環境省「アセス法検討会」で、公害・地球懇が意見発表

   原発事故を重視し、制度への反映を

 

                公害・地球懇代表幹事 小 池 信太郎

 

 環境影響評価法が本年(2011年)4月、改正された。

 環境省環境影響評価課担当課長補佐より6月23日、公害・地球懇の私あてに、つぎのような連絡があった。

 「法改正を受け、その具体的な実施方法についての全事業共通のガイドラインである『基本的事項(環境省告示)』を見直すべく、環境省では検討委員会を開催し、技術的検討を開始しています。この検討委員会において、法改正を受けて新たに導入される『計画段階配慮(いわゆる戦略的環境アセス)=SEA』の手続きについて、以下のとおり、関係団体へのヒヤリングを予定しております。@日時は、7月14日、A場所は、東京都内、B議題は、計画段階配慮手続きの実施について、Bヒヤリング団体は5団体程度です。」

 この連絡・要請を受け小池からは、ぜひ、意見を述べたい旨回答した。

 早速、公害・地球懇政策委員長と相談。これまでのアセス法制定から今日に経過を含め、内容を検討し、「環境影響評価法改正を受けての『基本的事項』見直しにあたっての意見」を文書としてまとめ提出した。(全文は、公害・地球懇ホームページに掲載してありますので、ご参照ください。)

 7月14日、内幸町航空会館でヒヤリングが行われ、意見発表団体は5団体であった。

 環境NGO関係@自然保護協会、A公害地球環境問題懇談会

  事業者団体  @電気事業連合会、A国=国土交通省・内閣府(沖縄総合事務所)、

        B自治体=東京都

 

 

公害・地球懇を代表しての私の発言

 

 公害・地球環境問題懇談会の小池です。

 本日のヒヤリングにあたりまして、お手元に配布されましたとおり、文書により提出しましたが、9月にもう一度行うということであり、文面は、範囲を広げてありますが、今回は、戦略アセスを重点におき、意見を述べ、他は次回に回したいと考えております。

 10分間という限られた時間ですので、基本的な主張を文面「はじめに」の箇所に関連させ、3点述べます。

 

史上最大の被害、原発事故を考えて

 第一は、東日本大震災により発生しました福島原発事故こそは、わが国史上かって経験したことのない最悪の事態といえるものです。その被害は、現在ばかりでなく、次世代にまで及び、しかも、被害は、事故発生地域はもちろんのこと、広範な地域や他国にも拡散してきています。また、放射能汚染は、内容によっては、数千年から万年単位で引き継がれるというものです。

 原発事故は、その海域の豊かな海を汚し漁民から漁場を奪い漁港関連の人々の生活を深刻化し、また、大気や土壌を汚して農地と畜産物を奪っています。そして、消費者から新鮮な魚介類・農産物の供給を脅かしています。

 

環境影響評価法の求めているものは何か

原発推進の経産省ではなく、環境省こそその責任を果たせ

 第二は、環境影響評価法では、第一条(目的)として、「・・・事業に係わる環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活に資することを目的とする。」と定めています。

 史上最大の事故の発生と、さらに、それが拡大しているもとで、環境影響評価法に掲げるその目的が生かされることが、全国民的な願いですし、行政に求められているのではないでしょうか。

 では、環境保全の面で、どこがその役割を果たすのか不明確である、などということでは、国民として到底納得できないのではないでしょうか。

 発電所をめぐっては、環境影響評価制度制定時に、電気事業法と併用するような不明確な運用がなされるようになってしまいました。このことは、戦略的アセスメント制度の制定のときも、問題の原因ともなりました。

 中央環境審議会によって立ち上げられた戦略的環境アセスメント研究会での「戦略的環境アセスメント導入ガイドライン」では、発電所についてもアセスの対象にするという内容で委員も合意し、パブリックコメントでも賛成意見が寄せられたところを、委員の知らないところで、突然適用除外が決まったと伝えられています。

 この異常事態を裏付ける確かな情報として伝えられる背景は、電力業界の圧力、与党経済産業部会の突き上げ、複数の政治家からの働きかけがあったためといわれます。「与党経済産業部会での突き上げは酷かった。何と40人もの与党議員や電力業界などの面々が、環境省の幹部をつるしあげたという」「結論を出す研究会当日、会議の直前に環境省局長らを、議員が呼びつけて、発電所はずしを迫ったなどという」などと、その由々しき事態の内容が、公然と伝えられています。

 原発推進の立場の経産省が安全性のチェックをするなどは問題です。環境省が、もっと前面に出て、環境影響評価法の目的に沿った役割を果たすべきと考えます。

 

電力事業を特別扱いすべきでない

「原子力安全に関する条約」が求めるものは何か

 第三は、戦略的環境アセス制度では、電力事業を特別扱いにすべきでないと考えます。 1994年「原子力安全に関する条約」が結ばれ、わが国も同年9月、国会で承認されました。この条約では、原子力施設について、@安全に影響を及ぼす立地について評価されること。A安全確保のため再評価されること。などと規定されています。「原発立地が困難である」などを理由とする特別扱いは、国際ルールの上からも問題です。

 

具体的項目、「代替案の義務化」、「発電所の扱い」

環境省として、一歩踏み出せ

 次に、2ページ以降の具体的な項目、とくに、(2)の代替案の義務化と、(4)の発電所の扱いと原子力の扱いについて意見を述べます。

 「代替案の義務化」については、義務化そのものについては制度的に位置づけられていません。

 「原発関係」についても、電気事業法によるものとされています。

 環境影響評価法は、その目的として、何を求めているのか、さらには、史上かって経験したことのないような深刻な異常事態のもとで、国民は何を求め、それに沿った法制度の運用を求めているのです。

 環境行政の範囲内で、それが、事実上生かされるような検討を強く求めたいと思います。 環境省が所管する内容で一歩踏みだし、それを拡大していったらどうでしょうか。

 原子力について、その廃棄物や放射性物質については、環境省が管理をする主務官庁です。その役割を生かし、環境省として、一歩踏み出し、放射性物質について、評価項目に書く、また、書くことを誘導するような提案をする、書かない場合は、なぜ書かないかを確かめるような指導をする、いま、見直しにあたって、こうしたことが求められているのではないでしょうか。

 法律がボーダーラインにあるとき、「やればやれる」、「やらなくてもよい」というときに、法の目的や、環境省の役割の発揮こそ求められていると考えます。  

 

環境アセス法成立のいきさつ

電力業界の圧力により、電気事業法との並立持ちこまれる

 公害と乱開発をなくし、豊かな自然環境を守るためには、環境アセス制度の確立や内容の充実・改善は、国民的な重要な課題として、年々重視されるようになった。しかし、数度にわたる法制化の機運も、経済界や開発官庁の反対でつぶされ、1984年環境庁(当時)は法制化を断念。以来、環境アセスメントは、法律に基づかない「閣議アセス(要項アセス)」といわれるものとなった。これは、アセスの本来の目的とはほど遠いばかりか、“開発の免罪符”とか、アセスメントではなく開発事業につじつまを合わせる“アワセメント”と揶揄され、世論の批判をあびる結果となった。

 その後、法制化の機運が高まる中で、いぜんとして、通産省(当時)、建設省(当時)などの開発官庁と経団連など財界、とりわけ電力業界は、あからさまに法制化反対の大合唱を展開した。一方、OECD(経済協力開発機構)諸国の中で環境アセスメント制度を持たないのは日本だけということがマスコミにも取り上げられ、「国際的にも恥ずべきこと」との非難が集中した。

 1997年6月、アセス制度(環境影響評価法)が成立した。これが「事業アセス」で、この法案成立に当たっての国会審議の中では、次に「戦略的環境アセスメント(計画段階からのアセス)の法制化に向けて早急に検討を進めていく必要がある」との附帯決議が行われた。

 ところが、法制化に執拗に反対し続けてきた電力業界や通産省(当時)は、電力・原発については、電気事業法との併用を持ち込んだ。計画段階からアセスの対象とする戦略的環境アセスの法制化が「原発立地が困難」との理由と言われ、それが事実をもって裏付けられるものとなった。

 

「実効ある環境アセスメント法」の実現めざして

公害・地球懇、その取り組みをふりかえって

 公害・地球懇の誕生とその後の運動の足取りは、実効性ある環境アセスメント制度の実現を求めてのたたかいが、重要な柱の一つであった。

 環境アセスメント制定をめぐってヤマ場をむかえた時のことを思い出す。制度制定の中心的役割を果たした中央環境審議会森島昭夫企画政策部会長(後の中央環境審議会会長)に、公害・地球懇のパンフ「こんどこそ実効性ある『環境アセスメント法を!』」を手渡し、「私たち会の意見書書です。ぜひ、よろしく」と直接手渡し要請した際のやりとりを思いだす。森島部会長から「私たちには応援団がない。皆さん頑張ってください」との発言がかえってきた。森島部会長の発言の裏にあったものは、財界、とりわけ電力業界のうごきであることは、要請した私にとっても異常なものとして伝わった。しかもこの異常さが、今日まで続き、原発事故につながってきたものと考える。

 公害・地球懇は、毎年の公害被害者総行動デーの中で行われる環境大臣交渉では、1998年以降14回にわたり、「環境アセスメント制度の充実・改善を求め」要望意見を述べてきた。

 その主張の中心は、電力業界が「原発立地に支障をきたすから」と反対する、戦略アセスメントの早期法制化を求めてのものであった。

 今回の制度見直しにあたって、「原発をなくし、代替エネルギーへの転換」の運動とあわせ、それが生かされるような、環境アセスメント制度の充実・改善の取り組みが必要と考える。