改正案が議決されれば、大規模なマンションなど高層建築物の建設を、公正で客観的な環境影響評価手続きなしに進められることになり、都民の良好な環境や健康な生活の享受に大きく影響します。
私たちは都に対して、2001年10月の試行答申の理念と内容を踏襲した改正を行い、都市再生に関連する事業アセスの一部廃止など、無秩序な乱開発につながる改悪を行わないことを求めます。
また、都議会各会派には、今回の条例改正の大半が、専門家や学識経験者を集めた審議会の答申を逸脱した環境行政の後退であることを重視し、都市再生に関連事業の適用除外などについて条例の改変を認めないよう主張していくことを要望します。
《理由》
○いずれの答申も、計画アセス導入により早い段階での評価手続の開始及び強化を求めているもので、従来の事業アセスの一部を丸ごと廃止して規制緩和する主旨ではまったくない。
○東京都環境影響評価条例の第一条(目的)にある「公害の防止、自然環境及び歴史的環境の保全、景観の保持等について適正な配慮がなされることを期し、もって..」の一文、及び都市再生特別措置法の第一条(目的)にある「都市の居住環境の向上」の実現は、開発者が恣意的に判断するものでは断じてない。適正な環境影響評価手続を通じて、住民、市民の意見や要望を広く募り、公正で客観的な指標をもとに判断することが必要であり、そのためには従来からの東京都環境影響評価条例の手続を適用することが最低限必要である。
○2002年2月の中間まとめの本文中で触れられ、4月の最終答申に付された「附論…都市再生特別措置法への適切な対応について」という短文は、計画アセスを導入するに当たり都市再生特別措置法への一定の配慮を求めていると解釈されるものの、一部事業について事業アセスの一切を廃止する根拠となるものではまったくない。
○また、法律で言うところの「附則」である「附論」を拡大解釈し、試行答申で目指した理念を失うのは、都の環境確保条例の第一条(目的)でうたわれている「現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要な環境を確保する」という目的に反し、良好な生活環境と自然環境を享受したいと願う東京都民はじめ市民の思いと期待を裏切るものである。
○東京都環境影響評価条例施行規則第3条別表第一の14に定められた「高層建築物の新築」で対象とされる事業の多くは民間の事業であり、今回の条例改正で想定されている都の事業ではない。「計画アセス」の適用にもならない事業について、事業段階の環境影響評価の一切をやめることは筋が通らない。<以上>
<参考資料>
・東京都総合環境アセスメント試行審査会 答申
平成13年10月22日
東京都総合環境アセスメント制度の本格実施に向けて
・東京都環境影響評価審議会
平成14年2月28日
「計画段階環境影響評価制度の導入等について(中間のまとめ)」
・東京都環境影響評価審議会
平成14年4月4日
「計画段階環境影響評価制度の導入等について」答申
●東京都計画アセス中間のまとめでJNEPが意見
環境局環境評価部環境影響評価審査課 御中
2002年3月15日
公害・地球懇(JNEP)
「計画段階環境影響評価制度の導入について・中間のまとめ」への意見
計画アセスの基本的考え方について(2〜4ページ)
大きな点が抜けていると考えられる。
・環境を現状より悪化させないこと。全ての代替案に悪化する環境指標がある場合には直ちに計画不可とすることを制度化すべきである。
・後の事業アセスで、環境指標の一つ以上が計画アセスの予測を著しく上回る結果が出た場合には、白紙に戻して計画アセスからやり直すことを制度化すべきである。
・代替案の中で環境負荷が最小であるものを必ず選択することを制度化すべきである。
案に示されている点については以下を求める。
・規模要件のある事業は、事業アセスの2倍の規模要件を定めず、いったん全てを対象にしてスコーピングを行う制度とすべきである。
・対象規模未満の事業でも実施主体が求める場合に適用できるとしたのは評価できる。
・複数案については
(1)事業・対策を実施しない場合
(2)インフラ整備事業は実施せずに需要抑制策等により所定の目的を達成する場合を必ず含めることを制度化すべきである。
・複数案については、都民など事業者以外も提案あるいは修正ができるようにすべきである。また、都民等の提案や修正が可能なように、期間は長期にとるべきである。
・事業者が複数案を提案できない場合には、個別計画であっても広域複合開発都民提案もない場合には、事業を実施しない場合の2案との比較になることとすべきである。
計画アセスの手続きについて(4〜6ページ)
・「意見を聞く会」を都民と実施主体に分けて行うのではなく、都民を原告、実施主体を被告、審議委員を裁判官にみたてた対審構造で行い、環境悪化がないことの挙証責任を実施主体に課し、実施主体は都民の疑問には全て答えさせる制度とすべきである。
・実施主体は代替案の中で環境負荷が最小であるものを必ず選択することを制度化すべきである。
・実施主体から東京都以外を除外することには反対である。施行時に除外するにしてもいつの時点から全ての事業者を対象にするかを明記すべきである。
・法適用事業を除外することは全く筋が通らないので反対である。これでは環境影響の大きな大型事業は全て除かれることになる。
・広域複合開発計画に含まれる個別計画の計画アセスを除外すべきではない。むしろ、個別計画について議論を行い選択肢を出尽くした後に広域複合開発計画のアセスメントを行い、中止や再調整の選択を行うことが望ましい。
計画アセス制度の導入に伴う事業アセス制度の調整について(6ページ)
・調査計画書を省略するなど、計画アセスの実施を名目にした事業アセスの簡易化はいずれも根拠薄弱であり、反対である。
事業アセス手続きの改善等(7ページ)
・都市再生特別措置法案関連事業への特例を設けることには反対である。都市再生事業に原理的に環境負荷が小さいなどということはなく、またそれ以外の理由で特例を設けることは制度の趣旨に反する。(以上)
●インターネット利用のアセス支援システムが誕生
環境影響評価設計支援ソフト(「アセス助っ人」)が開発された。
これは環境アセスメントの実施に際して、必要なノウハウを示すもので、先進的な事例を多数紹介するとともに、環境アセスの調査・予測・評価に関して適切なアドバイスが得られるという。
発売元では、この支援ソフトの利用者を事業者、コンサルタント、行政担当者、市民、環境教育関係者などを想定、アセス実施の問題点だった事業者側と住民側のアセス手法の食い違いの解消、情報の共有が実現できるとしている。
例えば、アセス実施の方法書、準備書、評価書の各段階に対応して、どの項目についてどの範囲、頻度で調査するか、手法は何かといったアセス実施方法の設計の基本を重視している。
また「道路」「最終処分場」といった事業ごとおよび、「大気」「自然環境」といった環境項目別にも過去事例を引き出すことができ、アセス評価の参考にできる。
「市民から」と名付けられたプログラムの入り口のひとつからは、アセス手続における方法書・準備書・評価書の各段階において「市民参加」を重視し、市民がどう対応すればいいのかについて事例をもとにアドバイスが得られる。
操作は簡単で、問題意識を持つ人なら扱えると言うが、こうしたことがパソコン上から出来るのは、ソフトの中核部分である「推論エンジン」と呼ばれるソフトの搭載と、インターネット経由でサイトに蓄積されている情報(過去事例や事業毎アセスマニュアル)が検索・利用できるよう設計されているからである。特に、蓄積情報は過去の事業者側のデータだけでなく住民側の「自主アセス」情報も採用されている。
なお「アセス助っ人」の中の「市民からの環境アセスメント」部分がインターネットからも使えるようになった(2001年10月)。環境影響評価情報支援ネットワークのサイトに掲載されている。
「アセス助っ人」はCD−ROM形式(18万円)。問い合わせ先は東邦電機株式会社。
●戦略アセスメントで環境大臣に要望…JNEP
公害・地球懇(JNEP)は環境アセスメント問題について6月7日、川口環境大臣に以下の要望を行った。これは第26回公害被害者総行動の一環として実施されたもの。
限られた時間のなかで川口大臣はとくに、5項目の「モデル実施」について関心を示した。
戦略アセスメント、環境大臣交渉
2001年6月7日
公害・地球環境問題懇談会 幹事長 小 池 信太郎
私たちは、「公害に侵されない権利」「豊かな自然環境を享受する権利」「それが保障される仕組み」を求めるものですが、そのためには環境アセスメント制度の充実・改善が重要と、毎年この場で発言してきました。以下5点について要望します。
第一は、戦略アセスメントについては、早急に法制化すべきことを要請します。
第二は、戦略アセスの対象には、広く一定規模以上の国家予算をともなう政策も入れるべきと考えます。
第三は、環境アセス制度については、市民も加わって知恵を出し合い、最良の政策を選択する意思決定システムの一環として考えるべきです。政府部局やコンサルタント会社まかせでは、実効性ある制度とはならないと考えます。
第四は、戦略アセスの運営においては、政策・計画等を行わないという、いわゆるゼロオプションをふくめ、複数の代替案を設けて、環境負荷について定量的に比較し、市民参加のもとで最良の選択をしていく「事前評価システム」を、また、選択した政策の帰結を市民の知恵も活かしながら定量的にチェックする「事後評価システム」の2点を備えることが必要です。
第五に、戦略アセスについて、各方面の理解と、また、市民の支持を広げるためにも、環境省の所管するモデル的な政策について、戦略アセスを実際に適用して世に示して見てはどうでしょうか。例えば、環境省が所管する廃棄物処理関係の政策でも、自然公園関係の政策でもよし、また積極的な自治体のものでもいいのですが、モデルとして実施し、その模範を示したらと考えます。
●福山道路で環境庁長官意見
福山道路に係る環境影響評価書に対する環境庁長官意見の提出について
平成12年11月17日(金)
企画調整局環境影響審査室
環境庁は、福山道路(岡山県、広島県)に係る環境影響評価書について、環境影響評価法第22条第2項の規定に基づき、建設大臣より環境の保全の見地からの意見を求められたことから、平成12年11月17日付けで建設大臣に対し、大気負荷低減対策、道路交通騒音対策、オオタカ等の野生動物への配慮に関する環境庁長官意見を提出した。
1.事業の概要
路線名:福山道路
事業区間:岡山県笠岡市茂平〜広島県福山市赤坂町
道路の規模等:一般国道2号の改築[自動車専用道路]16.5km・4車線
岡山県 1.5km 広島県15.0km
計画交通量(台/24h):32,700〜42,900
主な手続きの経緯
○準備書縦覧: H11/5/21〜6/3(岡山県) H11/5/20〜6/3(広島県)
○知事意見提出: H11/10/5(岡山県) H12/4/7(広島県)
2.環境庁長官意見
○福山道路(岡山県)
本事業の環境影響評価書について、以下の意見を述べるものである。
計画路線が通過する笠岡市は備後地域公害防止計画の策定地域であることを踏まえ、関係機関との連携のもとに、環境影響評価書に記載されている環境保全対策を確実に実施し、計画路線の整備に伴う環境影響の回避、低減に万全を期すこと。
○福山道路(広島県)
本事業の環境影響評価書については、周辺の学校等への騒音影響の評価において環境基準より厳しい目標を設定するなど、環境影響の低減に向けた先進的な取組も見られるところであるが、計画路線の一部が住居系地域を通過すること、住民意見において大気や騒音の影響に関する懸念が示されていることなどから、より一層の環境影響の回避、低減を図るとともに、以下の措置を講じる必要がある。
1.全般的事項
計画路線が通過する福山市は備後地域公害防止計画の策定地域であること及び一部が住居系地域を通過することを考慮すると、幅広い対応策を検討し、最大限の環境保全措置を講ずる必要がある。こうした認識を踏まえ、関係機関との連携のもとに、環境影響評価書に記載されている環境保全対策の確実な実施はもとより、計画路線の整備に伴う環境影響の回避、低減に万全を期すこと。
2.大気・騒音関係
(1)浮遊粒子状物質についてはほとんどの予測地点で環境基準を超過すること、二酸化窒素については環境基準の上限値に近い水準となる地点があることが予測されることから、計画路線及び並行路線を一体とした沿道大気負荷の低減対策を実施することが重要であり、関係機関との連携のもとに、実施予定の光触媒による脱硝、植栽や路面清掃等の措置を適切に実施するとともに、道路構造面の対策及び脱硝装置や集じん装置の採用、並びにその他沿道大気負荷の低減に資する新技術の採用について検討し、更なる大気負荷の低減対策が導入されるよう措置すること。その検討過程において、これらの複数の案の比較検討、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかの検討その他の適切な検討を行うこと。また、その旨を評価書に記載すること。
(2)供用時の道路交通騒音レベルが環境基準の上限値付近に達することが予測される地点があること等から、事業実施時点における沿道状況、予測の前提となる最新条件を踏まえ、排水性舗装の導入等必要な措置を講じ、一層の道路交通騒音の低減に努めること。また、その旨を評価書に記載すること。
(3)工事中、供用時を通じて、関係機関と協力しつつ、実施予定の事後調査に加え、関連交通量や、大気環境・騒音等の沿道環境に係る監視を適切に実施し、その結果を踏まえ適切な措置を講じること。また、その旨を評価書に記載すること。
3.自然関係
(1)事業区域近傍においてオオタカの営巣が確認され、行動圏の一部が当該事業区域に重なっていることから、繁殖期における事業実施にあたっては、猛禽類に詳しい専門家等の指導・助言を得ながら、工事工程の調整を含めた保全措置を適切に行うこと。非繁殖期についても、工事による生息への支障が生じないように工法を検討すること。
また、上記の措置について評価書に記載すること。
(2)動物及び生態系の項目に係る環境保全措置として行われるカスミサンショウウオ等の動物の移動等に配慮した道路構造の採用については、現時点ではその効果について不確実性が高いことから、専門家の指導・助言を得ながら事後調査を行うこと。また、当該措置について評価書に記載すること。
(3)生態系の予測・評価については、注目種への影響のみ記述されているが、生態系の構造、機能なども踏まえた当該計画の影響に関しても、本評価書の中に具体的に記述すること。
4.その他
本事業に係る道路の構造について、土工部における盛土又は切土の区分、さらに全ての橋梁の位置の概要を評価書に記載すること。
●NGOが川辺川ダムのアセスやり直し要求
建設省が2000年6月にまとめた川辺川ダム建設に伴うアセスは、調査とそれに基づく対策が不十分などと、全国163の市民団体が連名で10月11日、環境影響評価のやり直しを求める要請書を建設省に提出した。建設省のアセスはダムが下流域の環境に与える影響調査などを実施していないとして @調査のやり直し A市民参加で調査範囲や項目を検討することを求めている。
●戦略的環境アセス研究報告を公表
環境庁は2000年8月4日、今後の戦略的環境アセス制度のありかたに関して、その基本方向を研究会報告書のかたちで公表した。
現行のアセス制度が事業計画の実施を前提として、環境に及ぼす影響について事前評価するのにたいし、戦略的環境アセス(Strategic
Environmental Assessment:SEA)は、事業計画の段階でアセスを行うもので、アセスの結果次第では事業を行わないという選択もあり得るとされ、上位計画や政策における環境配慮を徹底するための手続といわれている。
先進国では、すでに実施されているこの制度について、環境庁は、アセス法制定時の国会の付帯決議でこの制度に関して検討を求められたことから、「戦略的環境アセスメント総合研究会(座長:浅野直人福岡大学法学部教授)」を設置(98年7月)し、そこでの研究成果を報告書としてまとめた。
戦略的環境アセス総合研究会報告書の要旨は次の通り。
<SEAの意義と目的>政策(policy)、計画(plan)、プログラム(program)という事業に先立つ3つのPを対象とする環境アセス。環境に影響を与える施策の策定に当たって環境への配慮を意思決定に反映させるとともに、事業の実施段階での環境アセスの限界を補完する。
<SEAの原則> @計画決定のための既存の手続とSEAとの関係…環境面に焦点を絞り関係者を適切に位置づけた独立した手続で、SEA結果の計画策定者の意思決定(最終判断)への確実な反映。 A評価の手続原則…評価主体は計画等の策定者で、公衆や専門家、環境保全に責任を有する機関の関与。 Bスコーピングと評価に関する原則…立地を含めた複数案の比較評価、広域的視点から環境改善効果も含めた評価、スコーピングで目的や制約条件を明確化。
環境庁は、今後、SEAを行う場合に必要となる手続き、技術手法、留意点等をまとめたガイドラインを作成するとしている。
●東京の事後アセスを検証(00/08/23)
東京のアセス問題に取り組んでいる「アセス都民連」(本谷勲代表)は、都道府県のアセス関連制度のなかでも優れた特徴をもっている東京都の事後アセス制度の運用結果について検証を行ってきたが、このほど代表的な2事業にかかる事後アセス結果についてくわしい検証結果をまとめ、この事業への住民側の「自主調査」結果とあわせて公表した。
事後アセスは、開発行為にともなう環境負荷がアセスメント通りの結果となっているがどうかを評価し、今後のアセスのあり方および環境改善措置にフィードバックするもので、1980年制定の東京都のアセス条例では第32条で事業者に事後アセス義務を課し、知事はその結果を公表している。
「アセス都民連」は、今回、レインボーブリッジ道路と外環道大泉地域の2事業について検証した。その概要は次の通りである。
レインボーブリッジ道路
93年8月に開通したレインボーブリッジ道路(首都高速11号線・東京港連絡橋)は、88年アセスを実施し、95年に事後アセスが実施された。
この事後アセス結果をふまえ都環境影響評価審議会は大気汚染に関して二酸化窒素汚染が予測値を超え高濃度となったことから改善措置について知事に意見書を提出した。
例えば測定ポイント「NO.3」では二酸化窒素の予測値0.028ppmにたいし、事後測定値は夏期0.044ppm、冬季0.035ppmと環境基準を越えてしまっていた。この要因となる交通量は同地点で予測値が63000台/日にたいし、事後調査では87506台/日だった。
これにたいし住民が事後調査の2年後の99年11月に自主調査を行ったところ、連絡橋付近の海岸2、3丁目で二酸化窒素の測定値は0.080〜0.136ppmという結果となり、交通量も芝浦埠頭で予測台数16000台/日、事後調査の27163台/日にたいし、自主調査では55153台/日という結果となった。
この予測値と実際との大幅な乖離について、「アセス都民連」は予測値に環境庁の窒素酸化物削減計画を取り入れるという誤りをおかし、交通量についても社会・経済的要因を予測に反映させないなど、都のアセス条例制度に問題があったからとしている。(騒音についてのアセスと事後アセスの分析も行われているが、ここでは省略)
外環道大泉地域
外環道大泉地域のアセスは90年に、事後アセスは95年に実施された。
この検討を通じて浮かびあがった問題は、@予測交通量について供用開始から10年後の2000年の交通量について、供用当時の2.3倍と著しい増加を予測しているが、その根拠が示されていない。 A事後調査結果で二酸化窒素など環境基準の達成は困難であることが判明したにもかかわらず、環境保全措置について言及していない。 B騒音に関しては、遮音壁で遮音しきれない上層階(マンション等)に対する高さ方向のアセスが必要である(アセスには高さ方向の調査項目がなかった)。 C大泉3、4丁目で行った住民の自主測定では、二酸化窒素について、90年の予測値を上回る測定値が示されたことから、外環道は全面蓋かけとし、トンネル内排ガスを土壌脱硝装置で除去し、側道の車線削減や大型緑地帯の設置など環境対策を行うこと。 D事業者が実施するアセスおよび事後アセスについて、関係住民へのアンケート調査を実施し、評価すべきである、などであった。
なお、「アセス都民連」は検証結果を冊子「都条例環境アセスメントの事後調査を検証する」(B5版55ページ、500円)にまとめている。連絡先:tel 0423-23-1553 標(しめぎ)方
●東京都が計画アセスを試行(99/11/10)
東京都は2000年度内に事業内容が決まる前の計画段階で環境影響を調べて、地域住民に公表する総合環境アセスを導入する予定であるが、その前段として11月5日、事業計画時の環境アセスを全国で初めて試行すると発表した。
当面、道路建設などの基本計画立案段階での環境影響などを本年度中に実施する。
試行に入る計画事業は、杉並区下高井戸で甲州街道に合流する都市計画道路「放射第5号線」と府中市と三鷹市をつなぐ「三鷹3.2.3号線」の連結部1.8キロの未整備区間で1966年に都市計画決定されたが、中央道の建設が先行し、最後の1.8キロ区間が未完成となっていたところ。この区間一帯は玉川上水沿いの自然環境を残し、1999年3月に都の歴史環境保全区域に指定されており、計画アセスでこの環境保全との調和がうまくとれるかが注目される。
●座間市の火発、アセス批判で計画撤回(99/10/08)
座間市の小松原地区に計画されている火力発電所建設(事業主体:品川白煉瓦)をめぐって、周辺住民から環境悪化につながるとの懸念の声が広がっていたが、事業主体の品川白煉瓦は、住宅地で環境対策を行うためには環境対策費がかさむことを理由に採算がとれないと、10月7日に計画から撤退することを決めた。
この問題は、事業者側の従来型のアワセメントで計画を強行しようとする姿勢が住民から強く批判されたためで、
問題は、騒音、安全、大気汚染、地下水の保全など多岐にわたっていた。
そのうち、影響が最も広範囲に及ぶものとして、燃料である都市ガス燃焼に伴う窒素酸化物排出の増大問題があった。建設予定地の東側に隣接する大和市(人口21万人)は特に大気汚染が深刻な状態にあり、建設による大気汚染の影響が最も大きいのも大和市である。大和市役所の二酸化窒素濃度(一般局)は年々悪化し、昨年度はついに環境基準の上限に達している。また、大和駅近くの深見台(自排局)の測定値は環境基準をずっと超えたまま、改善の兆しもなく推移している。事業者の「環境アセス案」では、当然この状態にたいし火力発電所稼働後にどのような影響が出るのかを明らかにしなければならないのに、この問題をさけたことから、関係住民による問題の指摘が、大和市の自治体ホームページ上で議論されていた。
このホームページで住民側は「深見台の測定値は環境基準を超えている。この事実について(事業者側が)どう考えるのか」、この問題にふれないアセスは「何のためのアセスなのか、説明会なのか」と批判していた。
住民側は「こうした具体的な問題こそ、大和市のまちづくりの議論を観念的なものに終わらせないためにも、積極的にホームページでとりあげ、事業者側も参加すべき」だとしていたが、こうした公開討論が事業者側を撤退に追い込んだことも事実である。
なお公害地球懇(JNEP)は、地元の要請を受け、現地調査を予定していたが、撤回が決まったため現地調査を中止した。
●「計画アセス」制度で中間まとめ(環境庁研究会)
環境庁の「戦略的環境アセスメント総合研究会」(座長・浅野直人福岡大教授)は7月22日、事業の計画段階でのアセスメント制度の導入はかるための中間報告をまとめた。
計画段階でのアセスとは、戦略的環境アセスメント(直訳)とも呼ばれ、事業の計画段階においてアセスメントが行われるために、事業目的に対応していくつかの異なる事業計画が選択できるなどの柔軟性に富んだ対応ができるメリットがある。
例えば、吉野川可動堰をめぐる問題で計画アセス制度が導入されたと仮定すれば、治水という事業目的にたいし、堤防のかさ上げ、現在の固定堰の補修、可動堰の新設などいくつかの選択肢を検討して環境配慮でもっともふさわしい事業計画を選択できることになる。環境への悪影響が分かっても大幅な修正ができないなどの問題が指摘される現行の事業アセス制度とは大きく異なる。
環境庁は今年中に自治体と協力して計画アセスを試行するなど法改正までも視野に入れ、来年までに最終報告をまとめるもよう。
中間報告は、戦略的環境アセスメントが求められるようになった背景とその意義、諸外国における戦略的環境アセスメントに関する制度の状況と具体的な事例、日本における戦略的環境アセスメントの萌芽事例、戦略的環境アセスメントの展開に向けた今後の課題についてまとめている。このなかで計画アセスは、@多くの案を比較、評価することで開発が環境に与える影響を最小に抑えることができる A複数の事業の累積した影響を評価できるなどのメリットを指摘している。
●圏央道・東金茂原道の旧来型アセスやりなおせ
圏央道計画の千葉県ルートのうち、東金茂原道路がアセスメント法施行後も、従来の閣議アセスの手法で行われている。これに関して、同ルートの周辺住民らが、計画の変更などをもとめ、事業者である建設省に意見書などを提出している。千葉県は7月18日に同ルートにかかる公聴会を開催したが、以下は、その公聴会でのJNEP会員が行った公述の要約である。
東金茂原道路の旧来型アセスに対する意見(騒音問題)
1.高速道路建設は、深刻な公害まきちらしと自然破壊という取り返しのつかない原因と結果をもたらす。高齢化社会下では地域と密着した便利な道路網と公共交通網の充実整備を行うべき。圏央道計画の必要性は疑問であり中止を。
2.本アセスは旧要綱でスタートしたが、法53条等により、新制度への「乗り換え」が義務づけられている。アセス法に基づく予測評価、環境保全の措置を明らかにすべきである。
3.騒音は4月1日環境基準改正の新基準での予測評価を追加実行し、評価書を作成すべき。そのさい @騒音の新基準では、測定方法が変更されたことから高さ方向の予測評価を示すべき。A地域区分について、本線では沿道を都市計画無指定地域であることからB地域を適用しているが、沿道の将来の土地利用構想ではリゾート整備地域としていることのでA地域(住宅専用地域)として予測評価を行うべき。B新基準では20メートル以内と20メートル以上の2地域区分の予測評価が必要で、緑ケ丘住宅の前面の集落についても新基準による予測評価を行うべき。C騒音の予測式におけるαd(回折減衰による補正値)、αi(種々の原因による補正値)等の補正値について説明を求める。
4.緑ケ丘地域についても関係地域と同等の影響を受ける地域として予測評価を行うべき。
5.緑ケ丘団地中央の道路は、長南(ちょうなん)インターに出入りするアクセス道路として利用されることから、これについても影響評価を行うべき。(JNEP幹事長 小池信太郎)
東金茂原道路での景観アセス
計画道路は、自然歩道が存在するという自然環境豊かな地域を通過する。本計画道路地域には『昭和の森を訪ねるみち』、『サクラをめでるみち』、『山里のみち』、『森と森をつなぐみち』の4ルートが存在し本道路計画と平行・交叉する。首都圏に残された数少ないアメニティーとしても、価値ある存在。
計画道路とは4本の自然歩道のうち、『昭和の森を訪ねるみち』、『サクラをめでるみち』と『山里のみち』の3本が交叉する。影響評価の対象は『昭和の森を訪ねるみち』のみで、他の2本のルートについて影響評価を意図的に避けている。
そのうえ景観についての影響評価結果は、『昭和の森を訪ねるみち』に関して示されているように、遠く離れた計画道路を含む眺望について問題なしとし、直接交叉する3本のルートへの影響とその対策を示していない。
@東金側基点から約2.8キロ地点で計画道路は『サクラをめでるみち』と交叉する。この地点からの景観やアメニティーの破壊に関しては影響評価では、なにもふれていないが、周辺の環境と違和感のある人工構造物の出現とともに、騒音・振動・排気ガス問題が、ハイカーにも関わってくる。 A東金側基点から約14キロ地点で『山里のみち』と交叉するが、この地点の「真名上人塚」は計画道路からおよそ100メートル以内になるものと推測されるが影響評価の対象となっていない。
計画道路が建設されることで、交叉する地点をもつ自然歩道は、巨大な人工構造物である高速道路をその自然風景のなかに取りいれることとなり、アメニティーは破壊され自然と接するという本来の価値は大きく損なわれる。計画ルートと既存の首都圏自然歩道との調整を行うべき。(JNEP幹事 舘浩道)
●アセス法の運用強化で環境庁へ申し入れ(99/7/8)
「いのちとくらし、自然を守る」環境アセスめざす会は、7月8日、環境庁にたいし、6月に施行されたアセス法の運用強化について申し入れを行った。
内容は @生態系保全や地球温暖化などの諸項目での運用強化のための施策 A有効な代替案定着のため事業者の代替案検討状況の公表 B事後評価実施状況の公表のほか Cかけ込みアセスを行った事業者に対する環境庁の意見やコメントを求めている。また同時に、将来の制度改正への検討も求めている。
●吉野川問題で市民側が代替案を提案
吉野川の可動堰建設をめぐって、徳島市議会での住民投票条例が可決され、この問題が大きな政治問題化しているが、こうした動きとは別に、住民側が自主アセスメントを行い、それに基づいて建設省の可動堰計画に代わる代替案を提案するという動きもみられ、吉野川の問題は、住民投票制度の実現という側面のほかに、環境アセスメントでも住民側が主導権を握るかもしれないという局面を迎えている。
この「市民からの代替案の作成・提言」は、吉野川第十堰環境アセスメントの会(代表世話人石井愃義)のメンバーである建築家ら専門家によるもので、98年秋ごろから準備にはいるとともに、研究会や懇談会を重ね、99年4月13日までに提言のかたちでまとめあげ、4月15日に建設省徳島工事事務所に対し提案したもの。
提案の内容は、まず、可動堰計画のもとになった現在の第十堰に関して老朽化など治水上の諸問題や、魚をふくむ生態系問題などについて調査・分析を行い、そのうえで代替案を2案提言した。
第1案は、現在の堰を補修して堤防への水の影響を抑えたり、魚道を整備改善するなど、この堰の歴史と周辺環境をそのまま、維持しつつ、洪水などにそなえようという案で、可動堰建設との比較では原状維持改善案といえる。
第2案は、現在の堰と組合せるかたちで、すこし上流に固定堰を設け、現堰と親子の堰とし、両方で機能分担を図ろうというもの。もちろん、新しい堰の建設については、現堰との調和をとるなど、環境と景観にも配慮する。新しい堰の役割は主として旧吉野川への分水の役割を持たせ、現堰は潮止めの役割を持たせるという。
吉野川第十堰環境アセスメントの会は、この提案について、ホームページで公開するなど、市民の間での議論を期待するとともに、建設省との間で積極的な議論を交わしたいとしている。(参考:建設省の可動堰計画)
●海上の森アセスでもオオタカ見逃し
愛知県と万博協会が進めている瀬戸市「海上(かいしょ)の森」での万博のためのアセスメント準備書(2月23日)
にオオタカ存在の記載がなかった。2カ月後のオオタカの営巣確認(4月29日)であらためてずさんなアセスが問題となっている。日本野鳥の会はこうした万博協会側の調査を批判している。
アセス法施行の前倒しの触れ込みですすめられた万博アセスだが、実態は万博の開催を至上命題としてすすめられたことは間違いない。愛知県と万博協会はこのアセスについても、現在の計画規模のままですすめることを6月2日に明らかにしている。
これにたいし、日本自然保護協会、日本野鳥の会、WWFジャパンが開いた東京での「愛知万博アセスを考えるシンポ」(6月13日)では、代替案がないのでオオタカ確認後の代案が示せない、地下水が逆流し貴重植物の湿地が保全できなくなる(愛知教育大・森山昭雄氏)などの問題が指摘されている。
●環境アセスメント法の施行にあたって(99/6/18)
1997年6月に制定された環境影響評価(環境アセス)法が6月12日に施行された。日本はOECD加盟国の中でもっとも遅れて、ようやく法による環境アセスを行うこととなった。
アセスが法律化されたことで、1984年の閣議決定に基づくアセス制度から、いくつかの点で前進がみられた。事業計画の地域外の国民が早い段階から意見を言えるようになり、事業者は国民や自治体の意見を踏まえてアセスの実施方法や事業の実施計画を決めてゆくことになるし、環境庁もすべての対象事業において意見を述べることが可能になった。
アセス対象事業は従来の埋め立て・干拓、ダム、空港や高速道路などに、発電所、大規模林道、鉄道の建設が加わって計14事業となった。また環境評価項目も貴重な動植物への影響だけではなく、生態系全体、地球温暖化をもたらす温室効果ガスも評価対象となった。
これによって事業者は説明会や公聴会を開いて情報提供を行い、住民の意見を十分に聞くことが求められることとなる。しかし住民参加と情報公開の徹底については、こうした法律の枠組みと現実の間には、早急に埋めなければならない問題が横たわっている。
法律施行の前に駆け込み的に従来型のアセスを行った中部国際空港のケースは論外だが、法律の建前である事業者によるアセス実施であるかぎり、事業計画の遂行が大前提であることは変わりなく、そのことから住民参加や情報公開によって計画内容の環境に及ぼす影響を指摘され、計画内容への変更をせまられる事態を避けたいとするマインドが働く(「アセス法があろうがなかろうが、2005年開港が大命題だ」…中部国際空港会社幹部の発言/6月16日付『朝日』)。
ここから、住民参加の制度はあるが、なるべく知らせたくない。住民参加制度を形式的に運用してしまう。意見を聞いても聞き置くだけ(高速横浜環状北線では29万通の住民意見が提出されている)、といったことは容易に想定できる。
現在進行中のアセスに限っても、準備書を住民にコピーすらさせない(福山道路)、工事中に絶滅危惧種のクマタカの繁殖が確認されても必要な保全策をとらず、繁殖が失敗したら、数日の工事中断で再開してしまう(徳山ダム)などの例は枚挙にいとまがない。こうした事例をみると、法施行でもことが簡単に進むとは考えにくいのが現実だ。
アセス法と合わせて都道府県と政令市でも、準備中の一部の県を別にして、ほぼ法律内容と同様の枠組みがアセス条例として整備・施行され、国の14事業に対応する小規模事業や県道・廃棄物処理施設・下水道終末処理場・スポーツレクレーション施設などを対象としてすすめられることになる。
アセス制度の抜本的な改善はさておき、こうして現実にスタートしたアセス法・条例体制のもとで、実効ある運用をさせるには、従来にもまして腰をいれた国民側の対応が求められる。
●福山道路(広島県)アセスに意見書提出
広島県福山市で計画中の都市計画道路福山道路のアセスが実施され、準備書が縦覧されました。アセス法では、こうした準備書にたいして、従来の地域関係者だけでなく、だれもが地域を越えて意見書を提出できるようになりました。以下のように藤田敏夫さん(環境庁登録環境カウンセラ−/JNEP会員)が意見書を提出しました
都市計画道路 福山道路
環境影響評価準備書に対する意見書(99/5)
藤田敏夫(環境庁登録環境カウンセラ−/JNEP会員)
1.福山道路の建設で福山市中心部の交通渋滞が緩和されるか?
運送業者などは、不況下では有料道路の利用を極力さけて、一般道路を使う傾向が強い。自動車専用道路を利用すると輸送コストが増大するからである。広島県のように自動車の保有台数が最近6年間で、約2〜3倍に増大している状態では、新たな道路を作れば、「潜在交通量の顕在化」を促進するだけである。その結果、自動車排ガスによる大気汚染、交通騒音そして交通事故によって住民の被害を拡大することにならざるを得ない。
一時的に他の道路の混雑が減るが1年以内に元に戻ってしまうことは、これまで全国各地で経験済である。21世紀は環境の時代、通勤、買物などのためには公共交通を充実すべきである。また、大地震などの災害時には、自動車専用道路などは機能しないことが阪神淡路大震災で証明済である。
2.21世紀は自然との共生の時代
計画路線は、「広島県の自然と野性生物〜レッドデ−タブックひろしま〜」(平成7年:広島県)において、第1次選定種の動物、植物、昆虫類及び両棲類の棲息地を通過する。また、芦田川河口のカモ、シギ、サギなどの渡来地の一部を通過するなど自然環境を破壊する計画である。計画路線は、龍王山鳥獣保護区や自然とのふれあいの場である「一般県道後山公園洗谷線(グリ−ンライン)」を通過するが、6月12日から施行される環境アセス法で、建設大臣は、省令を公布して、道路計画で、地表式、掘割式及び嵩上式の道路の場合には、主要な眺望点及び景観資源ならび主要な人と自然のふれあいの活動の場が影響を受ける恐れがあると規定して、調査・予測項目に採用するように規定している。
3.計画路線の北2kmに断層帯が走る計画地域には断層や断層の露頭が2箇所存在するが、準備書は計画道路は、これらの断層地帯を通過しないと述べている。しかし、断層のわずか2km南方をほぼ平行に計画されている。この断層が活動した場合には被害を免れないであろう。
4.なぜ住宅密集地域を通すのか?
計画道路は第1種低層住宅専用地域を300m、第1種住宅地域を2,100mにわたって通過する。このような人口密集地域に高架高速道路と一般道をそれぞれ4車線建設すれば、これまでに、大阪西淀川の国道43号線と阪神高速道路、川崎の首都高速羽横線と産業道路の周辺住民が勝訴した自動車排ガスによる健康被害裁判などの判例にみられるように、道路沿道の住民に重大な健康被害をもたらす事は明白である。したがって、計画路線を変更するか、それが不可能であれば、白紙撤回すべきである。
5.大気汚染の予測手法について
大気汚染の予測手法は相変わらず、プリュ−ム・パフモデルを用いているが、このモデルは、表面粗度や熱的条件が一様である、無限に広がる地表面上に立つ一本の煙突から排出される汚染物質が風下側の地上に到達するときの濃度を求めるモデルである。その際、汚染物質の排出強度、煙突上端の風向、風速が常状態、すなわち、時間とともに変化しないことを仮定して導かれて式である。本計画での立地条件は、上記のモデルとは著しく異なっている。したがって、このモデルによる予測は、あくまでも参考資料にすぎず、環境基準をクリア−しているか否かを議論するには不適当である。
さらに、このモデルに含まれる拡散パラメ−タ−が、大気の安定度に無関係に決められているが、このようなことは実際の大気中では適用できない手法である。とくに、現地の気象調査結果によると、秋・冬季には風速がほとんどゼロになる静穏状態の出現率が40〜50%になる福山地域では、接地逆転層(上空の方が地表近くより気温が高くなる気層)が形成される頻度が高いと考えられる。このように大気の極安定時には、ここで使っている拡散パラメ−タは不適当である。
また、自動車が排出する大気汚染物質の原単位について、この準備書では建設省の排出係数を用いているが、これらの値がどのような実験から導きだされたのか不明である。一方、東京都環境保全局から公表されている係数に比べると小さい値となっている。このように、調査機関によって、排出係数が異なる場合には、根拠が明確なもので、かつ安全側に立って、より大きい値を採用すべきである。
6.大気汚染の予測結果について本準備書では、欠陥のあるプリュ−ム・パフモデルによる計算結果から二酸化窒素の予測値が0.001〜0.004ppmとなっているが、これらの予測値にはバックグラウンド濃度の予測値が含まれていない。予測値の90%を占めるバックグラウンド濃度を予測しなければ予測にならない。
環境影響評価で、このような予測結果は見たことがない。(以上)
●環境庁が川鉄発電所で排ガス削減求める(99/5/31)
環境庁は24日、川崎製鉄千葉製鉄所内の売電用発電所について「大都市地域の環境保全上、特段の配慮が必要で、窒素酸化物の排出濃度の低減」「温排水による海への影響の抑制」「住民への情報提供」を求めた意見を通産省に提出した。アセス法関連の電業法で、電気事業者以外の企業が発電所を建設する場合、通産省に指導するよう環境庁が意見を述べることになっており、98年10月の神鋼神戸発電所に続いて2回目。都市ガスを燃料とする川崎製鉄発電は、最大出力約41万キロワツト、供給は2002年から。
●44都道府県・政令市がアセス条例を制定(99/4/18)
環境庁は、アセス法の制定および施行と平行してすすめられている自治体のアセス条例の制定状況を調べていたが、4月18日、その結果を公表した。
これによると44の都道府県および政令指定都市が独自の環境アセス条例を制定し、大半がアセス法に合わせて99年6月施行を予定していることが判明した。
アセス法制定前では、条例制定自治体は6都道県と川崎市だったことから大幅に制定がすすんだことになる。
内容的には、新たに制定された条例では、アセス対象事業として廃棄物処理施設など地域環境に密接にかかわる開発を対象としていること、また公聴会など住民参加の手続き規定を設けていることが特長となっている。
しかし13県がなおアセス要綱のままであり、アセス手続きを何も持っていない佐賀県と札幌市もあるが、いずれも条例化を検討している。
またアセス法と自治体アセス条例との相違については、アセス法が住民参加について、意見書提出や説明会の参加に限定しているのにたいし、条例では埼玉県など38自治体で、住民が意見を述べる公聴会の開催を規定。またアセスの実施方法や評価書の作成で、第三者による審査会の意見を聞く規定を44すべての自治体が設けた。
さらにアセス法では、事業に着手するまでの手続きにとどまるが、すべての自治体条例では、事業開始後の調査と、事後報告書提出を事業者に義務付けている。
このほか条例では、アセス法対象外の小規模事業(小規模道路・ダム、廃棄物処理施設、ゴルフ、スキー場、下水道処理場、土石採取など)も対象としている自治体が多い。
●神戸製鋼が石炭火発の建設へ(99/03/28)
神戸製鋼所は、神戸市灘区灘浜東町の神戸製鉄所敷地で石炭火力発電所(70万キロワット2基)の建設工事を開始した。卸電力供給事業としては国内最大規模で、計画では2002年4月に1号機が送電開始し、2004年4月の2号機稼働後は、神戸市のピーク時電力の約8割を賄う見通し。
神戸製鋼所は建設に際し、98年12月、神戸市と環境保全協定を締結。総工費約2000億円のうち約700億円を環境対策に充当、現在の製鉄所内の焼結工場を廃止、自家発電設備の燃料を重油から液化天然ガスに転換するなどして、窒素酸化物など汚染物質の排出量を現状以下のレベルに抑えることを協定。もっとも温暖化防止に関しては同社の電力が関西電力エリア全体に供給されることから、二酸化炭素排出量は関西電力エリア全体の電力消費量に基づき配分されるとし、神戸市の電力消費量が増えなければ二酸化炭素増加にはならないという理由をつけて事実上二酸化炭素排出量については削減努力を行なわない姿勢をとっている。
●藤前の保全とゴミ問題の解決へむけて/辻淳夫(@藤前干潟を守る会)
藤前の辻敦夫さんからJNEPへ届いたMAILです。かろうじて守り抜いた藤前の今後と名古屋市のゴミ問題の解決へむけた、決意あらたなメッセージです。
藤前干潟のゴミ埋立が回避されることになって、たくさんの方々からおめでとう、良かったね、と喜びの声をいただいています。渡り鳥や干潟の生きものたちの分も込めて、あらためてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
藤前が保全されることになって勇気づけられた、自分のところも初心に帰ってがんばるよと、諫早から、和白から、三番瀬から元気なエールをいただいています。
藤前が、同じ問題をかかえる全国の方々に支えられていたこと、そして今や藤前が転機となって、それぞれに良い流れをつくりだしていることを嬉しく思います。
これから、いろいろ支えていただいたお返しをしていくつもりですが、当面、藤前に関してしなければならないこととして、次のことを考えています。
1.名古屋のゴミをどうする!?と、名古屋市と市民に突きつけられた課題に、真っ先に真剣に取り組む。それなくして処分場確保は不可能。
2005年までにゼロエミッションを実現するといった高い目標を立て、それを実現させるための具体的な方策、システムづくりのタイムスケジュールを名古屋市にまとめてもらう。
市民自らの智恵とアイデア、実践の経験を伝え合い、広めてゆくための「へらそうゴミ!!名古屋市民集会」を開く(2月13日(土)13:30-15:30 吹上ホール第3会議室、地下鉄桜通り線、吹上駅下車5番出口歩5分)。
2.藤前干潟と周辺の一帯を、藤前干潟渡り鳥公園として保全し、干潟の生態系を活かした憩いの場、環境教育の場としてゆく。
この構想は早くから提示してきたが、今回それをあたらしく練り直して再提案する。
干潟探検隊、干潟の学校、生きものまつりなどを充実させてゆく。
3.藤前干潟一帯を国設鳥獣保護区に指定し、5月のコスタリカ・サンホセ会議までにラムサール条約登録湿地の指定を求める。
既に環境庁は国説鳥獣保護区設定計画を名古屋市に提示しており、埋立計画が外れることで障害はなくなった。
名古屋市長には、この英断をもってコスタリカ・サンホセ会議に参加してもらう。
みなさまのご意見をお聞かせ下さい。また、これらをスムースに実現するために、ぜひお力添えください。
●中部国際空港アセス準備書縦覧の開始99/02/02
中部国際空港建設の是非をめぐり議論となっています。その着工に向け、アセスの第一段階であるアセス準備書(中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立事業に関する環境影響評価準備書)が縦覧されました。
なお、意見書の提出期間は、99年2月15日(月)まで、提出先は中部国際空港株式会社調整部環境課(〒450−0001 名古屋市中村区那古野1−47−1 名古屋国際センタービル)へ。
中部国際空港建設環境影響評価準備書(中部国際空港株式会社ホームページから転載)
中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立造成事業
に関する環境影響評価準備書について
中部国際空港株式会社及び愛知県では、中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立造成事業に関する環境影響評価準備書の縦覧を12月25日(金)から行いますが、環境影響評価準備書が下記のとおりまとまりましたのでお知らせします。
中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立造成事業に関する環境影響評価準備書の概要
中部国際空港株式会社
愛知県企業庁
1.環境影響評価準備書の特色
予測・評価の項目については、従来の環境影響評価(閣議アセス)で行われている大気質、水質、騒音、振動などのほか、環境影響評価法の趣旨を踏まえ「生態系」、「廃棄物」、「温室効果ガス」など9項目を加え、25項目としました。
2.予測時期
予測時期は、原則として、
<供用時>施設の利用が最大となる時期(旅客数 約2,000万人相当時)
<存在時>空港島の工事が完成した時期
<工事中>工事による影響が最大となる時期
としました。
3.調査及び予測・評価の手法
●調査及び予測・評価の内容については、方法書で示した内容を基本にするとともに、方法書に対する住民意見や愛知県知事意見を踏まえ、予測に使用するデータをできる限り最新のものにするため、鳥類などの調査結果を追加し予測に活用しました。
主な追加調査項目と調査内容
鳥類(カワウ) 常滑市周辺沿岸域での採餌魚種
植物 海岸域の植物
●予測・評価にあたっては、複数の環境保全対策を前提とし、また、その効果を定量的に試算できる対策については、その低減量を数量でお示ししました。
●評価は、平成10年6月12日に示された飛行場に係る技術指針等の趣旨を踏まえ、
@環境保全対策により環境への影響が回避・低減されているか
A国又は地方公共団体の施策により示されている基準又は目標(環境基準等)との整合性について検討することにより行いました。
●なお、予測にあたっては、空港対岸部埋立造成事業など関連する事業の影響を加味して行いました。
4.愛知県知事意見への対応
●工事中の短期の沿道環境大気質の予測を追加するなど、愛知県知事意見の43項目全てに対応しました。
5.主な環境保全の措置
@「基本構想段階での環境配慮」、A予測・評価の前提とした「環境保全対策」及びB「環境への負荷のさらなる低減対策」の3段階で、環境への回避・低減対策を検討し、70項目の「環境保全の措置」として取りまとめました。
(1)基本構想段階における環境配慮
中部新国際空港推進調整会議で検討された基本構想段階における環境配慮は以下のとおりです。
<海域環境に対する配慮>
●周辺海域の環境の変化による影響を低減するため、空港島と対岸部との最小海域幅は約1.1kmを確保し、また、空港島の形状を曲線化する。
<航空機騒音に対する配慮>
●航空機騒音に対して配慮するため、滑走路中心位置を「中部圏における新たな拠点空港に関する計画案(中間まとめ)」(平成9年3月:中部新国際空港推進調整会議)の位置から100m沖出しする。
(2)環境保全対策
予測・評価にあたって前提とした主な環境保全対策については以下のとおりです。
<存在・供用時>
●空港動力施設(GPU)(注)を設置することにより、駐機時の航空機の補助エンジンの運転を停止する。
●地域冷暖房を導入し、エネルギー効率の高いコージェネレーション(熱電併給)システムを導入する。
●電気自動車、ハイブリット自動車等の低公害車を導入する。
●空港島護岸は、自然石等を用いた傾斜堤護岸を基本とし、西及び南護岸(延長約6.5km)に幅10mの岩礁性藻場を創出する。
●排水量の低減、資源の有効利用の観点から中水を利用する。
<工事中>
●建設資材の輸送は、できるだけ海上から輸送する。
●埋立工事は護岸等の概成後に実施する。
注:航空機がスポットイン後、速やかに航空機の電力供給や空調の動力源としている補助エンジンの運転をやめ、効率の良い空港動力施設(GPU)に切り替え電力供給と空調を実施する。
(3)環境への負荷のさらなる低減対策
より一層、環境への負荷を低減するため、愛知県環境基本計画等の趣旨を踏まえ、次のような対策を実施するものとします。
●ISO14001(注)を取得し、環境管理・環境監査を実践し環境負荷の継続的な低減を図る。
●空港の供用時はもとより、工事中の各段階においても、環境監視(環境モニタリング)を実施し、その結果を公表する。
●ITS(高度道路交通システム)の導入を検討し、円滑な車両運行を実現する。
注:組織活動、製品又はサービスの提供による環境影響を低減する取組みが継続的に改善されるシステムの構築に関する事項を定めたもの。ISO(国際標準化機構)により定められた国際規格。
6.予測・評価の結果の概要
(環境要素の区分/主な予測・評価等)
大気環境
大気質
<供用時、工事中>
□既存の陸域で二酸化硫黄、二酸化窒素、一酸化炭素、浮遊粒子状物質等の環境基準の達成状況に変化はみられません。
<工事中>
□粉じんの飛散による影響はほとんどありません。
騒 音
<供用時>
□航空機騒音については、WECPNL70を超える地域は、海上にとどまり、航空機騒音に係る環境基準を満足しています。
<供用時、工事中>
□道路沿道騒音については、環境基準の達成状況に変化はみられません。
水環境
水 質
<存在・供用時>
□伊勢湾全体では、COD、全窒素、全燐とも事業の実施による濃度変化は小さく、環境基準の達成状況に変化はみられません。
□空港島の南側の海域では、COD、全窒素、全燐の濃度にやや減少傾向がみられます。
<工事中>
□埋立工事最盛期における工事による水の濁りが、2mg/g以上となる範囲は空港島護岸の開口部周辺でみられますが、護岸から1km未満にとどまっています。
底 質
<工事中>
□水の濁りに伴う土砂の堆積量は少なく、水の濁りに伴う底質への影響は空港島の直近に限られます。
土壌環境・その他の環境
地形・地質
<存在時>
□重要な地形・地質である「つぶて浦(南知多町)」周辺の砂の移動はなく、影響はありません。
動物・植物、生態系
<存在・供用時、工事中>
□水質等の変化による生息・生育環境の変化は小さく、海域生物(プランクトン、底生生物、魚類等、藻場生物、干潟生物、潮間帯生物)への影響は小さいと考えています。
□希少生物(サツキマス、アカウミガメ、スナメリ等)への影響は小さいと考えています。
□アマモ、バカガイ、サッパ、イシガレイ、スズキ、カワウを代表種とする生態系に及ぼす影響は小さいと考えています。
<供用時>
□ワシタカ類の渡り鳥の航空機との衝突の可能性は低く、航空機の飛行に伴う影響は小さいと考えています。
人と自然との触れ合いの活動の場
<存在・供用時>
□主要な人と自然との触れ合いの活動の場に及ぼす影響はほとんどないと考えています。
環境への負荷
廃棄物等
<供用時、工事中>
□護岸・岸壁の型枠にできる限り鋼製型枠を使用するなど廃棄物の発生抑制、分別排出の徹底及び再資源化に努め適正に処理します。
温室効果ガス等
<供用時、工事中>
□空港動力施設(GPU)の設置、地域冷暖房システム、コージェネレーション等の導入、高炉セメントを施工上可能な範囲で使用することにより、二酸化炭素の排出量を削減します。
7.総合評価
本事業の実施が、環境に及ぼす影響を予測・評価した結果、大気質、騒音、水質、動物・植物、生態系、温室効果ガス等に及ぼす影響については、各種の環境保全対策の実施により回避・低減されており、また、地域の環境保全の基準又は目標の達成状況にほとんど変化をきたすことはなく、伊勢湾及びその周辺地域の環境に及ぼす影響は小さいものと考える。
なお、環境への負荷をさらに低減する対策を推進するとともに、存在、供用時はもとより、工事中の各時点において環境監視に万全を期すことにより、伊勢湾及びその周辺地域の環境に及ぼす影響を最小限にとどめるよう努める。
(参考)
中部国際空港建設事業及び空港島地域開発用地埋立造成事業に関する環境影響評価方法書に係る意見書について
1998年8月12日
中部国際空港株式会社
標記の環境影響評価方法書について、平成10年6月10日から7月10日まで縦覧し、7月24日まで意見を受け付けたところですが、意見書の提出状況等を下記のとおりとりまとめましたのでお知らせします。
記
1 意見書の提出状況
(1)意見書提出数 134通(個人:126通 団体:8通)
内訳 関係地域(知多地区):74通
そ の 他 の 地 域 :60通
2 主な意見の概要
(1)環境影響評価の項目及び調査等の手法に関する意見
□新法の趣旨を活かし定量的把握を基本に行うべきである。
□既存資料に頼らず、新たな調査による予測・評価を行うべきである。
□実機飛行調査を再度行うべきである。
□WECPNL値70以下の地域についてもコンターはどのようになるのか明示するべきである。
□供用時の水質については、南5区の完成時を含め現実的、慎重かつ正確な予測・評価を行うべきである。
□埋立用土砂の内訳を明らかにするべきである。
□渡り鳥と航空機の衝突について予測・評価を行うべきである。
(2)その他の意見
□愛知万博にあわせるための駆け足アセスではなく、慎重なアセスメントを求める。
□回避・低減策を取っても環境への影響が大きい場合は、事業を中止するべきである。
□方法書に関する審査過程を明らかにするべきである。
□電波障害について予測・評価するべきである。
3 意見の概要の送付
愛知県環境影響評価要綱第10の規定に基づき、意見書の概要を愛知県知事及び関係市町長に、平成10年8月12日付けで送付しました。
●藤前干潟、鳥獣保護区へ(99/3/18)
環境庁は名古屋市が藤前干潟を埋め立ててごみ処分場を建設する計画を断念したこと、そして同干潟をラムサール条約の登録湿地にという国民的な要求を受けて、藤前干潟を、@国が指定する鳥獣保護区の特別保護地区とする、Aラムサール条約の登録湿地にすることを検討するいう方針を1月28日に決めた。
鳥獣保護区への指定は、環境保全上重要な地域として国が指定するもので、区域内では鳥獣の捕獲が禁止される。また特に価値の高い地域は特別保護地区に指定し、水面の埋め立てや工作物の設置などもできなくなる。現在鳥獣保護区は全国で54カ所。
ラムサール条約への登録については3月11日に真鍋環境庁長官が、近く同条約に加入すると答弁した。
●かろうじて守られた藤前干潟(99/2/9更新)
名古屋市は、藤前干潟の埋め立てによる同市の廃棄物最終処分場建設計画を1月25日に断念し、愛知県知事が環境庁ならびに処分場問題に直接かかわる厚生省にたいし26日に通告するとともに、公有水面埋め立て認可官庁である運輸省にも「藤前断念」を通知し、あわせて代替地確保への協力を要請した。
わが国に残された干潟のうち、鳥類の飛来で日本最大の干潟となってしまった藤前はどたんばになって、名古屋市をとりまく行政や世論包囲のなかで苦渋の決断となったのだが、干潟保護のサイドから見ればこの名誉ある決断により藤前干潟は21世紀にわたって保全されることとなり、日本はじめ、世界的にも意義ある出来事として99年の初頭をかざることとなった。
昨年12月の、名古屋市の干潟埋立にともなう代償としての人工干潟計画を環境庁が明確に退けたことがこの大きな動きをつくりだした直接の契機だが、問題を世論に訴え、奮闘した名古屋の「藤前干潟を守る会」の活動や、10万人を越える条令制定署名を集めた「藤前干潟・住民投票の会」の精力的で能動的な活動が困難な情勢を切りひらいたし、世界的な湿地ネットワークの支援活動も大きかった。
なお、全面保全を求めた10万人を越える条令制定要求は、2月8日の名古屋臨時市議会で否決されたが、松原市長は鳥獣特別保護区指定とラムサール条約登録について前向き姿勢を示した。
藤前は結果として守られたが、名古屋市のゴミ最終処分場計画は解決しないばかりかいっそう窮地に追い込まれることとなった。処分場の適地さがしを巡って関係省庁や自治体との軋轢がはやくも伝えられる。このなかで最有力の候補地は名古屋港の浚渫土砂を捨てるポートアイランドだが、運輸省の管理目的にゴミ埋め立てを加えることができるかどうか。運輸大臣は協力を約束したが実現まで難航が予想される。
藤前問題の教訓は廃棄物の減量という根本政策に手をつけず、ただ処分先を探し回るという名古屋市の基本姿勢を見直し、本格的なゴミ減量へと踏み出す絶好の機会だと思うのだが…(ゴミ問題については別ページで展開しています/JNEP)。
また藤前問題は、埋立が鳥類に影響がある(名古屋市アセス)こと、人工干潟計画は無謀(環境庁)などの議論によって、99年4月に本格施行されるアセス制度の精神が生かされ、アセスにたいする国民の理解も広げる結果となったことは喜ばしいことである。
●藤前問題の条例請求10万越す(98/12/23)
藤前干潟の埋立をやめ、全面保存の是非を住民投票で求める実行委員会(藤前干潟・住民投票の会)は、12月18日、条例直接請求の法定数の3倍を超える10万人署名を、名古屋市の選管に提出した。同会の代表の一人である中川武夫中京大教授は「名古屋市と市議会が、この署名を重く受け止め、勇気をもって方針転換することを求める」と記者会見した。
●藤前の人工干潟化で環境庁がノー(98/12/21)
環境庁は12月18日、名古屋市のゴミ処分場建設計画で、藤前干潟を埋め立てる代償措置として人工干潟を設置しようと計画していることに関して、「干潟を改造するのは無謀、深刻な影響を与えるので厳に慎め」とする公式見解をまとめ名古屋市に対し計画の撤回を求めた。さきに名古屋市で開かれていた日本湿地ネットワークのシンポで、環境庁の小林光自然保護局計画課長が公式見解として「技術的にも確立していない実験的なことはゆるされない」との見解を示していたが、名古屋市が公有水面埋立申請を運輸省に行う前の段階で環境庁が異例の見解をしめす展開となり、名古屋市の干潟埋立によるゴミ最終処分場建設計画は、それ以外の方法で行わなければならない立場に追い込められることとなった。
環境庁の立場は、盛り土でシギ、チドリなどの渡り鳥のエサとなるアサリやゴカイは死滅の可能性があり、渡り鳥のエサが奪われる結果、渡り鳥の中継地が壊滅されることで、国際的にも大きな批判を受けることも配慮したものと見られる。
なお、環境庁は、部内の検討結果を報道発表資料のかたちで公表した。稲森座長のもとで行われた検討は、埋め立ては無謀で第1級の干潟を破壊するとしている。河川と干潟形成の関連性など、さらに詳細な検討が必要だと思われる点にまでふれていないものの、国際関係を含む世論の支持が得られ、名古屋市に再考を促すには十分な内容となっている。
環境庁に、異例の措置を取らせるという大きな到達を作り上げたのはいうまでもなく、名古屋市民を中心とする藤前干潟を守る市民運動で、仮に名古屋市が、運輸省に対し、埋立申請を行っても、運輸大臣は「環境庁がだめというならできない」と発言している。
名古屋市の埋立計画は、藤前の干潟46.5ヘクタールを埋め立て、隣に18.8ヘクタールの人工干潟を造成し、干潟機能を果たさせようというもの。
◎参考 日本湿地ネットワーク藤前宣言(98/12 jawanのページ)
藤前干潟アセスの問題点(藤前干潟を守る会辻淳夫氏のページ)
<環境庁報道発表資料>
藤前干潟における干潟改変に対する見解について(中間とりまとめ概要)
1998年12月18日
企画調整局環境影響評価課
環境影響審査室
1 はじめに
藤前干潟の埋立事業に関しては、藤前干潟自体をフィ−ルドとして人工干潟の実験を行うなどの報道が見られる。本検討会では、このような状況を考慮して干潟の価値の評価、人工干潟の評価、干潟での実験の在り方などについて、藤前干潟を題材にして、至急取りまとめたものである。
検討は、以下の委員により行われている。
秋山章男 東邦大学理学部助教授
稲森悠平(座長) 国立環境研究所総合研究官
尾崎清明 山階鳥類研究所標識研究室長
木村賢史 東京都環境科学研究所主任研究員
風呂田利夫 東邦大学理学部助教授
2 埋め立てられる干潟及び周辺の干潟・浅場の重要性について
(1)藤前干潟の鳥類の利用
事業予定地の干潟は、干出時間は周辺の干潟に比べ比較的少ないが、干出時間が少ない故にシギ・チドリ類が短時間で渡りに必要な餌を集中的に採餌することが可能な形でストックされている餌生物の食料庫の役割を果たしていると考えられる。このように、藤前干潟には、豊富な餌が採餌し易い形で温存されているため、また、周辺の浅場とともに周辺干潟への底生動物の供給源となっている可能性が高いため、この干潟の埋立あるいは改変の影響は予想以上に大きいものと考えられる。藤前干潟を改変することは、藤前干潟周辺も含めた干潟全体の生態系に重大な影響を与え、渡りのための食料庫を壊し、シギ・チドリ類の渡りの成否に大きな影響を与えることとなる。
(2)周辺の浅場と干潟の関係
生物の豊かな干潟は、干潟単独で成立維持されるものではなく、周辺の浅場とも密接な関係を持ちながら全体として生態系を維持している。一般的に底生動物の多くの幼生は、むしろ浅海域で過ごすなど、特に幼稚仔期には双方の環境に依存しながら生存している。
このため、藤前干潟周辺の浅場は干潟生態系を支えている重要な要素といっても過言ではない。周辺浅場を改変することは干潟の改変と同様に深刻な影響を与えるものと考えられ、厳に慎む必要があると考えられる。
(3)藤前干潟の社会的価値
都心部の湾奥にこのような干潟が残り、かつ、全国1、2の渡り鳥の渡来地となっていることは、極めて稀な事例である。藤前干潟は、貴重な自然とのふれあいの場として積極的に保護していく価値が高い。
3 代償措置と環境保全対策の考え方
(1)代償措置の前に代替案の検討が必要
環境保全対策を検討する際には、先ず環境影響を引き起こす事業自体について、影響の回避・低減を図ることに最善を尽くし、更に残る影響について必要があれば、他の場所で同種の環境要素を創出する、いわゆる代償措置を検討すべきであることは、対策を抜本的、効果的に進める観点、代償措置の有する環境保全対策としての限界などから、当然のことである。
(2)代償措置を検討すべき場所
代償措置は、事業の対象用地において失われる環境を別の場所の環境の質を高め代償するものであり、既に環境の質の高い場所で代償措置を行うことは通常考えられない。現状で価値の高い場所は、その場所自体をそのままの自然環境として保全するのが当然である。
4 藤前干潟における人工干潟の造成及び干潟の嵩上げ等の干潟改造について
(1)我が国第1級の自然干潟を改造することについて
自然が長い年月を費やして作り上げ、精妙な生態系のバランスを保っているものを人工的な構築物で模造することには、本来、様々な限界があり、価値の高い自然がある場合は、自然本来の姿をとどめることがまず最優先されなければならない。干潟の機能の代償措置としての人工干潟を造成するため、我が国第1級のシギ・チドリ類の渡来地である残りの現存干潟自体に改造を加えることは、無謀と言わざるを得ず、代償措置を実施する場所としては極めて不適切である。日本最大のシギ・チドリ類の渡来地であるという一事をもって、人工改変を避けるべき理由として十分である。
(2)我が国第一級の自然干潟の機能を代償する技術について
シギ・チドリ類の渡来地としての干潟を代償措置として造成するというのであれば、これは渡り鳥の渡来地の中でも最も優れた場所に相当するものを一挙に人工的に創出しようというものである。遠い将来の技術的課題として実験設備の中や生態系への悪影響の少ないところで取り組むべきであって、このようなことを、長年月の実験、実績を積むこともなく、当面する事業の環境保全対策として直ちに行おうとすることは、技術を過大に信頼した不適切な試みと言わざるを得ない。従来の自然干潟と同等の機能を再生する人工干潟の造成技術は、未だ確立されていない。
(3)浅場の埋立、干潟の嵩上げについて
干潟周辺の浅場は、干潟と一体となって、底生動物や魚類の高い生産性を維持する機能を有している。浅場を埋め立てることは、浅場から干潟に広がる一連の生態系を分断し、干潟の豊かな生物相にも大きな影響を与えることとなる。事業予定地及び周辺の干潟は、周辺の浅場とともに、干潟生物の供給基地的な役割を持っており、ここを埋め立てることは、残存する干潟の生態系にも重大な影響を与えかねない。現状で豊かな生物相を持ち、大潮時には多くのシギ・チドリ類等が集中するような良好な干潟を形成している干潟自体の嵩上げを行えば底生動物の量、多様性は、減少することはあっても増加することはなく、かえって貴重な干潟生態系の機能を損なうことになる。
(4)人工干潟の実験について
仮に環境の質の低いところで実験を行うにしても、人工干潟が定常状態に達するまでに少なくとも5〜10年あるいはそれ以上の期間が必要であり、実験の評価にもこの程度の年月を要すると考えられる。また、一時的に底生動物が豊富になったように見えたり、一過的な底質の変化により特定の種が短期的に大量発生したりすることが過去の例においても見られるが、このような現象も一時的なものであり、いずれ底質環境が定まってくるに従い元の生態系以下の貧相な生態系となっていることにも留意する必要がある。仮に実験を何らかの形で実施する場合であっても、実験規模、期間、場所は、実験のコンセプトを良く検討した上で科学的に決定すべきであり、周辺浅場や干潟の生態学的評価もせずに貴重な干潟・浅場を大規模に使用して実験を行うことは、非常識の誹りを免れない。
(参考)藤前干潟の概要
・藤前干潟は、日光川、庄内川、新川の河口部に位置し、89ha程度の干潟。干潟の最高部は、年間約1,400時間(16.2%)干出し、名古屋港の最低の潮位(年間約84時間)の時に干潟の全貌が姿を現す。
・藤前干潟には、渡りの途上であるシギ・チドリ類を初めとして多数の鳥類が集まり、採餌を行う。周辺の干潟が埋め立てられるにしたがい、かつて伊勢湾奥部を広く利用していた鳥類の生息の場は徐々になくなり、今日では、最終的に藤前干潟周辺がこれらの鳥類の唯一の採餌場となっている。
・藤前干潟周辺には、60種程度の水鳥が毎年定期的に渡来し、環境庁のシギ・チドリ類の定点調査(1988〜1996年)において全国で2番目(最大数は堤防締切前の諫早干潟)の渡来数を記録。年度別の比較では春期には、全国一の渡来数を記録することが多い。
・藤前干潟周辺は、ラムサ−ル条約で保護すべきとされている湿地のクライテリアに適合し、世界的にも重要な干潟であると考えられる。国際的にも藤前干潟の保護については関心が高く、日本に渡来するシギ・チドリの越冬地であるオーストラリア、同じく繁殖地である米国や渡り鳥の保護に強い関心を持つWWF(世界自然保護基金)等が、藤前干潟の保護について強い関心を示している。
●京都市が事後アセスなど条例化へ(98/11/13)
京都市は事後アセスなどを義務付けた条例制定に乗り出す。これは従来の行政指導にいるアセスに代えるもので、条例案によるとアセス実施に先立ち、調査項目や方法の縦覧、事後アセスで予測と食い違う場合、事業者に環境保全措置をとらせるほか手続き違反の場合、事業者名や違反内容を公表する。また、アセス対象事業を林道や下水処理場にも広げた。
●徳島空港拡張計画アセス始まる
徳島空港拡張事業が、99年施行の新アセス法の都道府県として全国初で前倒し適用される。徳島県はこの事業の「環境影響評価方法書」の縦覧を11月12日から徳島県庁などで行っている。
徳島県松茂町にある徳島空港の滑走路を五百メートル延長したり、海岸を埋め立てて海浜公園を建設したりすることなどを盛り込んだ拡張整備計画が、徳島県と運輸省によって平成十六年度の完成を目標に進められていることにかかわるもの。縦覧終了後に受け付ける方法書の内容に対する住民からの意見を踏まえたうえで、アセスにはいる。
●出光興産愛知製油所(愛知県知多市)のIPP(売電事業)アセス
環境アセスメント法は、99年6月12日から完全実施されます。これに向けての準備作業としてのスコーピングが98年6月12日から行われることとなり、新制度はここから事実上スタートしました。
その第1号にあたる対象事業が、出光興産愛知製油所(愛知県知多市南浜町)のIPP(売電事業)で、方法書の手続きは、7月17日から始まります。
IPP(買電事業)は、発電の燃料として、残し(滓)油を燃やす可能性もあり、その内容によっては、大気汚染など重大な影響をもたらしかねません。
関係地域の住民と全国の運動の連携・協力が必要です。
方法書の手続きは、環境影響評価法の第5条から10条にもとづく「方法書の作成」ならびに通産省令第3条によるものです。
事業者は、方法書を作成し、公告及び縦覧を行います。
そして、これについて環境の保全の見地からの意見を有する者(全国どこの地域の者でもよい)は、環境の保全の見地からの意見を提出(縦覧機関は1月間。意見提出機関は、縦覧機関プラス2週間)できることとなっています。
事業者はこれを受け、意見の概要を関係都道府県知事および市町村長に送付し、知事は市町村長の意見を聞いたうえで、事業者にたいし環境保全上の意見を提出することとなっています。
<お願い>
JNEP(公害・地球懇)は、現在、方法書入手の努力を行っていますが、近県で関心のある方は、方法書またはそのコピーの入手のご協力をお願いします。
方法書入手後は、その内容の検討や意見の提出などについての共同作業も必要です。連携して取り組みたいものです。
JNEPへの連絡は「ご意見コーナー」からお願いします。
●出光興産愛知製油所 愛知県知多市南浜町11
●出光興産とは
JNEP(公害・地球懇)は出光興産愛知製油所のIPP(売電事業)方法書を入手し、検討を行った結果、8月18日、次の意見書を出光興産愛知精油所に提出しました。
出光愛知製油所第3号発電設備増設計画
環境影響評価方法書に対する意見
〒160-0034
新宿区新宿1ー9ー15 サニーシティ新宿御苑10F
TEL.&FAX. 03-3352-4938
公害地球環境問題懇談会 代表 清水 誠
1.燃料について
方法書によると、燃料は重質重油を使用することになっている。実質的にはC重油を使うことになるのか?この重油には硫黄や窒素が多く含まれていて、再び四日市大気汚染公害の被害を繰り返す恐れはないのか見解を示してほしい。
また、この重油を1トン燃焼させるとき、地球温暖化の主因である二酸化炭素は、何トン排出されるのか示してほしい。
最近の火力発電所は液化天然ガス(LNG)を燃料にしているが、ここでは何故LNGを使用しないのか説明してほしい。
2.大気汚染について
2.1.フュミゲーション(いぶし現象)の調査
海岸線に立地される本発電所の排煙による大気汚染に重大な影響を与える気象現象として、いわゆる〃いぶし現象〃が挙げられる。夏季の晴天日には午前8時ころより海風が吹きはじめると、海岸線を境に海上と陸上の表面粗度および熱的条件が変化することにより、低層大気中に性質の異なる二つの境界層が形成されるようになる。一つは海面上の性質を持つ内部境界層であり、他は陸上の地面付近で発達する対流混合層である。発電所の高煙突から排出された排煙は、初めは乱れの少ない海面上の性質を持つ内部境界層中を拡散するが、内陸に進むにしたがって、混合層内に進入し、ここで発達する激しい対流により地面付近へ逆流して、あたかも〃いぶし現象〃のように高濃度汚染が出現する。
方法書ではこの現象の調査について何も触れられていない。ただ、1日8回、1,500mまで高層風だけを観測する計画が示されているが、この現象を調査するためには、5月から9月までの間、少なくとも午前中に、気温、湿度、風向、風速などの気象要素を50m〜100m間隔で、毎時観測する必要がある。
2.2.大気汚染の予測方法について
2.2.1.適用する大気拡散モデル
方法書は、「硫黄酸化物総量規制マニュアル」および「窒素酸化物総量規制マニュアル」に記載されている大気拡散モデルを使用すると述べている。これらのモデルは、いわゆるプリューム・パフモデルと呼ばれ、古典的なモデルである。 それは煙突からの汚染物質の排出量や風向・風速が時間とともに変化しない定状状態の仮定の下に導かれたモデルである。また、力学的、熱的条件が一様な平坦な地面が無限に広がっているという仮定のもとに、1本の煙突から排出されたガスの拡散状況を求めるモデルである。
アメリカのEPA(環境保護庁)が、1993年2月に改訂して推奨している拡散モデルの中に、「Offshore and coastal dispersion model」(内務省 鉱物資源管理局)がある。このモデルは、〃いぶし現象〃にも対応するモデルと言われているので、このモデルをアメリカから取り寄せて適用することが望ましい。
2.2.2.野外拡散実験の必要性
ユニバーサルなプリューム・パフモデルあるいは、アメリカのモデルを適用する場合、問題になるのは、発電所の建設予定地において、拡散式の拡散パラメーターをどう選ぶかである。このためには、現地で種々の大気安定度別に野外拡散実験を行った上で、垂直、水平方向の拡散パラメーターを決定することが必要である。
2.2.3.風洞模型実験について
野外拡散実験とともに、1/1000程度の現地模型を拡散風洞内に置いて、海面と陸面の力学的、熱的条件を設定して、風洞実験によって煙の拡散状況を調査することが必要である。この際、自然大気中の乱流現象との相似則が保たれることが前提になる。
2.2.4.バックグラウンド(B.G.)濃度の予測
方法書にはバックグラウンド濃度の予測に関しては何の記述もないが、これは大気汚染予測の根幹をなす重要な要素である。どのような方法でB.G.濃度を求めるかを記述して貰いたい。
2.2.5.最大環境条件での予測
東京電力の品川火力発電書の環境影響評価書(1996年2月)では、大気汚染防止法で決められている気象条件での予測が行われているが、方法書にはこの点の記述が見当たらない。これは被害を受ける側にとっては重大な環境条件であるので、ぜひ実施してほしい。
2.2.6.短時間予測について
建屋との関係で、強風時に煙突のすぐ近くにダウンウオッシュやダウンバーストが発生して思わぬ高濃度汚染が発生することがある。このようなケースを想定して1時間予測を実施すべきである。
2.2.7.大気汚染予測の評価について
大気汚染の環境への影響の評価に当たっては、「ヒトの健康への影響がではじめる濃度」を基準にして評価してほしい。そのためには、予め、影響対象地域内のいくつかの地区で大気汚染の健康影響の疫学調査を実施することが求められる。
3.生態系への影響調査
これまでは、動植物の生息環境への影響をそれぞれ別個に調査してきたが、環境影響評価法の通産省令第9条関連の別表5の「手法の簡略化および重点化」で述べているとおり、生態系については、上位性、典型性、特殊性に留意すべきべきである。また、生息環境の保全とか、種の多様性の程度あるいは湿地の保全といった特定の種に限定しない生態系全体の保全を考えるべきである。
-- 以上 --
意見書提出先:〒478-8555
愛知県知多市南浜町11番地 出光興産株式会社
愛知製油所 総務課 TEL.0562-55-1111 FAX.0562-55-1135
●ずさんアセスが再開(秋田・成瀬ダム)
建設省は11月25日、秋田県の成瀬川上流に計画している多目的ダム「成瀬ダム」(総事業費約1500億円、総貯水量約8000万トン)のアセスを約1年ぶりに再開する。同ダム事業審議委員会の環境・地質等調査専門委員会(委員長・丸山孝彦秋田大学教授)が「陸上植物などの1年間にわたる追加調査の結果が評価できる」と判断したことを受けたもので、12月8日、準備書の公告・縦覧を行い、アセス手続きを再開する。このダム計画は97年10月に、準備書に大量の誤りが見つかり、ずさんだとの指摘で、全国で初めてアセス手続きが中断していたもの。 この事業はNGOのリスト、「無駄な100の公共事業」にあげられている。
