(99/4/24 更新)

アセス法制度とは

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これまでのアセスとこれからのアセス(藤田敏夫)
Q&Aアセス法(通読すれば簡単なアセス法解説となります。)
1 日本アセスの特徴 12 環境庁長官意見
2 対象事業 13 自治体アセス
3 スクリーニング 14 アセスマニュアル
4 評価項目 15 遅れた法制化
5 計画・政策アセス 16 発電所アセス
6 代替案の扱い 17 関連制度整備
7 環境保全対策 18 対象事業リスト
8 事後評価制度 19 先進国の特色
9 住民参加 20 自治体先進例
10 準備書 21 閣議アセスとの違い
11 審査制度 22 制度改善にむけて



これまでのアセスとこれからのアセス

公害・地球環境問題懇談会 幹事 藤田敏夫

《これまでのアセス》
 これまでの環境アセスメントは、事業の実施寸前になって、事業者が予め決められた調査項目について、調査・予測してきました。項目は、大気汚染、騒音・振動など典型七公害と動物、植物及び景観に限られていました。私は、これまで数十の環境アセスに係わってきましたが、どのアセスもみな「金太郎飴」で同じことを調査し、予測していました。事業の種類や立地条件などで調査項目は当然異なるものです。
 また、事業の実施計画が固まってからアセスを行なうのでいくつかの代替案について検討することができません。したがって、アセスの結論はみな判で押したように、「環境に与える影響は少ないと考えられる。」となって開発に免罪符が与えられてきました。被害を受ける住民の参加もきわめて不十分でした。国のアセスでは意見書提出が1回だけで、しかも限られた地域に住む人だけしか出せません。公聴会も行なわれませんでした。東京都をはじめ多くの地方自治体ではより進んだアセス条例や要綱を作ってきました。この場合には、意見書提出が2回、公聴会が1回ありました。

《アセス法によるアセス》
 スコ−ピング(方法書)の導入で事業計画のやや早い段階から実施します。そしてアセスの手法を予め住民の意見を聴いて決めることにしました。したがって、今までのように「金太郎飴」ではなく事業によって最も重要な項目を重点的に調査・予測することになります。しかし、実施主体は依然として事業者です。
 代替案の検討を評価の際に検討することにしていますが、これでは遅いので、はじめから複数の計画案について検討結果を住民に示すことが必要です。
 住民がアセスに参加する機会は、自治体と同じく意見書提出2回になりました。そして公聴会が1回開かれます。また意見書は全国民誰でも提出できるようになりました。 アセスの予測結果が正しかったかどうかを検証するために事後アセス制度があります。アセス法では、実施義務はなく事業者の自主的判断に任されています。
 調査・評価項目は、典型七公害と生態系、景観及び自然とのふれあいの場、地球環境問題として、地球温暖化、エネルギ−問題などが追加されました。これまでは植物、動物としてバラバラに調査が行なわれてきたため、たとえば、オオワシなどの絶滅が心配されている鳥類などが調査されないことが往々にしてありました。また、温暖化やオゾン層を破壊するフロンガスなどの排出が対象になっていなかったのが、アセス法で新たに取りあげらるようになりました。

《これからのアセス》
 アセス法もスコ−ピング手続きで、事業のやや早い段階からアセスをはじめますが、基本的には事業アセスです。事業の計画・構想段階、たとえば、政策立案・基本構想・基本計画(全国総合開発計画、長期経済計画、長期国土計画など)及び予算案についてもアセスの対象にする必要があります。
 東京都の開発計画については、東京都は『総合環境アセスメント制度』の試行を始めました。そして環境庁でも検討会を設置して来年までに答申が出される予定です。 実施主体ですが、環境庁や各都道府県に第三者機関として環境アセス審議会を設けて、この会がアセスを実施することが望ましいと思います。
 代替案の検討は、事業を行なわない場合を含めて複数の代替案について比較検討を義務づけなければなりません。諸外国では皆このようにしています。。
 住民参加もアセスの初期段階から住民と事業者が対等の立場で環境への影響を最小にする計画案を検討できるシステムにする必要があります。
 事後アセスの実施は、工事期間中及び供用開始後の適切な時期に評価書の結果を検討できる方法で実施することを事業者に義務ずけるようにします。
 最後に、調査・評価項目は、アセス法に加えて、事業の費用対効果、社会的、経済的影響、関係住民の健康への影響などを加えることが必要です。
(以上は藤田敏夫さんがJNEP幹事の資格で環境事業団主催の『環境アセス講座』98/12で発言された要約です)


Q&A アセス法

Q 日本の環境アセスメントでは相当な環境悪化が明確な事業でも計画が変更されることはまずありませんし、「アワセメント」などと批判されます。一方、欧米のアセスでは数百回の議論を経て事業計画が中止になったり大幅に変更される例があると聞きます。日本の制度の特徴は何ですか。
A 以下のような特徴があります
・本来、事業を実施するか否かの意思決定の場であるはずが、事業実施を前提とした「アワセメント」で、しかも問題がないかをコンサルタント会社が調査する「マニュアルアセスメント」になっている。
・住民参加が極めて不十分で、意見を取り入れて計画を変更することはまずありません。
・審査は事業者と事実上一体の開発官庁の審議会で行われ、中立性が保証されない。
・審査や事後の評価がいい加減か全くなされないため、技術の過大な進展や経済活動の過小見積もりで「影響なし」という結果を強引に出し、後で結果が違うことが判明しても責任が問われない。

Q アセスの対象事業は何ですか
A 国が自ら実施、あるいは許認可などで関与するものとされています。道路やダムなどの建設、干拓・埋め立てなど国や公団が行うもののほか、民間の行う発電所や鉄道、廃棄物処分場の建設などもアセスの対象です。ゴルフ場などのリゾート施設は国のアセス法の対象事業になりません。具体的事業は18にまとめました。

Q 事業に対する環境アセスメントの場合、自然環境への影響はたとえ同種の事業でも立地条件や周囲の自然環境、事業の規模などにより様々です。一方で全部の事業に対して詳細なアセス手続きを義務づけるわけにいかないのも事実です。このために環境アセスではどのような仕組みがあるのですか。
A 事業が環境に与える影響を事前に簡単に調べ、詳細な評価手続きに移行するか否かを事前に簡易的に評価する手続きがとられています。そうした手続きをスクリーニング(ふるいわけ)と言います。
 日本では従来、事業毎に環境アセスの対象とする最低規模が決まっていて、全国一律に周囲の自然環境も考慮することなく×ha以上は手続き実施、×ha以下は免除としていました。こうした機械的な区切り方は世界的にも例がない制度で、多くの問題を発生させました。廃棄物処分場の場合、事業の平均(3ha)に対し、対象規模が100haと著しく大きく、また事業者が事業を2つに分割して申請してアセス逃れを行うなど問題が多く、全体の97%の事業がアセス手続きを受けていませんでした。
 アセス法制定により、事業規模別に全事業は、無条件にアセス手続きを行う「第一種事業」と、簡単な審査をする「第二種事業」、無条件に審査を行わない「その他の事業」とに分かれました。「第二種事業」に対し「スクリーニング」による簡易手続きが決まりましたが、「第二種事業」の規模は「第一種事業」のおよそ75%となり、埋立や廃棄物処分場など、事業によっては依然として大半の事業が無条件にアセス手続きの対象外になっています。また、スクリーニング手続きは事業者中心に行われ、住民参加手続きすら規定されていないなどの問題があります。

Q 事業に対する環境アセスメントの場合、自然環境への影響はたとえ同種の事業でも立地条件や周囲の自然環境などにより様々で、多くの項目を評価することが求められます。一方であらゆる項目の評価を義務づけるわけにいかないのも事実です。環境アセスでは評価項目をどのように定めるのですか。
A 環境影響評価にあたっては、検討項目が広域で多岐にわたればわたるほど、膨大な労力と時間と経費が必要になり、環境影響評価も大部なものとなります。このため、検討すべき問題の範囲を確定するために、事前に、関係する諸機関や環境保護団体などと十分に相談して、環境評価の問題点を絞って行く手法が必要です。これを「スコーピング」と言います。スコーピングを行うことによって、重要でない評価項目については、評価書の作成から除外し、余分な労力を軽減することができます。また、関係者がスコーピング加わることにより、当事者間の余分な紛争の回避にもつながります。
 アセス法制定前の日本の環境アセスメント制度にはスコーピング制度は導入されておらず、環境影響評価検討項目は行政が一方的に決定し、調査に当たるコンサルタント会社がその地に生息しない生物がいないことを確認して調査票に書き込むことを義務づける一方で、その地特有の生物を調査・評価せずに環境影響を評価するというお粗末なものでした。
 アセス法ではスコーピング手続きを導入し、国民意見を求める手続きを規定しました。ただし、この判定は審査機関ではなく事業者に任されるなど多くの問題を残しています。

Q 事業だけでなく、国家計画や政策自体のアセスメントはないのでしょうか。
A 計画アセスメントとは、大規模開発計画の立案の段階で、行政が独自に、環境に及ぼす影響を評価し、もし、その計画が環境に重大な影響を与える場合には計画そのものの変更を求める制度です。アメリカの「国家環境政策法 」(1969年制定)では、開発の計画段階での市民参加と情報公開を保証した計画アセスメントが制度化されています。
 日本の環境アセスメント制度では、開発計画が確定した後に、環境アセスメントが行われるために、住民の要求などで計画そのものが変更されたことはほとんどありませんでした。それどころか、環境アセスメントが、「環境アワセルメント」と皮肉られるように、開発を前提とした、「免罪符」的なものになっている実態も指摘されています。そこで、我が国の制度にも計画アセスメントの導入の必要性が提起されているわけですが、アセス法にもこうした規定は盛り込まれていません。環境庁は1997年になって計画アセスを目指した検討を始めることを発表しています。
 自治体では、1991年12月に制定された川崎市環境基本条例の中で「環境調査制度」が導入され、計画アセスメントに近い制度として注目されています。また、1997年には東京都が計画アセスメントを実施すると表明、多摩地区の大規模開発である「秋留台開発」に適用することを発表しています。

Q アセス制度では代替案の比較検討を通じて環境負荷の少ない事業を選んでいくことが重要と言われます。日本の制度ではどうなっていますか。
A 欧米の事業アセスにおいては複数の案を出し、そのなかに事業を中止する選択肢も必ずいれ、その中から環境負荷の一番小さい案を選択する複数案提示の義務づけが一般になされています。代替案検討はアセス法の根幹をなす重要な規定です。例えば、事業者がバイパスの拡張を求めて環境アセス手続きに入ったところ、代替案追加により、バイパスをつぶして旅客・貨物鉄道を建設する案が最有力になり、事業が根幹から見直されるということが可能になれば、事業者も真剣に環境アセス手続きを考え、そもそも環境悪化が著しいことが誰の目にも明らかな事業計画は一切出せなくなります。
 日本ではこれまで代替案提示の義務がなく、環境基準達成の有無だけで評価がなされてきました。このため、例えば大気汚染の場合、環境の良好な地域でも環境基準の限度いっぱいまで汚染が許されることになり、またよりよい手法をとることにより環境負荷を押さえようというインセンティブが事業者に働きませんでした。
 日本でも1997年12月に制定されたアセス法の政令で評価書に、「環境保全措置」に関する代替案を記載することが示されました。本来は事業全体に対する代替案が検討されるべきですが、アセス法でも「環境保全措置」に関するものに限定されています。例えば道路にするか鉄道にするか、そもそも事業を中止するかというような代替案は検討されず、道路をつくることは前提とした上で、大気環境や騒音を防止するためにどういう措置が適当かを比較検討するというものです。何の検討もなかった従来の制度よりは一歩前進ですが、求められていた代替案検討よりかなり後退したのは間違いありません。

Q 貴重な生物の保全の際に、事業者が他所へ移動させる措置をとるのでので大丈夫、などとすることがあります。こうした環境保全措置についてはアセス制度ではどのように扱われるのでしょうか。
A 諸外国の環境アセスでは事業者の行う環境保全対策について詳細な規定を持つ制度があります。最も有名なのはアメリカ環境保護庁のNEPA(国家環境政策法)で、(1)影響の回避、(2)影響の最小化、など優先順位がついており、最後が(5)代償的措置(生息地の移転など)です。代償的措置をとる場合については回避や最小化が不可能なことを事業者が示さなければなりません。 日本でもアセス法の政令でこのような優先順位が規定されました。

Q オランダなどの環境アセス制度では事後評価制度があると聞きます。事後の評価はどういう意味があるのでしょうか。
A 事後評価は、工事終了後あるいは供用後に環境負荷を実際に測定・評価する手続きです。負荷が事前の評価以上ならば当然追加の対策をとって環境負荷をさげなければなりませんし、事前の評価がどれほど厳密あるいはずさんかのチェックにもなり、こうした知見は今後のアセスメントにも役立てられます。
 日本では長い間事後評価が行われず、このために、例えば道路アセスでは過小な交通量予測、過大で裏付けのない自動車排ガス対策技術進展の見積もりなど、でたらめな評価がなされてきました。最近、東京都事後調査を行うようになり、道路アセスで予測オーバーが続出しています。
 今回のアセス法でも事後評価は盛り込まれず、事後のモニタリング方法について評価書に記載することだけが決まっただけです。事後評価がきちんとなされ、その評価結果が事前の予測を超えれば追加の対策をとってかならず事前予測以下に下げる制度が必要です。過激に聞こえますが、本来、予測がずれたら対策を義務づけるのは当たり前のことです。

Q アセスを保障する鍵の一つに住民参加がありますが、日本ではほとんど参加できていないように見えます。アセス法でかなり前進したのでしょうか。
A 環境アセスメントは事業の是非についての意思決定の根幹であるため、本来住民参加どころか、住民の意思を反映しないようなアセスはあり得ません。住民は毎日周囲の環境に気を配っていますから、科学者の知らないような事実も沢山知っていることがあり、住民の意見を「地域エゴ」、官庁のブレーン学者の意見こそが「科学的意見」というのは大きな間違いです。
 北米系のアセスでは公聴会が裁判形式で事業者及びそれを支援する科学者と、住民及び環境団体・それを支援する科学者とが対等に対峙し、審査委員がレフリーをつとめます。住民は証拠に基づいていればすきなだけ意見を述べることができます。事業者の準備書を書いた科学者が住民の厳しい追及にあうこともしばしばです。事業者は疑問に答えなければなりませんから、予定された日数よりのびることもしばしばです。さらに、住民の活動を支援するためにカナダの連邦政府の環境アセスメントではきちんとした自主調査を行う住民団体に連邦政府から補助金が支出されます。
 しかし、日本のアセス制度は意思決定と関係なく、これまで住民の意思を無視したアセスメントが行われてきました。正式な意見聴取手続きは書面を通じた意見書のみ。住民との接点は公聴会でなく「説明会」とされ、住民の質問にはほとんど答えず、場合によっては建設業者や事業者の社員を動員して賛成意見を述べさせ、事業者が時間が来ると裏口から逃げだし、住民の意見聴取手続きはもう終わったと開き直ることが許されるのは日本だけではないでしょうか。
 アセス法では新たにスコーピング手続きに対する住民参加が規定され、また、従来は近隣住民に限られていた意見聴取を、住所の限定を取り払い、誰でも意見を言えるようにしました。
 こうした一部前進の反面、一部自治体の行っていた住民参加手続きができなくなる可能性があります。
 また、意見書が反映される保障はまったくありません。横浜の道路計画では百万通の反対意見が寄せられましたが、「見るべき意見がない」として予定通り道路建設が進められたケースもあります。

Q10 住民が事業者の見解を知るのに苦労したという話をよく聞きますが・・・
A アセス準備書は住民が意見を述べる際に必要なものです。諸外国ではこんな書類は当然のように公開され様々な手段で得ることができます。例えばカナダの環境アセスメント庁はインターネットでこうした情報を流しており、私たちも(もちろん英語ですが)情報を24時間得ることができます。
 ところが、日本では2週間の公告縦覧期間中に役所の廊下などで閲覧しなければなりません。コピーも許されません。夜間の閲覧はできないところがほとんどです。公告縦覧が終わった後で発電所アセスに関して公開されていた書類の内容を通産省に聞いたところ、公開できないと断られたという例もあります。
 アセス法や政令では準備書の公表方法までは記載がありません。運用が改善されるか注視し要求を強めていかなくてはなりません。

Q11 環境アセスの審査が中立でないのは日本くらいと言われます。日本の審査の特徴は何ですか。
A アセスの審査は本来中立の第三者機関が行う非常に厳しいもので、当然のことながら開発の可否はわかりません。欧米の第三者機関に住民や環境NGO、その推薦する科学者が参加していない場合もありますが、ほぼ公正に審査を実施しています。北米系のアセスでは前段階にある公聴会が裁判形式で事業者及びそれを支援する科学者と、住民及び環境団体・それを支援する科学者とが対等に対峙します。住民は証拠に基づいていればすきなだけ意見を述べることができ、審議委員がそれを注視してどちらに分があるか判断します。非常に進んだ制度に見えますが、アセスの趣旨をふまえれば当たり前のことです。
 ところが、日本では審査は開発官庁の審議会でなされます。ここには推進側利益代表や官庁のブレーンの学者はたくさんいますが、環境の専門家もほとんどいませんし、市民代表もいてもごくわずかです。ですから、アセス審査はほぼ間違いなく通ります。
 一部の自治体では環境分野の専門家をそろえたアセス審査会があり、科学的知見をもとに審査が行われていましたが、残念ながら事業を全て停止させるような権限がありませんでした。
 アセス法でも基本的にこうした構造はかわりません。むしろ、自治体のアセス審査制度が開発官庁の審議会に圧迫されないよう、厳しい監視が必要です。

Q12 開発官庁の審査機関がお墨付きを与えた後は何の手続きもないのでしょうか。
A アメリカの制度では審査後に環境保護庁がさらに意見を述べる制度を設けています。
 日本でも、法制定前の「閣議アセス」において環境庁長官が意見を述べる制度がありましたが、開発側から意見を求められない限り意見を言えないという大きな制約がありました。法律制定により、こうした制限は除かれましたので制度としてはわずかながら前進したことになります。
 なお、通産省の電気事業法で行われる発電所アセスでは環境庁長官の意見は審査機関の結論前に聞くことになっていますので、審査機関が結論を出した後は修正のしようがありません。

Q13 先進的な自治体はすでにアセス条例や要綱を整備していますが、法律制定によって自治体のアセス制度は影響を受けるのでしょうか。
A 法は自治体条例を尊重する旨の規定がありますが、「法に反しない限り」などというただしがきがついています。住民参加規定や専門家による制度審査を中心に、自治体条例でこれまで行ってきた丁寧な意見聴取や審査ができるよう、運動を強化してゆく必要があります。

 環境庁が99年4月18日に公表した自治体のアセス条例の制定状況では、44の都道府県および政令指定都市が独自の環境アセス条例を制定し、大半がアセス法に合わせて99年6月施行を予定しています。
 アセス法制定前では、条例制定自治体は6都道県と川崎市だったことから大幅に制定がすすみました。
 内容的には、新たに制定された条例では、アセス対象事業として廃棄物処理施設など地域環境に密接にかかわる開発を対象としていること、また公聴会など住民参加の手続き規定を設けていることが特長です。
 しかし13県がなおアセス要綱のままで、アセス手続きを何も持っていない佐賀県と札幌市も含め、条例化を検討しています。
 またアセス法と自治体アセス条例との相違については、アセス法が住民参加について、意見書提出や説明会の参加に限定しているのにたいし、条例では埼玉県など38自治体で、住民が意見を述べる公聴会の開催を規定。またアセスの実施方法や評価書の作成で、第三者による審査会の意見を聞く規定を44すべての自治体が設けています。
 さらにアセス法では、事業に着手するまでの手続きにとどまるが、すべての自治体条例では、事業開始後の調査と、事後報告書提出を事業者に義務付けています。
 このほか条例では、アセス法対象外の小規模事業(小規模道路・ダム、廃棄物処理施設、ゴルフ、スキー場、下水道処理場、土石採取など)も対象としている自治体が多くなっています。

Q14 環境アセスメントで技術指針を持つのは日本くらいと言われます。技術指針の特徴は何ですか。
A コンサルタント用の「マニュアル」と言ってよいでしょう。事業者がコンサルタントに任せる「マニュアルアセス」は日本だけだからです。欧米の多くの国では環境アセスメントは意思決定の重要なプロセスですから、この事業が必要かどうかを真剣に議論します。ところが日本の制度は意思決定に関係なく、なんら決定権限のないコンサルタント会社が実施します。そこで、マニュアルが必要となります。
 技術指針は多くの数式が使われていることからわかるように一定の技術的成果を使って作成され、一見科学的に見えます。ところが、本来その式が成り立たないようなところにも平気で適用されます。例えば大気汚染の拡散式は流体力学の知見に基づいて作成されますが、平野と山間では流れの状態が異なることくらいは誰でもわかります。しかし、建設省の技術指針は山間でも平野の式を用いることになっています。このように、技術指針は科学的とは到底言いがたい内容で、事業の実施を前提に書類を整えることを目的にした「アワセメント」の手法となっています。

Q15 アセス法成立がOECD(経済協力開発機構)加盟国中で最後と聞きます。なぜこんなに遅れてしまったのでしょうか。
A アセス法制化の議論は日本でもかなり前からあります。1972年には国連人間環境会議で大石環境庁長官がアセス法制化を発言しました。中央公害審議会(当時)がアセス法制化の答申を出したのは1975年です。これを受けて環境庁は1977年にアセス法案を準備、以後1983年までに4回も国会上程を試みましたが、財界や開発官庁の反対でつぶされ、1984年に環境庁は法制化を断念。閣議決定に基づく要綱で運用することになったわけです。この間に、他の多くの国が次々にアセス関係の法令を準備し、アセス法のない国はOECD諸国の中で日本だけになりました。日本で法制化がなされたのは1997年のことで、施行は1999年4月からです。

Q16 発電所アセスはアセス法では行われないのですか。
A 1997年の国会にアセス法案を上程する際に通産省は12年前にアセス法案をつぶした時と同様に最後まで抵抗、この課程で発電所のアセスを通産省の電気事業法で実施することで妥協が図られ、アセス法とほぼ同時に電気事業法改正案(環境アセスメント関連条項の追加)が行われました。手続きなどはほとんど同じように見えますが、実際の運用を決める政省令は全て通産省が握ることになります。通産省が環境を理由に発電所建設にブレーキをかけることは考えにくいので、環境庁のアセス法の場合と比べ、現場では大きな違いになる可能性があります。

Q17 アセス法ができたので、もうこれ以上公共事業による環境破壊はありませんか。
A アセス法自体は「枠組み」だけを定めた法律です。細部は政令や省令で決められ、その内容は霞ヶ関の密室協議で決められます。1997年11月にアセス法関連の運用の規則のもとになる政令が策定されました。環境庁がやれるのはここまでで、1998年6月頃までに各省庁はこれに基づいて省令や技術指針を策定します。今後も監視と国民サイドからの意見反映が必要です。

Q18 アセスの対象事業や、その規模を教えてください
A アセスの対象事業は国が自ら実施するもの、あるいは許認可などを通して関与するものがあります。道路やダムなどの建設、干拓・埋め立てなど国や公団が行うもののほか、民間の行う発電所や鉄道、廃棄物処分場の建設などもアセスの対象です。ゴルフ場などのリゾート施設は国のアセス法の対象事業になりません。事業の種類や規模は以下の通りです。

<対象事業一覧>         
(*は閣議アセスからの主要変更点)

                 第一種事業        第二種事業

1 道路 (*大規模林道を新規追加)

 高速自動車国道     すべて
 首都高速道路等     すべて(4車線)
 一般国道         4車線10km       7.5km以上10km未満
 大規模林道        2車線20km       15km以上20km未満

2 河川 (*ダムについては、第一種事業の規模要件を閣議アセスの200haから100haに引き下げるとともに、二級河川に係るものを新規追加。堰については、建設省所管以外の堰…工業用水堰、上水道用水堰、かんがい用水堰…を新規追加)

 ダム           湛水面積100ha      75ha以上100ha未満
             湛水面積100ha       75ha以上100ha未満
 湖沼水位調節施設   改変面積100ha       75ha以上100ha未満
 放水路         改変面積100ha       75ha以上100ha未満

3 鉄道(*普通鉄道、軌道…普通鉄道相当、を新規追加)

 新幹線鉄道(規格新線含む) すべて
 普通鉄道             10km以上     7.5km以上10km未満
 軌道(普通鉄道相当)   10km以上    7.5km以上10km未満

4 飛行場    滑走路長   2500m以上     1875m以上2500m未満

5 発電所(*新規追加。)

 水力発電所           出力3万kw以上  2.25万以上3万kw未満
 火力発電所(地熱以外) 出力15万kw以上  11.25万以上15万kw未満
 火力発電所(地熱)    出力1万kw以上  7500以上1万kw未満
 原子力発電所             すべて

6 廃棄物最終処分場     30ha以上    25ha以上30ha未満

7 公有水面埋立・干拓     50ha超     40ha以上50ha以下

8 土地区画整理事業     100ha以上   75ha以上100ha未満

9 新住宅市街地開発事業   100ha以上   75ha以上100ha未満

10 工業団地造成事業     100ha以上   75ha以上100ha未満

11 新都市基盤整備事業    100ha以上   75ha以上100ha未満

12 流通業務団地造成事業   100ha以上   75ha以上100ha未満

13 宅地造成事業  (「宅地」には、住宅地、工場用地が含まれる。)
   環境事業団            100ha以上   75ha以上100ha未満
   住宅・都市整備公団     100ha以上   75ha以上100ha未満
   地域振興整備公団     100ha以上   75ha以上100ha未満

14 港湾計画       埋立・堀込み面積300ha以上

Q19 諸外国の先進的法律の特徴は何ですか
A 諸外国のアセス制度には次のような特徴があります

住民参加・自主調査

・日本ではコンサルタント業者の調査が全てとされます。ところが詳しく調べてみると常磐自動車道の調査のようにずさんでしかも科学式の使い方の間違っているような評価がなされていることがあります。一方、地元で創意工夫された住民による自主調査は無視されています。
・カナダの制度では住民の調査でも科学的であれば評価書に取り入れられますし、調査を行う住民組織には補助金が出ます。日本でもこうした制度が取り入れられるべきです。

住民参加・意見書
・意見書を出しても反映されなければなにもなりません。住民意見が確実に反映される仕組みとすべきです。
・アメリカではどこの誰がどんな意見を出したのか全て見ることができます。しかし、日本では業者が勝手にまとめてしまい、個々の意見は見られません。全ての情報が公開されるよう制度を改めるべきです。

住民参加・公聴会
・公聴会は住民参加により徹底した討議を行うものとすべきです。公聴会を有効な議論の場として活用するためには裁判のような対審構造にし、住民と環境NGO、環境の専門家が原告、事業者とアセス調査業者、協力した学者・研究者が被告、後に述べるアセス審査機関の委員が裁判長をつとめるべきです。
・公聴会の回数や時間を区切るのは間違いです。住民の疑問が残る限り、何度でも公聴会を実施すべきです。イギリスやカナダのアセスメントでは何十回もの公聴会が開催され、手続きに1年以上かかることもあるそうですが、その過程でよりよい案が提示され、一方で問題の多い事業は変更または中止させられて行くわけです。日本のように、説明会を実施したという事実だけを求めるようでは困ります。
・公聴会では評価書を書いたアセス調査業者や学者・研究者も住民の求めに応じて説明すべきです。例えば事業がある生物に影響がないという場合には、どの文献、あるいはどういう経験に基づきそうした判断がなされたのかを知る必要がありますが、説明者の多くは、文献を知らなかったり、文献に記載された生物種がその土地の生物種と同じか違うかもわからないケースが多いと思われます。


Q20 自治体の先進的制度を紹介してください
A
 ・進んだアセス条例
   川崎市
  代替案の検討を条例で明記
  説明会の開催義務
  (関係住民の要求があれば)公聴会の開催、意見時間の保障
   東京都
  公聴会の開催
  アセス法前の国の「要綱アセス」では事業者の評価書に対して一度しか意見が述べられないが、都のアセスでは2度意見が述べられる。事業者はまず「準備書」を示し、住民が意見を述べる。それをもとに事業者は「評価書」を作成、住民が意見を述べる。
  事業者は予め提出した事後調査計画書に基づいて事後調査報告書を作成する義務
  未着工のまま5年間経過した事業に対し、環境アセスメントのやりなおしを規定

    ・その他
   北海道「時のアセス」
 環境アセスメント制度ではありませんが、北海道は公共事業に対し、一定時期が過ぎても着工できない場合に事業実施の是非を見直す「時のアセス」制度を全国ではじめて採用することを決めました。
 アメリカなどでは一定期間に着工ができないと自動的に事業がストップされる「サンセット方式」が採用されてきましたが、日本は一部自治体の条例を除いて事業中止どころか環境アセスメントのやりなおしも必要なく、事業を継続できる開発優先の制度になっています。30年前の都市計画決定に基づき、環境アセスメントも一切なく道路建設が始められる例も全国いたるところで見られます。
 北海道の「時のアセス」は「千歳川放水路」など極端な環境破壊をもたらすだけで地元にもメリットがほとんどない事業の清算に当面適用され、今後対象事業が拡大していくことが期待されます。一方、環境影響を評価すること、住民意見を反映する手続きを定めること、公正な審査を行うための機関を設けることなどが今後の課題です。

   川崎市の「計画アセス」(川崎市環境基本条例)
 川崎市は、これまでの事業に対する環境影響評価だけでなく、政策や開発計画自体の環境アセスメントを行う「計画アセス」制度を「川崎市環境基本条例」に盛り込んでいます。
 ただし、この規定は川崎市の政策に限られるので、川崎市内で行われる大規模開発や公害道路建設など国や県の環境破壊的な計画への対処などが大きな課題になっています。

   東京都「計画アセス」(運用)
 東京都は、これまでの事業に対する環境影響評価だけでなく、政策や開発計画自体の環境アセスメントを行う「計画アセス」制度を導入することを決めました。
 都は当面条例化せずに、運用で実施し、適用第一号は多摩地区の大規模開発である「秋留台開発」になることが決まっています。
 今後は都の関与する全ての経済計画、開発計画に対する計画アセスの制度化をいかに図り、開発政策に対する環境政策優位の体制をつくるか、現実に道路建設や臨海部開発を中止させられる制度をどうつくるかが課題です。

21 閣議アセスと法手続きの違いはどこにありますか
いわゆる閣議アセスから前進した点は次のような事項です

・スクリーニング制度を取り入れたこと
・スコーピング制度を取り入れ、国民の意見聴取を規定したこと
・代替案(環境保全措置などに限定)、環境保全措置の順位、事後モニタリングを取り入れたこと
・住民意見の範囲をスコーピング段階に拡大し、住所の範囲を撤廃しだれでも意見を述べられるようにしたこと
・開発官庁審議会の評価結果に対し、環境庁長官が常に意見を述べられるようになったこと

22 アセス制度で今後強化すべき事項にどのようなものがありますか
A 1999年6月に施行された環境アセスメント法は残念ながら十分機能する制度になっていません。
おおむね次の事項について今後、制度を改める必要があります。

●調査・評価
・スクリーニングは規模で一律に切捨てずにいったん全ての事業を対象にすること。
・代替案を義務づけること、不十分な場合には住民が追加し、それについても検討を義務づけることが必要です。
・環境保全措置は、影響の回避、影響の最小化を基本とし、代償措置を用いる場合には「影響の回避」、「影響の最小化」ができない理由を示すこと。

●情報公開・評価書
・事業者の評価書を公開するのは本来情報公開というに値しませんが、日本の制度ではこんな基本的データを見るのにも役所の廊下で平日の昼間に閲覧し、コピーもできないなど苦労しなければなりません。事業者の評価書は当該自治体の住民には全数配布とし、また関心のある者には希望に応じて事業者の責任で配送される制度とすべきです。また、インターネットによるアクセス、ファックスサービスなどを制度化、義務化すべきです。
・事業に関連する知見の豊富な専門家、環境NGOには求めがなくても評価書を送付し、意見を求めることが必要です。

●情報公開・環境情報
・地域の気象データ、規制物質のデータ、生物の生息状況などのデータは基礎データとしてを公開することが必要です。
・地域の交通量、近隣の工場からの汚染物質の排出量など社会経済活動の基礎データも公開することが必要です。
・地域の今後の開発計画などのデータも公開することが必要です。
・類似事業の過去のアセスメントやその結果などの情報を公開することが必要です。
・その他、環境に関するデータは原則として公開することを制度化すべきです。

●住民参加・自主調査
・カナダの制度では住民の調査でも科学的であれば評価書に取り入れられますし、調査を行う住民組織には補助金が出ます。日本でもこうした制度が取り入れられるべきです。

●住民参加・意見書
・意見書を出しても反映されなければなにもなりません。住民意見が確実に反映される仕組みとすべきです。

●住民参加・公聴会
・公聴会は住民参加により徹底した討議を行うものとすべきです。
・公聴会を有効な議論の場として活用するためには裁判のような対審構造にし、住民と環境NGO、環境の専門家が原告、事業者とアセス調査業者、協力した学者・研究者が被告、後に述べるアセス審査機関の委員が裁判長をつとめるべきです。
・公聴会の回数や時間を区切るのは間違いです。住民の疑問が残る限り、何度でも公聴会を実施すべきです。イギリスやカナダのアセスメントでは何十回もの公聴会が開催され、手続きに1年以上かかることもあるそうですが、その過程でよりよい案が提示され、一方で問題の多い事業は変更または中止させられて行くわけです。日本のように、説明会を実施したという事実だけを求めるようでは困ります。
・公聴会では評価書を書いたアセス調査業者や学者・研究者も住民の求めに応じて説明すべきです。例えば事業がある生物に影響がないという場合には、どの文献、あるいはどういう経験に基づきそうした判断がなされたのかを知る必要がありますが、説明者の多くは、文献を知らなかったり、文献に記載された生物種がその土地の生物種と同じか違うかもわからないケースが多いと思われます。

●審査・審査機関
・審査が中立公正になるよう、開発官庁の審議会ではなくアセス専門の第三者機関が審査に当たるべきです。
・審査課程への住民参加を実現するため、住民代表や環境NGO、その推薦する専門家が審議委員に多数入ることが必要です。
・審査が中立公正になるよう、建設業者や業界団体などの利害関係者や、事業者の評価書作成に関与する学者・研究者は公正な評価ができないので排除することは言うまでもありません。
・審査機関の権限は事業中止を命ずることができるほど強いものでなければなりません。

●審査・環境庁長官の意見
・環境庁長官は評価書に対して再度意見を言う機会があります。この時に住民や専門家の意見を踏まえて意見を述べる制度とすべきです。

●事後評価
・今の制度には事後評価がありません。道路アセスで繰り返される、交通量の過小見積りと技術進展の過大見積りはこれが原因です。事後評価を厳格に行うことはアセス制度に不可欠です。
・事後評価は事業者が行うにしても、その審査は必ず第三者機関が行わなければなりません。
・事前の評価を超えている場合には追加の対策を義務づけ、それでも事前評価値をクリヤーできない事業は供用を中止あるいは原状回復を制度化することが必要です。
・事前評価の間違いは必ずあり、一概に責められるものではありません。しかし、事業を行うための悪質なケースは刑事罰を問える制度とすることが必要です。この場合、責任追及が現場担当などに終わらないためにも、組織の長が責任を負う仕組みとすることが必要です。

●海外の事業
・現在は海外の事業はアセス制度の対象から外れており、ガイドラインだけで行われています。しかし、日本国民、現地住民いずれもが参加できず、情報もまったくわからず密室の中で行われます。現地住民への環境影響評価法の手続きが外交上難しいとしても、日本国民を対象に環境影響評価法の手続きを実施する必要があります。

●計画、政策へのアセスメント
・事業だけでなく、国家計画や政策に対する環境アセスメントも制度化する必要があります。これがないと、環境無視の悪質な計画に従う無数の事業に対して住民が対応しなければなりませんが、計画アセスメントがあればそうした国家計画自体を中止させることが出来ます。

  参考: JNEP(公害・地球懇)の中環審へのアセス制度に関する意見書
      環境アセスメント法の成立にあたっての声明


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