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築地市場移転、豊洲新市場建設事業環境影響評価書案についての意見
公害・地球環境問題懇談会
1.はじめに
この地域は東京ガス豊洲工場で石炭ガス製造を行った土地であり、石炭に含まれている有機化学物質や重金属により激甚な汚染が確認されています。生鮮食料品を日々扱う市場の性格を考えれば、築地市場を現地で建て替えるにせよ、移転するにせよ、どちらを選ぶにしても、汚染物質まみれの豊洲は、市場には最も不適切な土地と言えます。また、生鮮食料品を日々扱う市場であるのに、通常の環境影響評価で行う調査、あるいは対策しか想定していません。事後評価の徹底、代替案の想定もありません。
評価書案には大きな問題があります。以下に、大気汚染、水質汚濁および底質、土壌汚染の評価について問題点を指摘します。
また、これだけの問題がある以上、当該地での市場の建設は不適と言わざるを得ません。すみやかに撤回することを求めます。
2.大気汚染について
2.1 評価について
当該地域は東京でも大気汚染の激しいところです。この地域のNO2については、自動車排ガス局の江東区辰巳測定局の98%値は0.055ppmであり、0.04〜0.06ppmの上限に近い値を示しています。浮遊粒子状物質についても、一般局の江東区豊洲測定局、港区台場測定局、自動車排ガス局の江東区辰巳測定局で、1時間値の1日平均値(年間2%除外値)で0.063〜0.065mg/m3(環境基準は0.10mg/m3)であり、1時間値で最高は0.148〜0.166
mg/m3(環境基準は0.20mg/m3)となっています。さらに、道路沿道での調査は日数が極めて限られている中でも、1時間値の最高値(日平均値ではなく)が環境基準0.06ppmを超えているものもあります。これは限られた気象条件での調査ですから、気象条件によっては、汚染物質が滞留し悪化することがあります。
これに、当該地域へのトラックの集中による交通渋滞、駐車場でのアイドリングや発進時の排ガスなどの大気汚染が加わると、環境基準を上回るおそれが十二分にあります。
ところが、評価書案のシミュレーションでは、バックグラウンド濃度として、周辺一般局や自動車排ガス局の実績よりも、また当該地道路沿道調査値よりも低い値、たとえばNO2では0.0256〜0.0260ppm(年平均値)を採用しています。これは評価書案に「東京都自動車排出窒素酸化物及び自動車排出粒子状物質総量削減計画等に基づく削減量を見込んでいる」とあるように架空のものです。評価書案の資料編によれば、中央区晴海測定局のNOx年平均値0.049ppmから、NOx排出量削減目標があたかも自然に達成されるかのように仮定し、21%濃度が低減すると機械的に計算し、NOxのバックグラウンド0.0393ppmを求め、ここからNO2の濃度0.0256ppmを機械的に求め、この架空のバックグラウンドをもとに、基準を超過しないと評価しています。仮定に仮定を重ねた計算と言えるでしょう。
さらにトラック台数を限定して影響は軽微とするだけで、環境基準を上回った時の対策もあまり考慮されていません。生鮮食料品を扱う市場であるという、特段の環境上の配慮を必要とする事業所であることの考慮もありません。また、PM2.5の評価が行われていません。
まず、評価書案のシミュレーションにおけるバックグラウンド値を、現状値をそのまま使用するように修正するとともに、単にシミュレーション値が環境基準以下になればいいというのではなく、生鮮食料品を扱う事業所であることを考慮して環境基準を大幅に下回ることが必要です。あわせて、PM2.5の評価を行うべきです。
2.2 事後評価と対策
事後評価として、継続的な大気汚染物質の調査が必要です。生鮮食料品を扱う市場ですから、環境基準すれすれでは問題で、むしろNO2であれば0.04ppmを下回るような運用が求められます。
環境保全のための措置には、見込み違いでNO2やSPMが環境基準を超過した際に緊急にとるべき対策、さらには基準を超過することが慢性化した場合にトラックを使用しない、あるいは通常よりも大幅に減らして野菜や海産物を通常通り運搬する手段についても提案し記載することが必要です。
3.水質汚濁について
3.1 公共用水域の水質
周辺の海域の底質汚泥には、東京ガス豊洲工場の石炭ガス製造プラントで使用された石炭に含まれていた有害物質が高濃度で堆積していることが推定されます。これは通常時は底質だけにとどまるとしても、低気圧発生時には波で撹拌されて海水に混ざり、さらにはうちあげられて土壌に汚染物質が移動することも考えられます。ところが、評価書案は、公共用水域の水質汚濁調査は、CODとSS(浮遊物質量)しか行っていません。
海底が撹拌される低気圧が発生した後であって海が安定した後など、調査が安全に行われ、かつ海水が撹拌されている段階で、有害物質調査が必要です。
底質調査については別途述べます。
3.2 地下水について
調査範囲が第一不透水層までであり、また、10m区画ごとに1地点、深さ方向も1カ所しかとれておらず、次の3つの理由でこの調査は極めて不十分です。
理由の第一は、この土地の汚染状況です。この地域は汚染物質の濃度分布が極端であり、一様な汚染とは対極にあります。そのような土地で、10m四方で1カ所の測定点で、その周辺を代表させる、その1点で検出されれば汚染、なければ汚染なしなどと判定するのは無理があります。
第二に、第一不透水層は不完全ですから、いわば底が抜けた状態にあり、汚染地下水は第一不透水層の下も汚染されていると見るのが自然です。地層を破壊しないよう注意しながらボーリング調査を行い、下についても調査することが必要です。
第三に、生鮮食料品を扱う市場の環境影響評価を行うので、環境影響や安全評価には特段の配慮が必要です。通常の土壌汚染対策法でこのように定められているので機械的に適用したというのでは、市場の評価には不適切です。
3.3 底質について
海域の底質の汚泥について、ここでは調査も評価もしていません。
低気圧発生時に撹拌され、台風の高潮の際にはさらに撹拌されるだけでなくうちあげられて汚染物質の移動・再汚染が起こり得るのに、そうした調査がなされていないのは欠陥と言えます。
底質汚泥の汚染状況について調査すべきです。
3.4 事後評価と対策
地下水は常時あるいは頻繁に、海水と底質汚泥についても定期的に調査を行い、汚染の進行・移動、再汚染がないか確認し続けることが必要です。そのことについて、評価書案に何も記載がないのは大変問題です。追記すべきです。
また、汚染が確認された場合、供用停止、土壌汚染のない代替地への移転などについても検討し、記載すべきです。
4.土壌汚染について
この地域は、東京ガス豊洲工場で石炭ガス製造を行っており、石炭に含まれている有機化学物質や重金属により激甚な汚染が確認されています。生鮮食料品を日々扱う市場の性格を考えれば、築地市場を現地で建て替えるにせよ、移転するにせよ、どちらを選ぶにしても最も不適切な土地と言えます。
ところが、評価書案は、激甚な土壌汚染の土地が何の支障もなく浄化できると想定しています。以下のようにいくつかの点で大きな問題があります。
4.1 汚染されているか否かの判定が粗いこと
10m区画ごとにしか調査していません。この地域の汚染物質の濃度分布が極端で一様な汚染と対極にあります。そのような土地で、10m四方の測定点で、1点で検出されれば汚染、なければ汚染なしなどと判定するのは無理があります。
4.2 第一不透水層の下も汚染されていること
調査範囲が第一不透水層の上だけです。また、対策も第一不透水層が完全であるとの前提に基づいて鋼矢板をもって対象区域を仕切って処理を行うことになっています。
すでに述べたように第一不透水層は不完全で、いわば底が抜けた状態にあり、汚染地下水は第一不透水層の下の土壌も汚染されていると見るのが自然です。第一不透水層の下の調査が必要であることはいうまでもありません。汚染されていないというのであれば、調査をした証拠に基づいて言うべきです。
また、第一不透水層が不完全な箇所を特定し、そういう箇所では密閉措置、底面管理などが不完全になるので、それに替わってどういう処理をするのか、改めて提案し直す必要があります。
4.3 汚染物質の移動、二次汚染の可能性
第一不透水層の下も広範囲に汚染され、ここの汚染物質除去が事実上不可能とすると、汚染物質を運んだ地下水が上下し、調査時点で汚染されていなくても大雨の後など地下水が激しく動いた後には汚染される可能性があります。
さらには、地震の際にはこの地域は大きな液状化が懸念されます。
汚染物質の移動、再汚染もあるということを見越して動的な評価、汚染防止の方策が必要です。
4.4 使用技術について
基準の43000倍のベンゼン汚染など極めて激甚な汚染であり、また汚染物質も有機化学物質と重金属で多様です。しかも汚染が高濃度のところとそうでないところとの差が極端です。
こうした状況から、対策技術の種類や期間、汚染物質の分解ないし除去のぶどまりについて、予測や、その根拠になる現場での実績例について詳しく記載すべきです。
4.5 発生土壌や汚染物質の処分について
有機化学物質が現地で分解処理できる可能性があるとしても、重金属類は不可能ですから、最終処分場などへの移動が必要になります。そうであれば、処分場への移動や処分先について評価することが必要です。
また、汚染されていないと判断した廃棄物は埋め立てられることが提案されています。前述の通り、この評価書案の汚染の判断は粗すぎ、埋め立て処分場の二次汚染が懸念されます。
4.6 事後評価と対策
供用が生鮮食料品を扱う市場であることを念頭に、土壌について定期的に調査を行い、汚染の進行・移動、再汚染がないか確認し続けることが必要です。そのことについて、評価書案に何も記載がないのは大変問題です。追記すべきです。
また、再汚染が確認された場合、供用停止、土壌汚染のない代替地への移転などについても検討し、記載すべきです。
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