COP6 ハーグ通信
地球温暖化対策に取り組む市民のネットワーク「気候ネットワーク」(JNEPも加盟している)は、COP6の国際交渉の状況を伝えるため、現地ハーグから「Kiko」通信を行っている。ここに転載するのは、その全部または抜粋である。
●気候ネットワークCOP6閉幕声明(2000/11/25)
●「Kiko」 COP6通信11月23日号
●気候ネットワーク緊急アピール(2000/11/22)
●「Kiko」 COP6通信11月20日号
●「Kiko」 COP6通信11月18日号
●「Kiko」 COP6通信11月16日号
●気候ネットワークCOP6閉幕声明(2000/11/25 ハーグ)
COP6は、京都議定書を2002年に発効させ、先進国が実質的な温室効果ガスの排出削減に踏み出す約束を確実なものとするために、極めて重要な会議であった。
しかし、日本、アメリカ、カナダなどは、11月14日に提出した、日本の吸収源すべてを目標達成にカウントすることを認める考え方を最後まで押し通し、CDMにも吸収源活動を組み込むことによって、先進国全体で5%排出削減をするという京都議定書の意義を無にする主張を引き下げず、結局、COP6での合意を失敗に終わらせた。私たちは、このような結果に終わったことを大変残念に思うとともに、怒りを禁じえない。
●合意は出来るのか!?
オランダのプロンクCOP6議長には、22日(水)の夜までに全体の合意パッケージの姿を固めたいとの思いがあったようだが、22日の午後11時まで続けられた閣僚級会合でもその形は定まらなかった。プロンク議長の会議の裁き方には、何が何でも合意に取り付けるのだという強い意志が感じられる。しかし、各国・各グループの立場は大きくかけ離れ、残り2日となってCOP6での合意を危ぶむ声もでてきた。議長は会合を終える前に、「まだ午後11時だ。このまま持ち越せば、明日1日を無駄にしてしまう可能性がある。各グループで今晩遅くまで交渉をし、その進展を明日の朝8時半に私のところ報告するように」と、途上国グループが明朝、グループ内で相談したいという声をはねつけ、半ば強引に閣僚たちに徹夜の交渉を指示した。23日朝までにどれだけ合意が図られるかが残り2日の交渉の鍵となろう。グループは結局以下の4つに分かれ、インフォーマルの交渉が行われている。
(1)途上国問題(議長:デンマーク・南ア)
(2)吸収源(議長:メキシコ・スロバキア)
(3)遵守、政策と措置、5・7・8条関係(議長:ノルウェー・インド)
(4)京都メカニズム(議長:日本・ブラジル)
現在、特に以下のような点で各国の対立をまとめられるかが鍵となっている。
(1) 途上国問題−途上国への具体的な資金供与の仕組みをどのように構築し、いつどの程度の金額を供与できるのか。アンブレラGは、京都議定書の枠内で、既存の地球環境ファシリティ(GEF)に新しい窓口を設け、附属書・国全体で第1約束期間に約10億ドル増資することを提案。しかし技術移転などは一切含まれておらず、途上国は先進国が果たしていない「条約」の義務として新たな枠組みの資金メカニズムを位置づけ、早急な対応を取るよう求めている。さらに産油国の要求にどう対処するのかも大きな問題だ。
(2) 吸収源−最も大きな懸案は、日米加豪が3条4項の追加的活動の3国提案を強く押し進めようとしていることだが、その他のアンブレラGでも支持しない国があるばかりでなく、EU、旧ソ連・東欧諸国、G77+中国が強く反対しており、4カ国は孤立している。
(3) 京都メカニズム−京都メカニズムの利用に制限をつける「補完性」の問題がハイレベルの交渉争点だが、決着はついていない。また、原発を除外することに対しては、オーストラリア、カナダ、日本のみが反対したが、流れは原発除外の方向のようだ。さらに、3つのメカニズムに途上国の悪影響を受ける国々への支援をするための「利益の分配」を適用するかどうかが論点になっている。また、プロジェクト実施のプロセスなどに市民が直接アクセスできる透明性が十分に確保されるかも重要な点だ。
(4) 遵守問題−不遵守の場合の帰結として、強い帰結措置を入れる方向が大勢になっている。これに反対してきた日本は少数派で孤立しており、譲歩する姿勢を見せたとの噂もあるが、会場では、自国の都合ゆえにそれを受け付けないような発言もみられ交渉を混乱させている。
●噂が錯綜する“パッケージ”の内容
プロンク議長は21日、閣僚級会合の交渉のために、各議題について合意が取れているものと未解決問題とを簡略に整理した9ページのペーパーを配布した。これは前半1週間の事務レベル交渉から引き継がれる各議題の決議案を交渉ペーパーにするにはあまりにも膨大でかつ専門的であるために、閣僚レベル交渉のために論点を絞ったものだ。プロンク議長はこれをさらに整理・統合していき、合意へ近づけたいとしているが、そこにはまだ至っていない。ペーパーに示された各議題での未解決問題は、争点となっている問題はそのまま残されている。
現在の交渉の進展については、交渉筋からの情報リークなどを通じて、どの国がどの問題で譲歩しそうだ、と様々な噂が流れ報道されているが、相反する内容も少なくなく、真相を知るのは裏で交渉をしている関係者のみのようだ。
●NGOがアクションを通じてアピール
・堤防づくり「DIKE」−環境NGOのFriend of the Earth(地球の友)の主催イベント、DIKE(堤防)が18日、会議場周辺で開催された。温暖化によって起こる海面上昇から人々を守るためには、DIKEを築かなくてはならないというメッセージを込めたアクションである。世界各地から6000人以上が集まり、日本からは気候ネットワークボランティア、SAGE、A
SEED JAPANなどから約20名の若者が参加した。会議場周辺では、音楽、パレード、様々な衣装に身を包んだ人たちで熱気にあふれていた。DIKEは会場を半分囲むような形で歩道に積まれた砂をシャベルですくい、袋に詰め、バケツリレー方式で運んで積み上げられた。長さ400m、高さ1.5m以上からなるDIKEは今も会議場の正面にあり、横断幕が掲げられメッセージを伝えている。国籍・世代を超えた様々な人々が思いを共有し、一つの目に見える大きなものを作り上げた。この熱い思いが会議場に集まった人々に届き、交渉がよい方向に収束することを期待したい。
●各国大臣の演説(抜粋)
○デンマーク
先進国の国内削減を重視すべきである。先進国が今の生産・消費形態を変えなければ、温室効果ガスの排出は増え続け、削減技術が開発されない。削減活動をしないですませるような吸収源を認めることはしてはならない。
全ての途上国が利用可能な追加的資金及び環境保全技術が必要である。後進途上国や悪影響を受けやすい国の利益は尊重されなければならない。
○ドイツ
吸収源が温室効果ガスの排出削減にはつながらないことに留意しなければならない。吸収源とは、排出削減を将来世代に任せるだけの方策である。吸収源による炭素貯蔵機能は極めて不確実であるし、現在の吸収源は遅くとも2050年には排出源に転じるものである。多くの国がこれと同じ見解である。
○フランス:EUを代表して
ハーグでの決定は、全ての工業国に対して温室効果ガスの排出を削減させるための行動を起こさせるものでなければならない。このために、京都メカニズムの利用は国内削減とバランスの取れたものでなければならない。また、工業国は省エネ、再生可能エネルギー、持続可能な交通体系へと大きく歩み出す必要がある。
IPCC報告では、吸収源に関する規模、科学的不確実性、リスクが述べられている。既存の森林吸収源だけでも、附属書・国全体の目標削減量の4倍にも相当する。吸収源に関する決定は、京都議定書の削減目標を無意味なものにしてしまう可能性がある。このように議定書の信頼性を危うくし、約束を弱めることを避けなければならない。
○アメリカ
我々は合理的な妥協をするつもりだ。他国もそのような方針をとることを待っている。京都議定書の目標達成のために不可欠な仕組みを損なってはならない。排出量取引の利用や吸収源の算入、CDMは京都の合意であることを忘れてはならない。これらは抜け穴ではない。我々は京都での交渉を重んじ、京都メカニズムが機能するよう合意しなければならない。メカニズムがなければ我々は京都議定書の約束を達成できないからである。
○サモア:AOSISを代表して
地球温暖化の原因が何であるか、これまでの温室効果ガス排出についてどの国が主たる責任を負うべきか、化石燃料への過剰な依存を改善する政策・措置があり、何をしなければいけないか、ということを我々は知っている。これまで世界各国が温暖化交渉に費してきた資金と労力、エネルギーが排出削減行動に投入されていたならば、条約の「究極の目標」にどれだけ近づいていたことだろう。
我々は、先進国が国内削減対策を行うこと、再生可能エネルギーへの投資を促すCDMを早期に開始すること、測定不能・非永続的な吸収源活動を認めないこと、不遵守を防ぎ罰するための強力なルール・手続き、GEFへの容易なアクセスを要望する。
○ナイジェリア:G77&中国を代表して
約3億の子供が、欧州でも北米でもなく、途上国において餓死している。南の貧しい国が既に気候変動の影響を受けているのはよく知られている。我々は最も気候変動による悪影響を受けやすく、それに対応する能力を持ち合わせていない。
条約には、締約国は共通だが差異ある責任に基づく義務があると定めている。貧しい南の国の我々は、温暖化に責任がなく、また適応することができない者として、先進国が義務を果たすことを要求する。途上国にとって極めて大事な問題は、技術移転、キャパシティービルディング、資金、気候変動への適応、CDMである。我々はこれらの点について今日議論を始めることを要求する。
●日本のNGOがそれぞれ緊急声明
21日夜の吸収源のインフォーマルグループで川口環境庁長官が、「3条4項で吸収源をカウントできなければ多くの国が批准できない」と述べたことは、COP3議長国としてあるまじき発言だと大きな波紋を呼んでいる。地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)、WWFジャパン、気候ネットワークはこれに対し緊急に日本語で声明を発表したほか、地球の友インターナショナルが日本に向けた声明を出し、CANも記者発表で大きな懸念を表明した。
<気候ネットワーク緊急アピール>
●今こそ、日本は「建設的妥協」を!!!(2000/11/22)
私たちは昨日(21日)夕方、川口長官の演説を受けて、「日本で生まれた特別の思いのある京都議定書に真の魂を吹き込むことなく、自らの手で葬ることがあってはならない」と述べた。しかし、ここCOP6でまさに、日本はそのリスクを犯そうとしている。
川口長官は、閣僚級会合においてこれまでの日本の立場を強く主張し続けており、その結果、COP6の行方を一層危うくしている。私たちは特に、吸収源問題と遵守問題の立場を問題視している。長期的視野で京都議定書の信頼性を保つために第1約束期間に第3条第4項を拡大して適用せず、強い帰結措置なくして議定書の遵守を促すことは期待できないからである。
吸収源に関する21日閣僚級会合で、川口長官は「第3条4項で吸収源をカウントできなければ、多くの国が批准できない」と述べ、「3.7%を吸収源で得るというのが日本政府の合意である」と初めて公的に国内の獲得目標を明言した。これはCOP6での前向きな合意に向けた議論の進展を封じ込めようとするものである。その上、アメリカ、カナダ、オーストラリアが批准を明らかにしていない中、批准のカードをちらつかせることは、京都議定書の発効を極めて危うくさせるものである。川口長官によるこの発言により、世界のNGOの強い怒りが日本に向けられている。
将来性に温暖化対策としての信頼性のある京都議定書の未来を考えるなら、吸収源が第2、第3約束期間には一体どのような影響を及ぼすのか、その先に道は作れるのか、をここで合わせて考えなければならない。
しかし、日本・アメリカ・カナダの提案にはそうした長期的な視点が完全に欠如している。日本は、第1約束期間で基本割当分(制限なくカウントを認める部分・イニシャルインターバル)で森林吸収分全てをカウントさせようとしている。これは、森林などの吸収量を全てそのまま排出削減対策と同等とみなしてカウントするものであり、化石燃料起源の温室効果ガスの削減や代替フロンの対策などの真の温暖化対策とは大きく乖離したものとなってしまう。
遵守規定についても、京都議定書の信頼性を保持することが、COP6の閣僚級会合の責任である。強い遵守規定を盛り込む方向での議論を日本特有の事情で妨害し続けている。
私たちは、世界の温暖化対策の道を歪めるような日本政府のこれらの主張を容認できない。
今こそ、日本の6%削減に吸収源3.7%が不可欠であるとする「大綱」の縛りを解き、削減議定書として発効させるための合意へ向けて「建設的な妥協」をすべき時だ。もしそれが出来なければ、日本は、京都議定書を自らの手で葬った国として名を残すことになるだろう。
●全てが決着する一週間
前半の一週間では主な対立点についてほとんど解決はされず、カッコ書きのオプションとして残されたまま、2週目の閣僚級会合へ突入した。実効性のある京都議定書のためには不可欠である「京都メカニズムの上限を設定すること」や、「第一約束期間に吸収源の京都議定書3条4項の追加的人為的な活動の利用を認めないこと」などはオプションの一つであるが、一方で、京都議定書の抜け穴を拡大するオプションも残っている。京都会議から3年間ずっと争点であったこれらの重要議題が、今週一週間で決められようとしている。まさに、京都議定書の性質が決められる時だ。しかし、我々の懸念は、ますます大きくなっている。なぜなら、現在の交渉が、実質的な地球温暖化対策から大きくかけ離れ、目先の「国益」に翻弄されつつあることを否めないためである。
以下は、世界熱帯雨林運動(WRM)の、9月のリヨン会合を受けてのメッセージである。ここで改めてその抄訳を紹介する。
「気候変動:リヨンで得た教訓 (WRMニュース38号より、リガルド・カレーラ氏筆)」
9月、世界中からフランスのリヨンに各国政府の代表が集い、11月のCOP6へ向けた準備会合を行った。一つだけ良かった点は、わずかながらの人数だが、気候変動にとって良い何かを成し遂げようとリヨン会合に取り組んでいたことである。とはいえ実際の会議は、エリートたち同士による脅迫であり、腕力争いであり、市場調査であり、賄賂であり、取引であった。ほとんどの時間は温暖化対策に関係ないプログラムへの資金の問題の議論に費やされた。
特に議論になっていたのは、クリーン開発メカニズムという、南の国々の人工林や森林や土地利用変化活動を使って、先進国が自国の化石燃料排出を相殺することができる仕組みである。外交官や官僚たちは林業プロジェクトですでに問題となっている環境や住民への悪影響といった問題にはほとんど注意を払っていない。幸い、この温暖化「対策」はまだ締約国会合によって認められてはいない。しかし、楽観的になる理由もない。いくつかの国々の代表団は、脅迫「吸収源がなければ京都議定書を批准しない」と腕力自慢「賛同しないのはご自由ですが…」を多用しており、これらの代表例は米国と日本である。欧州を含む第三のグループは、京都で合意した排出削減の約束を守ろうとしているがハーグ合意の中に林業プロジェクトの余地を残そうとしている。京都議定書の中に吸収源を入れまいとしている小さな国々は、その中の特に問題のある部分を取り除く以上のことはできそうにない。
悲しいことに、これが会合の焦点なのだ。本当の問題、つまり大気への公正な権利、特に北の化石燃料の消費削減、代替エネルギー源、利用効率向上と省エネについての議論はほとんどない。政府が本当に気候変動の問題に向き合うつもりがあるのであれば、いかに再生可能で悪影響のないエネルギー源を推進することで化石燃料の排出削減を行うことができるかに焦点を当てていたはずだ。北と南が協力してこれらの研究と経験を交換し合い、また、対策の知識や政治的な経験を南から北へ、北から南へと移転する仕組みを作り上げていたはずだ。これはCDMの議論の中心であるべきはずであるが、今の各国政府は別のものを選ぼうとしている。リヨン会合から一つの教訓が導き出される。人々が政府に圧力を加えない限り、気候問題の交渉担当者達はぼんやりと現れる気候災害に対抗して何もしようとはしないだろう。
地球温暖化は技術的な問題ではなく、権力の問題であり、皆が参加しなければならない政治の領域の問題であることを理解しなければならない。この問題は誰でもが理解できるほど単純な問題であること、つまり化石燃料を環境に優しい代替のエネルギー源におきかえることであることを堅く心に留めておかなければならない。気候変動は、何百万haのユーカリや松の植林を行うことでは解決できず、更に今ある問題を広げるものである。ほったらかしておけば、代表者達は我々皆を災害へと導くだろう。よりまじめで責任のある行動へと、会議場の中と外から同時に彼らに圧力を掛けることが重要である。それがリヨンの教訓だ。
●最大の問題は吸収源 −とんでもない日米加提案−
今日からの閣僚級会合での最大の論点は吸収源問題である。京都会議で先進国全体で「90年の排出水準から−5.2%」(日本は−6%)という目標数値を書き換えてしまうことになるからだ。
特に、日本国内での議論が全くないまま14日に出された日本・アメリカ・カナダの共同提案は、京都議定書第3条4項における「追加的活動」のうち大部分を占める「森林管理」について、各国の目標達成の必要性に応じて吸収分を都合よく利用できるという、とんでもない代物である(提案の内容はKiko
第1号(11月16日)参照)と繰り返し強調したい。
図に示したのは、3条4項における2008〜12年の吸収量の各国からの報告値である(ロシアはIIASA資料より)。
(1) これを見れば、アメリカ、ロシアの吸収量が断然多いことがわかるが、一方でそれらの国に比べればスケールが小さいものの、日本の吸収量は4番目に多い。
(2) 18日のCASAの試算では、基本割当部分(イニシャルインターバル)で日本が吸収3.7%分(約4600万トンCO2)を全て得るとした場合、アメリカ・ロシアなどの数ヶ国を除く大抵の国は森林管理による吸収量を100%算入できる上、アメリカやロシアの吸収分が更に追加されると、先進国全体で5%削減するという目標は消え去る。
(3) 日本政府が吸収量で得ようとする3.7%は、自然体ケース(BAU)から減らすべき21%に比べればわずかだと説明しているが、上に述べたように日本が3.7%分を獲得することにより各国に大きなボーナスを与え、議定書の意義をなくしてしまうという点で批判されていることを理解していない。
(4) 日本政府はこの提案が「公平性に配慮」したものであると説明するが、将来世代との公平性を忘れている。また、吸収分が桁外れに大きいアメリカなどとの公平性を言うのであれば、そもそも3条4項の森林活動を第1約束期間から適用させないことが、日本にとっても最もよい選択となる。
川口長官は日本を出発するにあたって各国に建設的妥協を求めるとした。日本政府の吸収源の主張を取り下げることこそが「建設的な妥協」のために必要だ。
EUの懸念
この日米加提案に対してEUが公式に「反対」と発表したペーパーでは、この提案における様々な問題への懸念を示しているため、ここに仮訳を添付する。
「米・カ・日の提案は京都議定書の環境保護という目的を確保するものではなく、EUの持っている懸念、すなわち、森林等の吸収源の(3条4項に関する)抜け穴の膨大さや、科学的な不確実さ、逆転の危険などの懸念、に十分答えたものにはなっていない。従ってEUはこの提案に反対である。
米・カ・日の提案は以下の点でEUの懸念に答えていない。
・判断の基になる数値が表明されておらず、今後その規模がどうなるかわからない。
・科学的な論理に基づいていない(政治的な数字操作による妥協だけを目指した)提案である。
・科学的な定量化ができておらず、研究が必要なのであれば、もともと議論のように、第1約束期間中は除外すべきである。
・既存の森林の成長をすべて人為的活動とみなせ、全てを算入できるというのは景品のようなものである。
・規模の膨大さに関する懸念は第1約束期間に解決されるというが、第2約束期間移行にさらに追加して参入されるはずで、解決にはなっていない。
・(3条4項には)農地管理や牧草地管理など、森林管理以外にも同じ問題があり、特にそのうち土壌中炭素の計測の誤差の大きさに関してEUは懸念を持っている。
・X,Y,Zの数字の大きさによって、いくつかの国だけが大喜びするものとなる。
・この提案では第1約束期間についてのみ制限が掛けられる、と間違って仮定されているが、問題が解決されない限り、第2約束期間以降も制限を掛けるべきである。」
●重要な仕事を担う川口長官
今日から始まる閣僚級会合では、以下の3つのグループが作られ交渉が行われることになっている。
@途上国問題(技術移転、悪影響への対応、資金メカニズムなど)
A 環境保全問題(京都メカニズム・吸収源・国内措置)
B 遵守問題・手続き関係(5・7・8条)
このうち川口長官は、ブラジル政府と共に2番目の環境保全問題グループの共同議長を担う。最も大きな論点を扱うこのグループでの決定が、京都議定書の性質を大きく左右する。川口長官には、日本政府の立場を離れ、環境保全を確保し温室効果ガスを削減する議定書を作るための舵取りをしているのだということを肝に銘じてもらいたい。そうでなければ、京都議定書は日本によって意義を否定されることになる。
●COP6 第2週 閣僚級会合を前にして
13日からオランダ・ハーグで開かれているCOP6は、19日から閣僚級会合に移行するが、残る1週間の交渉の行方に緊迫と不透明感が高まっている。今週冒頭から18日にかけて行われた事務レベル協議では、主要な論点のほとんどすべてで、EUと日本など非EUのアンブレラグループおよび途上国グループなどの間の対立が併記されたまま、19日からの閣僚級会合に引き継がれることになったためである。
今後1週間の議論が、3年前の京都会議で生み出された京都議定書の積み残し課題を決定し、2002年発効に踏み出す準備を終えるという、まさに京都議定書の命運を決することになる。
COP6官僚級会合で川口長官は、吸収源と京都メカニズムという最も中核を占めるグループの共同議長を務めることが予定されている。COP6議長のオランダ・プロンク大臣の計らいだが、日本にとってはCOP3で時間切れとなった京都議定書の総仕上げの機会を、大木元環境庁長官から川口長官へバトンタッチして与えられたものといってよい。川口長官の手腕に期待したいがしかし、日本に対して世界から懸念も示されていることを忘れてはならない。
京都議定書第3条3項、4項の吸収源についての日本の主張は、先進国の排出削減を数値目標で約束した京都議定書の環境保全性を最も危機にさらしている。14日に出された日米加の吸収源に関する共同提案は、日本などのこれらの国の身勝手な主張を満足させるための理念を欠いた提案である。吸収源プロジェクトのCDMへの適用も、国内外でのエネルギー対策などへの取り組みを遅らせ、世界の森林保護を脅かす。国内対策が第一であることを認めながら、補完性を数字で表そうとせず、また京都議定書の約束を守ると強調するものの他方で意欲を失わせかねない遵守の仕組みに固執し続けている。これらは交渉態度に一貫性を欠くだけでなく、その真意に疑念をもたらしている。
ここハーグで、京都議定書が真の意味で21世紀の地球規模での温暖化対策の出発点となって初めて、日本の京都会議での役割は全うされる。その役割は重い。私たちは、日本がこの役割を十分に全うすることを、心から願っている。
●温室効果ガスの確実な削減をもたらす議定書のルールへ合意を!!
13日から24日まで、オランダのハーグで国連気候変動枠組条約第6回締約国会議(
COP6・気候サミット・ハーグ会議)が開催されている。本会議は、京都会議(COP3)以降先送りされていた京都議定書の具体的なルールを決定する期限として、温暖化交渉の大きな山場となる会議である。
特に、森林等の吸収をカウントする「吸収源」の扱いや排出量取引・共同実施・クリーン開発メカニズム(CDM)など国内削減に代わる措置として導入された「京都メカニズム」のルール、また守らなかったときの帰結措置の定め方などが、京都議定書の実効性を大きく左右することとなる。現在、日本・アメリカ・カナダ・オーストラリアなど大量に温室効果ガスを排出している国が、これらの議論において「抜け穴」を拡大し、国内削減をしなくてよい議定書にするような交渉姿勢を取っている。もしこの抜け穴が一つでも認められたら、京都議定書はもはや、温暖化対策を進める実質的な"削減"議定書にはなりえない。
地球温暖化という21世紀において最も深刻な問題に、今、国際社会が正面から立ち向かい、本当に必要な一歩を踏み出すための合意ができるかがこのCOP6にかかっている。
第1週目前半の各議題の交渉は、決してスムーズには進んでいない。このままのペースでは限られた時間での合意形成は難しいと予測されるが、一方で、後半の政治決着へ向けた様々な非公開の会合が裏で頻繁に行われている模様だ。交渉の状況がどんどん見えにくくなっていくことが懸念される。
●悪いポジションが最多の国・日本
世界各国約300のNGOが構成する気候行動ネットワーク(CAN)は、98年のCOP5以来、会議場内でのイベントとして、その日最も悪い発言や行動をした国を表彰する「本日の化石賞(Fossil
of the Day)」を実施している。
今回、COP6初日の13日に晴れて第1位を受賞したのは日本だった。理由は明白、「総合的に見て日本はOECD諸国の中で交渉ポジションが最も悪い国である」ためである。その例として、
・ 3条3項・3条4項の下で、吸収源を最大限利用しようとしていること
・ CDMに原子力発電の利用を含めようとしていること
・排出量取引で、売り手に責任を押し付けようとしていること
・ CDMでODA利用を主張し、追加性を無視しようとしていること
・京都メカニズムに上限をつけることに反対し、ホットエアを制限なく利用しようとしていること
が挙げられた。
さらに日本には、不遵守の際の法的拘束力のある強い帰結措置に反対するという問題もある。我々はかねてからこれらの問題点を指摘し続けてきたが、今回改めて"どの国よりも最も交渉ポジションが悪い"と世界のNGOからのお墨付きをもらうとは、これ以上の不名誉なことはない。さらに翌14日にも、アメリカ・カナダと並んで1位を飾った。
●地球温暖化は確実に進んでいる
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のボブ・ワトソン議長は13日のスピーチで、科学の知見をベースに地球温暖化の深刻な状況について報告をした。
・地球温暖化は確実に起こっている。気温は世界中で上がっており、過去20年は千年間で最も暖かい年だった。
・ 100年後の気温上昇は、5年前の予測の約2倍の1.5〜6.0℃となる見通しだ。
・生態系への影響は既に過去数十年の間に起こっている。
・南アフリカ、北アメリカなどで降雨量が激減する。現在13億人が水不足、20億人が不衛生な中で生活する状態にあり、温暖化がそれを悪化させる。
・世界の穀物生産の低下、人間の健康への影響が、より深刻になる。
・ CO2排出が安定化しても、海面上昇はその後千年も止まらない。温暖化の不確実性の解明を待つ前に今すぐ対策を取らなければ、全てが手遅れだ。
●米・加・日が3条4項で制限案
今回の会議では、吸収源について「森林」や「再植林」などの定義を決定すると共に、3条4項の「追加的人為的活動」の扱いにも合意することになっている。環境
NGOはこれまでも「吸収源の拡大は最も大きな抜け穴になる」と訴えてきた。しかし
14日、1回目の吸収源(LULUCF)の会合で、アメリカ・カナダ・日本が共同で、3条4項の追加的活動の利用を制限する方法について、大量の吸収量獲得が可能になるような提案を出してきた(14日の化石賞を受賞)。
そもそも議長ペーパーにはない今回の新提案の内容は、ある一定量までは吸収分を制限なくフルに利用でき、そこから先は一定率割引し、さらにある一定量を超えれば再び制限をなくすという3段階の組み合わせによる制限方法で、対象は3条4項の「森林管理」に限っている。本提案が、どの程度の抜け穴になるのかは量や率の数字次第だが、日本政府は、天然林を含めた全ての森林吸収を対象にした3.7%分を、制限のない範囲に含め、狙い通り全て確保しようというつもりだ。
●日本の3.7%確保を認めれば、膨大な吸収量で抜け穴
本提案で、仮に日本の3.7%分(約4200万トンCO2)を制限なく最初に使える量とし各国に適用した場合、どの程度の影響があるのか、8月1日の各国提出データ(
UFCCC/SBSTA/INF.7/Add1)をもとに推計した。その結果、@制限がかかるのは、数値目標に対する吸収量が多いアメリカ・カナダなど数カ国のみである。A「森林管理」に限定しているため、その他の活動を対象にしているオーストラリアやアイスランドなどは一切制限がかからない。B以上の2つの結果、多くの国はほとんど何もせず森林吸収で目標達成ができるということがわかった。
すなわち、本提案において日本の3.7%分を制限なく獲得できる前提で数字が議論されれば、実質的に一部の国の吸収量に少々ふたをするだけであり、それらの国でさえ、割引率やしきい値の設定次第で、目標を十分楽に達成できるだけの吸収分を得ることも可能となる。また、これに3条3項の吸収量を加えるとさらに抜け穴は拡大する。このような提案では、3条4項活動を対象にすることによって生じる締約国間の公平性の問題は一切解決されないばかりか、この議論自体が事実上の京都議定書の数値目標の再交渉を意味し、議定書を全く無意味なものにしてしまう。この結果エネルギー起源のCO2削減対策などは大きく遅れてしまうだろう。
これらの懸念を考慮すれば、EUやAOSIS、多くの途上国が主張するように、3条4項の追加的活動による範囲の拡大は第1約束期間には認めないことが最善の決定であることを疑う余地はない。
実際、本提案を交渉する流れが出来ているわけでは全くなく、反対意見が続出している。COP6での合意を期待するなら、米・加・日は、全体の流れを見て、こうした提案を即座に撤回すべきである。
●日本政府は交渉ポジションの転換を!
会議が始まって3日が経過したが、今後日本政府の硬直したポジションは様々な場面で妨げになり、このままでは議論から大きく取り残される恐れがある。我々環境
NGOは、COP6前に川口環境庁長官と外務省の朝海地球環境問題担当大使に要望書を手渡し、@吸収源問題、遵守問題、京都メカニズムなどの現在の交渉ポジションを速やかに改めること、ACOP6で、京都議定書の批准の時期を明らかにすること…を求めた。しかし何ら日本政府の姿勢に動きはない。残された時間は少ない。これから柔軟で前向きな姿勢で交渉へ当たることに大きく期待する。
●米国が原発離れ、取り残される日本
アメリカの政府代表団が、13日の記者発表において、CDMに原子力を利用することに対して、柔軟な対応を示すことを明らかにした。これまでアメリカはCDMで原発利用を推進する立場にあったが、今回、安全性や核拡散、経済性、一般国民の受容度などの問題があることに触れ、合意へ向けた柔軟な交渉をする、と明らかに方針を転換した。日本政府は、明言はしてこなかったものの、CDMの対象事業はホスト国の主権に任せるべきとして事実上原発の利用を促進する立場だ。アメリカが今原発利用から離れていく中、また新たな「孤立」を強いられている。表立って原発利用を主張する国は、これで日本とカナダだけとなった。