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国連気候変動枠組条約・IPCC報告・スターン報告
≪国連気候変動枠組条約≫

 京都議定書の母体となった気候変動枠組条約は、温暖化防止の最初の条約で、米国を含む国際社会のほぼすべての国(190カ国とEU)が加入する普遍的な条約である。条約第2条には「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を究極の目的と定めている。2008年4月28日現在日本を含む180カ国とEUが批准している。

≪IPCC報告≫

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、1988年に、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された国連の組織である。1990年に第一次評価報告書、1995年に第2次、2001年に第3次報告書をだし、2007年に第4次報告書が公表された。
 IPCCは、世界中から、気候変動に関する専門家を2000人以上集めて、三つの部会をもっている。
 2007年2月の気候温暖化の実態をまとめた第一作業部会(自然科学的根拠)報告書では、世界経済が化石燃料に依存した経済成長パターンを続けるならば、21世紀末の地球の平均気温は、現状の条件が続くと仮定したならば、6.4度上昇すると予測した(その後、予測を超える二酸化炭素の排出が続いている)。そして、その原因が、人為的起源の温室効果ガスによるものと断定して、注目を集めた。そして、二酸化炭素濃度を450ppmで安定させるためには、人為排出量と自然吸収量をバランスさせることの重要性を指摘した。
 いま、人類は毎年化石燃料から63±4億トンの炭素を空気中に放出し、森や海で約31~36億トンを吸収している(IPCC2001年データー)。
 この差約32億トンが地球温暖化を促進して気候変動の原因となるというわけである。
2007年4月の第2作業部会(影響・適応・脆弱性)では、温室効果ガスの増加の結果、集中豪雨・洪水・干ばつ・大台風・海面の上昇、農産物の激減などを引き起こしていることを明らかにした。
 IPCC第3作業部会報告書では、18世紀後半の産業革命前より2度~2.4度(1990年比では1.4~1.8度)の上昇にとどめる場合には、2015年までに排出量を減少に転じさせ、2050年には少なくとも半減させなければならないとしている。それよりも早い時期に達成することができればなお望ましいとしたわけである。そのためには、先進国は、早い時期に60%から80%の削減をしなければならないわけである。
 だから、環境問題での世界的な権威、レスター・ブラウン博士は、先進国は、「2020年に80%の削減をせよ」と求めているのである。

レスター・ブラウン著『プランB』(ワールド ウオッチ ジャパン刊)

 私たちは、有限有用な化石燃料を、人類破滅につながる使い方をする人間の愚かさ、現代社会の大量収奪、大量生産、大量消費、大量廃棄する社会原理の持続不可能性を認識するとともに、すみやかに、大量廃棄の道を転換していかなければならないのである。

IPCC第四次報告、第2作業部会の報告(外部リンク)

≪スターン報告≫

 2006年10月イギリス財務省から、気候変動の影響と対策をコスト面から検討した、いわゆる『スターン報告』が発表され、大きな反響を呼んだ。
 同報告によると、直面する気候変動を二段階に分けて捉えている。

 ≪第一段階(気候変動の時代)≫の影響として、

  • 乾燥・洪水・暴風などの異常気象が増加する
  • 水資源が減少し、世界人口の6分の1が、水不足に苦しむ
  • ヒマラヤなど高地や北極・南極での氷河・氷山の融解が大規模に起こる
  • 熱帯と亜熱帯での病気の量的・質的な変化が起こる
  • 3.5万人が死亡した欧州の熱波(2003年)が当たり前に起きる。
  • 途上国での農業生産性の低下傾向が鮮明になる
などが指摘される。
それらの現象は、これから起こるのでなく、すでに起こり始めている現象である。

≪第二段階(気候激変の時代)≫の影響としては、

  • 海水の熱膨張による海面の上昇が起こる、干ばつも加あって、2億人にのぼる難民が発生する。
  • グリーンランドと南極大陸の氷床の融解
  • シベリヤやアラスカの凍土の融解により、表土の中に閉じ込められているメタンガスの空気中への放出(メタンガスの温暖化への寄与は、酸素と反応して炭酸ガスとなるまでは、同重量の炭酸ガスの72倍ときわめて高い)
  • アフリカ・米西部・北中国などでの砂漠の拡大
  • アマゾンなど熱帯雨林の草原化
  • 海流の変化(例えばメキシコ湾流が弱まりヨーロッパ大陸が寒冷化
  • 生物種の大幅な減少
などが挙げられる。

その上で、人類は、まずはGDP(国民総生産)の20%を失い、さらに事態が悪化すると人類の絶滅もありうることを報告し、それを防ぐためには、毎年GDPの1%(軍事費は2.5%以上)を使った対策が必要であると警告している。

≪地球温暖化が与える影響≫

――私たちが追求しているところの、利益を求めて、資源・環境、社会、人間を大量に収奪する経済システムは明らかに限界にきており、持続不可能に陥っている。大量生産・消費、大量廃棄を前提とする現行の経済システムは、地球温暖化もんだいばかりでなく、以下に列記する5つの大問題を生み出し、自然が許容する“限界点”を超え、人類が十分には認識できていないデットラインを過ぎようとしている。自然は正確に時を刻んでいるが、私たちはその時計が見えない。未来を蝕む環境問題には、「森林の縮小」「砂漠の拡大」「地下水の低下」「漁業資源の崩壊」「生物種の消失」「気温の上昇」などもある。気温が上昇すると「作物を枯らす熱波」「より破壊的な暴風雨」「激しさを増す干ばつ」「森林火災の増加」、そしていうまでもなく、「氷の融解」が起こる。
氷の融解だけを見ても、人類文明が困難に直面していることがわかる。グリーンランドの氷床が溶けると、海面は7メートル上昇する。もし南極西部の氷床が壊れると(多くの科学者がグリーンランドよりも先に南極西部の氷床が壊れると考えている)、海面はさらに5メートル上昇し、合計で12メートル高くなる。

(レスター・ブラウン『プランB』ワールドウォッチジャパン、2008年、3~4ページ)

「最近、温暖化効果ガスの地球の吸収量は、最終的にゼロに近くなることがわかりました。100~200年の長さで見ると、海面温度の上昇で海洋への吸収量が落ち、老齢化した森林や、永久凍土がとけた土壌は排出源になります。温暖化がさらなる温暖化を呼ぶ構造です。いまの排出量を最終的には4分の1ぐらいに削減しないと出と入りのバランスがとれません。(だから、中国など途上国5カ国のG5では、先進国に、80%カットでなく、85%から90%のカットをもとめているのである)
温暖化の影響は非常に長い期間続きます。ある温度で上昇を止めたとしても、グリーンランドの氷は温度に応じてとけつづけ、全部解けると7メートルの海面上昇を引き起こします。
IPCCは、今すぐ手を打ったとしても、この20年から30年は、10年間で0.1~0.2度は上昇し続けると予測しています。」

(西岡秀三 国立環境研究所特別客員研究員談、『しんぶん赤旗 日曜版』08年7月13日号)
「国際環境研究所(IIED)は、世界最大の氷床の融解がが意味するものを理解できるように、10メートルの海面上昇の影響について分析した。IIEDの研究はまず、低標高沿岸地帯と名づけた海抜10メートル以内の沿岸には、6億3400万が住んでいることを指摘した。脆弱なこの大集団には、世界の人口の8分の1が含まれている。
もっとも被害を受けやすい国の一つが中国で、1億4400万人が“気候難民”になる可能性がある。この後に続くのは、インド(6,300万人)、バングラデシュ(6,200万人)、ベトナム(4,300万人)、インドネシア(4,200万人)である。さらに上位10カ国に入るのは、日本(3,000万人)、エジプト(2,600万人)、アメリカ(2,300万人)である。」

(レスター・ブラウン)前掲書、75ページ
≪炭素循環(正の)フィードバック≫

こうなってからでは、地球温暖化が加速度的に進行し、人類によるすべての対策が無意味となるという恐ろしい事態が待っている。さらに、人類が、2020年までの期間に、抜本的な対策を採らないで事態を放置したならば、シベリア等の永久凍土が溶けだし、土中に封じ込められているメタンガスが大量に空気中に放出されることになるといわゆる「炭素循環(正の)ヒードバック」状態にはいることになる。
「懸念される二つ目のフィードバックループは、永久凍土の融解である。融解によって、数十億トンの炭素だけでなく、メタンも放出されるであろう。メタンは、1トンあたりの地球温暖化への影響が二酸化炭素の25倍もある温室効果ガスである。
人類が直面しているリスクは、気候変動が制御不可能になり、氷の融解や海面上昇などの傾向に歯止めがかけられなくなることである。この時点で人類文明の未来は、危機にさらされるであろう。」

(レスター・ブラウン著『プランB』ワールドウオッチ ジャパン、2008年、83ページ)
(―→海面上昇に関しては
さらには、海温の上昇も起きて、海中300~500メートルの位置に大量に蓄積されている「メタンハイドレード」から多量の二酸化炭素が放出されるなどの事態となり、より強烈な「炭素循環(正の)ヒードバック」現象が起き、人間がいかに人為的な努力をしても、地球温暖化は加速され、人類の平和的生存は不可能になる。
それゆえに『スターン報告』が突きつけているのは、人類の破滅か生存かの選択だということである。
この状態から脱却するには、温暖化以前には、平均して270ppmだった二酸化炭素の濃度が、現状で350ppmにまで高まったものを、近い将来に450ppm程度を上限としてその後は下降させ、地球の気温上昇を2度以下に抑える対策がどうしても必要となる。
そのための具体的な手段として、環境市民団体の「気候ネットワーク」などが、日本政府に提起している政策は、『気候保護法』を制定して、温室効果ガス(二酸化炭素など6種類)について、1990年比で2012年に6%減、2020年に30%減、2050年に80%減の目標を掲げ、大企業に目標の公表と具体化を迫ると共に、市民も浪費と過労の生活・生産様式を大幅に転換し、「省資源エネルギー・文化発展社会」を築きあげ、気候変動を抑制する活動に参加することを求めている。
(地球温暖化対策推進委員会)