「地球温暖化対策基本法」についての公害・地球懇の意見と行動 
 
 「地球温暖化対策基本法」の徹底審議を求める第二次おいて国会要請行動(2010年5月19日)
   
   公害地球懇では、5月18日に、衆議院で「地球温暖化対策基本法」が強行採決され、
参議院に送られたことを踏まえて、その弱点を指摘し、参議院での徹底審議を求めて、
全労連、新婦人などの会員とともに、参議院の環境委員全員に対して要請行動をおこないました。
   
  緊急シンポジューム「原発は地球温暖化対策となるのか」(5月23日)と
「政府への要請行動(5月24日)
   
   公害・地球環境問題懇談会、原発問題住民運動全国連絡センター、日本科学者会議の3者による
「原発問題という共通の課題での共同行動」がはじめて行われた。
   その共同行動の内容は、
   1.5月23日の緊急シンポジュームと
 2.翌日の経済産業省と環境省への要請行動であった。
   
  ≪緊急シンポジュームの主な内容≫
   

場所:文京シビック「シルバーホール」

 参加者:50名

 1.開会挨拶 公害・地球環境問題懇談会代表幹事 小池 信太郎

2.国会報告:日本共産党衆議院議員 吉井 英勝

 3.基調講演:「原発推進と自然エネルギーの普及は両立できるのか」
             環境エネルギー政策研究所所長 飯田 哲也

 4.政策提起:「原発を中心とした政策要求」 運営委員 大嶋 茂男

 5.個別報告

   ①「世界並みの原子力規制機関の確立を」

              原発問題住民運動全国センター事務局長 柳町 秀一

   ②「原発の安全性、高濃度核廃棄物の問題等」

              日本科学者会議原子力エネルギー研究員会 野口 邦和

   ③「下北半島は核燃・原発の総合実験場――自然の大破壊、大事故の危険」

              核燃サイクル施設立地反対連絡会議事務局長 小山内 薫

   ④「原発でなく太陽を!天草宝島ネットワークからの訴え」

              同ネットワーク代表 生駒 研二

   6.会場発言
   
  ≪経済産業省と環境省への要請行動≫
   
    それぞれの専門団体の力を結集して行った二つの省に対する要請行動は、説得力があり、
 対応者も、基本においてほとんど「認める」と言わざるをえない状況となった。
   
   1.経済産業省への要請行動
     主たる対応者は、原子力政策課企画調整――係長 松田明恭
   
   2.環境省への要請行動
     主たる対応者は、地球温暖化対策課――国内制度係長 村井啓朗
   
   3.シンポジュームでの討論を経てまとめられた要請文は以下の通り。
   
 
 
  環境大臣 小沢鋭仁 殿
  経済産業大臣 直島正行 殿
   
     2010年5月24日
     公害・地球環境問題懇談会
     代表幹事 清水 誠
   
   
  地球温暖化防止のためには、原発に依存せず、再生可能エネルギー(自然エネルギー)に全力を傾注することを、強く要望します
   
   私たちは昨日、温暖化対策と原発問題を考える緊急シンポジウムを開き、環境エネルギー研究所飯田哲也所長の講演、原発問題住民運動全国センター、日本科学者会議の代表などの報告をうけて、大いに議論をいたしました。その報告・意見にそって、下記の通り申し入れます。
 私たちは、地球や人類の命運がかかっており、今後の生活・生産様式を決める「基本法案」の審議にあたっては、運用を官僚まかせにせず、国会が実効ある政策内容を確定することで、国民に対する責任を果たし、十分説得力を持つ形での審議をすることを心から期待していた。
 にもかかわらず、現実の国会審議は、はなはだ不十分なものであり、国民を納得させるものではなかった。
 とりわけ、以下の要求に掲げる諸点において、大きな問題点を残した。ことここに至っては、参議院での十分な審議を通じて、衆議院での審議と「基本法案」の持つ弱点を克服することを強く要望する。
   
  〖「地球温暖化対策基本法」に対する私たちの共同の要求〗 
 
    1.気温上昇を産業革命以前から2度以内に抑えることを明記し、現在の持続不可能な社会経済構造の転換を促進する規定を盛り込むこと。このことが、基本法が掲げる諸政策の必要性に根拠を与える背骨部分となるものである。
   2.中期目標について、すべての主要国の合意を前提にする規定は削除する。それを通じて、中期目標の達成は、人類的な課題に対する日本自体の内的要求であることを明確にすること。
   3.基本政策の筆頭に、国と産業界のとの間での「温室効果ガスの公的削減協定の締結」を入れること。それを通じて、大量生産・大量消費・大量廃棄の政策を抜本的に転換する方向を明示すること。
   4.原子力発電の増設や設備利用率向上がは、「地球温暖化対策」となるとして政府は1998年の地球温暖化対策推進大綱の「原発20基増設」に代表されるように、原発増設や設備利用率向上を対策の柱にし、一方で省エネ・燃料転換・再生可能エネ普及対策とそれを保証する大口排出源削減義務化政策を先送りし、大口排出源の対策を業界自主計画まかせにし、石炭火発増設も容認して来た。これが90年以降の日本の排出増の主因である。その総括と反省もなく、また原発増設などを対策の柱とし、基本法にも推進規定を置いている。これでは過去10年の失敗の繰り返しを招く。原子力発電の推進規定を削除すること。
  5.地球温暖化対策は、原発のように他の環境負荷や社会問題を引き起こす手段ではなく、脱大量生産・持続可能な低炭素社会へと経済を抜本転換し、人間にふさわしい雇用をつくりだすものでなければならない。現在の大量生産・大量エネルギー消費の延長に、電力消費増加や鉄鋼生産維持を前提にした経済社会を描き、それを前提とした技術突破のような危険な対策や政策を考えるのではなく、脱大量生産・持続可能な低炭素社会への大転換を前提に、低炭素産業を伸ばし、若者と地域社会に雇用を保証する、そのことを実現する論議を早急に開始すること。 
   
〖地球温暖化対策としての原子力発電の推進に反対し、その撤回を求める〗 
   
    原発については、以下の5つの理由で、現時点での推進に反対し、原子力の推進規定の削除を求める。
   
   1)日本の原発の安全管理体制は重大な欠陥を内包している。この欠陥の是正こそ、最優先で取り組むべきである。 とりわけ、原発の安全規制機関と原発の推進機関が、同じ経済産業省のもとにあり、IAEA(国際原子力機関)の定める基準(「規制機関は推進機関と兼ねてはならない」)を逸脱している状況を克服すること。 原発推進機関から独立した「安全規制機関」を確立した後に、「安全規制規定」を整備し、「情報公開」をすること。その際、日本のように、地震源の真上に原発が立地している事例は、世界的にほとんどないので、日本の場合、その特殊性を踏まえたきびしい対策が必要である。 また、日本の原発は、人口過密の地域に隣接して立地しており、ひとたび事故が起きて、チェルノブイリのように、周辺一帯が立ち入り禁止地区になった場合に受ける悪影響は、世界の他の地域とは、まったく異なるものであることも知らなければならない。
   
   2)世界的な事例を見ても、原発に熱心で、同時に、自然エネルギーの開発に熱心だという国はない。その意味では、どちらを優先するのかの選択こそが重要なのである。議論の余地なく、21世紀の中心テーマである自然エネルギー重視の基本姿勢を確立することを求める。
   
    3)「いま生きている現世代が解決でない問題点を、次世代に先送りしてはならない」とは、人間として守るべき最低限の倫理である。この倫理を守ること。 原発を運転して40年以上経過したのに、未だに、放射性廃棄物の安全な処分の見通しがなく、特に、高レベル放射性廃棄物は処分場の候補地さえ決められないでいる。この現状のままで、それを無責任にも、次世代に先送りすることは許されない、ということを深く考えるべきである。
   
    4)先に述べたように、政府は1998年の地球温暖化対策推進大綱制定以来、原発増設や設備利用率向上を対策の柱にして省エネ・燃料転換・再生可能エネルギー普及対策とそれを保証する政策を先送りし、大口排出源の対策を業界自主計画まかせにし、石炭火発増加も容認して来た。このことが90年以降の日本の排出増の主因である。原発の不祥事もあり、原発建設は大幅に延期され、今後も延びるだろう。安全性などの問題を度外視したとしても、急を要する地球温暖化対策には、原発建設はまにあわないし、実際には他の対策を先送りして温暖化対策を妨害する。原発は地球温暖化対策には、時間的にも、コスト的にも、なりえない。基本法案から原発推進規定を外し、環境省ロードマップの原発増設・設備利用率向上の試算を撤回して2005年レベルに引き下げ、省エネ・燃料転換・再生可能エネルギー普及対策とそれを保証する政策を中心に組み立て直し、基本法とその後の大口排出源削減義務化、とりわけ火力発電所の排出総量削減義務化政策具体化を行うべきである。
   
   5)地球温暖化対策は、必然的に人間にふさわしい雇用をつくりだすものでなければならない。そのためには、世界的に軍事費を削減し、地球温暖化対策と貧困の克服に回さなければならない。また、現行の原発が、核兵器開発として軍事的に開発され、核兵器の拡散と結びつき、核テロの標的になるなどの側面もあり、原発の拡散は危険である。
   
  日本は以上の内容を踏まえ、世界の世論をリードする自覚を持ち、責任を果たすこと。 
 

 
 〖補足:今回のシンポジューム開催に合わせて行った「原発立地24自治体(市町村)に対する緊急アンケート」とその結果〗
 
   ≪アンケートの基礎となるIAEA(国際原子力機関)の見解≫
   
   (1)現状での最優先課題は、IAEA(国際原子力機関)の定める基準に沿い、かつ、原子力発電の推進機関である経済産業省から独立した「原子力発電の規制機関」を新設すること。

現在、原子力発電の一次審査を行っている「原子力安全・保安院」は、IAEA(国際原子力機関)の定める方針と乖離して、原発開発の推進機関である経済産業省のなかに置かれ、原発の推進と安全性の規制との二つの任務を同時に担っていますが、それを分離して、安全性を担保し規制する機関は独立行政機関として組織すべきです。
新潟県中越沖地震の際の柏崎原発事故を受けて、福島県と議会など6団体と原発立地自治体議長会議などが一致して実現を要望している上記のような「独立した規制機関を作れ」の要求は、ひとり福島県などの原発立地自治体だけの要求と見るべきではなく、全国民の一致した要求です。

注:IAEA(国際原子力機関)では、「規制機関の役割と責任」に関して、国際基準として、以下の2点を決めています。
一つは、「規制機関は、その国境内の原子力発電所の立地、設計、建設、試運転、運転及び廃止措置における原子力安全に関連したすべての問題について、政府としてのすべての監視、管理に対する責任を持たねばならない」。
二つは、「規制機関は、原子力の推進に対して、責任を負ってはならない。また、加盟国内のこの責任を有する組織から独立していなければならない」。

 (2)ついで問題なのは、「原子力安全委員会の権限・機能の拡充」問題です。

原子力発電の安全性に関する二次審査を行い、事故の再発防止策を究明する原子力安全委員会が、「基本設計」に限定された「権限の制約された機関」でしかなく、立地から廃止措置までの全段階の規制に責任を持つ委員会になっていないという問題点があります。
過去において、原発を管理する電力会社は、原子力発電の事故原因を隠蔽していた事例が非常に多かったのです。そうしたことが起きるのも、原子力安全委員会が弱体であったからです。これを改め、体制を強化し、十分な権限を与え、情報公開を徹底することが必要です。この点は、アメリカでの大統領直属委員会の権限・責任内容とも大きく異なるところです。

   
   ≪アンケートの内容≫
   
   私たちの提示している上記(1)(2)の2点に関し、首長もしくは議会としての見解があれば、お聞かせ下さい。
 なお、それに関連して、「原子力安全・保安院」と「原子力安全委員会」は、どうあるべきかについて、過去、正式に要望、表明あるいは決議した内容があれば、それを資料として下さい。
   
   ≪原発立地の24自治体に送付したアンケートの結果≫
   
    ・原発が立地するすべての自治体(24自治体)に、別紙のような緊急アンケートを送り、協力要請をしたところ、5月21日現在、11の自治体から回答が寄せられた。

 ・回答は、以下の4つに分かれたし、アンケートをとりまとめた者の主観も入るが、いずれも、(1)(2)を満たすべきこととしていると判断される。

 ①福島県、福島県議会、市町村会など6団体も主張するように、上記(1)(2)を支持する見解。参考宮城県女川町議会決議

 ②上記(1)(2)を支持しつつも、個別の市町村でそうした発言・要求をしていくのでなく「原発立地自治体協議会」などを通じて、それを実現すべきだとする見解。

 ③原発の安全性を守ることは、本来、国と県の責任であり、個別自治体からの要求がなくても、本来的に国と県はそうした基本的基準を満たすべきものである。

 ④その自治体としては、基本的に②なり③の見解をもっているが、過去において、対外的に意思表示をしたことがないので「上記(1)(2)に関して、意見を表明したことがない」との回答を寄せられた。

 

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