2003/12/15

 

COP9閉幕でCASAが声明(03/12/15)
COP8でWWFが声明(2002年11月5日、デリー)
ヨハネスブルグサミットと今後
CASA声明、期待を裏切ったヨハネスブルグサミット
CASAのヨハネスブルグ通信
ヨハネスブルグ・サミット政治宣言案に対するNGO声明
国際NGO共同声明(2002年9月3日、ヨハネスブルグ)
WSSD自然エネルギー促進合意は逆行(NGO緊急声明)

 

ヨハネスブルクでの持続可能な開発サミット
リオから10年、世界と日本の温暖化対策は進んだか

 

リオサミット関連資料

 

●WSSD関連リンク
・ヨハネスブルグ・サミット提言フォーラム
・CASAの「リオからヨハネスブルグへ」へのWebページ

 


 

 


COP9閉幕(CASA E-mail ニュース 2003/12/13より)

 12月1日からミラノで開催されていたCOP9は、12月12日午後6時50分に議長が議長サマリーを読み上げて閉幕しました。
 COP7からの宿題であった「クリーン開発メカニズムの吸収源プロジェクトの実施ルール(sink CDM)」については合意に達しましたが、「特別気候変動基金(SCCF)」のガイドラインのなかの経済多様化などの部分、「非付属書・国の国家通報」の問題などについては来年の補助機関会合(SB20)に先送りされました。 
 マラケシュから2年間かかった「sink CDM」の交渉が合意に達したことは、マラケシュからの宿題はすべて片付き、京都議定書の運用ルールが整い、発効と実施に向けての障害はなくなったことを意味しています。
 COP9は、ロシアが批准していないため京都議定書の発効のめどがたたない状況で開催されたこともあり、京都議定書の発効と実施に対する各国の対応が注目されましたが、多くの国の代表が京都議定書の発効と実施への強い決意を示したことは、一定の成果と評価してよいと思います。
 次のCOP10は、2005年5月にアルゼンチンで開催されることになりました。COP10を京都議定書の発効後の第1回締約国会合(COP/MOP1)にしなければならないと思います。そのためには、ロシアの批准を促すことが必要です。
 日本の市民・環境NGOとして、ロシアの批准に向けて何ができるかを考えたいと思います。


 <CASAの閉幕現地声明>
 
「京都議定書の発効・実施と地球レベルの長期的な枠組みの議論を!」 2003年12月12日(イタリア:ミラノにて)

 気候変動枠組条約第9回締約国会議(COP9)は、ロシア連邦の批准が遅れ、京都議定書の発効にめどがたたないなかで開催されたため、京都議定書の発効と実施に向けた各国の対応が注目された。さらに、マラケシュのCOP7からの宿題とされていた「クリーン開発メカニズムの吸収源プロジェクトの実施ルール(sink CDM)」についての合意をつくることが課題であった。
 マラケシュから2年間かかった「sink CDM」の交渉はこのCOP9でようやく合意に達した。これで、マラケシュからの宿題はすべて片付き、京都議定書の発効と実施に向けての障害はなくなった。
 このCOP9で、多くの締約国が京都議定書を早期に発効させることの重要性を確認したことは、すでに120カ国が京都議定書を批准していることとあわせて、京都議定書こそが温暖化を防止する唯一の国際的な枠組みであることを改めて認識させた。世界の市民と国際社会の意思は明らかであり、ロシア連邦は早急に京都議定書を批准すべきである。
 フランスで1 万人もの死者を出したという欧州の熱波、中国南東部の大洪水、南欧や北南米での山火事など、地球温暖化は現実のものとなりつつある。地球温暖化の急速な進行は、全締約国に地球温暖化防止の緊急の行動を要請している。締約国会議は、緊急の行動と地球レベルの長期的な枠組みの議論を早期に開始する必要がある。こうした議論で重要なのは、長期的な視野に立つとともに、早い段階で温室効果ガスを大幅に削減する必要があることを認識することである。また、科学性と衡平性をそなえた論理的ルールに基づく制度設計こそが多国間交渉の合意を可能にし、長期的な制度を保障する。そして、そのベースとなるのは京都議定書でなければならない。
 条約事務局の報告書によれば、2001年における経済移行国を除く日本などの先進国の温室効果ガス排出量は1990年比で7.5%増加してしまっており、2010年の排出予測では17%増加するとされている。先進諸国の温暖化対策は極めて不十分であり、具体的な対策を早急に実施すべきである。
 2004年11月-12月にアルゼンチンで開催されることになったCOP10が、京都議定書の第1回締約国会合(COP/MOP1)として、議定書の実行と将来の枠組みづくりに向けた着実な歩みを始める会合になることを強く期待したい。



COP8でWWFが声明

危機感欠落のCOP8、妨害工作に走ったブッシュ政権とサウジアラビア(インド・デリー発/WWF)


 2002年11月5日デリーで行なわれた気候変動枠組条約第8回締約国会議(COP8)が閉幕を迎えた。WWF(世界自然保護基金)は、会議が異常気象、サンゴの白化現象、海面上昇などが増大するという温暖化の危険な影響に対し、危機意識が欠けていたことに、がっかりしている。
 COP8は、持続可能な開発のための世界首脳会議(WSSD)以来、初の国際会議であった。各国の代表は、温暖化は地球に対する最大脅威であると言い、次々と京都議定書の発効を求めた。しかし、ブッシュ政権とそれに組する産油国の同盟国が条約交渉を妨害したことや、他の国々の政治的意思の欠如により、交渉の進展ははかばかしくなかった。
 「WWFは、カナダが京都議定書の批准に向け、さらに一歩を踏み出したことを歓迎する。と同時に、ロシアが一刻も早く批准し、京都議定書が国際法となることを求める」と、気候変動プログラム代表のジェニファー・モーガンは語った。「地球温暖化を防ぐという枠組条約の目標について真剣に考え、本当に地球温暖化を防ごうというのなら、各国政府は、京都議定書という土台の上に築くべき、次なる行動を考えなければならない」
 アメリカとサウジアラビアが手を組んで、条約交渉を妨害しようとしたのは明らかであった。例えばIPCCの結論のように広く受け入れられている科学的文言に対して疑問をさしはさみ、連携して互いに相手の発言を支持しあうことにより、南北問題を両極に分け、混乱を引き起こし、意見の対立をあおった。
 ブッシュ政権は、アメリカ国内では、途上国も削減目標を掲げるべきだと発言しており、これがアメリカが京都議定書を離脱した要因の一つでもあった。にもかかわらず、デリーの会議では、途上国は削減目標を掲げるべきでないと主張し、この問題に関する他の国々の発言をねじまげた。ほんの一年前の会議で、南北が手を組んだからこそ京都議定書が救われたことを考えれば、今回の会議で、このような南北対立が問題とされる必然性はないはずである。
 「サウジアラビアと緊密に行動をともにしたブッシュ政権は、今回の交渉を妨害するため、いくつもの行動を起こした。彼らはあらゆる場面で先進国と途上国の対立をあおり、科学をないがしろにし、各国を前進させないようにした」とモーガンは語った。
 COP8は、今までの締約国会議に比べ、それほど多くの政治的決定は求められず、むしろ技術的な面での合意を得る会議であったが、交渉の過程においては重要な通過ポイントであった。先進国が途上国において、温室効果ガス排出を削減するためのプロジェクトに投資するクリーン開発メカニズム(CDM)については主要な展開があった。
 CDMプロジェクトの質がよいものとはいえないというWWFの懸念は、他の多くの国からも指摘されたので、CDM理事会で検討されることになるだろう。CDMプロジェクトの環境的社会的基準を満たすWWFのゴールド・スタンダード発表には、多くの歓迎の声が集まった。CDMにおける土地利用変化と森林プロジェクトに関するルールについても話が始まり、来年まとめられる予定となっている。

 


ヨハネスブルグサミットと今後
 ヨハネスブルグサミットは、「ヨハネスブルグ宣言」と「実施計画」をかろうじてまとめ、終了した。
 地球温暖化現象が目に見えるかたちで進行し、途上国の貧困が危惧されるなか、リオでの持続的開発という国際合意をさらに前進・発展させることが期待されていた国際会議であった。
 日本の外相や環境大臣らは、この会議は成功したと述べ、内外のNGOはこぞって失望感をあらわにしている。
 われわれ市民は、ヨハネスブルグでの出来事をどう捉え、今後の市民運動に何を心がけるべきなのか。

前進面と妥協
 ヨハネスブルグサミットは期待が大きかっただけに、十分な成果が得られなかった分、失望も広がっている。成果がまったくなかったわけではない。たしかに部分的には、具体的取り組みを約束しあうという成果が見られる。しかしそれは、期待されている諸課題からすれば、ごく限られた分野の課題であり、迫り来る地球の気候大変動に人類が総力を挙げて対処するといった課題や、持続的開発についてのリオ原則のひとつである先進国と途上国との「共通だが差異ある責任」をめぐっても、先進国および途上国がたがいに持続的発展を確実に保証する取り組みを約束しあう点でも、期待された到達点には至らなかった。
 その数すくない成果とは、途上国の飲料水確保と衛生問題に関し、実施計画では「安全な飲料水や下水道を利用できない人の比率を2015年までに半減する」と書き込まれたことである。これ自体大きな成果であることは間違いない。国際社会がODAなどを通じて、必要なときに安全な水が飲めるようにするすることは大いに意義あることである。目標通りだと、それでも2015年にも、まだ、飲料水に枯渇する人々が多く存在する結果となる。この会議の成果とは、この程度のものであった。
 このODAについては様々な問題を抱えており、途上国の開発を援助するという目的から逸脱した現実が存在している。しかし途上国援助そのものを増大させることは、「先進国と途上国とのかつてない格差が世界の繁栄、安全、安定に大きな脅威となっている」(ヨハネスブルグ宣言)のであり、このODA目標を引き上げることは必要不可欠な課題である。しかし、このODA目標については、自国GNPの0.7%に到達していない先進国にたいし「実施計画」で「具体的努力を要請する」と書き込まれたにとどまった。したがって先進国の途上国援助は、今後も前途多難というべきだろう。

温暖化を加速させるグローバリゼーション
 CO2を削減するなど、地球の温暖化を防止するための努力を巡って、会議では積極的な提案もなされた。再生可能エネルギーを巡っての議論である。EUは20世紀末における風力や太陽光といった再生可能エネルギーの普及実績をふまえ、地球の温暖化防止のためには、こうした再生可能エネルギーが化石エネルギーにとって変わらなければならないと主張し、2010年までに世界での、その割合を15%とする提案を行うとともに、本格的取り組みへの宣言も行った。また、途上国77カ国もその割合の国別・地域別目標の設定を主張したが、これにたいしアメリカ、日本および産油国が反対した。
 結局、「実施計画」では「水力を含む再生可能エネルギーの開発・供給を多様化し、切迫感を持って再生可能エネルギーの比率を相当増加する」との表現に落ち着いた。化石燃料に依存し続けるアメリカと…日本も、産油・石油製品の供給というグローバルビジネスが、関係する諸国を反対に回らせた結果であった。
 ヨハネスブルグ宣言では「温暖化の影響は既に現実になっている。グローバリゼーションがこうした課題に新たな局面を加えた」と規定しつつも、このグローバルビジネス(多国籍企業)の規制について「実施計画」では、「企業の環境と社会への責任を強化する」という表現にとどまってしまった。


遅れる京都議定書発効
 京都議定書の発効は、このヨハネスブルグサミットがタイムリミットとされていた。しかし中国がこのサミット中に批准をすませた結果、すでに90カ国が批准した結果となり、カナダ、ロシアも近い将来の批准を約束している。この点について「実施計画」は、未批准国にたいし「適切な時期の批准を強く要請」することを求めた。
 いっぽう京都議定書から脱退したアメリカは国際的批判を浴びているが、ヨハネスブルグでも、ブッシュ大統領が欠席したもとで、代理出席したパウエル米国務長官の演説にたいし「BUSH:PEOPLE AND PLANET, NOT BIG BUSINESS! 」の横断幕や強烈なブーイングが起こり、アメリカとグローバリゼーションが世界の温暖化対策と持続的発展にとって最大の脅威・妨害者であることを鮮明に印象づけた。

NGOの役割
 日本および国際NGOの役割は、このヨハネスブルグサミットでも期待されたし、また実際に現地で大活躍した。しかし国際交渉の場での問題点を指摘することはできても、その流れのなかで諸国民の声を代弁したNGOの要求を反映させるまでの力量は不足していた。特にアメリカ、日本など持続的開発と温暖化対策に終始反対の立場を鮮明にした諸国におけるNGO活動の強化、それぞれの国での世論形成にNGOは、今後よりいっそう努力がもとめられるだろう。



CASA声明、期待を裏切ったヨハネスブルグサミット(2002/9/4 ヨハネスブルグ)

地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)



 9月4日、ヨハネスブルグサミット(WSSD)は世界実施文書と政治宣言を採択して閉会した。このサミットには、「アジェンダ21」の実施状況を検証するとともに今後10年の数値目標をもった具体的な行動計画を策定すること、京都議定書などの環境条約の確実な実施を確認すること、そしてなによりも世界貿易機構(WTO)などが進めている貿易の自由化と多国間環境条約との関係について環境が経済に優先することを確認すること、が期待されていた。

 残念ながら、ヨハネスブルグサミットはこうした期待を大きく裏切る結果となってしまった。「アジェンダ21」がなぜ実行されなかったかの検証はまったくなされず、環境問題の解決が貿易の自由化などのルールに優先することの確認はなされなかった。地球温暖化問題の解決のためにも、持続可能なエネルギーシステムの構築のためにも、また、エネルギーへのアクセスが困難な20億の人々が人間としての基本的なニーズを満たすためにも、切実に求められていた再生可能エネルギーの数値目標については、アメリカや日本が頑強に抵抗し、数値目標なしの合意になってしまった。
 ヨハネスブルグサミットは、世界の市民の期待を大きく裏切ったと言わざるを得ない。

  一方で、実施文書に、京都議定書の非批准国に批准を促す旨の記述が入ったこと、いくつかの分野で数値目標が設定されたこと、企業責任を強化するための新たな国際的枠組みを構築する可能性が残されたことなどの前進もあった。また、ロシアやカナダなどの首脳が議定書の批准を明言したことは京都議定書の早期の発効に弾みをつけるものとなった。

 日本政府は、京都議定書問題では積極的な役割を果たしたが、「共通だが差異ある責任」などのリオ原則の議論や、再生可能エネルギーの数値目標などではアメリカなどといっしょに後ろ向きの交渉姿勢をとり続け、日本に対する国際的な信頼を大きく損ねる結果となった。

 リオから10年。環境の質は悪化の一途を辿り、事態はもはや一刻の猶予もならない。リオから10年の経験は、情報に精通し、活動的な市民のみがこうした状況を打開する力となりうることを示している。ヨハネスブルグサミットで、目的を共有する多くの世界の人々と知り合うことができた。こうした人々と手を携えて、21世紀を平和で環境の世紀にするための歩みを、ここヨハネスブルグから始めようと思う。



CASAのヨハネスブルグ通信

閣僚級会合(ヨハネスプロセス)始まる
 8月30日午後から、ヨハネスプロセスと呼ばれる閣僚級会合が始まりました。29日の夜、EUは、リオ原則、淡水、衛生、エネルギー、消費・製造パターンに関する10年計画、貿易と資金などこれまでの交渉で合意できなかった14項目について、これまでウィーンプロセスではなく閣僚級会合で協議を行うことを提案し、交渉がストップしました。結局、ヨハネスプロセスと従来のウィーン方式と両方の会合を続けることになり、31日もヨハネスプロセスとウィーンプロセスの会合が断続的に行われています。EUが、ウィーンプロセスではなく、ヨハネスプロセスでの交渉を提案したのは、ウィーンプロセスではEU、G77(途上国グループ)などのグループごとの代表だけしか発言できないのに比べて、正式のグループとして認められてないJUSCANZ諸国はそれぞれ発言できるため、発言数で不利となることを避け、EU-15カ国のそれぞれの閣僚が発言できるヨハネスプロセスでの交渉のほうが有利と考えたと思われます。また、G77も、そのなかには環境への対処に積極的な小島しょ国のようなグループから、正反対の石油輸出国機構(OPEC)のような国々もあり、ウィーンプロセスではこうした意見が反映されないことも事実です。
 このヨハネスプロセスには、31日は大木環境大臣が出席しており、川口外務大臣とは、京都議定書問題は大木環境大臣、エネルギー問題は川口大臣と、任務分担をしているようです。


京都議定書問題、合意!!
 世界実施文書の京都議定書に関する記述は、ヨハネスプロセスと呼ばれる閣僚級セッションで論議され、8月31日午後6時5分(ヨハネスブルグ現地時間)、「京都議定書に批准した国は、まだ批准していない国に対し、適切なタイミングで批准するよう強く促す(strongly urge)」との表現で合意に達しました。この表現は、これまでの実施文書案の表現を超えるもので、京都議定書の年内発効と、その確実な実施に向けて確かな前進と評価してよいと思います。
 政府関係者によると、ヨハネスプロセスのムサ議長から京都議定書問題で積極的な発言をした大木環境大臣に対し、京都議定書問題をファシリテートするよう依頼があり、新たな文案を準備し、各国の意見の調整を図ったとのことです。
 この京都議定書問題では、8月27日、ヨハネスブルグサミットに参加していたCASAを含むNGOの代表が大木環境大臣に面会し、「世界実施文書の京都議定書の年内発効とその確実な実施についての記述について、日本政府がこれを支持することを公式な会議の場で表明する」よう緊急申入れを行っていました。


残された課題
 京都議定書問題は合意に達しましたが、8月30日の時点で、まだ多くの論点が合意できずに残されています。これらのうち、次週の首脳級会合に先送りされそうな問題についての現状は以下のとおりです。


再生可能エネルギーの数値目標
 ヨハネスブルグサミットも閣僚級会合が始まり、再生可能エネルギーの数値目標がヨハネスブルグサミットの成否を決める重要なポイントの1つになっています。
 世界実施文書のパラグラフ19(e)は再生可能エネルギーについては、再生可能エネルギーの定義と導入目標についての交渉が行われています。これまでの交渉で、数値目標の多くが削除されてきました。
 現在、再生可能エネルギーについて記述する世界実施文書のパラグラフ19(e)には、「2010年までに全一次エネルギー供給の少なくとも15%まで世界中の再生可能エネルギー資源の割合を増加する」とのEU提案、「少なくとも5%」、「少なくとも2%」、アメリカや日本などの「数値目標は設けない」などの提案がなされており、これに再生可能エネルギーに大規模水力発電を含めるかどうか、また、各国ごとの数値目標か、世界全体の目標か、などが交渉の論点とされています。
 8月29日午後3時から、ブラジル、ノルウェー、アルゼンチン、フィリピン、メキシコなどが共同記者会見を行い、再生可能な自然エネルギー(大型水力と伝統的なバイオマスを含まない)が占める割合を2010年までに10%まで引き上げるという案を発表しました。
 ブラジル提案とEU提案との根本的な違いは、大型水力発電を含むかどうかにあります。国際エネルギー機関の予測では大型水力を含めるとEUの2010年の再生可能エネルギーの割合は、新たな政策措置をとらなくても14%まで上がると予測しています。EUの提案は数字は15%と大きく見えますが、実はブラジル提案よりかなり弱い提案であることがわかります。日本でも大型水力発電の発電量は現在でも一次エネルギーの2.7%位を占めており、2010年までの新エネルギー目標である3%を加えると5%を優に超えます。日本の水力発電の稼働率は30%を切っており、稼働率を上げれば10%は困難な数値目標とは思えません。経産省の交渉担当者と話したところ、日本における10%の実現性についての問題というより、考え方の違いだとのことでした。現在は、再生可能エネルギーはコストが高く、これから増大が予想される途上国のエネルギー需要を考えると費用対効果の点で問題があるということでした。しかし、地球温暖化問題などを考えれば、再生可能エネルギーに転換することが不可欠であることは明らかです。
 アメリカや日本はエネルギー目標設定自体に頑強に抵抗しており、新聞報道では、川口外務大臣がアメリカのドブリャンスキー米国務次官(地球問題担当)と会談し、「閣僚級会合で残る焦点となっている「再生可能エネルギー」の利用原則で、欧州連合(EU)が求めている全エネルギーに占める比率の数値目標と達成期限の設定について、反対の立場を日米両国が取っていくことを確認した」とのことです。
 WSSDに参加している日本のNGOは、連名で2日にヨハネスブルグ入りする小泉首相に面会を申し入れ、この再生可能エネルギーの数値目標などについて日本政府がブラジル提案に賛成するよう要請することにしています。


水・衛生(サニテーション)
 水(飲料水)についての交渉はほぼ合意に達しています。水問題は、健康問題と密接に関連するだけでなく、女性や子供が水を汲むために過重な労働を強いられていること、子供が水汲みに多くの時間をとられ(ひどい場合は、20キロメートルも遠くなら水を汲んでくる)、教育を受けれないなど教育問題とも関連してます。実施文書では、「2015年までに安全な飲料水にアクセスできず、入手できない人々の割合を半分にする」との目標がかかげられました。
 一方で、「2015年までに改善された衛生設備(下水)を利用できない人々の割合を半分にする」とのEUの提案に、アメリカなどが強く反対しており、決着がついていません。アメリカは、2015年までというタイムフレームも、半減の達成目標も、いずれもこれができるとの科学的根拠や情報が不足していると主張しているようですが、要はこれらを実施する資金を問題にしているようです。


リオ原則
 「共通だが差異のある責任」と「予防原則」は、1992年のリオ・デ・ジャネイロでの地球サミットで合意された重要な原則です。
 「共通だが差異のある責任」は、すべての国々は、環境に対して同じ責任を持っているが、地球環境問題は主として先進国が引き起こしていることから、先進国が率先して取り組みを行うべきだということを意味しています。
 アメリカなどは、この「共通だが差異のある責任」が気候変動枠組条約などの環境問題に適用されることは合意されているが、開発問題にまでこの原則を適用することには合意してないとして、この原則を一般条項とすることや、開発課題のパラグラフに記述することに反対しています。
 確かに、「共通だが差異のある責任」は、リオ宣言では、環境問題の文脈で記述されていますが、そもそも地球サミットは「環境と開発に関する国連会議(UNCED)」と呼ばれる会議であり、リオ宣言も正式名称は「環境と開発に関するリオ宣言」となっています。途上国の開発問題も、その原因の大きな部分が先進国の多国籍企業などの行為によっており、「共通だが差異のある責任」は持続可能な開発にとっても必要不可欠な概念です。もし、ヨハネスブルグサミットでこれらのリオ原則が削除されるようなことがあれば、ヨハネスブルグサミットの成否にかかわる問題だと言わねばなりません。


極めて不十分な世界実施文書
 9月2日午後9時、最後まで残っていた再生可能エネルギーの目標値についての合意が成立し、世界実施文書についてはほぼ最終的な合意が成立しました。
 しかし残念ながら、合意された世界実施文書は極めて不十分なもので、「生態学的なカタストロフィー(破局)が到来」する危険性がますます高まっている現状を打開する行動計画にはほど遠いものになってしまいました。
 世界実施文書の課題は、@「アジェンダ21」のほとんどが何故実施されなかったのかを検証するとともに、リオで積み残した環境と貧困、多国籍企業の規制の問題やリオ以降に問題化した環境問題について議論し、今後10年の数値目標をもった具体的な行動計画を策定すること、A砂漠化防止条約、京都議定書、バイオセーフティ議定書、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約などの環境条約を一刻も早く、確実に実施することを確認すること、Bそしてなによりも、世界貿易機構(WTO)や国際通貨基金(IMF)などが進めている経済のグローバリゼーションより、環境問題の解決が優先することを確認することであったはずです。
 ところが、「アジェンダ21」の検証はまったくなされず、環境と貧困の問題についてもほとんど見るべき成果はありません。また、数値目標についても衛生(サニテーション)や生物多様性についての数値目標は合意されましたが、再生可能エネルギーについての数値目標は合意できませんでした。
 企業責任については、「企業責任を促進する(promote)」との表現で、一部の国から提案されていた「奨励する(encourage)」との表現で合意されましたが、環境NGOが求めていた「企業責任についての国際的枠組み」については合意されませんでした。
 また、世界貿易機構(WTO)と多国間環境条約(MEA)との関係についても、提案されていた「WTOとの一貫性を保持する」との表現はなくなりましたが、貿易の自由化より環境問題の解決が優先する表現は入っていません。
 「共通だが差異ある責任」については、環境に関する部分については記述が残っていますが、開発に関する部分については記述がない形で合意されています。
 また、市民の参加について実施文書の「情報公開と住民参加に関する世界的なガイドラインの策定」の記述は途上国やアメリカなどの反対により削除されてしまいました。


再生可能エネルギーの合意に抗議声明
 ヨハネスブルグサミットの成否を決める重要なポイントの1つである再生可能エネルギーの数値目標についは、一部の途上国、アメリカや日本の主張が通り、数値目標なしの合意になってしまいました。また、この合意文書では、技術移転支援の対象として第9回持続可能な開発委員会会議(CSD9)で議論された原子力を含む持続可能なエネルギーの定義に言及し、原子力発電も容認するかのような表現になっています。今回の合意は明らかに、地球温暖化防止などの交渉を通じて、化石燃料から再生可能エネルギーを重視する方向に進みつつある世界の潮流に水を差すものです。
 再生可能エネルギーの数値目標については、途上国グループから、数値目標の記述がないだけでなく、クリーンな化石燃料の途上国への技術移転への補助強化を促す記述が入った案が提案され、これをアメリカや日本が支持し、これが今回の合意の基になりました。この途上国グループの提案は、産油国やアメリカとともに日本が妥協案づくりの中核となっています。ブラジルなどの提案は、産油国やアメリカ、日本などの強硬な姿勢の前に表に出ることなく、葬り去られてしまいました。
 日本政府の再生可能エネルギーの数値目標に反対する交渉ポジションは、京都議定書の重視を呼びかけ、世界実施文書の京都議定書の部分について調整をした日本政府の対応とも矛盾すると言わねばなりません。
 このヨハネスブルグサミットでは、地球温暖化問題の解決のためにも、また、エネルギーへのアクセスが困難な20億の人々が人間としての基本的なニーズを満たすためにも、再生可能エネルギーの数値目標に合意することが求められていました。
 CASAなど、ヨハネスブルグサミットに参加している環境NGOは、9月1日、再生可能な自然エネルギーの具体的数値目標の設定を求める「緊急共同声明」を出していましたが、今回の合意を受けて、別記の「緊急声明」を発表しました。


サミット議長、政治宣言案を発表
 9月2日、サミット議長は、世界実施文書と並んでヨハネスブルグサミットで決議される「政治宣言(ヨハネスブルグ・コミットメント)案」を発表しました。
 この文書については、ヨハネスブルグサミットで新たな成果を盛り込みたい南ア政府と、サミットを世界貿易機関(WTO)第3回閣僚で採択されたドーハ宣言や今年3月の国連開発資金会議のモンテレイ宣言の内容を超えないものにしたいアメリカなどとの間での綱引きが続けられていたと言われます。
 発表された政治宣言案は、6章69項からなり、これまで公表されていた「政治宣言の要素」とはかなり違う内容になっています。その内容は、予想通り妥協の産物で、弱い内容となっています。例えば、「共通だが差異ある責任」には言及していますが、「予防原則」への言及はなく、情報公開や政策決定への市民参加への言及もありません。気候変動に言及した部分では、再生可能エネルギーの文言はありません。
 しかし一方で、ドーハ宣言やモンテレイ合意、世界貿易機構(WTO)の文言はまったくなく、アジェンダ21と国連ミレニアム宣言の役割が強調されています。また、「多国間協調の将来(Multilateralism is the Future)」の章では、「世界でもっとも普遍的(universal)で責任のある機関である国連の役割を支持する」との記述がなされているなど支持できる内容も含まれています。このヨハネスブルグサミットでは、国連の役割を弱める動きもあり、また、非国連機関である世界貿易機関(WTO)のルールと国連の多国間環境条約(MEA)のルールとの優先関係が焦点になっており、この記述が政治宣言に記述されることには大きな意義があります。
 こうした国連の位置付けにはアメリカなどの反発が予想され、残り1日の交渉が注目されます。


期待を裏切ったヨハネスブルグサミット
 9月4日午後9時、ヨハネスブルグサミットは「世界実施文書」と「ヨハネスブルグサミット宣言」を採択して閉会しました。
 ヨハネスブルグでなされるべきことは、@「アジェンダ21」のほとんどが何故実施されなかったのかを検証するとともに、Aリオで積み残した環境と貧困、多国籍企業の規制の問題やリオ以降に問題化した環境問題について議論し、今後10年の数値目標をもった具体的な行動計画を策定すること、Bまた、砂漠化防止条約、京都議定書、バイオセーフティ議定書、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約などの環境条約を一刻も早く、確実に実施することを確認すること、Cそしてなによりも、世界貿易機構(WTO)や国際通貨基金(IMF)などが進めているグローバリゼーションより環境問題の解決が優先することを確認することであったはずです。
 しかし残念ながら、ヨハネスブルグサミットはこうした期待を大きく裏切る結果となってしまいました。「アジェンダ21」がなぜ実行されなかったかの検証はまったくなされず、環境問題の解決が貿易の自由化などのルールに優先することの確認はなされませんでした。地球温暖化問題の解決のためにも、持続可能なエネルギーシステムの構築のためにも、また、エネルギーへのアクセスが困難な20億の人々が人間としての基本的なニーズを満たすためにも、切実に求められていた再生可能エネルギーの数値目標については、アメリカや日本が頑強に抵抗し、数値目標なしの合意になってしまいました。
 ヨハネスブルグサミットは、世界の市民の期待を大きく裏切ったと言わざるを得ません。
 一方で、実施文書に、京都議定書の非批准国に批准を促す旨の記述が入ったこと、いくつかの分野で数値目標が設定されたこと、企業責任を強化するための新たな国際的枠組みを構築する可能性が残されたことなどの前進面もありました。


京都議定書の発効に弾み!
 ヨハネスブルグサミット通信2に書いたように、京都議定書については、8月31日に「京都議定書に批准した国は、まだ批准していない国に対し、適切なタイミングで批准するよう強く促す(strongly urge)」との表現で合意に達していました。
 こうした世界実施文書の合意を受けて、9月2日、カナダのクレティエン首相がサミットで演説し、「年末までに(地球温暖化防止のための)京都議定書の批准手続きをする」と表明しました。また、9月3日にはロシアのカシヤノフ首相が、「議定書批准に向け準備しており、極めて近い将来(very near future)に批准できることを期待する」と演説しました。京都議定書は、ロシアが批准すれば発効条件である先進国のCO2排出量の55%を超え発効できることになります。

後ろ向きの日本政府の交渉姿勢
 日本政府は、京都議定書問題では積極的な役割を果たしましたが、「共通だが差異ある責任」などのリオ原則を「開発分野」にも拡大するかという議論や、再生可能エネルギーの数値目標などではアメリカなどといっしょに後ろ向きの交渉姿勢をとり続け、日本に対する国際的な信頼を大きく損ねる結果となりました。

大ブーイングにパウエル米国務長官が立ち往生
 今回のサミットには、アメリカのブッシュ大統領は参加しませんでした。9月4日午後3時頃、代わりに参加したパウエル国務長官の演説が始まるとブーイングの嵐が巻き起こりました。最初は余裕の表情を見せてブーイングにも負けずに演説を続けていましたが、気候変動問題にふれたとたんにまた大ブーイング。さすがのパウエル長官も、顔が強張り、3度にわたってしばらく演説ができず立ち往生してしまいました。
 今回のヨハネスブルグサミットでは、アメリカが強力にすすめるWTOなどの自由貿易と環境条約との関係が焦点の1つでした。パウエル長官がヨハネスブルグサミットの首脳演説で、ブーイングで立ち往生した姿は、今の孤立したアメリカを象徴しているようでした。


ヨハネスブルグ・サミット政治宣言案に対するNGO声明(2002年9月3日)


アジア女性交流・研究フォーラム(KFAW)
アフリカ日本協議会(AJF)
沖縄環境ネットワーク
沖縄大学地域研究所アジア太平洋環境ネットワーク研究班
環境エネルギー政策研究所(ISEP)
気候ネットワーク
市民フォーラム2001地球温暖化研究会
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
メコン・ウォッチ
ヨハネスブルグ・サミット提言フォーラム(JFJ)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
A SEED JAPAN
FoE Japan


 ヨハネスブルグ・サミットが残り2日となった。サミットの場はしかし、貿易交渉が持ち込まれ、環境及び持続可能な開発への取り組みが侵食されることになってしまった。これまで交渉が続けられてきた世界実施文書の作成過程では、リオ・サミットで確認されたリオ原則(予防原則、共通だが差異ある責任、情報公開と市民参加など)すら侵食されかねない抵抗を受け、自由貿易優先をかかげる国際貿易ルールへの従属を促すような提案さえ出されていた。持続可能性への道標として大きな期待が集まっていた再生可能エネルギー推進のための達成目標はついに盛り込むことができず、むしろ化石燃料に依存する社会を温存する内容となってしまった。
 根本的な時代状況の危機認識に欠けたまま、かろうじて繕われたヨハネスブルグ・サミットの現状に対し、私たちは大きな失望を感じざるを得ない。
 私たちは、これから政治宣言を確定するにあたり、少なくとも以下の点が必要不可欠であると考え、各国政府に対し要請する。

 1.「予防原則」、「共通だが差異ある責任」、「情報公開と市民参加」などリオ・サミットで確認された原則を、環境の分野だけでなく貧困問題解決など開発の分野においても、明示的に再確認すること。

 2.国際的な環境に関する合意(多国間環境条約など)を、世界貿易機関(WTO)などの自由貿易システムより優先し尊重すること。

 3.グローバル化する企業の責任に関する国際ルール制定のための国連会議開催を呼びかけること。

 4.リオ・サミット以降、もっとも重要な成果である京都議定書の年内発効と確実な実施をふまえ、国連気候変動枠組み条約下でさらなる対策の強化を世界に呼びかけること。

 5.人間の安全保障の危機的な状況を認識し、軍縮の促進と平和構築を強く世界に訴えること。

 6.国連は、政策決定への市民、女性、先住民族などの参加をより強化し、持続可能な発展・開発を確保するためにその責務としてリーダーシップを発揮すること。

 

国際NGO共同声明(2002年9月3日、ヨハネスブルグ)

グリーンピース・インターナショナル
WWFインターナショナル
オックスファム・インターナショナル


 ヨハネスブルクサミットは、20億の人々がエネルギーを享受する機会を損ない、同時に、地球の気候を守るための再生可能エネルギー革命へ向う契機を逸したという汚点を、歴史に残すことになった。
 ブラジル、ノルウェイ、ニュージーランド、スイス、アイスランド他いくつかのEU諸国は、エネルギーに関して合意が前進しなかったことへの失望をはっきりと言葉に表したのに対し、米国、サウジアラビア、日本、カナダ、オーストラリアは、化石燃料の利益を守ることができたと確信して、会議場を出た。

 WWF インターナショナルのジェニファー・モーガンは、こう語る。「今日の全体会合で披露された各国首脳や政府代表のスピーチには、気候変動と貧困問題への対策の必要性を明言したものがあった。しかし、階下の交渉ルームにいた閣僚達は、明らかにそれを聞いていなかった。このサミットのブッシュのエネルギープランは、それの印刷された紙に含まれる炭素ほどの価値もない。」
 一年以上に及ぶ議論の末、ヨハネスブルグサミットのエネルギー部門の交渉は、ただの一歩も前進を見せることができなかった。「行動計画」は“計画”と呼べるようなものではなく、またほとんど何の“行動”も含まれていない。

 「我々は昨年から一年半を費やして、ダメージを最小限にとどめようとしてきた。今、持続可能なエネルギーの未来を国民と分ちあいたいという意志をもつ国々と連携して、我々は前へ進まなければならない。」とグリーンピース・インターナショナルのスティーブ・ソイヤーは語る。
 「より環境負荷のない、より健全な家庭用エネルギー源の普及の機会を失っても、地球の気候変動の脆弱性の危険が増しても、不利になるのはいずれの場合でも最貧層の人々なのだ。」とオックスファム・インターナショナルのアントニオ・ヒルは指摘する。

 「世界実施計画」のエネルギー部門に関して合意されたのは:近代的エネルギーにアクセスできない、世界20億の人々にエネルギーを供給するために何もしない。再生可能エネルギーの普及に関して一切の目標値や目標年を定めない。世界のエネルギー構成の主要部分を占める化石燃料産業を支えている巨額の補助金を削減するために何の措置もとらない。ということだった。
 ここ数年の間に合意されてきたことを単に繰り返しただけである。

<以上>


WSSD自然エネルギー促進合意は逆行(NGO緊急声明)

 

世界は自然エネルギーの促進合意に失敗
受け入れられない「実施文書エネルギー合意」



ASEEDJAPAN,FoEJapan,環境エネルギー政策研究所
「環境・持続社会」研究センター(JACSES),気候ネットワーク
「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク(GEN)
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
ヨハネスブルグ・サミット提言フォーラム


 本日(9月2日)、ヨハネスブルグ現地時間午後9時頃、世界実施文書におけるエネルギー関係の記述が合意に至った。わたしたち、ヨハネスブルグに集った日本の環境NGOは、この合意に大きな怒りと失望を表明する。

 今回のサミットは、リオから10年の世界の地球環境問題への具体的な取り組みを検証するものである。特にエネルギー分野に関しては、気候変動問題への関心の高まりから、次の世紀に向けた新しい政治的意志の表明が大きく期待され、2010年に世界全体の自然エネルギーの割合をどのくらい増やすのかという数値目標の設定が最大の目標の一つとなっていた。
 しかし、今晩、各国が合意に至った内容は、エネルギーの目標数値や実施時期が全く記述されないだけではなく、むしろ、化石燃料の推進、大型水力発電の推進など、既存のエネルギー技術の促進を加速するものとなっている。さらに、文章には明記されてはいないが、原子力発電推進の懸念も指摘されている。

 今回の合意は、リオから10年間の世界の努力に逆行するものである。また、今回の合意は、貧しい人々が自然エネルギーにアクセスする機会を妨げ、途上国のよりクリーンなエネルギー技術への燃料転換を阻害し、将来世代にわたって深刻な影響を及ぼす地球温暖化を促進し、持続可能な社会を実現する際の大きな障害となるものである。

 このような合意に至った大きな原因の一つとして、日本政府の強硬な態度が指摘されている。日本政府は、早い時点から、世界的な自然エネルギーの目標値設定そのものに反対し、アメリカや石油生産国と組んで、交渉の進展を阻害し、合意に至った文書の作成に深く関与している。わたしたちは、日本の環境NGOとして、日本政府のこのような交渉姿勢に大きな怒りを覚える。

 わたしたちは、具体的数値目標を含まず、また、化石燃料や水力発電などを推進し、再生可能な自然エネルギーの促進を阻むような実施文書を、絶対に受け入れることはできない。日本政府は、世界の持続可能性に向けて、積極的な取り組み姿勢を今すぐに実行に移すべきである。わたしたちは、南アフリカに集う日本の環境NGOとして、より一層、持続可能な社会の実現に向けた努力を続けることを強く誓う。


ヨハネスブルクでの持続可能な開発サミット

 8月26日から9月4日までヨハネスブルク(南アフリカ)で、「リオ+10」と言われる持続可能な開発サミット(WSSD)が開催されます。「リオ」はもちろん10年前にブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミット(国連環境開発会議)を指します。WSSDはこの10年間の世界の取組みを検証し、次につなげる重要な会議です。
 ヨハネスブルクのある南アフリカは長年、白人支配が続きました。人種隔離政策(アパルトヘイト)は撤廃され、黒人解放運動の指導者ネルソン・マンデラが大統領になりました。抜群のカリスマ性を誇ったマンデラの後も、解放運動を指導したアフリカ人民族会議が政権を受け継いでいます。
 しかし、世界一の金属資源を抱えながら国民の多くは貧しく、会議の行われるヨハネスブルクは多くの貧困層と失業者が集まり世界一の犯罪都市と言われるまでになり、途上国の抱える問題の深刻さを象徴する街でもあります。
 サミットには世界の多くの首脳が参加し、持続可能な開発へ向けた取り組みを話し合う予定です。ただ、この1年間の様々な行動で物議をかもした「時の人」であるアメリカのブッシュ大統領は欠席の見込みと伝えられています。

ヨハネスブルクで採択される政治文書
 ヨハネスブルクサミットで合意される予定の文書は「政治文書」、「ヨハネスブルクサミット実施計画」の2つの政治文書と、色々な主体の提案集である「約束文書」です。
 地球サミットでは政治文書「リオ宣言」と行動計画「アジェンダ21」が採択されました。いずれもこれまでの経済・社会のままでは地球環境が保たないことを認識し、小手先の対症療法ではなく、経済・社会を根本から変えようとするものでした。しかし、その進展ははかばかしくありません。
 ヨハネスブルクサミットではこれまでの経緯を見る限り、残念ながらリオのように経済・社会を根本から変えて環境と開発への世界的な取組みを大きく前進させようと意気込んだ宣言や行動計画を採択できる見込みはありません。
 この会議では、世界の経済・社会を環境保全型に変え、南北問題を解決していくため、現在の破滅への道を少しでも軌道修正する方向で合意する必要があります。

リオから10年の検証
 地球サミットでは「気候変動枠組条約」「生物多様性条約」の2つが合意されており、その後「砂漠化対処条約」も合意されました。地球環境関係の各種条約は、モントリオール議定書の数回にわたる強化、京都議定書の採択、生物多様性条約「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」など、この10年に一定の前進はありました。しかし、10年前にはこの分野でも、条約・議定書整備がまだである他の分野でも、もっと多くの前進を予測していたことでしょう。
 地球サミットから10年、果たして世界の環境対策は進んだでしょうか。
 この10年、世界は環境問題、そして経済・社会の変革に足踏みを続けたと総括せざるをえません。先進国の資源・エネルギーの浪費が続き、一部の途上国が同じ道を辿ろうとしています。森林破壊や砂漠化は止まらず、生物の絶滅も続いていると見られています。こうした破滅型経済・社会の原因に、二つの主体があります。一つは特定先進国グループの問題、もう一つは多国籍企業です。

環境条約交渉における特定先進国グループの問題
 この1年、超大国が自ら合意に参加した国際ルールを公然と無視して10年の交渉の成果を崩壊させたり(生物化学兵器検証議定書など)、離脱したり(京都議定書など)する驚くべき事態が生まれました。この10年を象徴する京都議定書の交渉では、世界全体でどれだけ対策をしなければならないかに何の関心も示さずに自国はこれしか削減できないとか、他の国には認められていない特別扱いを認めよとか、約束を破った国への強制措置は反対だなどと、世界180カ国を待たせてただ1カ国抵抗を続けた先進国がありました。同じ国は他の数カ国と組んで4カ月後の会議でも世界180カ国を待たせて合意に抵抗しました。これが日本の政府代表団だったのです。
 これは何も京都議定書交渉に限ったことではありません。多くの条約交渉で、表面的に「各国の利害が対立」と報じられることがありますが、先進国数カ国が対策強化に抵抗し、世界の残りの大多数の国が対策強化を求めて対立という構図が見られます。どちらが正義とはなかなか言えない通商交渉と異なり、多くの環境条約の交渉はどちらが環境対策に熱心で、どちらが抵抗しているのか、どちらに分があるのか容易に判断できます。こうした抵抗勢力の常連が米国であったり日本であったりするわけです。
 我が政府代表団は、ヨハネスブルクの採択文書の事前交渉でも自然エネルギーや省エネの数値目標を外させたり、原子力拡大と読める提案をするなど、国民世論とかけ離れた行動をとってきました。政府はこれまで交渉に望む方針について殆ど国民の意見も聞かず、国会に諮ることもなく密室で決定して交渉を行ってきました。国際交渉の場で起こっている出来事についてマスコミが多くを伝えるとは限りませんし、世界が呆れているのに日本のマスコミだけが「タフなネゴシエーター」などと持ち上げることもありますが、私たちは自分の国の政府代表団が海外で何を主張し、世界の国々・人々からどれだけ顰蹙を買って環境保全の合意を骨抜きにしているのかを知り、それが繰り返されないよう監視していかなければなりません。

多国籍企業の問題
 大規模な環境破壊は大規模な経済活動から発生します。世界規模で事業を展開する多国籍企業は経済規模で国に匹敵するまでの力をつけ、国と企業の経済規模をまとめてランキングをすると上位100のうち多国籍企業が29も入ると国連がまとめています。その中には石油会社や鉱山会社、化学メーカーなど大きな環境破壊をもたらす企業が少なくありませんが、その規制は手つかずの状態にあります。多国籍企業の規制のための規範は地球サミット前に合意間近まで行ったことがありますが、アメリカなど先進国の反対でつぶされてしまいました。
 環境条約の交渉の幾つかでは、強硬な反対国の背後に多国籍企業がいることは公然の秘密になっています。最近ではかつての規制の動きとは逆に、多国籍企業が独立国や自治体の政策にまで口を出す投資自由化の交渉が行われるようになってきています。途上国で相次いでいる水の「民営化」で多国籍企業が進出する動きを示していることや、植物の遺伝子を解読した大企業に「特許」を与えてしまう動きなど、多国籍企業がますます世界の市民の生存基盤に関わっていることに対し、国際的な監視が必要です。

ODAをめぐる問題
 この10年間、南北格差はますます拡大しました。途上国は先進国から多額の債務に苦しみ、それを返済するために一次産品の輸出拡大に精を出し、多くの国が同じ行動をするので価格の暴落を招いてますます苦しくなってきている、と見ることができます。ここ数年、先進国のマネーゲームで国の経済を崩壊させられたところも見てきました。こうした無理を重ね、途上国は経済で疲弊するだけでなく、輸出優先の農業や鉱業、工業生産のために甚大な環境破壊をもたらす例をこの10年間私たちは随分見てきました。南北問題のために、無秩序な貿易自由化や、多国籍企業や投資家の無秩序な振る舞いへの制約が求められています。
 ヨハネスブルクサミットの準備会合では、先進国と途上国の間でODA(政府開発援助)のGDP比0.7%を守るよう文書に盛り込むかで対立があって、他の議論がストップしたとの記事がありました。GDP比0.7%は国際合意なので先進国は努力してこの水準に引き上げるべきですが(北欧諸国など一部しか守っていません)、ODAを増やせばよいという単純なものではないことは、皮肉なことに最近逮捕された与党議員の活動ぶりで明らかになっています。
 ODAは現地の市民の生活を向上させ、南北格差是正に役立っているはずでした。ところが、商社やコンサルタント会社の暗躍のニュースは連日新聞をにぎわすようになり、日本のODAには国内の無駄な公共事業以上の問題があることが明らかになっています。現地住民に役立たないどころかダム建設や鉱山開発、大規模プランテーションなどで住民を追い出したり、広範囲の環境破壊をもたらしてしまうようなODAもあり、ODAで豊かになるはずの国のNGOがODAプロジェクト反対のためになけなしの金をはたいて来日することも珍しくありません。途上国の独裁政権が崩壊して日本のODAが独裁を支えてきたことが発覚したことも一度や二度ではありません。政府や海外向け金融機関は海外の事業については相手国政府との関係を口実に、これまで環境アセスメントや住民参加を拒んだり、様々な調査結果の公表も拒否してきました。ODAや海外融資の内容は今に至るまで殆ど明らかにされていません。アメリカの援助の約3分の1がイスラエル政府に出ているような例もあります。ODAの質が今ほど問われていることはありません。

9・11テロと持続可能な開発
 当初9月11日に終了する予定で計画されたこの会議は、1年前にアメリカで起きた不幸な事件を想起させるとして1週間早められました。アメリカでの不幸な事件の原因については様々な意見があるでしょうし、対処の仕方についても同様でしょう。ただ、あの事件以来、テロ対策の名のもとに多くの人命が第三世界で失われ、またテロ対策を口実にした抑圧を行う国が増えたことは大変憂慮すべきことです。広島市は平和宣言の中で報復の連鎖に憂慮を表明、長崎市は超大国を名指しで非難しました。環境保全や持続可能な開発はこうした動きと無関係に達成されるものではありません。

環境保全と持続可能な開発に向けて
 環境条約ができても国内、とりわけ先進国の国内で着実に実施されなければ意味がありません。世界第2位の経済規模を持ち、資源・エネルギーの消費量や環境負荷も巨大である日本の経済・社会を変えることは、世界が変わる第一歩として大変重要です。地球サミットの時は「地球規模で考えて地域で実行」という言葉が世界に共有され、地域で地道に活動している市民・NGOを大変勇気づけ、その正しさを確信させました。この10年の総括は大変暗いものにならざるをえませんし、今後の展望も必ずしも明るくはありません。
 しかし、30年前のストックホルムでの全世界の合意、10年前のリオでの全世界の合意は、現在の経済・社会のままでは破滅するという当たり前のことを世界各国が認め、道を変えようとの決意を確認したものです。
 この道に1日も早く返り、世界で、また地域で発展させていくことが世界とりわけ先進国のつとめであり、先進国市民の私たちに課された課題でもあります。地域での環境保全の活動、公害や乱開発に反対する活動は、世界各地で同じ思いを共有しながら環境をまもるために活動している市民と共通の、ストックホルムやリオで確認された大道と言え、この道を着実に進んで発展させていく先にしか環境保全と持続可能な開発の将来はないと言えるでしょう。







リオから10年、世界と日本の温暖化対策は進んだか

 地球温暖化問題は、地球環境問題の代表です。この問題は化石燃料消費という先進国経済・産業活動の根本に問題があり、現在の大量生産・大量消費・大量廃棄の経済社会を、その根本から問い直し、抜本的な変革を迫るものです。世界は10年前に気候変動枠組条約を、5年前に京都議定書に合意しました。しかしその後もアメリカブッシュ政権が京都議定書からの離脱を宣言し、10年の交渉が無に帰するかと心配されました。幸い世界は日本など一部の国の抵抗にも負けずに何とか細部のルールの合意に至り、カナダの動向は不透明ですがアメリカとオーストラリアを除いて京都議定書の下に集まりました。但し、対策はまだ始まったばかりです。

温暖化の兆候
 この100年に平均気温は約0.6度上昇しました。この10年は史上最高を更新した年が幾つもあります。科学者は20世紀の温暖化の程度は過去千年のどの世紀よりも著しく、この原因は人間活動抜きには考えられないとしています。
 このまま対策を取らないと、平均気温が今後100年に最大5.8度も上昇すると科学者は警告しています。
 
原因は先進国から、被害は途上国から
 温暖化の原因は言うまでもなく先進国です。アメリカは二酸化炭素の25%を排出し、これは中国やインドを含む途上国40億人分の排出量に匹敵します。日本の排出量はその5分の1で、インドなど20億人分の排出量に近い巨大な量になります。
 一方、先進国ではまだ顕在化していない温暖化の影響で深刻な被害を受けているのは途上国の人々です。太平洋の島国や沿岸国には、海面が上がって土地の一部が失われたり建造物が波に洗われたり、井戸に海水が混ざったり、田畑の一部に塩水が入って使えなくなったり、などの被害が徐々に出始めています。高地の国々では氷河が溶けて短期間のうちに山の上に巨大な湖が出現し、氷や砂利の「ダム」が決壊すると下流の村々が失われる危険があります。
 これらの国の人々はほとんどCO2を出しておらず、先進国の対策の遅れの一方的な被害者と言えます。

日本での排出はどこから…
 日本のCO2排出量の4割は工場などの産業から出ています。その3分の2は鉄やセメントをつくる素材産業から出ています。素材の多くは建設に使われます。また、日本のCO2排出量の2割は運輸で、その大半は自動車です。貨物がその3分の1程度になりますが、これも多くが建設資材の運搬です。無駄な道路やダムを造ったり、ビルを建ててはこわす日本型土建国家のシステムが、大量のCO2排出の元凶ということになります。
 
この10年で日本の排出量は…
 日本のCO2排出量は2000年までに総量で10%、一人当たり排出量で7%増加しました。工場などの産業部門は1%増加、オフィスやコンビニなどの業務部門、家庭部門、自動車が大半を占める運輸部門は全て20%以上増えました。ただ、産業が努力が進んでその他がさぼったとは言えません。産業は、工場の省エネを徹底し、自然エネルギーを使うことや、家庭などにエネルギー効率のよい商品を提供することなどのつとめがありますが、両方とも芳しくなく、工場ではこの10年で生産量は落ちているのにCO2は逆に増やしてしまいました。家庭や商店、クルマでは効率をめいっぱい上げるように、厳しい省エネ規制をして浪費型商品を一掃すること、新築の時には断熱性能を上げて冷暖房を最低限で済ませることが重要ですが、産業界の反対などで実現していません。逆に、家電やクルマは大型化や多機能化でエネルギー浪費製品が溢れ、家庭には小型テレビ10台分もの電力を使うプラズマテレビなど、極端に効率の悪い機器が売られようとしています。この10年間を総括すると、残念ながら対策は進んでいないと言わざるを得ません。2000年は中曽根民活で日本中で狂ったように無駄遣いをしていたバブル絶頂期の1990年よりもさらに効率は悪くなっているのです。
 
これまでの温暖化防止の政策は…
 日本は1990年に地球温暖化防止行動計画を決定、2000年までに一人当たりCO2排出量を1990年レベルで安定化させることを決めました。2000年の一人当たり排出量は7%増でしたから計画は破綻したことになります。日本政府はこのことをできるだけ触れまいとしている様子で、反省も総括もありません。
 計画破綻の原因は幾つかあります。一つは、新しい政策がほとんどなく、従来型の開発政策を続けるとそれがそのまま温暖化対策になるとしたことです。数年前まで日本政府は「地球温暖化防止行動計画関連施策」として予算額を発表していました。行動計画関連で政府は毎年11兆円も支出していましたが、その4分の3は何と道路建設です。
 国土交通省は地球が温暖化しようが寒冷化しようがお構いなしに道路建設を続けるでしょう。他にも林野庁の林道建設、通産省の原発増設、厚生省(当時)の廃棄物焼却施設建設、その他港湾建設、都市公園建設など公共事業など従来型開発政策がずらりと並び、計画の大半を占めています。要は温暖化を目的とした新しい政策は殆どなかったということです。道路建設や廃棄物処理施設建設などは逆に温暖化を加速すると言われていますし、ここにあげた多くのものは温暖化防止で求められている大量生産・大量消費・大量廃棄経済からの脱却には何ら役立たないものが多くなっています。
 二つ目は対策が進まなくても見直す仕組みがなかったことです。産業は効率が悪化、運輸は自動車激増で大幅排出増、となっても政策見直しをする仕組みがなく、また環境庁には何の権限もなく、開発省庁の抵抗にあってそのまま放置されました。
 三つ目は温暖化防止に逆行する政策をそのまま続けたことです。石炭火力発電所は天然ガス火発の2倍もCO2を出しますが、政府はそれを承知で石炭火発を倍増させてきました。交通でも、道路建設に毎年15兆円もつぎ込み、逆に鉄道は赤字だからとどんどん廃止してきました。
 公共事業は毎年大盤振る舞いを続け、海峡大橋・海峡トンネルなどの無駄なプロジェクトを満載した第五次全国総合開発計画も作りました。欧米の一部の国にあるように政策に対する環境アセスメントを制度化すればこのような事態にはならなかったでしょうが、政府の政策の優先順位で環境はいつも後回しでした。
 こうした特徴は、今の「地球温暖化対策推進大綱」にも当てはまります。6%削減のうち、国内削減は0.5%だけです。CO2は2010年になってようやく1990年レベルに戻すだけです。代替フロン類は50%も増やすことを認めました。大半の削減は国内の既存の森林が吸ったことにし、また海外から排出枠などを買ってきて達成します。CO2ゼロ削減でさえ、今の政策で達成できないと早くも懸念されています。産業のCO2削減と代替フロンの増加抑制はいずれも産業界の自主計画にほぼ白紙委任されました。
 原発の電気を2000年から2010年までに3割も増やすことや、道路建設を進めることも前提になっています。クルマの燃費や電気製品の省エネ規制は今回ほとんど行わず、浪費型製品が出回るのを産業に気兼ねしてあえて放置したまま、かわりに家庭にテレビの1時間減、シャワー1分減などをよびかけています。自然エネルギーを増やすはずの制度はごみ発電を対象に入れたために、ごみ発電・廃棄物焼却施設促進の制度に様変わりしてしまいました。
 政府はどの対策で何トン減らして国内で0.5%削減すると一応は数字を積み上げていますが、気候ネットワークが調査したところ、法制度で達成が担保されている削減量は全体の6分の1だけで、3割は産業界任せ、4割は削減目標すらない制度で「達成する」というものでした。2004年と2007年に点検して見直すとしていますが、どういう基準で見直すのか不明です。

実効ある対策を
 この10年、温室効果ガス排出は増加し、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済はそのまま温存されています。工場のエネルギー効率は悪化し、無駄な公共事業も続き、交通に占めるクルマの割合も増えています。温暖化対策を強化したら経済に悪いとか、失業だとか、企業が海外に逃げて行ってしまうなどの主張もありますが、今のようにエネルギー浪費製品をエネルギー効率の悪い工場で作り続け、国全体では無駄な公共事業で税金も資源エネルギーも浪費していく、そんな経済が今後も高い競争力を持ち続け雇用を維持できると考える方が愚かと言えましょう。
 産業界の一部にあるような、大量生産を続けながら将来技術者が夢の技術を開発するまで待つ、という愚かなまねは避けなければなりません。温暖化を始めとする地球の警告は、大量生産・大量消費・大量廃棄の現在の経済・社会を根本から変えることを求めているのです。緩い政策のまま良心的な企業や国民の努力を待つのでは温暖化対策は進みません。工場や発電所の省エネ効率を上げる規制を強化し、建物の省エネ効率を規制に変え、家庭や商店へ売られる機器の省エネ効率規制を大幅に強化し、温暖化を加速するような企業活動は一部は禁止し、残りも経済的にも損になるような制度に変える必要があります。
 また、一方で対策をとって一方で逆行する政策を放置するのではなく、政策への環境アセスメントを制度化し、公共事業など逆行する政策を温暖化防止や環境保全の観点から見直し、場合によっては中止させることが必要です。






utiwa_bk.gif (6074 バイト)