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陳 述 書
2011年5月24日
東京都八王子市高尾町1989−5
橋本 良仁
高尾山天狗裁判原告団を代表して事務局長の橋本が陳述します。
3月11日に発生した大震災と東京電力福島第一原発の過酷事故は、これまでの日本の公共事業のあり方に対して大きな課題を私たちに提起しています。
道路行政に対する国民の批判は、現在、厳しい批判に晒されている原子力行政のあり方と酷似しています。公共性が高いとして国策のもとに強引に進められてきた道路行政や原子力行政ですが、根本的な転換が求められています。
本訴訟を提起した原告の思いを述べます。国史跡八王子城跡と国定公園高尾山を直径10メートルのトンネルで串刺しにする圏央道建設が地元の住民に知らされたのは、1984年8月でした。東京に残された最後の自然の宝庫である高尾山の自然を守るため建設反対運動を始めて27年になります。私たちは行政に対して、あらゆる機会と手段で建設中止を訴えてきました。1998年から始めた「高尾山にトンネルを掘らせない」の国会請願署名と提訴後に始めた裁判所宛の署名は、すでに60万筆を超えています。
2000年10月25日、1060人と6つの自然保護団体、高尾山など5つの自然物を原告に工事差し止めを求める民事訴訟を東京地裁八王子支部に起こしました。その後、工事の進行にともなって、2区間の事業認定と収用裁決取り消しを求めて2つの行政訴訟も起こしました。どのような手だてをつくしても止まらない事業に対して、私たち市民が最後の拠り所としたのは裁判所でした。司法こそが行政の暴走を止めることができるのではないかと考えたからです。
これまで下された6つの判決は、いずれも圏央道の公共性を主張する行政に対してチェック機能を発揮せず行政裁量権を最大限認めて、結果として行政の暴走を許しています。本訴訟の原審において、公益性判断の重要な指標である費用便益分析をめぐり、現役の国交省課長を尋問しました。事業評価の重要な判断材料である費用便益分析はまるごと外部コンサルタントに委託され、費用便益比2.6という結果だけを得ただけで、計算に用いたバックデータは一切保存していないことが明らかになりました。圏央道の公益性を裏付けるデータを国民の前に明らかにすべきです。情報を開示しない行政行為に誤りがないとする判断は認められません。
放射能汚染により、多くの被災難民が今なお彷徨い、事態の収束はおぼつきません。これは、原子力行政と電力事業者による「原発安全神話」がもたらした結果であり、人災です。この災禍の原因は、政・官・財・学・メディアの癒着が生み出したものといえます。原発を推進してきた政治家、原子力産業に群がってきた業界、「安全神話」を振りまいてきた専門家らの責任は重大です。癒着の構造を批判すべき立場にあったメディアも同罪です。原発の危険性を明らかにし、建設や運転中止を求めた市民の訴えをことごとく退け、「安全神話」を認めてきた司法にも重い責任があります。
圏央道の事件でも、国土交通省は控訴人等が指摘した高尾山や八王子城跡のトンネル工事による地下水の低下を指摘したことに対し、専門家からなるトンネル技術検討委員会の結論を前面に出して、地下水位は回復するので、自然環境への影響は小さいとする結論を正当化してきました。今回の福島原発事故で明らかになったことは、専門家からなる原子力安全委員会が国民の安全管理に何の役にも立たなかったこと、大学の原子力工学の専門家がいずれも原子力産業と癒着していることなどが暴かれました。専門家を使ってあたかも科学的な検証をしているかの外形をつくっても、決して国民の為に検討していないことが明らかになったのです。だからこそ、司法が国民の安全と権利を守るために行政をチェックし、専門家を称する行政側の結論を国民の立場からチェックするのが司法の本来の役割です。
2004年圏央道あきる野の土地収用裁判で、東京地裁民事三部は、「圏央道のアセスメントは不十分で被害発生の蓋然性は高く、都心の渋滞緩和の根拠は乏しい」として事業認定を取り消しました。行政裁量権を最大限認めて行政に追随することは、司法の自殺行為に他なりません。暴走を続ける行政に対し、司法はチェック機能を発揮してください。当法廷におかれましては、本事件への公正な判断を期待して私の陳述を終わらせていただきます。
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